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禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
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第三十九話 碧玉ノ暴食 

私は、勇者達の集団を来るのをただ待っていた。

腕の傷はすでに癒え、動かすのに支障はない。

だが、先ほどから何度も屋敷の方から銃弾が飛んでくる。

弾丸どれも高い威力を持っているようだが、【玻璃ノ未来(ラプラス)】を持っている私には掠りすらしない。


そして奴らは来た。

光輝く剣を持った男を先頭に現れたのは、私とそこまで年の変わらない男女であった。

だが、彼らの内包する魔力は異常であった。

身の丈に合わない彼らの強さは酷く歪であった。


「おいお前!そこを動くな。この街は、お前たちがやったのか」


私は彼らには取り合わず【虎目ノ計測(アザゼル)】を使って戦力を分析していく。

彼らは様々な武器や魔道具を持っていた。

だが中でも目を引いたのは、一番先頭の武器であった。

奴の持っていたのは、『聖剣』魔物や魔族に対して特効を持つ武器であった。

輝く剣『聖剣』を携えた勇者は、切っ先を私に向け問いかけてきた。

後ろにいた奴らも私を囲むように広がっていく。


「答えろ」

「おい!何とか答えろよ——」


勇者の隣にいた男が腕をまくりながら近寄ってきた。


「……」

「返答はなしか……」

「勇也。俺から行くぜ。いいな」

「ああ。つよしやれ」

「それじゃ。かますぜ!」


剛と呼ばれた男が動きだす直前、私の【玻璃ノ未来(ラプラス)】が未来を予知した。


何だ、ただの蹴りか——。

私の予知したのは、男が蹴りを放つ光景であった。

私は素直に予知した場所に残った魔力を集めようとしたが——。


「よぉ」

「なっ——」


男が一歩踏み出し、そして次の瞬間私の目の前にいた。

ありえない——。私は男の動きを目視で捉えることができなかったのだ。

私は急いで予知した場所、私の右脇腹に腕を回し防御をしようとした。

だが、男の蹴りは私の防御を難なく突破してきた。


男の蹴りによって私は吹き飛ばされた。

蹴りの威力はすさまじく、吹き飛ばされた勢いは瓦礫に当たってもなお衰えることなく吹き飛ばされ、結局大きな教会のような建物に当たるまで吹き飛ばされてしまった。


「グハッ——」


内臓をやられたのか、私の口から血が零れる。

防御に回した右腕はだらりと垂れ下がり、あらぬ方向へ曲がっていた。

これじゃ再生に時間が……。あれ……体に力が……。

私は体に上手く力を入れることができず、膝から崩れ落ちた。

ふざけんな……私はまだ……。


「無駄な抵抗はおすすめしないな。大人しく捕まってくれれば悪いようにはしない」


聖剣を持った男は仲間を引き連れ、余裕の笑みを浮かべながら言った。


大人しく捕まれか……ふざけるな。

私の意思とは裏腹に体力も魔力も底を尽き、身体は動かない。

ふざけるな……動け、動け、動け。

私は、動かない身体、震える足を何度も殴った。


「なんだ?もう立つ気力もないのか」

「勇也君。捕縛するなら私がやるわ」

「そうか。頼むよ木崎さん」

「うん。任せて【木々の束縛(ウッドバインド)】」


男の傍にいた女の一人が魔法を発動した。

すると地面から次々と芽が芽吹き急激に姿を木に変えていく。

木はまるで意思を持つかのように私を拘束した。

私は何の抵抗もすることもできずあっさり拘束されてしまった。


「結城君少しいい?」

「おい聖!危ないぞ」

「大丈夫だよ、たぶん」


拘束された私に一人の女が近寄ってきた。

私を追ってきた莫大な魔力を持つ彼らの中でも最も多くの魔力を保有する少女は、なぜか他の者達とは異なり緊張した面持ちで話しかけてきた。


「あなたが【禁眼ディアボロス】の所有者ですね」

「な……なんでそれを」

「私もよくわかりませんがラグ、えっと『雪銀ノ知恵(ラグエル)』からの伝言です。『いつまで寝ているつもりですか悪魔たち、そんな体たらくだから主に頼られないのですよ』だそうです」

「お前は一体何を——」

「私は貴方の敵ではありません。では、いずれまた——」


彼女はそういうと再び自分のいた場所に戻っていた。

いつまで寝ているとは一体どういうことなの?


『天使に助言を受けるとは屈辱の極みですが、背に腹は代えられぬな。お嬢様まずは【碧玉ノ暴食(ベルゼブブ)】をお使いください。全てはそこからです』


急に頭の中から渋い老人のような声が聞こえてきた。

そして、声と共にこの瞳に映る全ての情報がなだれ込んできた。


「あなたは誰?」

『これは申し遅れました。私は真理を見通す悪魔【虎目ノ計測(アザゼル)】と申します。後ほど皆で謝罪をします。ですので、今は【碧玉ノ暴食(ベルゼブブ)】を開放し使用してください。解放の条件はすでに満たしております。あとはお嬢様が命じるだけです』


初めて聞く声であったけれど、なぜかその声には安心感があり、まるでそうすることが正しいと思わせるような声に私は呼んだ。


「わかった……来て【碧玉ノ暴食(ベルゼブブ)】」


私は彼の言葉通り、私の内にいる悪魔に呼び掛けるように言った。

すると、身体の内の一つの枷が外れたかの様な不思議な感覚がした。


『お初にお目にかかります。ぼ、僕は【碧玉ノ暴食(ベルゼブブ)】です。お嬢様よろしくお願いいたします』

『ベル挨拶は大切ですが、いまそれよりも——』

『わかっております、アザゼルさん。それでは喰らいます』


私の瞳を碧玉の様に変わった。

碧玉ノ暴食(ベルゼブブ)】の能力はわからない。

だが、その能力はすぐに理解させられた。


私の瞳に映る空間に漂う魔力をどんどん瞳に吸収、いや喰らっていった。

魔力だけではない、魔法で作られたものを分解し、魔力に還元し喰らっていく。

喰らった魔力はそのまま私の魔力に変換されていった。


『上出来です、ベル。次はわかりますね。お嬢様』

「うん。ありがとう二人とも——」


身体は身動き一つできない状態であるが魔力はほぼ満タンになった。

私は補給した魔力の全てを使ってある魔法を行使した。


「大気の魔力がなくなっていく?一体なにが——」

「儀式魔法【灼熱地獄インフェルノ】」


本来であれば、この儀式魔法を貴族の屋敷に放ち全てを終わらせる予定であったのだが、急な作戦変更のために儀式魔法は使用しなかったのだが、こんなところで役に立つとは思わなかった。

本来、儀式魔法を放つためにはそれ相応の準備が必要であり、準備の分だけ効力が増す。

当然、街全体を使った儀式魔法の威力は想像を絶するものであった。


儀式魔法【灼熱地獄インフェルノ】は、すぐにその威力を発揮した。

街全体を覆うほど巨大な魔法陣から黒い炎が噴き出した。

黒い炎に触れたものは、全て等しく燃え上がっていく、既に燃え尽きた灰や水でさえ燃やしてく。

物体が完全に消えるまで黒い炎は燃やすことをやめない。

黒い炎は、空に舞い上がり街の中心である屋敷に向かって降り注いだ。

だが、黒い炎は白い結界の様なものに阻まれ炎は、こちらの方へ流れてきた。


「これが、奥の手ってやつか。だが、こんなものは俺達には効かないな【完全聖域パーフェクトサンクチュアリ】」


聖剣を持った男は、地面に聖剣を突き立て彼らを包むように眩い光の結果を形成した。

黒い炎は、光の結界に触れた途端に魔力へ分解され炎そのもの消滅させていった。


渾身の儀式魔法が防がれても、私は動揺などしない。

灼熱地獄インフェルノ】が彼らに通用しないというのは、【虎目ノ計測(アザゼル)】で既に知っていたからだ。

故にここまでの流れは想定内の範囲である。

私の狙いは、この次だ。

勇者が私の魔法を魔力に分解したために大気中には、再び魔力が満ちた。


「【碧玉ノ暴食(ベルゼブブ)】」


私は視界内の魔力を再び喰らっていく。

大気中の魔力、私を拘束する木々や黒い炎、勇者の使った結界でさえ喰らっていく。

黒い炎は依然魔法陣から出続けているが、私が結界を喰らったことで勇者の結界には綻びが生まれた。


「勇也!結界が——」

「わかっている。すぐに修復を——」


彼らは結界に気を取られ、私から注意がそれた。

悔しいが残念ながら今の私では彼らをここで全員始末することはできない。

だからここは——。


「私の……勝ちだ——。【瞬間転移テレポーテーション】」

「逃がすか!」


私の転移魔法に気が付いた勇者は、槍を取り出し投擲してきた。

私の【玻璃ノ未来(ラプラス)】は、槍が私の心臓を貫くのを予知した。

だが、転移魔法の発動中であるがゆえに私は動くことはできない。

動けば転移できず、動かねば胸を貫かれる。

だから私は——。


「じゃあね——」


私が最後に彼らに呟くと私の姿は消えた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

ブクマ、評価、感想などいただければ幸いです。

明日も12時に投稿予定です。



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