表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
禁眼の吸血姫  作者: 榛名 怜
39/59

第三十八話 脱出 

ドレファスを殺した後、私達は地上を目指して走っていた。

まぁ実際に走っているのは狼たちであって、私達は彼らの背に跨りゆられているだけであるのだが——。


「ねぇアリス、それ連れて行くの?」


ノアは狼の背に乗せられている、炎髪の鬼人を見ていった。

連れて行くとは、おそらくこの場でのことを指しているのではない。

私達と同じ道、血塗られた道に連れて行くのかということだろう。


私は、彼女のことを何も知らないだが、地下の惨状と彼女のあの状態を見れば、人間に対してはとてもではないが好意的に思うことはないだろう。

だが、私を引き入れようとは思わない。

私達の歩む道は、痛みがあり苦しみがありどこまで行っても血の海しかないだろう。

少なくとも私は、この身が灰になるまでこの道を歩み続けるつもりだ。

人間の絶滅は、結局のところ私の個人的な復讐である。


だから、彼女が望まない限りは連れて行かないし、『殺す覚悟』『死ぬ覚悟』がないなら連れて行かない。

これまで傷ついて苦しんできた彼女だ。

できればこれ以上傷ついて欲しくないし、苦しんで欲しくない。

だが、もし彼女が剣を握り、再び傷つくことも辞さないのなら私は——。


「それはこの女の人次第かな——」

「そう。わかった」


ノアはそれ以上深く聞くことはしなかった。

ルナも空気を読んだのか彼女については、何も聞かなかった。






地上に出るとすでに日は暮れ、空には星が出ていた。

しかし、街は炎に包まれ夜の闇を払うように明るかった。


「うわー。派手に燃えているわね」

「これまだ生きてる?」

「いや、この街の人間は全員殺したよ」

「それじゃ——」

「この街から脱出して次の街に向かうよ。それじゃ行こうか」



私達は貴族の屋敷を後に街の中央通りを通り出口を目指し走っているときソレはきた。

突如、屋敷のあった場所に大きな魔法陣が現れたのだ。


「何あれ?」

「わかんない」

「【虎目ノ計測(アザゼル)】」


私は突如現れた魔法陣に向けて【虎目ノ計測(アザゼル)】を使った。


「あれは……転移魔法陣?でもなんで——」

「転移ってまさか増援!?」

「アリス、ここは逃げ一択。流石にもう戦えない……」


ルナの増援という言葉にノアは逃げることを提案した。

だが、人間を前にして撤退なんて……。


判断に迷っているとルナの言った通り人間の増援なのだろうか、魔法陣から次々と人影が出てきた。

私は、現れた人影に虎目を向けた。


「う、嘘……こ、こんなの——」

「アリスどうしたの?」


私はおもわず自身の目を疑った。

真実を見通し【虎目ノ計測(アザゼル)】が偽りを見せることはない。

それゆえに見えた結果に私は動揺してしまった。

【勇者】私の目には、はっきりとその力、能力が映った。

それだけではない、【勇者】の引き連れる他の者たちも先ほど戦った貴族を遥かにしのぐ力、レベルであり正直万全に状態であっても勝てないと感じてしまった。


「に、逃げるよ」

「アリス?」


二人は私の言葉が信じられないといった様子であったのだが、二人にかまう余裕は私にはなかった。

私は、急いで転移魔法を行使しようとした。

急ぎであったが、転移する座標はすでに決まっている。

転移魔法にありったけの魔力を注ぎ、私達全員をまとめて転移させようとする。


「二人とも動かないで!【集団転移グレターテレポーテーション】」


私が魔法を発動すると地面から魔法陣が現れ、私達を包んでいく。

これで大丈夫と思ったその時だった。

私の【玻璃ノ未来(ラプラス)】が未来を映した。


この集団転移の魔法は、集団で長距離を一瞬で移動する魔法であるが、発動途中で動けば対象の座標がずれてしまい動いた者は転移されず取り残されてしまう。

だが、私はそんなことには構わず、とっさに盾を取り出し屋敷とノアの間に立った。


私の【玻璃ノ未来(ラプラス)】が映した光景とは、ノアが何かに胸を貫かれる光景であったからだ。

私がノアと屋敷に立ったときと同時に拳銃を撃った時よりも大きい銃声が鳴り、同時に衝撃が私を襲った。

拳銃よりはるかに大きい銃弾は、金属の盾を貫通し私の腕を貫いた。

盾と私の腕を貫いた弾丸は、辛うじてノアには当たらず反れていったが、その代償は大きかった。

私は二人に背を向けたまま刀を抜いた。


「アリス?」

「んぅ……後……から追いつくから先にいって待ってて。ね」

「アリス!」

「アリスあなた何を——」


私は痛みに耐えながら、優しく二人に言った。

魔法陣の光は一層強さを増し、転移が発動した。

だが、発動中に動いた私はこの場にただ一人取り残されてしまった。

残念ながら今の私には、再び転移魔法を行使するだけの魔力はない。

それほどまでに遠くへ転移しなければ、こいつら追ってくると思ったからだ。


「待っててか。あはははぁあ、流石にこれはキツイなぁ」


私はすごい勢いでこちらに向かってくる集団を見ながら呟いた。

こちらは満身創痍で敵は強大。最後の退路はさっき潰れてなくなった。

まさに絶体絶命の状況であった。


そしてついに奴らは来た。






~勇者side~


結城や神崎たちと転移してきて私は街の様子をみて驚きを隠せなかった。


「う、うそ。街が全部——」

「あちゃーもう遅かったか。さすがドラゴン」

「ひどい。街が火の海ね」


私に続き神崎や北条が感想を述べていく。

私達が転移しきると、ゾクリ背に氷を入れられた様な悪寒がした。


『報告 【禁眼ディアボロス】の所持者に捕捉されました』

「えっ!そんなに近くにいるの?」

「どうしたのヒジリン?」


私の声が大きかったらしく神崎まで聞こえてしまった。

私はあわてて誤魔化そうとした。


「い、いやなんでもないよ」

「そう?」

「う、うん」

「ふーん。まぁいいけどドラゴンの姿が見えないね」

「そうだね」


私は上空を見上げるクラスメイトと同じように空を見るふりをしながら、街に目を向けた。

街にあるのは、火に包まれた家屋ばかりで全く見つからない。

誰よりも先に見つけようと炎に包まれた街を見渡すが遅かった。


「おい!あそこに魔法陣が見えるぞ」


一人の聖騎士が中央通りを指差しながら言った。

街の中央通りにポツンと現れた小さな魔法陣がそこにはあった。

道は屋敷から真っ直ぐに伸びていて遮蔽物などがないため、距離はあってもすぐにわかった。

クラスメイトの一人がどこからか取り出した双眼鏡で魔法陣を見た。


「おい!魔物とそれにローブを被った奴が三人いるぞ」

「きっとそいつらが犯人だ!逃すな!」

「ですが、距離が遠すぎます」


バーナードが聖騎士達に命令も下すも距離があり過ぎて彼らの魔法では届かない。

だが、勇者たちは例外であった。


「さぁて、ここは俺の出番のようだな」


そう言ってクラスメイトの一人『金森かなもり ひびき』は屋敷の掘りに足をかけながら前に出た。

彼は収納魔法から細長い棒の様なものを取り出した。

種類などは詳しくないだが彼が取り出したのは、地球の武器俗に云う『スナイパーライフル』というものだった。

彼は、スコープを覗き込みながら照準を合わせていく。


「響、俺達は魔法陣のある場所を向かう。お前はここから援護してくれ!」

「あいよ。勇也も気をつけてな」


屋敷の場所に金森と他何人かを残して私達は、結城に率いられ魔法陣の場所に向かった。

向かう途中に大きな銃声が聞こえた。

銃声のあと一人のクラスメイトが結城に連絡を入れた。


「勇也!響から連絡が来た。魔物を引き連れた奴のうち一人を残してあとは転移したらしい。あと残った奴は腕を撃たれているらしいぞ」

「わかった。転移した奴は後回しだ。残った一人を捕まえるぞ」

「「「おー」」」


腕を撃たれたという報告に私は不安を抱かずにはいられなかった。

私達は彼女を既に傷つけてしまったのだ。


『安心して下さい。私達がご主人様をお守りします』

「ラグ、うん。ありがとう」


ラグは私の心情を察してか気を回してくれた。

天使(彼女)達の能力なら信頼はできるが、相手は天使と対を成す悪魔達である。

願わくば初めての邂逅は穏便に終わって欲しいと思う。


「私は貴方の敵じゃないんだよ」


ここまで読んでいただきありがとうございます。

ブクマ、評価、感想をいただければ幸いです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ