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勇者がいないファンタジー世界で俺は……  作者: アルねこ
第3章 勇者冠水編
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第八十九話 ティモ司教

アップが遅くなりました。すみません。

 ファルファシオンに戻って以来、伯爵の屋敷で(かくま)われていた。


 ほとぼりが冷めるまでのつもりでいたが、これが日増しに酷くなる一方。10年前のトランスペアレンシーの再来である。



 屋敷に無事辿り着いた俺達。

 その後、伯爵とネリーは涙ながら和解を果たす。


 ネリーは生還できたことへの感謝、今まで酷いことを良い散らしていた(そし)り言を謝った。

 伯爵は娘の生還を暖かく迎え、全てを包み込む。


 その父娘の姿を見て、恩に報いたことを改めて実感。

 邪魔にならぬよう、銀貨について、改めて心の中で感謝した。



 そして今現在、俺は屋敷で言うところの応接間にて、チェスを打っている。

 相手はファルファシオン伯爵こと、オラース=ファルファシオン。


 何故こんなことになっているか。

 ファルファシオン家の娘よりも、このオラース伯爵にやたらと気に入られてしまったことが原因。


 最初は娘の婿にと言い寄ってきたが、俺はこれを問答無用で断った。


 どうやらオラース伯爵は、俺のことを唯の無職と思い込んでいたらしい。魔神のことは、口八丁に思われていたようだ。


 俺との距離感を縮める為か、空いている時間は全てチェスの時間となっていた。


「オラース伯爵、仕事はいいのですか?」

「全く問題がありません。ハハハハハハハハハ」


 この伯爵、チェスを打つのは大いに結構だが、なかなかに下手である。俺も人のことを言えない腕前ではあるが、伯爵は明らかに下手の横好き。


 そこそこに拮抗する戦いの味を、覚えたのだろうか。割と本気で楽しんでいる気がする。


「教会の動きは、どのような感じですか?」

「日に日に捜索の手が増えています。外からも続々と街に入っているようですね」


 一番最初、生誕から出てきたと思われるレティとテレサ、二人のことであろうと予想していた。

 しかし、それとは別の第三勢力、教会が動いていると判明。


 どうやら俺が知らない間に、三つ巴の戦いが始まっていた。全くもって面倒な話だ。

 レティ達の方はともかく、教会の方は早めに手を打たないと、街に被害が出る。


 何か良い手は無いかと、今居る部屋を見渡す。

 客を通すだけあり、珍しい装飾品などが色々飾られていた。


 高い位置に飾られた仮面が目に入る。仮面は細長い獣のような頭蓋骨を模しており、外側に向かう角を有す。角はゆるやかなカーブを描き、ヤギのような角。


「オラース伯爵、あの仮面は?」

「あの仮面ですか? あれは以前、金に困った商人から買ったものです。屋敷の者からは不気味がられ、評判はすこぶる悪いですが」

「伯爵、よろしければ、あの仮面を私に売って頂けませんか?」

「あの仮面をですか? ノヴィ殿が欲しいというのであれば、構いませんが。まあ私としては、ネリーを嫁に貰って頂けると、嬉しいのですが」

「それは以前にお断りしました。一応こう見えても、結婚を約束をしている女性がいますから」

「であれば妾でも」

「妾では、ネリーが可哀相です。それに伯爵令嬢が妾なんて」


 嫁候補が二人もいる、なんて言えない。

 言えば、なし崩しに三人目として贈られるであろうことが、容易に想像できた。


 それから何度かチェスを打ち、俺が所望した仮面を、譲ってもらうことに。

 これ以上借りを作らないでおこうと思っていたが、伯爵が金を受け取らず、有耶無耶のまま無料で貰ってしまった。あとが怖い品だ。




 辺りが暗闇に染まる頃、頂いた仮面を被る。変身ヒーローと名乗るには、少々悪役過ぎる格好だ。

 鏡でチラッと自分の姿を確認してみる。

 暗闇の中から突然現れたら、チビってしまいそうなぐらい、不気味な格好だった。


『石透過』を使用し、目立たぬように街を移動。


 教会の場所は予め確認済み。教会の正門から堂々と侵入。


 礼拝堂に入ると、一人の男が祈りを捧げていた。


 絵になりそうではあるが、俺としてはノーセンキューな一面である。

 これが美人なシスター、できればあの僧侶みたいなお姉さんであれば、小一時間は楽しめるというのに。主にエロ方面で。


 この男、見た目は40、50歳に見える中年。おっさんが教会で、一番偉いのだろうか。

 クラウディアに聞いておけば良かったと、失態を少々悔いる。


 おっさんの前に立ち、石透過を解除。


「我が名は、魔神レムリアンシード」

「ひぃっ!」


 目の前に突如現れた俺の姿に、激しく動揺を示す。

 俺だって、こんな面を被った奴が、急に目の前に現れたらビビるわ。


「男。お前がこの教会の統率者か? 答えよ」

「わわ、私はこの教会の司祭。この教会の統率者はティモ司教にございます」

「そうか。では、司教のいる場へ案内せよ」

「レムリアンシード様」

「なんだ?」

「貴方様は、神の遣いでしょうか?」


 この場合、このおっさんが言う神は、天族のことだよな。


「我は天にあらず。天の鎖を断ち切る者。ひいては、この街の淀みである妖精の欠片、壊しに来た」


 それっぽくアピール。魔神様が壊しにきたんじゃあ、な展開にしておこう。


「おお神よ」


 目の前のおっさん、すごい男泣きしている。

 全くもって意味がわからん。恐れをなして涙しているとは、ちょっと違う様子であるが。


 聞く相手を間違えた気がする。


「司祭。司教のいる場へ案内せよ。次は言わん」

「はっ、はい!」



 薄暗い石通路を歩く。

 目の前の司祭は燭台の灯りを使い、俺をティモ司教の場所へと連れて行く。


 ここがティモ司教のいる部屋なのだろうか、少し歩いた先で司祭が立ち止まる。

 司祭が数回ノックする。


「誰だ」

「マルニクスでございます」

「入れ」


 司祭の名前はマルニクスという名らしい。


 俺の目の前には60過ぎであろう、頭が白く染まった、痩せ気味の爺が座っていた。

 こいつがティモ司教だろうか。


「なんだ用事とは──っ!」


 ワインか何かを飲んでいたのか。手に持っていた器を落とす。 

 この世界の基準がわからないが、俺の考えている通りであれば、とんだ腐れ坊主だ。


「ばっ、化物だと!?」

「化物とは、随分な物言いだな。我が名は、魔神レムリアンシード。お前達に話がある」

「化物と話すことは、何も無いぞっ!」

「よく言う。我がもたらした妖精の欠片で、随分と肥えておるくせに」

「何を訳の分からんことを」


 このクソ爺、すっとぼけやがった。


「最近、妖精の欠片の芯である石が、大量に手に入ったのではないか?」

「それがどうした。既にコチラの物だ。お前に譲るつもりなど、欠片も無いわ」


 相当な守銭奴のようだ。自分の物は、絶対に他人に譲らないタイプと推測できる。


「自分で作り出すことの出来る石を、何故お前から貰う必要がある。腹いっぱいになるほど食わせてやったのに、まだ食うのか?」

「まさか、お前が?」

「近いうちにゴミ同然となる石。そんな石ををかき集める姿、愉快だったぞ」


 話し合いで解決しようかと考えていたが、予定変更だ。このティモ司教は街から追い払う。


「我を楽しませた礼だ。3日猶予をやる。3日以内にファルファシオンから出て行け。猶予を過ぎてもファルファシオンにいた場合、お前の命無いものと思え」


 ブレイクスルーソードを手にし、ティモ司教の机を焦がし切る。


「我には教会を圧倒する力がある。信徒で攻めるといった、馬鹿な行動をしてみろ。跡形も無く消えるものと思え」


 とりあえずビビらしておく。


 流石に、この武器で人を焼き切るとか、想像したくない。

 そんなことを考えていたら、血が吹き出そうで吹き出ないとか、生々しい光景を想像してしまった。


 俺の勧告に対し、すまし顔でいたであったが、机の一部が消し炭になったことにより、厳しい表情へと豹変する。

 ようやく、追い詰められているという事実に気付いたようだ。


 後ろを振り向く。

 流石にマルニクス司祭も、俺の脅し文句に恐怖を感じ取っているようである。


 そのまま部屋を退出しようとしたその時、壮絶なまでの嫌悪感が走る。


(なんだ、この超絶なまでに嫌な感覚。どこかで!)


 気配は自分の後ろ。後ろへ振り向く。


 ティモ司教がナイフを手にしていた。手にしているナイフは、ヤスィーが握っていたナイフと同じ、あの漆黒のナイフ。聖剣と呼ばれていたもの。


 俺の後ろから、マルニクス司祭が驚愕の声をあげる。


「ティモ司教様! その黒い剣は一体!」

「こここここの聖剣で!」


 既にティモ司教の右手が、黒く染まり始めている。


 本来であれば、脅し文句で使っていた秘術であるが、緊急自体だ。やむを得ない。

 このままこれを放置すれば、街に被害に影響の出る可能性すらある。


 右手を正面に向ける。狙う先は、ティモ司教の手元の黒剣。


「浄火」


 黒剣が溶けるように消えていく。


「なっ、何故。わ、私の聖剣があっ!」

「事情が変わった。司教、聖剣を何処で手に入れた。吐け」

「誰が貴様のような悪魔に」

「司教、右手を見ろ」


 ティモ司教の手からは、既に黒剣は消えている。

 そして、司教の肘から下が力を失い、ただぶら下がっていた。


「わっ、私の腕、腕、腕が動かないぞ」


 浄火の威力を弱め、聖剣周辺を狙い撃ちにしてみたが、上手く行ったようである。

 司教を丸ごと焼いても良かったが、出処を聞き出す必要があった。


「我が、貴様の片腕と聖剣を燃やした。放っておけば、腕から全身を【黒き力】に侵食されていた。片腕だけで済んだことを喜べ」


 ティモ司教は気が動転し、腕を動かそとうと必至に(わめ)く。


「諦めろ、その腕は動かない。先程の黒い聖剣、どこで手に入れた。今直ぐ言わぬなら、もう片腕、足と焼いていくぞ」

「──ひっ!」


 入手先を吐かせたところ、教会本部にいる枢機卿(すうききょう)から賜ったらしい。

 枢機卿とやらが、黒い聖剣を量産、もしくは撒いている親玉ということだ。


 本来【黒き力】は一般人には見えない。

 しかし、あの黒い聖剣は異常過ぎる。


 マルニクス司祭の目にも、黒く見えている時点で明らかに異常。

 もしかしたら、黒く塗り潰すことで、分かり易くしているだけかもしれない。


 どちらにしろ、一般人が手に負える代物ではない。


「今後、黒き聖剣を手にするな。手にすれば地獄に飲まれるぞ」


 後ろに振り返り、マルニクス司祭を見る。


「マルニクス司祭、お前もだ。もし持っているようであれば、直ぐに出せ。この場で焼く」

「いえ、私はあのようなもの、初めて目にしました」

「ならいい。教会が聖剣を渡しても、決して触れるな。あの剣の力の源は、呪いの源流だ」


 消沈している司教に言い渡す。


「最初に告げた通り、3日猶予やる。ファルファシオンに居ると分かれば、今日の様に四肢を貰い受ける。覚悟しておけ」


 最後に釘をさしておく。


 こうして、二度目の黒い聖剣は、難無く燃やすことができた。


 枢機卿が持っていると言っていたが、普通に考えると間には大司教がいると予想。

 その上には、総大司教や首座大司教と呼ばれる、役職がいるかもしれない。


 この上下図を考えると、本当に面倒そうだ。

 かと言って、あの黒い聖剣を放っておく訳にもいかない。


 先は、まだまだ長そうだ。

直接話には影響ありませんが、プロローグを修正致しました。


現在冒頭部を修正しております。

その影響でもしかすると、話数がずれるかもしれません。

話数がずれる場合は、前書きにてお知らせ致します。


今回の話は情景描写が多めになっております。


web小説で情景描写を多くすると、テンポが悪いかなと、考えておりました。

感想で情景描写が足りないことを指摘された為、試験的な感じで書いてみましたが、如何でしょうか。


何らかの形で評価、お知らせ頂けると凄く参考になります。


情景描写に問題がなければ、古い話も情景描写中心に加筆していきたいと、考えています。


設定については、どうしようかと悩み中です。


まだまだ性能が低い作者ですが、引き続き宜しくお願いします。

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