第六十八話 俺が望む永遠
3章開始
※章タイトルの『勇者冠水』は勇者であふれる世界。勇者が迷惑を掛けまくってる災害的なもので解釈して下さい。よろしくお願いします
布団の中であのテーマソングがリピート再生中。
「おいノヴィ、布団の中で歌っているなら、妾の研究をて~つ~だ~え~」
なんで俺が涼宮◯ポジションなんだよ。勘弁してくれよ~。俺、孝◯ポジじゃないのかよ。ハイブリット型とか勘弁しろよ。俺トラウマ気味なんだよあのゲーム。
十年が経っていると告げられた日から、俺は……、
『 ひ き こ も り 』 になってしまった。
どうやら【黒き力】に浸かっていた時間が相当長く、【黒き力】の浄化と俺の精神体を救うのに、数百年から千年は見積もっていたらしい。突然俺が十年そこらで出てきたものだから、慌てて肉体を用意したのが詳細の経緯。
「急に世界を壊す気がなくなってきた…………」
「ノヴィ何を言っておる、あの時の妾の涙を返せぇ!!」
だってそうだろ。俺はそもそもファンレの為に世界を壊すと決意したのだ。あの当時のファンレは推定十五~十八前後。それから単純計算すると二十後半、下手すると三十を過ぎているかもしれないのだ。そうもしかしたらおばs……。おまけにどっかの男とこう、にゃんにゃんな関係になっているやもしれぬ。
男として最悪だって? あえて言おう俺はカスであると。俺は正直に生きたいんだ。テレサとヴィヴィアンにカッコつけて出てきた手前、精神世界に帰りづらい。こうして布団にひきこもっているわけである。
「はぁ~~~~~~。いいじゃんもう魔術回路あるし。今のレティならもう余裕だよ余裕。敵を指先一つでダウンさせちゃうよ」
「はよおおおーでろおおおお」
俺の甲羅という名の布団を引き剥がすべく、最強と名高い女の子が奮闘する。その姿は日曜日の朝から頑張る子供とお父さんの図であった。
今日も俺が引きずられるように食堂に向う。あれから少しだけ変わったことがある。俺のひきこもり状態ではなく、俺の取り巻く環境についてである。
具体的にはこの幼き魔王。俺の隣に陣取って飯を食おうとしていたら、ストゥニールとルーカスがその場所で食べることに物凄く反対。結果、俺がレティと同じ上座っぽいところで食う羽目になる。
これに異を唱えたのが、一応まだ破局していない俺の正妻ポジションであるテレサ。この上座っぽい場所は結構小さい。子供一人と男一人座れば一杯だ。
「レティ、はやくノヴィを返して!!」
「テレサはいつもノヴィとくっついているであろう。たまには妾に貸せ」
「私もそこで食べる!!」
「残念じゃのうテレサ。この席は二人用じゃ。諦めろ」
二人用じゃないだろこの席。スネ◯かお前は。生誕の食事がここ最近こんな感じでラブコメならぬ、カオス状態と化していた。翌日この状況にルーカスとストゥニールがキレてしまったのである。
結局どうなったかって? 言いたくない。言いたくないんだ。非常に不本意なポジションに収まってしまったのである。最近の俺の引き籠もり具合を酷くする原因の一つ。
ちょっと分かりやすく言ってみよう。トカゲ俺ライオン。
分かったであろう。俺はヴルムとハッセルに挟まれるポジションに座らされてしまったのである。ルーカスやストゥニールさんの間ならまだ救いがあった。
(何故この二人の間なんだよ)
こんなの絶対おかしいよ!!
「はぁ帰りたい」
とか言って今日も朝から二度寝ならぬ三度寝をしていると……。
「あらノヴィ様。お帰りになられたのですね」
俺のもう一人の嫁候補である。ヴィヴィアンが現れた。
(あー無意識にこっちに来てしまった)
こちらの精神世界に来た場合、俺の肉体はどっかに変換されているらしい。テレサやヴィヴィアンがあちらに行く場合、擬似的な肉体を生成して、そこに入るらしい。俺の肉体はこれに近い形になっているのではないかということ。
VRゲームみたいにベッドで寝転んでいるだけかなと思っていたが、以前俺の肉体が急に消えた為、レティが随分と探したみたいなことを言っていたのだ。
「うん。まぁちょっと向うでへこむことが散々あったからね。自然と帰ってきてしまったらしい」
「あらそうだったのですか」
この美人は清楚で優しそうであるが、コイツに癒やしを求めてはいけない。コイツは俺の財産目当ての嫁である。
結局、ヴィヴィアンと一緒にお茶を飲んでいると、見たこと無いお客がやって来た。
「ヴィヴィアン様~、連絡下さいよ~」
「あら、アリーシャお久しぶりですね」
「ヴィヴィアン様が連絡をしなくなり、かれこれ十年ですよ!」
「あら十年ぐらい大したことないですよ」
「普通十年も連絡無ければ、焦りますから~」
ちょっと涙目になっている、ヴィヴィアンと同種っぽい妖精族の人のようだ。
「ところでなぜこんなところに、お茶があるのですか?」
「欲しかったら飲んでいいよ」
俺がお茶を勧める。俺が淹れたわけではないが、俺の家にあったものだしいいよね別に。
「ところで貴方様は一体?」
「ノーヴィス=レムリアンシードと言います。一応こうみえても魔神やってるの。よろしく」
「((((((((ガクガクブルブル)))))))))」
「こらアリーシャ、私の旦那様に対して失礼でしょ」
「だっ、だんなさま!?」
とりあえず怖くないよ怖くないよーと言いつつ、アリーシャと呼ばれる彼女の震えを止めてあげる。妖精族の一部は魔神の伝承を怖いお伽話として知っているとか。人族で言えば魔王的な畏怖の象徴であったらしい。
「先程は失礼致しました」
「いいよ別に。今日はお茶菓子ケーキだったから、ラッキーだね」
「はあ。お茶でも驚いておりましたのに、まさかこれ程までに美味しい茶菓子まで出てくるなんて」
「チッ、アリーシャが来なければ、分前が多かったのに」
ヴィヴィアン~黒い部分が出てるよー
「アリーシャさんは俗世にいつも居るんだよね?」
「そうですね」
「俗世てケーキないの?」
「少なくとも私はこの『クリーム』を初めて食べました」
「俗世の何処かに地球人っぽい人が居る国があると思うから、ケーキ出回っているとばかり思っていたよ」
「そうなのですか?」
「うん。卵、砂糖、牛乳があれば作れそうだしね。俺がこっちの世界に来たばかりの時は、砂糖の入手難易度が高くて、ちょっと見送ってたけど」
俗世とは言ったもの、今ではこの精神世界のほうが俗世と思う。
「アリーシャ、私に用事があったのでは?」
「そうです、そうですよ~。十年も連絡が無いから、ギルドが大変なことになっておりまして~」
何やら彼女の話によるとこうらしい。ここ数年の間から『勇者』という職業が急に現れ、冒険者ギルドも随分と混乱しているらしい。またこの『勇者』というのが質が悪いらしく、教会をバックに結構好き放題やっている連中もいるとか。
お陰で一度は盛り返した冒険者ギルドの質が落ち、教会が冒険者ギルドに成り代わり、アレコレ大きな仕事をやっているらしい。大きな仕事が無くなった冒険者ギルドは、現在衰退の雰囲気を見せているとかなんとか。
今ではクエストを受注するときに勇者が居ないパーティーは役立たず、という不名誉な印象を持たれるらしい。十年前であれば考えられない状況だ。
「助けてくださいよ~ヴィヴィアンさまぁ~」
「丁度いいから冒険者ギルド潰しましょうか。私も面倒になっていた頃なので。それに目的も果たせましたから(ピトッ」
そうね。君は俺の財産目当てだったからね。もう目的は果たしたから、勇者の頼まれ事なんてどうでもいいんだね。ちょっと冷やかな目でヴィヴィアンを見る。
「路頭に迷う冒険者達はどうするんですか~」
あーこの人はあれか、中間管理職な人なのか。いきなり社長が会社を潰すとか言い出すから困ってるのね。
「ヴィヴィアン少しは助けてあげたら。君と同じ種族で、頼ってきたわけだし」
「そうは言いますがノヴィ様。面倒臭いんですよ本当に。私も今は俗世用のアンテナがセレクティアだけになってしまいましたし」
「どーいうこと?」
「実は生誕で【黒き力】と相対した際、眷属だった娘達のリンクが切れてしまったのです。セレクティアは状況を把握していた為、ほとぼりが冷めた頃に戻ってきましたが、他の馬鹿共は帰ってこなくなりました」
ヴィヴィアンによると、俗世の情報収集用に使っていた伝書鳩達に一斉に逃げられたらしい。唯一残ったセレクティアも現在は活動が休止状態の為、情報に疎いらしい。
「あー、俺にも関係していたのね」
「いいえ、ノヴィ様は気になさることありません。逃げられた妖精達よりも、ずっと大切なものが手にはりいましたから(ピトッ」
目の前のアリーシャさんが、ちょっと涙目で俺に助けを求めてるよ。
どうしようかね。勇者達に喧嘩売ると教会が五月蝿そうだしな……。いや本来の目的はこれか。ここ最近は不貞腐れていたけど、これが本来の目的であることすっかり失念していた。
まぁ本気で困ってるようだし、ちょっと喧嘩売ってくるかね。
「アリーシャさん俺で良ければ行くよ。まぁ正直何処まで手伝えるか知らないけど」
「ほっ、ほんとうですか!?」
アリーシャさんが本気で喜んでるわ。
「でもごめん先に謝っておく。俺が手出しすると、教会が攻めてくるからもしれないけど、いいかな?」
「え゛っ!?」
「勇者て教会繋がりなんでしょ? 多分勇者に喧嘩売ると、教会にすぐバレるだろうから」
アリーシャは困っていた。圧政に困り続けるか、反逆者に手を貸してもらうか。
「ど、どうしましょう? ヴィヴィアン様」
アリーシャが本気で困っていた。
3章開始しました。宜しくお願いします。あらすじは書き直しましたが、ノヴィやテレサ、レティがあれこれするお話はこれからになります。
次話7/20予定。 オクレタラスミマセン
個人的には君望好きですよ。




