第四十九話 魔神様の上級者HENTAI活動
翌日から精神世界の破壊工作を始めた。
俺はまず水質調査を始める。といっても、実際に調査する薬品や器具があるわけではないので、手当たり次第に水を飲みまくる。多少病原菌とかあっても大丈夫。俺、最強だし。
まずは森の湖、自分の家の水道水と飲む。これは予想していた通り全く同じ味であった。そして、続いて魂の回廊にある水源。噴水の水を飲んでみた。驚愕する事実。
これも全く同じなのである。少なくともこの世界の水源は同性質。では何処で水質が変わるのか……一つしか無い。
そして今、俺は土下座していた。
「お願いします。お風呂の水を飲ませて下さい」
テレサを含む、夢魔族一同がドン引きしているよマジで。俺もこんな上級者な発言を発するとは思わなかったからな。日本で言ったら一発で通報されそうな勢いよ。
実は最初テレサから断られた。流石にそんな変態行動を許すわけながない。もっとノーマルなことなら受け入れるが、風呂の水を飲むのはアウトらしく、テレサから強く反対されたのである。
ここに秘密があるのだから、飲んでみるしかないと判断した。
こうした経緯で夢魔族一同に頭を下げ、風呂の水を飲ませてくれと頼んでいる次第だ。
うん、どうみても変態だよね。HENTAI国家と名高い日本でも上級者だわ。
夢魔族一同がヒソヒソ会話を続ける。
「ノヴィ…………。本当に今回限りだからね。また飲みたいとか言わないでよ。絶対、絶対だよ」
「OK誓うよ。ちなみに飲む理由は絶対真面目な調査だから、そこだけは信じて」
駄目だ皆、凄い訝しげな目で見やがる。
何はともあれ長であるテレサから了解を貰える。そして緊張の瞬間が迫る…………。
「美味しいぞ」
ポソッ言ってしまった言葉に、余計にドン引きされてしまったよ。
でもマジに美味しいのである。何故なんだ。まさかサキュバスの出汁とか汗とかイケナイ汁とかあるのだろうか。念の為もう一度飲んでみる。
「やはり美味い」
理由は不明だが美味い。もう少し調査する必要がある。そして俺はあるアイテムを取り出す。
家から持ってきた水筒である。
「ノヴィそれ何?」
「これ? 水筒」
お風呂の水を水筒一杯に詰めて蓋を締める。上級者と言ったけど違うねこれ。仙人級だ。
「だからノヴィそれ何?」
「だから水筒。水入れる道具だよ」
「違うの。それをどうするつもりなの?」
「帰って、もう一度飲んでみようかなと」
言った瞬間、水筒をテレサに取られそうなったので、走って逃げてきた。暫く回廊には行けないかもしれない。
家にお風呂の水を持ち帰ると、ヴィヴィアンお気に入りのカップにお風呂の水を入れる。俺の予想が正しければ、彼女も同じ反応をするはずだ。
「ヴィヴィアンちょっと、この水飲んでみてくれる? 美味しいかどうか感想を知りたい」
「はい。…………あら、すごく美味しいですね」
やはりそうだ。ヴィヴィアンも美味しいと言うのである。
「こんな美味しい水、どうされたんですか?」
「サキュバスのお風呂の水」
「ブフッ────」
ちょっと美人にはモザイク入れたほうが良い絵面です。
「なっ、なんてものを飲ませるんですか!」
「でも、美味しいでしょ?」
「…………」
「美味しいでしょ?」
「……………………はぃ」
よしヴィヴィアンも仲間入りだ。彼女も引き返せない場所に来てしまった(強制的に)
次の日からこのサキュバスの風呂水を再現する為、家の中で実験を始める。防災用グッズに、水の簡易ろ過装置があった為、まずはそれを使ってみる。
結果は変化無し。
カルキか何か入ってるのかと予想。沸騰させた後、冷やして飲む。結果は少しだけ美味くなった。しかし、サキュバスの風呂水に至らない。あの美味さには届いていないのだ。
「やっぱり出汁か何か特別な汗でもあるのかね」
まさかテレサの汗を飲ませてくれ、なんて言えないしな。俺が殺されるわ。それは最終手段にしておこう。
しかし良い線は行ってる気がする。なぜなら一度火を通したことにより、美味くなったのだ。ある意味風呂と条件は似ている。風呂の水も火を通しているのである。
そして俺はふと思いついた。俺の家には風呂がある。生前のマンションがそのまま再現されている為、風呂が存在しているのである。
よく考えてみれば条件を再現できるな。
試しにお湯を四二度ぐらいにし放置。暫く後に飲んでみることにした。勿論風呂には入ってないよ。自分が入った風呂の水とか飲みたくないし。サキュバスの入った風呂の水ならいいのか? そこのところは察して欲しい。
美味さは格段にあがった。そこからちょこちょこ温度調整をしながら、風呂の水で実験を繰り返す。
そして再現される。あのサキュバスの風呂水が。
テレサの汗が欲しいとか言わなくて、マジ良かったわ。危うく一歩手遅れになるところであった。
そして第三者の意見として、ヴィヴィアンにも試しに飲んで頂く。最初、凄い嫌がってたけど、絶対綺麗な水だからということで渋々納得してもらう。味が全く同じだった為、騙されたとか泣かれたのは内緒である。
ただこれで判明した。一定の温度で炊くということがポイント。
しかし疑問に思うことがある。彼女達サキュバスには魔力水は毒なのである。勿論飲むのは言語同断。俺とヴィヴィアンが美味いということは、魔力水として純度が高いと推測されるのだ。
やはりサキュバスの風呂に秘密がある。もう一度あそこを見せてもらうしかないと確信。そしてテレサに風呂を見学させて欲しいと頼みに行った。
「絶対絶対絶対ぜーたっい、だめー! もうノヴィはお風呂に近づかないで!」
ガチで断られた。困った。最近では他のサキュバスのお姉さん達が、交代交代で見張りをしている。本格的に警戒されているのだ。
流石に本人達が本気で嫌がってる為、強行手段は取れない。
暫く悩んでいると、アイツのことが浮かぶ。ヴィヴィアンに早速お願いに行った。
「久し振りだね、セレクティア」
「ノヴィ元気になったんだね。あの時はもうダメだと思ったよ。そういえば、なんでノヴィが精神世界に?アレ?」
俺は魔神覚醒したことや、ガチで泣かせてしまったこと謝っておく。
「いいの。私も悪かったから。ごめんなさい」
うんうん。やっぱりしっかりと和解しておくべきだと思うよ本当。
「実はセレクティアにお願いがあるんだけど」
「何かしらー?」
「前に生誕潜るとき『幻透過』という秘術使ったよね?」
「使ったねー」
「実はその秘術を教えて欲しいんだよ」
セレクティアは快く引き受けてくれた。セレクティア指導のもと、幻透過の練習を始める。
しかし、これが思っていた以上に難しい。妖精は幻を得意としている種族であるらしく、それを応用した認識阻害と言われる。だが意外とその理屈とイメージを再現するのが難しい。
「やっぱり無理かな。秘術て基本的に真似できないしねー。だから秘術て言われてるのー」
「うーん。難しいな」
なんだかんだかんだで、セレクティアはやっぱりS級妖精だなと実感した。
アレだこんなときこそ、アイツが言ってくれた助言を思い出す。
【イメージしろ】
あれだ。本人が気づいていたかどうか知らないが、ヴァン◯理論である。大抵この世界、これでなんとかなるんだ。もうイメージで俺流に改造してしまおう。
セレクティアのアドバイスなどを受けていると、あるひみつ道具が浮かぶ。
青いネコ型ロボットが使っていた、ひみつ道具。
『石こ◯ぼうし』
あれ程この認識阻害の秘術にピッタリなイメージは無いだろうと思う。なんでも創造力とイメージだ。
そして俺の秘術が完成する。
(どう?)
暫く経つが反応が無い。そして実験は成功と判断し解除する。
「ノヴィ凄いよー。成功したよー!!」
そう俺は石になったのだ。この世界の石に。元々そこにあった石になるイメージを確立させた。
「ところでノヴィー」
「ん?」
「なんでそんな秘術覚えるの? もっと便利な秘術あると思うけどぉー」
言えない。サキュバスの風呂を覗く為、だなんて言えない。さっきほど秘術を完成させてた時、凄い褒めてくれたこの娘の前で、そんなことは言えない。
「きっ、企業秘密」
「ノヴィがいいなら、問題無いよー」
俺はマジカル戸棚から茶菓子を用意してあげる。セレクティアは一瞬だけ驚いたが、凄い美味しい美味しいと喜んでくれた。
こうして俺はあの桃源郷に向う事となる。心がウキウキなんてしてないよ? ほんとだよ?
次話も7/15予定




