第四十七話 妖精クエスト-後編-
如雨露クエストで分かったことがある。聖剣、あーさー、湖の姫ヴィヴィアン。このキーワードが揃うことにより、頭の中にある物語と情報が一致する。
このヴィヴィアンさん。俺の元世界、地球上で有名な『アーサー王伝説』の登場人物だったりする。
「ヴィヴィアンさんにお会いできて光栄です」
俺の態度が急変したことにより、戸惑いを見せる彼女。そして頼み込んで見せてもらったアイテムこそ、
「聖剣エクスカリバー!!」
厨二病、ファンタジーの最早代名詞となる武器である。散々出鱈目設定とか馬鹿にしてたけど、これはちょっと憧れるわ。しかし、彼女達の様子はイマイチである。
「実はこれ、壊れておりまして…………」
「OH……、なんたる悲劇……」
「あーさーが」
「こーわーしーたー」
「のー」
「さっきも言ってたねそれ。となるとアーサー王が壊したてこと?」
「あの男、剣先は勝手に潰すわ、チ◯コと同じように強く握れば何でも絞り出せる思って、私の魔力湖を枯渇させたんです!! 挙句、湖に聖剣だけ返して、自分は男とくっ付く始末!!」
ヤッベェ、ヴィヴィアンさんキレてるよ。踏んじゃいけない地雷踏んでるよこれ。てか、アーサー王てホモだったてこと? なんか事実は小説よりも奇なりて感じだよね。聞かなければ良かった真実を聞いちゃった感じ。
「前は聖剣で水やりしていたて、本当なの?」
「ほんー」
「とうー」
「なのー」
俺の場合、聖剣で水やりをしているイメージの方が想像し難い。
ヴィヴィアンが試しに、聖剣を一振りしてくれる。
何も起きねぇじゃんと思ったら、先にある大木を寸断していたのである。なんだ全然軌跡が見えなかったぞ。試しにと俺も触らせて貰うことに。
(ホモの握ってた聖剣というだけで、すごい憧れが薄れるなぁ)
バッチィものにすら見えてくる。あとで手洗おうとか、そんな事を考えながら軽く力を入れてみる。
一瞬だけ物凄い水圧の水が、プシュッと出たのである。
「何じゃこりゃ!?」
さっき剣先潰したとか言ってたのはこれかな。たしかにヤバイなこれ。兵器でいうところ、ウォーターカッター(魔力水版)という感じである。こんなんで水やりした日には、気づいたら草刈りが終わっていたということになりかねない。
人の庭の水やり道具を勝手に改造して、挙句元に戻さないで返すとか、もう◯ャイアンレベルだよ。ガキ大将だよ。
ヴィヴィアンが怒るのも無理ないと感じつつも、流石に俺にはこれを直す手段が思い付かない。剣先のどの部分を潰しているのか、皆目見当が付かない。仮に見つけたとしても、直し方が解らないであろう。
一応如雨露をプレゼントしたことにより、彼女達は満足してくれてるみたい。流石に俺もなんとかしてあげたいという気持ちがあった為、困ったときの庭先倉庫を探ってみる。
もうこれ、青いネコ型ロボットのポケットと同じ気がしてきた。暫く漁り続けてみると、散水用のノズルとホース一式を見つけた。
「あー、これでひとまず代用できないかな」
庭先の蛇口にホースを取り付ける。都合のいいことにドライバーまで見つけた。至れり尽くせりである。取り敢えず庭先からズルズルとホースを伸ばして行く。
「ノヴィ様。今度は何をしていらっしゃるのでしょうか?」
「なにー」
「しているー」
「の~?」
「ちょっと聖剣があんなんになって、可愛そうだったから、代わりのもの無いかなぁて用意してきたんだ。聖剣と比べると月とスッポンで申し訳ないけど」
「私共は先程、じょうろというアーティファクトを頂いたので、特に不便しておりませんが」
「いやいや、如雨露はアーティファクトでも何でもないから。アレはただの水やり道具だよ」
慌てふためくヴィヴィアンにノズルレバーを無理やり握らせてみる。イケナイ趣味に目覚めてしまいそうだ。
シャワー、ジョウロ、ストレート、キリと順番に切り替え方を教えてあげる。
「──────(ポカーン」
以前のようにヴィヴィアンが完全に放心してるわ。やっぱりこんなもので聖剣の代用とか失礼過ぎたか。
「ごめんごめん。やっぱりこんなの気に入らないよね。ウー、フィー、ナーの玩具にしていいよ」
「「「ヽ(゜∀゜)メ(゜∀゜)メ(゜∀゜)ノ」」」
「い、い、いっいいいけません!! このような未知の武器を貴方達が触れてなりません。これは私が責任を持って預かります」
未知の武器というか、日本だったらホームセンターで売ってるよ。銀貨一枚も出せばお釣りが来るぐらいだ。
「ずーるーい」
「ずーるーい」
「ずーるーい」
一度は手にした散水用具を直ぐに取られてしまった妖精三人組は、主たるヴィヴィアンにブーブー文句を言い続ける。
そして次の日からヴィヴィアンが散水用具で凄い楽しそうに遊んでいる姿を、毎日見掛けることになる。
滅茶苦茶気に入ってるじゃん!




