第一話 モンスターハウスだ!!
7/1 一部台詞の言い回し、改行など若干調整しました。
意識がハッキリと目覚め、ホラー要素を含んだ冗談のような状況に陥っていた。先程まで体を襲っていた筈の業火は無い。それどころか下半身から伝わるひんやりとした冷たさが、意識を一掃クリアにしていく。
思考が働いているにも関わらず、混乱している状況から逃れることができない理由は周囲にあった。周りには異質な姿の化物が多数。ちらほら人らしき姿も見えるが、この状況では本来知り得る人間達には見えない。
周囲からは驚きのような声が聞こえる。そもそも一番驚きたいのは俺だよ。
そして目の前には何やらごっつく、黒く、刺々しい格好の大きな甲冑が鎮座している。
どうみても仮装祭りとは思えないあまりに異質な雰囲気。炎に身を投げるような俺でも、動揺を隠し切れない。
「魔神様のお目覚め心より歓迎する」
狼狽える俺に対し、何やら可愛らしい声が届く。慌てて周囲を見渡す。
「召喚の際に御姿が崩壊していた為、僭越ながら妾が再生致した」
妙に可愛らしい声の主は、目の前に鎮座しているこの鎧から聞こえた。
自身の姿を確かめるようにペタペタと触り、ようやく自身が裸体であることに気づく。
(何これ。今からコイツらに喰われるの?)
近くに寄る女から、何やら布らしきものを首に巻かれる。散髪を始めるには少々笑えない状況だ。
支えられるように立ち上がると、身を隠すマントであることにようやく気づいた。
「魔神様。妾の言語は伝わるだろうか?」
「だっ、だだだ大丈夫だ」
魔人様と呼ばれている対象が俺と理解するが、自分の名前を思い出すことが出来ない。自分の名前を思い出すことが出来ないことに、新たな恐怖、ヒシヒシと焦りが生まれ始める。
先程まで通りで自殺を謀っていたこと、それは直ぐに思い出すことができる。恨みを持っていた者達の名前も思い出すことができる。
しかし、自分の名前を思い出すことができない。
思考のベクトルを変える。家族の顔、名前を思い出すこともできた。
しかし、姓が浮かばない。自分の名前に関する情報だけがピンポイントで記憶から消えていた。手当たり次第に思い出せる日本人の姓を当てはめるが、どれも記憶と一致しない。
「俺の名前が……思い出せな、い」
恐怖が呻き声になる。
「落ち着き下され、魔神様」
焦る思考を静めるよう、宥められる。
「す、すまない」
「突然のことで混乱するのも無理あるまい。妾に答えできる限りであればお話致す」
声の主が思っている以上に理性的な人であることに安堵する。
「ここは一体何処なんだろうか?」
「ここは生誕のダンジョン。妾はレアゥリティ=ロードナイトと申します。魔王を務めておる」
どうやらダンジョン最深部らしき場所に召喚されたとのこと。で、目の前にいらっしゃる世紀末覇王伝らしき方が、かの有名な魔王様らしい。
見た目は超魔王様やってるのに、妙に可愛らしい声が不気味過ぎる。
「本ダンジョンは現在全20階層で構築されており、妾が21代目を任されておる」
21代目ということは過去に20人存在していた……てことだよな?
「あのすみません。魔王様お尋ねしたいのですが……」
「魔王でもロードナイトとでも構わぬ。魔神様のほうが格上なのだからな」
この世界では魔人>魔王?のような感じらしいが、とてもであるが目の前の世紀末覇王伝な方に勝てる気がしない。少々魔法が使えたところで、目の前の人は気合だけでなんか色々吹き飛ばしそうな気がする。メ◯ゾーマでもダメージが入る気がしない。
「いえいえとんでも無い。先程、魔王様が21代目と仰られたのですが、まだ魔王様は何人もいらっしゃるのでしょうか?」
「妾が把握している範囲であれば、5人は把握しておる。知らないダンジョンが幾つか存在している為、少なくとも倍は居る」
魔王て……たくさんいるんだ。想像以上に世紀末じゃね?
「ダンジョンは魔王が制御している為、活動中のダンジョンには魔王が魔王が住んでいるという認識でよい」
なんかGっぽいな。もう強烈にヤバそうなGだけど。
そもそもなんでこんな魔王世紀末時代になんで召喚されたんだ俺は……魔王最強決定戦という文字がふと浮かぶ。
「妾は先代と先々代に比べまだ力が弱く、魔神様にお力添えを頂きたく召喚をさせて頂いた次第」
「人違いかと。一度も魔法なんて使ったことも、使える気配すら無いですから。ぶっちゃけ力も大したことないんで、むしろ弱い方です」
後になって文句を言われる前に、兎に角予防線を出来る限り貼っておく。どう転んでも死活問題になりかねないのだ。であれば、少しでもマシになるよう交渉しておくべきであろう……。
「心配するな。これから魔神様の才能、魔力などをお調べする。自信を持て」
━━━━━━━━━━━━1時間経過━━━━━━━━━━━━
「魔力容量は……残念ながら殆ど無いようですね。これぐらいの量となると魔法行使も絶望的かと」
産まれたての赤ん坊ですらもっと魔力があるとかなんとか。日本人の俺に魔力求めるとかマジやめて欲しいわ。
ガタガタな水晶玉に両掌を当てる。本来であれば光を灯し、光度で魔力強度、点灯時間にて魔力容量、光の色によって属性を判断するとかなんとか。ファンタジーだ……。最初は片手で試みるも全く反応が無い為、最終的に両手でするように勧められた。
結果は周囲からプークスクスとか笑われる始末。多少は魔力があって、ファイアーとかやりたいとか思ってませんでしたよ?
…………。
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スミマセン。本当は少しだけ期待していました。
━━━━━━━━━━━━更に1時間経過━━━━━━━━━━━━
「イヤイヤイヤイヤイヤ無理ですから。ホントマジ無理です」
目の前には爬虫類をベースにしたような、筋肉ムキムキの化物が相対している。トカゲかドラゴンが種族なんだろうが、そんな違いは些細な問題である。どちらにしろ攻撃された瞬間、二回目の人生を呆気無く終える。間違いない。
先程試しに武器を振っていたようであるが、剣の軌跡が全く見えなかった。あまりに剣速が鋭く、気づいた時には既に切られているとかそんな展開しか考えられない。
言われるがまま、剣、斧、槍、弓、大鎚等を手当たり次第に試す。訂正正確には大鎚なんて持てませんでした。
目の前のトカゲマンが武器を寸断していく。最後は体術をテストするとか言われなくて、マジ助かった。
魔王様に勧められるまま、本日の寝床に案内される。
「明日は朝食の準備ができましたらお迎えに上がります」
魔王様と角の生えたメイドが去って行く。
結果は散々であり、俺が戦力外と判断していることは容易に想像できた。
本日一番の喜び、飛び込んだ先のベッドが物凄く柔らかいということだろうか。一張羅?であるマントを脱ぎ捨て、そのまま泥のように眠りにつく。
魔人となっている箇所がありますが後程回収する単語となる為、誤字ではありません。




