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異世界の孤児園  作者: 宇佐美ときは
第一章 孤児園の日常
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第七話 迷路

 すみません、先週の日曜日、テスト期間中で更新できませんでした。連絡も出来なくて申し訳ないです……。

 わたし、高校三年生なんですよ。それで、九月に就職試験があり、部活もやっているので、ちょくちょく更新できない日が出てきそうです。ご了承下さい。なるべく、更新できるよう頑張ります!

 アト君という犠牲を無駄にしないために、ぼくたちは慎重にクッションの上を進んだ。アト君死んでないけど。

 すると、分かれ道が見えてきた。左に進むとクッションの道が終わり、普通の道が続いていて、まっすぐ進んだ先には壁があった。前は行き止まりかな。

 ぼくは左に進んでクッションから下りると、ふぅと息をついた。ちょっと疲れたなぁ。でも、落ちなくてよかった。

 一息つきながらちょっと安心していると、後ろからカイ君の声が聞こえてきた。


「もう終わりか。結構楽しかったんだけどな」


 残念そうにカイ君がジャンプしてすぐそばのクッションに着地した、その時。同じタイミングでジャンプしたラギ君が、カイ君と同じクッションに乗ってしまった。


「あ、悪い!」

「うわあ!?」


 ラギ君が謝ったと同時にカイ君がバランスを崩す。そこで、カイ君がラギ君を突き飛ばしてしまった。


「あ」

 

 カイ君が間が抜けた声を上げる中、ラギ君は奈落の底へ……ラギくーん!

 ラギ君の姿が見えなくなると、ピクちゃんがカイ君を睨み付けた。


「あー、カー君がラギ落としたー!」

「ち、違うっ! これは……仕方なかったんだ!」


 必死に否定するカイ君だけど……うん、今のはカイ君が悪いよね。仕方なかったんだろうけど。っていうか、ピクちゃんだけじゃなく、モエカちゃんの目線も鋭いんだけど……?

 怒るピクちゃんを宥め、ぼく達は少し歩く。すると、また分かれ道が現れた。左に行った先には大きな扉がある。


「あの扉、もしかしたら近道かもしれないよ!?」


 エミちゃんが扉の前に駆け寄った。そして、勢いよく扉を開け放つ。扉の先には、さっきのクッションの道があった。え~、またクッションの道行くの? もうあそこはいいよ。疲れるし。

 そう思ってぼくが右の道に行こうとした時、ガゴンッという音が鳴った。この音って!

 慌ててエミちゃんの方に目を向けると、ちょうどエミちゃんが落ちていくところだった。床にはクイズ壁の前で見たような穴が開いている。


「エミりーん!」

「エミちゃーん!」


 ピクちゃんとミニちゃんが叫ぶ。そこでまた、スターが顔を背けて悔しそうな顔をした。


「また一人、犠牲になってしまった……!」


 いや、それもういいよ。エミちゃん死んでないから……多分。

 それよりこの迷路怖っ! 改めて思ったよ。あんな罠があるんだね。

 ぼくは、罠に引っかかってくれたエミちゃんの分まで頑張ろうと思い、足を進めた。

 次に出てきたのは、赤外線レーザーに見立てた赤い糸が張り巡らされた道だった。なんで赤外線レーザーに見立てているのがわかったのかは、壁に『赤外線レーザーに三回触れたら失格』と書かれていたからだ。……三回触れたらどうなるのかな。また落ちるのかな……。


「なんか、スパイみたいだね!」


 そんな事を言いながらスターが赤い糸の道に入っていった。身体が小さいためか、すいすいと進んでいく。次にカイ君、ルークと続いた。よし、ぼくも頑張らないと。

 最初に赤い糸に触れてしまったのはルークだった。触れた途端、一瞬にしてルークの姿が消失する。


「わあ!?」


 突然の事にぼくは驚いて尻餅をついてしまい、指が赤い糸に触れてしまった。瞬間、耳元で風の音が聞こえ、気が付くとぼくは『赤外線レーザーに三回触れたら失格』と書かれたさっきの紙の目の前にいた。うわあ、瞬間移動させられるんだ。もしかして、三回触れると外に移動させられるのかな。

 ぼくはルークと視線を合わせると、頷き合ってから赤い糸の道に再挑戦した。

 結果的に、ぼくは何とか抜け出す事が出来た。けれど、ルークは三回触れてしまったらしく、ぼくが振り返ったらいつの間にか消えていた。ルーク、無念。

 ルーク以外のメンバーはみんな抜け出せたみたいで、ぼくを待っていてくれていた。

 クッションの道に赤外線レーザーの道。こう連続で来ると疲れるなぁ。次は何が来るの……?

 楽しみだけど不安な気持ちで顔を上げると、さっきのクッションみたいに宙に浮いている二本の丸太があった。今度はあの上を渡っていくのか……もっと気楽に出来る物はないの!? また緊張するじゃん!


「ソラちゃん、大丈夫?」

「うん、何とか……。ピンクちゃんは平気なの?」

「うん。楽しい、かな」

「すごいね……」


 微笑しながら右側の丸太を渡っていくピンクちゃん。ぼくもよし! と気合いを入れて、ピンクちゃんに続いて丸太に足をかけた。丸太は意外に太く、あまり落ちる心配はないように見えた。これなら、みんな落ちずに行けるかな。

 そう思った矢先、左側の丸太を歩いていたモエカちゃんがバランスを崩したのか前のめりになった。「きゃあっ」という小さな悲鳴を上げながら、前にいたカイ君の背中を押す。……結構強めに。


「ちょっ、うわあああ!?」


 よろけて前に踏み込んだカイ君はそこで足を滑らせ……さっきのラギ君みたいに奈落の底へ消えて行ってしまった。


「カイ君……。モエカちゃん、今のわざと?」

「え? ちょっとふらついてしまったから、カイ君に助けてもらっただけよ。カイ君、さっきラギ君に同じ事したのだから許してくれるわよ、ねぇ?」


 唇に指を当てて微笑みながら、カイ君が落ちていったところを見るモエカちゃん。その笑みが怖い……。今後、モエカちゃんを怒らせないようにしないと……。

 肝に銘じ、ぼくは視線を前に戻して丸太の上を進んだ。途中、丸太は枝分かれしていた。うーん、どっちが正解なんだろう? それとも、モエカちゃんが渡っている方の丸太の道が正解なのかな? ピンクちゃんはまっすぐ進んで行ってるけど。

 迷っていると右から声が聞こえてきた。


「あれ? 元の場所に戻っちゃった」


 視線を移動させると、首を傾げているピクちゃんの姿が目に入った。その後ろから、ミニちゃんが顔を出す。


「ほんとだ。あ、ソラちゃーん! まっすぐ行ってもこっちに来ても元の場所に戻っちゃうよ」

「そうなんだ。ありがとう!」


 ぼくが手を振ってお礼を言うと、ミニちゃんは嬉しそうな顔をしながら駆け寄ってきた。だけど、丸太の手前に来た直後、ガゴンという嫌な音がした。案の定、ミニちゃんの身体が落下する……。


「ひわあああ!」

「ミニたん!?」


 ああ……ミニちゃんも脱落してしまったか……。ミニちゃん、君の分も頑張るよ。

 とりあえず、こっちの丸太は間違いだね。

 左の丸太を渡って僕たち三人がスター達のところに追いつくと、二人の目の前にある長い雲梯が目に入った。次はこの雲梯を乗り越えるのか……。思った通り、雲梯の下には床がない。力尽きたら落ちちゃうって事だね……もうこの迷路に慣れてきたよ。


「ピクが最初に行くね! ミニたんの分まで頑張らないと!」


 ぼくと同じような事を思っていたピクちゃんが雲梯に手を掛ける。最初は気合いが入っていたからか、すいすい進んでいたけど、だんだんとペースが下がっていった。ついには真ん中あたりで止まってしまい……。


「もう無理! 落ちる!」


 落ちる宣言をして落ちていった。ああー、残念。

 落ちていくピクちゃんを見送った後、スターが雲梯に手を掛けた。スターなら簡単にできるんだろうなぁ。

 そう思っていたけどスターはぶら下がらないで、雲梯の上に登っていく。そして、ぼく達の方を振り返った。


「上から言った方が楽だよ~」


 ……それ、ピクちゃんが行く前に言えばよかったじゃん。隣のピンクちゃんも、呆れたような顔をしていた。

 スターにならって雲梯の上を通った後、今度はブランコが現れた。もちろん、ブランコの下には深い穴が。

 最初にスターがブランコに飛び乗り、立ちこぎして向こうの床に着地した。そのスピードと綺麗さに、思わず感嘆する。


「わあ、さすがスター」

「そう、ボクは天才なんだよ!」


 ガッツポーズを決めるスター。うん、それさっきも聞いた。

 次にモエカちゃんがブランコに飛び乗った。サイドテールに結わかれた水色の髪がふわりと揺れる。うわあ、モエカちゃんも綺麗に着地するなぁ。

 ピンクちゃんとぼくも成功させ、スターとモエカちゃんを追いかけた。さあ、次は何が出てくるのかな……って、またブランコ!?

 さっきのブランコの先の道を右に曲がったところに、またブランコがあったのだ。また飛び乗るのかぁ……結構怖かったんだけどなぁ。

 スターとモエカちゃんの二人は、さっきのように楽々と飛び乗っていった。ピンクちゃんもブランコに飛び乗り、立ちこぎで勢いをつける。そしてジャンプしようとした、その刹那。突然、前方から強い風が吹いてきた。


「わっ!?」


 ブランコがぐらぐらと揺れながら押し戻され、少しだけジャンプしようとしたピンクちゃんはそのまま落ちて行ってしまった。そ、そんなぁ! ピンクちゃんも脱落しちゃったぁ……。

 風が収まり、ブランコが止まる。ぼくも行かなきゃだよね? うぅ、落ちちゃったらどうしよう……死なないとは思うけど、怖い。しかも、落ちていくのを見ちゃった後だもん。風さん、邪魔しないでね……!

 ぼくは意を決してブランコに飛び乗った。そのまま勢いよくこいで、風が来ないうちに飛び降りる。ふ、ふぅ……よかった~、風吹かなくて。さっきの風は偶然だったのかな……?

 ぼくは小刻みに震える足を何とか動かし、先に行った二人の後を追った。すると、目の前に高い壁が現れた。半分から下には太めのロープがぶら下がっていて、上には石がはめ込まれている。これ、もしかして……。


「この壁を登れってこと……?」

「これが最後っぽいね~。ほら、あそこにゴールって書いてあるよ」


 スターに言われて顔を上げると、壁の一番上に大きく『ゴール』と書かれていた。これが最後だなんて……絶対途中で力尽きるよぉ……。

 でも、スター達はやる気満々のようで、早速ロープを手に壁を上っていった。うぅ……仕方ない、どこまで行けるかやってみよう。ここで諦めるのは悔しいし、これが出来たら少しはぼくの運動音痴も治るかもしれない。治るものなのかはわからないけど。

 ロープを両手で握り、壁に足を乗っけた。この壁、滑らないような作りにはなってるけど、ほとんど垂直だよ……。これ、本当に子供がやるようなアスレチックなの? 大人でも難しいんじゃない?

 ロープの壁を半分ぐらいまで進んだ時、下から今日何回も聞いたあのガゴンという音が聞こえてきた。恐る恐る振り返ると、ロープ下の床がなくなっているのが見えた。代わりに、大きな穴が開いている。また穴!? 手を離したら奈落の底じゃん! 床に叩きつけられるよりはマシだけど!

 恐怖に手が震える。その時、ロープにぶら下がりながらスターが声を掛けてきた。


「ソラ~、落ちたら死ぬよ~」

「うぇ!? し、死なないでしょ!?」

「だって、落ちたらどうなるかわかんないんだよ~」


 スターは手を振りながらにやりと笑みを浮かべた。


「じゃ、頑張ってね~」

「え、えぇ~!?」


 ちょっと~、なんでそんな怖がらせるような事言うの~……。

 再度下を見やる。あそこに落ちたら死ぬ……だったら、落ちなきゃ良い!

 ぼくは半分やけくそになりながら上へ上へと登っていった。

 ロープを登り終えると、今度は石がはめ込まれた壁になる。赤や緑、青色など、石には見やすい色がついてるから場所を間違えるなんて事はないとは思うけど、慎重に行こう。……なんか、崖を登ってるみたい。実際に崖を登った事はないけどね。

 壁は思っていたよりもだいぶ高く、だんだんと体力がなくなってきた。こんな状態だから止まっても全然休めないし、手が汗ばんできたから滑る可能性があるし……誰か助けて! なんであの二人はすいすい登っていけるんだろう。あ、そういえば、今まですっかり忘れてたけど、モエカちゃんって心臓病だったよね? こんなアスレチックしてて大丈夫なのかな? これ、心臓病じゃなくても心臓に悪いよ……?

 ぼくは少しでもこの恐怖から気を紛らわすため、三メートルぐらい上にいるモエカちゃんに質問してみた。


「モエカちゃん、こんな事しているけど、心臓は大丈夫なの?」

「心臓? あ、病気の事?」

「うん」

「このぐらいなら平気よ。前は、これよりも大変な事をやっていたのだから」


 これよりも大変な事? 心臓病なのに? それに、親も身体が弱かったんだよね?

 その、疑問に思った事を尋ねると、モエカちゃんは表情を曇らせた。


「それは……また今度話すわ」


 あ……聞いちゃ行けない事だったのかな。


「なんか、ごめんね……」

「いいわ。それよりソラちゃん、気をつけてね?」

「え、何が?」

「ふふっ」


 ぼくから視線を外し、壁登りを再開するモエカちゃん。気をつけてねって、落ちないようにって事かな? まあ、気をつけるけど。

 でも、モエカちゃんって不思議なオーラ出してるよね。なんか、彼女の言葉を聞くと不思議な気持ちになるんだよね。始めてモエカちゃんにあった日の夜は何故か恐怖を感じたし……。

 っと、そろそろ止まっているのに疲れてきた。早く、登り切ろう!

 数十分後、なんとかぼくはその高い壁を登り切る事が出来た。こんな軽い感じに言ってるけど、本当に大変だったんだよ!?

 でも、やっとゴールだ! そう思いきや、登った先に小さな台があり、そこに文字が刻まれていた。

 えっと……『最後の試練です。ここに三つの滑り台があります。ひとつだけが本当のゴールにつながる滑り台です。残りの二つは外れです。それでは、ひとつだけ滑り台を選んでください。ちなみに外れの滑り台に滑ると失格になります』って、えぇ!? これでゴールじゃなかったの!?

 台から顔を上げると、三つの滑り台が視界に入った。真ん中の滑り台が赤色。右が黄色。左が青色に塗ってある。この中のひとつだけが本当のゴールにつながるって……運試しじゃん! ここまで来て、最後は運なの!?


「じゃあボクは黄色~」


 スターが黄色い滑り台の前に立った。モエカちゃんがぼくに視線を投げかける。


「ソラちゃんはどうする?」

「え……じゃあ、青で」

「じゃ、あたしは赤色ね」


 二人とも、選ぶの早いな。もっと慎重に選びたかったんだけど……。

 ぼくが青色、モエカちゃんが赤色の滑り台の前に立つと、スターが声を張り上げていった。


「じゃあ、せーので行くよ! せーのっ!」


 えいっ!

 スターの合図で滑り台を滑る。うわあ、結構速い。しかも、高い! 外れだったらどうなるんだろ。

 その時、ガゴンという音が耳に入った。この音聞くの何回目なの……。ぼくはまだ滑り続けているから、スターかモエカちゃんのどっちかが外れを引いたんだろう。

 そう考えていると、ぼくの滑り台がぐいっと上に上がった。まるで、ジェットコースターの一番上に行く時みたいに。そして、上に登る坂が終わると垂直に滑り、滑り台が終わった……って、まだ地上に着いてないよ! それなのに滑り台が消えた。ってことは……外れを引いたって事? それで、ぼくは今、下に――垂直に落下してるって事!?


「う、わあああああああああ!!」


 理解すると同時に喉から声が溢れた。そして、そのままぼくは意識を手放した。



 気が付くと、ぼくは孤児園のぼくのベッドに横になっていた。どうやら、気絶してしまったぼくを園長先生が運んでくれたみたい。

 ちなみに、当たりの滑り台を引いたのはスターだったらしい。ガゴンって落ちたのはモエカちゃんだったのか。でも、ぼくみたいに気絶はしなかったんだろうなぁ。

 寝っ転がったままアスレチック迷路の事を思い返す。疲れたし、すごく怖かったけど、まあまあ楽しかったな。でも……。


 ……あの時、どうしてぼく、ゴール近くまで進む事が出来たんだろ?

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