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異世界の孤児園  作者: 宇佐美ときは
第二幕 プロローグ
34/72

第一話 病院

みなさん、お久しぶりです。

今日から『第二幕』、更新し始めます!

毎週日曜日、更新していく予定なので、これからもよろしくお願いします!

 誰かのすすり泣く声が聞こえ、ぼくはゆっくりと目を開いた。まず視界に入るのは、真っ白な天井。

 ここ、どこ?

 起き上がり、辺りを見回す。部屋には真っ白なベッドが四つあった。そのうちにひとつに横になっていたみたい。でも、なんで? それに……。

 ぼくはすぐ横にある椅子に座り、すすり泣いている女の人を見た。ベッドに突っ伏して、肩を震わせている。どうしてこの人、ぼくの横で泣いているんだろ? ……ん?


「えぇ!?」


 思わず声を上げてしまった。だって、女の人は誰かの手を握っていて、その誰かがぼくの下にいたんだもん! 慌ててベッドから下り、ぼくの下で寝ていた人を見つめる。

 寝ていたのは、肩にぎりぎり届くぐらいの短い黒髪の少女だった。ぼくが上に乗っていたのに、少女は目を覚まさないし、苦しむ表情も見せない。どこか怪我している様子もないし……この子、何かの病気? それに、この少女と女の人、どこかで見た事あるような……。っていうか、ぼくなんでこんな場所にいるの!?

 その時、部屋の中に男の人が入ってきた。男の人は女の人のそばに行くと、しゃがんで女の人の背中に手を添える。


優佳ゆうか、大丈夫か?」

「大丈夫なわけないでしょ……まだ、目を覚まさないのよっ……! 大智だいちは平気なの!?」

「平気なわけないだろう」


 女の人は優佳。男の人は大智って名前なんだ。……なんだろ。やっぱりぼく、この女の人も、男の人の方も知ってる気がする。でも、思い出せない。

 男の人は立ち上がると、近くの壁に寄り掛かった。


「さっき水無月みなづきさんと話をしてきたんだが、やっぱり水無月さんの娘さんが――を自殺に追い込んだらしい」


 自殺……!? この女の子、自殺しようとしてたんだ。それで気絶してる? じゃあ、ここは病院? なんでぼく、病院にいて、しかもこの子の上で寝てたんだろ? それにこの二人、ぼくに気づいていないみたいだし……。


「……その娘さんは?」

「今は部屋に閉じこもっているらしい。反省してるかはわからない」

「そう……」

「――は気絶してるだけなのか?」

「ええ。命に別状はないみたいだけど、やっぱり、不安で……」


 ぎゅっと、少女の手を握りしめる優佳さん。その目から涙が零れ落ちた。この子、愛されてるなぁ。高校生ぐらいかな。なんて名前なんだろ? なんか、さっきからこの子の名前が聞き取れないんだよね。


「じゃあ、俺はもう行くからな。たまには家に帰って来いよ」

「……うん」


 優しくかけられた言葉に優佳さんが頷くと、大智さんはもう一度少女の顔を見てから部屋を出て行った。すると、入れ替わるようにして大学生くらいの男の人が入ってきた。その人を見た途端、ぼくの頭に痛みが走った。

 っ……! なに……この痛み。そして、またこの感じ。ぼく、この男の人の事も知っている……?

 男の人は優佳さんと反対側のベッド沿いに行くと、女の子の頭をそっと撫でた。優佳さんが顔を上げ、驚きの表情を見せる。


勇輝ゆうき……大学はどうしたの?」

「ごめん、休んできた。――が心配だったから……」


 頭の痛みが増す。勇輝……この名前も、聞いた事ある。知っているはずなのに……思い、出せない……!


「……ありがとう。あたし、一回家戻るから、この子のそばにいてもらってもいい?」

「ああ」


 優佳さんが足下に置いてあったバッグを手に、部屋を出て行く。扉が閉まると、勇輝さんは項垂うなだれた。女の子の手を両手で握りしめ、ひたいに当てる。


「――、苛められていたの、気づかなくてごめん。まさか、あいつがお前を苛めてたなんて……」


 怒りのためか、悲しみのためか、勇輝さんの肩は震えていた。さっきの優佳さんのように。

 少しの間、何かを呟いた後、勇輝さんは不意に顔を上げた。真剣の表情で眠っている少女を見て、小さく口を開く。


「待っていろ。すぐ、会いに行く。だから――、絶対死ぬなよ」


 会いに行く? どうやって……。

 不思議に思っていると、勇輝さんはポケットから瓶のような物を取り出した。中には、薬が入っている。

 それ、危ない薬何じゃ……。

 勇輝さんは片手で少女の手を握りしめたまま、その薬をあおった。そして、ベッドに突っ伏す。

 あまりの真剣さに、ぼくは動く事が出来なかった。だけど、すぐに我に返り、勇輝さんに駆け寄った。恐る恐る首筋に手を当てる。よかった、脈はある。死んではない。じゃあ、この薬は……?

 瓶を拾って説明書の部分を見ると、睡眠薬と書いてあった。これを飲んだからって、この少女を会えるわけがない。勇輝さんは、何でこんなことを……。

 考えてもわかるはずがなく、ぼくは瓶を近くにあった棚の上に置いた。その瞬間、がちゃりと音を立てて部屋の扉が開かれた。ぼくは優佳さんが戻ってきたのかな、と視線を向け――固まった。足が震え、逃げたい衝動に駆られる。だって、この人は……この女の子は……!


『ソラ』


 どこからか、名前を呼ばれた。ぼくの前にまばゆい光が広がる。


『ソラ!』


 声の方に手を伸ばす。すると、誰かに手首を捕まれた。そのまま、引き上げられるように身体が宙に浮く。さっきまでの恐怖が嘘のように消え、穏やかな気持ちになったぼくはゆっくりと目を閉じた。

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