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異世界の孤児園  作者: 宇佐美ときは
エピローグ 悲劇は終わり、日常へ
33/72

第三十三話 暖かな空間

 すみません、前回の後書きに第三章が終わった事を書くのを忘れてました。

 午前中だって言うのに太陽が照りつける中、ぼくは大きめの鞄を肩にかけてピンクちゃんと並んで歩いていた。

 向かっているのは、ハートちゃんのお墓。ハートちゃんが亡くなった時はいろいろと大変な事があって、葬式にも墓参りにもなかなかいけなかったんだよね。もちろん、大変な事って言うのはシン君の人殺し事件の事。

 あの事件が無事解決してから三日が経った。今思い返しても、まるで夢を見ていたかのように感じられる。だって、ぼく達は殺されかけたんだよ? それで、気絶して目を覚ましたら園長先生が事件のすべてを解決してるんだもん。しかも、全員が目を覚ましたのを確認した後、シン君は実はカインって名前で、昔に弟のマオって子と一緒に殺されていた。それで幽霊になって彷徨っていた時に謎の少女と出会って、シンって名前の男の子に乗り移ってたって言うんだもん。自分と弟の敵を討った時に、人殺しを楽しいと思ってしまったんだって……信じられるわけないよね? でも、先生が嘘をつくとは思えないし、リビングにはシン君の遺体があった。アト君とピンクちゃんが、シン君が幽霊になるところを見たと言っていた。だから、信じざるを得なかった。

 そして、あの事件があったという事はぼくのこの左腕が物語っていた。腕は包帯に巻かれ、首から提げたタオルにぶら下がっている。つまり、骨折した時のような状態になっていた。シン君と戦った時、炎に焼かれたんだ。もう使えなくなったと思ってたけど、先生の治療のおかげで何とか動かせるようにはなってきた。

 スター達も、先生の治療を受けて動けるようになっていた。ピクちゃんは肋骨を折られてたし、ラギ君はナイフを掌や肩に刺してたから心配してたんだけど、大丈夫みたい。みんな元気だ。でも、一応ピンクちゃん以外は全員怪我人だから、学校は休ませてもらった。ちなみに、今日は日曜日。明日からは学校行くつもりだよ。

 自分の腕を見ながら三日前の事を考えていると、ピンクちゃんが心配そうに顔を覗き込んできた。


「ソラちゃん、大丈夫? 痛むの?」

「え? あ、ううん、大丈夫」

「ほんと? まだ怪我治ってないんだから、ついてこなくてもよかったのに」

「平気だよ。それに、家には誰もいないんだもん。いても暇なだけだよ」


 そう、今日は孤児園には誰もいない。ぼく達も含めて、みんなでかけているんだ。カイ君とピクちゃんはカイ君の妹のユイちゃんに会いに。スター、ルーク、ラギ君は先生と一緒にシン君と……カイン君、マオ君のお墓参りに。そしてロイ君とルミちゃんの二人は、シン君に爆発されてしまった工場を造ったおじさんに会いに行っていた。


「ピンクちゃんこそ大丈夫なの? ハートちゃんのお墓に言ったら、ハートちゃんの事を思い出して苦しくなっちゃうんじゃない?」

「あたしが行くって言い出したんだから、大丈夫だよ。それに、いつまでも悲しんでたらハートちゃんが安心できないでしょ?」

「うん、そうだね」


 まっすぐ前を見据えるピンクちゃんに頷き、ぼくは前方に視線を戻した。

 数十分後、ぼく達はハートちゃんのお墓の前に到着した。まずは、二人でお墓の掃除をする。それからお供え物と花を置き、線香を置いて手を合わせた。

 ハートちゃん、なかなか来られなくてごめんね。寂しかったかな? ぼく達は、ハートちゃんを殺してしまったシン君を成仏させる事が出来たよ。怪我しちゃったけど、みんな元気でいる。だから、心配しないで天国に行ってね。……安らかに、お眠り下さい。

 心の中でそう呟いてから、僕は目を開けた。その時、少し強めの風がぼく達の髪を揺らす。それが、まるでハートちゃんがぼくに話しかけてきたように思えて、ぼくはピンクちゃんを見た。ピンクちゃんも驚いたようにぼくを見つめてきた。ぼく達は視線を交わした後、しばらく空を見つめ、一緒に笑い合った。


「ピンクちゃん、ハートちゃんになんて言ったの?」

「みんな元気だよ、また来るねって。ソラちゃんは?」

「ぼくも同じ。みんな元気だから、心配しないで天国に行ってねって」

「じゃあ、今の風、ハートちゃんが返事をしてくれたのかもね」

「うんっ、そうだね!」


 ぼく達はそっとお墓を撫でた後、お供え物をバッグにしまって歩き出した。ピンクちゃんと一緒に、また来るねってもう一回言ってから。

 途中、ぼく達はレストランによって昼食を取った。それから、久しぶりに二人で買い物をした。孤児園に帰っても誰もいないし、さっきも言った通り暇だしね。だったら、遊んじゃおうって事になったんだ。

 ぼく達がよく行くお店でお菓子を買い、それを食べながら本屋さんや雑貨屋さんに入る。普段入らないお店にも寄り、二人でおそろいの物を買った。孤児園のみんなのためにお土産も買い、学校の事を話ながら店の周りをぶらぶらする。それだけでも楽しかった。

 そうしているうちに、いつの間にか夕方になった。ついさっき買ったクレープを頬張りながら、ぼく達は孤児園に足を向ける。その帰り際、偶然スター達三人を見かけた。


「スター!」

「あれ、ソラじゃん。ピンクちゃんも」

「今帰りか?」

「うん。スター達も?」

「そうだよ~。じゃあ、一緒に帰ろっか」

「うん!」


 そうして六人で孤児園の前まで来ると、今度はカイ君とピンクちゃん、そしてロイ君、ルミちゃんとも合流した。

 ぼく達は驚き、気が合うねと笑い合いながら孤児園の中に入った。そして、いつものように食卓を囲み、笑顔で夕飯を楽しむ。いつもの日常が戻ったと感じて、ぼくは久しぶりに安らかに過ごすことが出来たんだ。

 こんな暖かな空間を大事にしていこう。僕は改めてそう思ったのだった。


 ――しかし、ぼく達は知らなかった。一人の少女が動き出そうとしていたことを……。


 *  *  *


 暗い部屋の中、あたし・・・は魔法で出した映像を見ながらため息をついた。映像を消し、椅子の背もたれに身を預けて天井を仰ぐ。


「はぁ、使えないわねぇ……」


 脳裏に浮かぶのは、あたしの命令で人を殺し続けた少年の姿。今まで計画通りに進めてこれたのに、一番良いところでやられちゃうなんて、ほんと、使えない男よねぇ。せっかく、あの子の絶望した表情が見れると思ったのに、残念だわ……。

 まあいいわ。やっぱり、人を使うべきではなかったのね。このあたし自身の手で、あの子を絶望に陥れましょう。今までのは準備段階という事で。これからが本番よ。

 あたしは新たな計画を立てると、家の外に出た。魔法で炎を出し、さっきまでいた家の中に放り込む。数秒で燃え上がったその家に背を向け、あたしは夜の町を歩き出した。向かう先は、あの子がいるあの場所。


「待ってなさい。また、遊んであげるわ」


 目を細め、目的地を思い浮かべながら呟いたあたしの言葉は、静かに消えていった。

 『第一幕』 完結


 はい、第一幕が終わりました。でも、読んでわかる通り、まだ物語は終わっていません。『第二幕』に続きます。

 『第二幕』では、最後に出てきた謎の少女とソラについての話です。予定では、『第二幕』で物語すべてが終わります。『第一幕』が『上』で、『第二幕』が『下』って感じですね。

 とりあえず、『第一幕』はこれで完結です。皆さん、読んでくれてありがとうございました。これからも、よろしくお願いします!

 『第二幕』は、四月から書き始めていきたいと考えています。更新速度は変わりません。あ、でも、今まで土曜更新だったのを日曜更新には変えます。ですので、次の更新は四月五日になると思われます。

 それまで、気長に待ってくれると嬉しいです。

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