第九夜「男の役目」
洸の提案により別室へと移動した紘。なぜかユウ・ジン・慎也までがついてきた。
「で、話って何っすか?」
「うむ、洸。お前が先に……」
「いや、兄さんからでいいよ。あくまで俺のは推測だから。」
「?」
「ああ、わかった。先に言っておくがこれは、私たちが勝手に調べた事だ。」
「?、一体何のこと……」
ドサッ、と置かれたのは書類の山……ユウが溜めた書類かと思われるが実際には違う。何の話なのだろ?、紘はつかめずにいるため一枚の書類を手に取ってみる。
そこには目を疑う事が書かれていた。
「コウセイ貿易間に取引、脱税の可能あり、如月家との結婚も政略だけではなく……」
「……これって……どいう……」
「そのままの意味だ。」
「気になってね。調べてたらその情報が流れてこんでね。」
信じたくない。言葉、信じていたはずの信頼もどこかへ消えてしまった……。
ユウ・洸の言葉を信じていいのだろうかと思う紘。
「今はじんじなくていい。」
「……っ。」
「落ち着いてください。僕たちは絢さんを守りたいのです。だから……」
迷う紘。ジン・慎也はぶっきら棒でありながらも優しい言葉をかける。
「……わかった。俺はあんた達を信じない。けど、絢を守ってくれ、俺は自分のできることを……」
「んなのわかってるよ。バーカ」
「なっ!」
紘は覚悟を決め口にするがジンは小馬鹿にするように舌を出しながら言った。文句の一つ言おうとしたが……ジンの顔を見るとオッドアイだった瞳が紅く、赤い瞳に変わっていた。
「我ら吸血鬼の花嫁に手を出すものは何人たりとも」
「許さないからね」
「安心してください。全力でお守りします。」
「……あぁ。」
憎んでいた敵、けど今は頼もしい味方だ。
今は何もできないけど、必ず、この手で……
握りしめた拳に希望を込め、紘はただ祈ることしかできないが、
コンコン、と扉を叩く音が部屋に響き渡る。
「ユウ様・洸様。絢お嬢様からお話があるそうです。いかがいたしましょうか?」
扉の向こうから聞こえたのは時雨の声。突然のことに一同呆然としてしまったが、ユウの咳払いで我に返った。
「ああ、構わない。……どうぞ。」
「……はい。」
入ってきたのは絢。絢の瞳は輝いていた。
「あの、慎也さん。これはお返しします。」
「!!、どうして?」
絢は慎也からもらった(?)薬を返した。
慎也は冷静に理由を聞いた。
「私は確かに吸血鬼を憎んでいました。けど、今は……知りたいんです。皆さんの事を私たち人間ではわからないだから」
ギュっ 洸は突然絢を抱きしめた。
「あ、あの」
「どうして君は、お蝶に似ているんだ。……あの時も……」
洸が言うあの時とは、蝶が今の旦那と結婚する前……
「私、結婚するの。」
「お蝶……」
「ごめんなさい、せっかく洸様と一緒になれるのに……」
「もういいんだ。」
「本当にごめんなさい。……洸様と同じ景色を見れると思いましたのに……」
「(同じ世界……確かに)君と同じ世界を見たかった……」
叶えたかった願い、叶えられなかった想い、洸は今やっとその思いを果たすことができた。心の声が、頭の中を駆け巡った。
「すまない。少し嬉しくて。 またその言葉を……」
「……皆さんの見ている世界を……私も見てみたいです。」
絢は泣きそうな声で話してくれた。辛い思いを消し去ってくれるように……
洸はずっと抱きしめていた。
「さて、時間が時間だ。姫君・紘殿今日は泊まっていきなさい。」
やっと落ち着いたところで帰ろうとしていたが、外は夜に……
こんな時間に返すのも失礼だと思い、ユウは提案した。(なんとなく下心、ありありの発言だが……)
「え”?」
「で、でもご……め……」
「おっと。」
当たり前の反応を返すが、突然、絢が倒れ皐月がすばやく受け止めた。心配するユウ達……
絢は、スースーと寝息を立てて眠っていた。
「今日は色々あったからね。皐月申し訳ないが客室に。」
「はい。わかりました、洸様。」
皐月はヒョイと絢を姫様抱っこし、客室の寝室へ運んで行った。
カッカッと廊下を歩く皐月。
月明かりに照らされ何故だか、何かが込み上げてきた。
この感情は何だったのかわからないが、この手を離したくない。以前もそう思ったはずなのに……何故、あの時離してしまったのだろう?と後悔ばかりしてしまう。
「だけど、ジンや慎也の、あの気持ちは嬉しかったな……。」
誰もいない。眠っている絢には聞こえない。皐月はただ、自分の思っている言葉を吐き出した。誰も返事を返さない、そんな中で……
カチャカチャと音が静かに響く中 ガチャン!! と似合わない音が響いた。
「……す、すみません。」
「いいえ、かまいせん」
「たくっ、へたくそだな。お前は。」
「うるせっ。」
「ジン、余計なこと言わないの。」
「んだよ。喧嘩売ってんのか?慎也」
「そんなわけないだろう?馬鹿ジン。」
「んだっと!ちび慎也!」
静かに食事していたはずなのに、いつの間にか喧嘩モードに突入していた。んでもって、物を投げ合いにまで発展していた……
「ジン・慎也!いい加減にしなさい!」
と、ユウが叱るが二人はお構いなしに喧嘩を続ける。そこへ、ガチャと皐月が戻ってきたが……
「只今、戻り……」
バシャ!とカスタードパイが皐月の顔に炸裂。ベシャと床に落ち……
「……誰が……投げたんだ?ジン?慎也様?」
「あ……」
「り、臨也」
「誰が、食べ物を投げてもいいといいましたっけ?」
「え、えっと……」
「わ、わりぃ。……臨也」
「反省の色がねぇ……わかってんのかーー!!」
「わぁあああああああああ!!」
笑顔のような笑顔じゃない皐月に怯えるジン・慎也。助けを求めるが狭雲・紘以外は無視し、食事をしている。
皐月の殺意を感じ、ジンと慎也は逃亡した……
「まてぇやーゴラァー!」
「いいんですか?」
「大丈夫だ。」
「いつもの事だから。」
心配する紘とユウと洸は笑顔で返す。
日常茶飯事だというが……客人は驚くだろう。
それでも紘は引くような感覚の中受け止めた。なんとなく今回の事を任せてしまったが大丈夫なのだろうかと、心底心配する紘だった。
思いついたNG.
「こ、これは」
「コウセイ親子不穏な動きあり、次号をお楽しみに!」
「って、なんだこれ!」
「あれ?兄さんちゃんと目を通したの?」
「いや、私が書いた。」
「親父……」
「殴ってもいい?」
です。滅多に思いつかないネタでした。




