第八夜「覚悟」
「声かけーー絢!」
紘の声が聞こえたと思ったら、絢の体には一筋の赤い亀裂がはいる。
突然のことに周りは悲鳴と逃げ回る事しかできない状態だ。
「絢!絢しっかりしろ!」
「………こ、紘。……に、逃げて。」
「!、---っ。」
意識が薄れていく中、絢は紘に逃げるように言うが切りつけてきた犯人が紘の後ろに立ち刃物を振り下ろそうとしていた。紘はギュッと絢を抱きしめ……
がっ!
「……え?」
痛みもなく上から音が聞こえ、見上げると一本の刀が刃物を止めていた。次の瞬間、目にも止まらない速さで時雨が戦ったいた。
「あいつ!」
「大丈夫かい?草津君。」
「!、あんた達!」
「とりあえずここは危ないから、離れようね。時雨の間合いに入ると死んじゃうから。」
「え?」
紘に声をかけたのは松風。最後に言った言葉がわからないが、それはすぐに分かった。
戦う姿が誰かに似ていた、電光石火の如し、戦場の敵を倒した、伝説の「黒の流星」
紘は時雨の戦う姿に見とれてしまうが……チン!という音に我に返る。
「お疲れ様です。時雨、相手は?」
「大丈夫だ。この通り気絶を……」
戦いに勝利した時雨。倒した相手を引きずるように松風の元へと連れてきたが……
“捕捉!捕捉しろ!”
“捕捉!犯人二人を捕捉!”
「は?」
そこへ警察が到着したが時雨までもが逮捕されてしまった……
“怪我人を三名保護しました!”
「って、おい!俺は違う!離せって!松風!」
「はいはい。」
遠巻きに見ていた松風に助けを求めていた。
騒ぎの声に目が覚めたのか、絢の意識が戻った。
「紘……?」
「!、絢!大丈夫か!」
「「!」」
紘は自分の来ていた上着を脱ぎ、絢の怪我したところを止血しようとするが、絢はそれを止める……。
「絢!?」
「大丈夫……もう怪我は治ってるから……」
「はっ?何を言って………本当にないのか?」
「うん。紘……今のうちに、私を殺して……」
「っーーー、絢……そんなこと……言うなよ……絶対にもう、言わないでくれ……」
愛する人から殺し(あい)の言葉……紘は泣きたい気持ちを抱え、絢は強く抱きしめた……
それから数時間後、警察の事情聴取がやっと終わり、ユウ達が屋敷で待っていた……。
「どうぞ、緑茶ですよ。」
「すみません……」
客室では気まずい空気が流れていた。紘は何も喋らなかった、ただ、絢の手を握っていた。
ばたばたばたた、ガタン ガンガン バン!
奇妙な音を立てて入ってきたのはユウとジン・慎也に洸、皐月、狭雲だった。
「姫君!大丈夫かね?姫君が襲われたと聞いて私は……」
「どけ!おい!大丈夫か?傷が痛いのなら俺……がフッ!!!」
真っ先のユウは絢の手をとり上目遣いで絢を見るが、ジンのひとけりにより、止められしまった……。今度はジンが絢に近づき首に噛みつこうとするが慎也のハリセン攻撃に撃沈により、二名瀕死。
慎也の後ろからため息をつきながら、洸が心配そうに紘と絢を交互に見るが……
「何かあったのかい?」
「……えっと……」
「……どうしたら、どうしたら絢は元に……戻るんだ」
「「「「!」」」」
絢はどう答えればいいのか、迷ったが、紘は今にも泣きそうな声を殺し“元に戻る”そういった。
この言葉にユウ達は何か感じた……
「……正直に言うと吸血鬼から、人間へ戻る方法はない。」
「洸……」
「吸血鬼になってしまった人間を殺す……しか手はない。」
「--っ。」
「……(紘……やっぱり無理なのか…)……」
“方法はない”その言葉に詰めを感じ、またしても黙ってしまうが……。
「一つだけなら……あります」
「え?」
「慎也?」
「僕とジンで、まだ未完成の薬があるんです。」
「薬だと!?」
「慎也様?」
慎也は確信があるように話し出す。 ひそかにジンと慎也は吸血鬼から人間に戻る薬を開発していたが、まだ未完成品。
小さな瓶を絢の元へ持っていく慎也。
「本当は臨也や彰のために作ったんだ。もちろん時雨や松風の分も用意しようと思ったんだ。」
「けど、彼らは望んではいないかもしれない。それに人体に何かあったと考えたらやめてしまったんだ。研究も全て………」
コトっとテーブルの上に置く。ジンと慎也は思いつめたように悲しげな顔していた。
「--っ、絢に実験台になれっていうのかよ!」
「んなわけねぇだろう!」
紘は頭に血が昇っているせいか、“実験台になってくれ”と言っているように聞こえた。 ガっ!
紘の言葉にキレたのかジンは壁を叩く。ぱらっぱらっと粉々になった壁の破片がおちていく。
「ジン!」
「俺達だって、何度もやってきたさ!けど……」
「っけど、このために無意味な人間を犠牲にしたくないんだ。君が決めるんだ。これは君の人生なんだから」
「っーーー、はい」
止めようとするがジンの手には血で滲んでいた。ぎりっと噛みしめていた。もし、もし無意味に人間を巻き込めば、その人の人生を大きく変えてしまうだから、研究も全てやめてしまった。
慎也は絢にたくしたが、絢も迷っているが、ただ手を握りしめていた。
それを察したのか洸はユウと何かを話していた。
「紘殿」
「?」
「少し話がしたいことがある。ついてきてくれないか?」
「けど……」
「それがいい。絢はゆっくり考えるには丁度いいじゃねぇか!」
「ハァ、ふざけん……」
「さぁさぁ、急ご。」
「な!はーなーせー!」(怒)
洸の提案により別室へと移動する。部屋に残っているのは、皐月・狭雲・時雨・松風……絢だけだった。
「まさか、慎也様がそのようなことを考えていたとは……」
「大人だなーー」
「……大丈夫ですよ、絢様。」
「……ええ、そうですね。」
不安が積もる中、松風が優しく微笑んでいってくれた。
絢は祈るように目を伏せた……。
一方、紘たちは?
「--っじゃああの親子が!」
「しっ、声が大きいって。」
「今の段階でだ」
「どうかこの件を僕たちに任せてほしいんだ。」
「でも、でも。だったら!」
「「「「!?」」」」
少しずつ変わりゆく日常。
元の日常に戻れるだろうか……




