託されたもの・7 ~his lament~
状況は芳しくない。
良くないどころか、最悪のケースへ転がっていこうとしている。止める手段は既に用意してあった。しかし、これが明るみに出ることで自分の立場が一転するかもしれない。
できれば、最後の最後まで取っておきたい。
「ミリエランダ、王女」
憎々しげにその名を呟く。
アレクセルといい、ミリエランダといい、絶妙のタイミングで邪魔をしてくれるものだ。おかげで一度、全ての目論見が表沙汰になる危険を冒してしまった。
失敗は繰り返さない。
似た者親子であるなら、傾向と対策は難しくない。今度こそ、確実に望むものを手に入れてみせる。それが悲願にして、唯一。
「私は、認めない。絶対に!」
この国は呪われている。
皆がそれ知りながら、目を背けてきた真実がある。特に王族は最も罪深い者たちだ。神によって裁かれねばならないのに、神の代行者を気取っている。神聖騎士団は彼らに、騙されているのだ。
王立騎士団はかつて、真実を示そうとした勇気ある者たちの末裔だ。
しかし巧妙な策によって、何もかもが隠ぺいされてしまった。忌むべきことであり、とても嘆かわしい過去だ。ゆえに、正されなくてはならない。
「そのための、鍵だ。鍵が必要なのだ」
王冠とは別に、国王から国王へ伝えられる秘宝らしい。
アレクセルは奔放な性格だったが、馬鹿でも阿呆でもなかった。その証拠に、シクリアは建国史上最も発展し、栄華の極みにある。大陸の辺境で、小国に甘んじているのが不自然である。そういう意味で、アレクセルは国王として相応しくなかった。
大事なものを常に肌身離さず持っているという点も、人間味がありすぎて駄目だ。
偽りながらも神の代行者を名乗るなら、そうあるべきではない。ゆえに、アレクセルは死んだのだ。殺されるべき運命にあった。これは定められたことだ。
「そうだとも」
強く頷き、腰から剣を抜いた。
数えきれない血を吸ったとは思えない輝きが、見る者を魅了する。あるいはおびただしい血を浴びたからこそ、このように美しいのかもしれない。少なくとも、自分のような小者が持っていて良い剣ではなかった。
「お返しするとも。そう遠くない未来に」
自分はまた彼の前に、膝をつくだろう。
最上級の敬意と忠誠をこめて、永劫の誓いを果たすだろう。
その瞬間のために、生きている。たとえ叶わない夢だとしても、いい。どんな手段を使っても『アレ』だけは手に入れる。その結果、王族よりも罪深い者になってしまったとしても――。
描いた夢のために、自分はここに在る。




