2話 厳しい状況
「」が寧々さんのセリフ
『』が遼のセリフにしました。
突然声をかけられた僕は振り向き視線の真ん中に寧々さんを捉えたまま動けないでいた。しかし、寧々さんはそんな硬直状態なんてお構いなしに距離を詰めてくる。2人の距離が大体7mを切った頃にようやく体が言うことを聞き、動き始めてくれた。その事実を確認した瞬間に僕は全力で寧々さんから何故か逃げ始めてしまった。
寧々さんの総力をもってしたら7mのアドバンテージなんて、あってないようなものだった。ローファーを履いているとは思えない速さで距離詰められ、ついには追いつかれてしまった。結局僕は、寧々さんと共にお家に帰ることになってしまった。その道の時に僕は寧々さんに「何故僕の指揮が上手いと思ったの?」と聞いてみた。彼女の返答次第では指揮者辞退を明日にでもお願いしようと思った。彼女は「貴方が指揮者の中で一番音楽を体で表現しようとしていた、確かに動きは少し可笑しかったけど合唱祭と言う行事への本気度は伺えたから?とでもいいの??」と、何か不満げに言ってきた。しかし、寧々さん少し顔が赤くなっていた。顔が赤い理由も、不満げな理由も、何を言ってるのかも、僕には何一つわからなかった。本気度が伺えた?そんなわけがない。本当は本番中も逃げたいと思っていた。でも、寧々さんに突然褒められたのが本当は嬉しかったので、辞退は見送ることにした。その後は何か記憶に残るわけではないような普通の会話をして、2人はそれぞれの家に帰って行った。
その翌日から、放課後で指揮者と伴奏者でリズムや曲想の擦り合わせ作業が始まった。各クラスの音楽の土台を作る時間なのでとても大事な時間だ。この時間は割と自由度が高いので実質1:1のトークタイムだ。今日の擦り合わせ作業が終わると、「櫻葉くんって好きな女の子とか、タイプって何なのー?」と聞いてきたので、冷静に『うーーん…恋愛とか興味ない?て言うかーみんなと仲良くできたらいいなって』「寧々のタイプは、とにかく優しい人!」『優しいのは確かに大事だとは思う』「櫻葉くんはみんなにモテてるんだよ?私もそのうちの1人だしね。」…時が止まった。そんなわけがなかったからだ。意味がわからなかった。僕が寧々さんに好意を抱かれているだと?…この瞬間に僕の中で一つの仮説が生まれた、それは“寧々さん罰ゲーム告白説”だ。そうでなければ意味がわからない。僕が信じられるのは何かのゲームで負けた寧々さんが、罰ゲームとして僕に嘘の告白をしてきたのではないかと言う説だ。これ以外なら信じられない。『急にどうしたの?嘘の告白?そう言うのちょっとやめて欲しいかな。』少し悲しげな感情を混ぜて伝えたつもりだったが、怒りの感情が思ってよりも強く出ていたみたいで、寧々さんは少し驚いていた。そして目頭を熱くして教室から飛び出して行ってしまった。あの説以外にないと思っていた僕には飛び出した理由がわからなかった。




