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1話 指揮者

大学生の男の子が高校生活で起きた、奇跡のような恋愛のお話!

 僕は大学3年生の櫻庭遼。

 今から僕が高校生の時に体験した、とっても甘酸っぱくて、本当に自分の人生かと疑ってしまうことを思い出そうと思う。思い出そうとするだけでニヤけてしまう。


 高校1年生の時、学校の行事としてあった合唱祭でクラス推薦により「指揮者」としてみんなをまとめる立ち場になってしまった。勿論指揮者なんてやったことは無いし、何か音楽系の習い事をやっていた経験もゼロだった。そんな僕が突然指揮者として覚醒して!…なんて夢物語は僕の身に起きるわけがなかった。とんでもなく硬い体で音楽を表そうと頑張っていたが、ロボットダンスと揶揄されて同学年のみんなに馬鹿にされた。この合唱祭には指揮者以外にも「伴奏者」という、ピアノで音楽を彩る人もいた。その人なら馬鹿にしないだろうと思っていたが、伴奏者の人にも馬鹿にされてしまった。僕の豆腐メンタルはもう悲鳴をあげていたが、ここで逃げることなんて許されるはずがなく、できる練習から初めていった。

 そんな辛い日々を乗り越え遂に、合唱祭当日を迎えた。僕たちのクラスは1学年に2クラスしか得る事のできない、優秀賞なんて取れるはずがないと、ここにいるみんなが思っていただろう。しかし…!!なんてことはやはり起きなかった。合唱祭の主役になることなんてできなかった。僕の指揮者としての短い人生はここで幕が降りた、と思った。


 2年生になり、また合唱祭の時期が近づいてきた。僕は体が震えていた。昨年度の悪夢が蘇り、どうしようもなくなっていた。そんな僕に神様からのせめてもの救いだろうか、トドメだろうか、もう一度「指揮者」をやらないか?と先生に言われてしまった。本当に嫌だったので、全力で断ったつもりだったが次の日に先生が

「このクラスの指揮者は櫻庭だ!」と言いやがったので、半ば強制的に今年も悪夢を見ないといけなくなったなーと全力で思った。それと同時に伴奏者の発表もあった、今年僕のせいで賞の可能性が消えてしまった人は、誰だろうと、心配しながら聞いていたら先生は確かにこう言った。「伴奏者は桜井寧々さんに任せようと思う!」

僕は本気で耳を疑った。学校の中でも群を抜いた容姿端麗な美少女で、スポーツ万能、秀才で、全てのステータスがマックスに近いような人だ。よくよく思い出せば、昨年も違うクラスで伴奏者をやり、賞を勝ち取っていた。順当っちゃ順当だ、しかしだ、僕がまともに桜井寧々という人に関わったことは、ほぼない、2年生になった最初の席でさくらの漢字違いだねー、と言う他愛もない?会話をしたくらいだった。

 その日のお昼休み「指揮者が櫻庭さんなら、今年も安心ね。」と天使のような笑顔と、優しすぎる声で話しかけてきたのは寧々さんだった。僕は申し訳なさそうな声で寧々さんにこう言い返した。

「僕の指揮がどんなものなのか去年見てたよね…、あのロボットダンスだよ…?ちょっと2年連続受賞は僕のせいで潰れたかな…ほんとごめんね。」しかし寧々さんは「そんな弱気なの?見返したいとは思わないの?少なくとも去年の私は、あなたの指揮を見て素直に上手な指揮だと思ったわよ。」と言ってきた。正直僕は寧々さんが人間違えをしているのではないかと思ってしまった。


 その日の帰り道、絶望と責任感で落ち潰されそうになっていた僕の後ろから、お昼休みにも聞いた声が飛んできた。「櫻庭くーん、私と帰ろー!」もう一回自分の耳を疑うとは思っていなかったが、一応疑った。しかし、やはり声の正体は寧々さんだった。

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