それから 2/3
公式ウェブサイトのリニューアル案はまだ固まっていない。
ヘッダーは背景画像を使わないで濃いグリーンにする。左端に白抜きのロゴ。大きなカテゴリータブでショッピングと企業情報を切り替え。買い物カゴのアイコン、メールのアイコン、お買い物方法のアイコンを並べる。テキストを添えたらいい。いつかはここにセキュリティシールを貼りたい。それにしても、たくさんアイコンを並べたら見にくいなあ。お買い物方法はここでなくてもいいのでは。モードで内容を変えるか。もしお客様が違うところに迷い込んだらどうするの。モードがわかるようにするにはどうしたら。お客様の前に自分が迷子になりそうだ。
初期のホームページ以来ずっと使っているパンくずリストも健在だ。迷子防止機能は強いよね。でもこれヘッダーやサイドメニューと内容が重なってるところがある。リッチにしてみたらどうだろう。動的に内容が変わるとか。でもでもそんなの無理だよね。ブラウザを信頼してはいけない。ブラウザは敵。ちゃんと軽いのがいい。内容の重複はだめなことだろうか。気にしなくていいのでは。でも気になる。
ページ全体は白い紙のようで、大きめのマージンで要素を配置する。これはいいよね。紙の会社だもの。しおりを挟んだり、赤マルで強調してみるのも面白い。うーん。やりすぎは良くなさそう。
フッターはヘッダーと同じイメージで、重みを付けるため高さを確保。記載内容は簡略な会社情報とその英語版。英語が必要かどうかわからないけど社長の指示だ。ここはこのままでいいでしょう。
社長から与えられている課題はもうひとつ。卸売のお客様、問屋や小売店へのメッセージやお知らせのページを作ること。企業情報からそのページに行けるようになってるけど、大事なことならトップページから見える場所に置くべきとも思う。フッターにリンクを置くか。それじゃあ意味ないね。もし上のほうにリンクを置くとしたらどうやる。あ、そうだ。企業情報のカテゴリータブと関係があるように見せたらいいんだ。
視線が散る。導線が交わる。私はアラクネ。
椅子から立ち上がり深呼吸をする。PowerBook 1400cs の画面にはカラフルなミミカキエディットのウインドウ。周囲にはテキストクリッピングが散らばっている。考えていたら喉が渇いた。性能に不満がないのは本当。だけど画面がもっと大きければはかどると思う。やっぱり iMac G3 買ってもらおう。何色がいいかな。
そろそろ試作してみんなの意見を聞こう。PowerBookと裕太さんのThinkPadでプレゼンしよう。やっぱりカード決済欲しかったな。
ネスカフェを作りに給湯室へ向かうと、社長と島田君がないしょ話をしていた。
「工夫して作り込んできた部分が標準になるのはいいな。安定性もあるみたいだ」
「ファイルを変換しなきゃならないんですよね。大丈夫ですか」
「海外のフォーラムでは問題の報告は見当たらない。でも楽観はしない」
「日本語版だけの問題が起こることも考えられます。Y2K問題もありますから悩みますね」
「あわててアップグレードしなくてもいい。機械の更新が難しいんだから」
「まずNT機はどれも問題ありません。それから工場のV166/S7は64MBだと軽快ではないと思います。Excelでやってる資材管理をFileMaker化するつもりなんですよね」
「工場では在庫と出荷見込みから生産計画を作るのと、そこから未来の資材在庫を計算するのをやってる。まだまだ形にならないからExcelのままだ。変更しなくていい」
「共用のV10はどうします」
「VALUESTARの新しいのを専門家に勧められた。もし更新するならV10は工場の3台目にしよう」
FileMaker Pro のバージョンアップの話だ。海外ではすでに発売されていて日本語版ももうすぐらしい。せっかくだから会話に参加してみよう。
「新しいFileMakerってウェブページの書き出しはどうなんでしょう。Macで別管理しているネットショップ用の商品説明や画像も本体のデータベースに入れられるんですか」
「レコードのエクスポートは変わらないんじゃないの。それから説明文はともかく写真はシステムを壊しかねないです」
「じゃあ発売されたら試してみましょうよ。どうせまたパソコン買うんでしょ」
「ファイル名だけじゃだめなんですか」
棚田さんがネットチームの横で文化堂の開店準備をしている。比野文具は安売りを叱られ、もうしないと約束してしまったけれど、文化堂さんはそんなの関係ないからどんどんやる方針だ。コーヒーカップを手に持って帰ってきたら、棚田さんがかおりちゃんに質問をしていた。
「FFFTP で ftp.rakuichi.co.jp/bunkado/ に接続するんですよ。それから opensale.gif をアップロードします」
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/
├── index.html
├── sale.html
├── banner.gif
├── image/
│ ├── item1.jpg
│ ├── item2.jpg
│ └── opensale.gif
└── temp/
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「それからタグはこんな感じです」
<img src="http://www.rakuichi.co.jp/bunkado/image/opensale.gif" width="468" height="60" alt="開店セール">
「なるほど。HTMLもこうやって入れ替えができるのですか」
「できますけど、私はやってなかったです」
「それはどうしてでしょう」
「ページを差し替えても登録した価格は変わらないのです。ひとつずつ手作業で変更します。時間差ができますし、変更し忘れがあったら怖いなと思いまして。あ、それから画像のパスは絶対パスにするって教わりましたよ」
「絶対パスにする理由は規則じゃないの。ミスった時に致命的な壊れ方をさせないためだよ」
「そうだったんですか」
「それとメルマガに流用しやすくなる」
「真子さんは休憩ですか」
「はい。すこし頭を休めて考えをまとめようかと」
「手が空いているなら、すこしだけ教えていただけませんか」
「いいですよ」
「真子さんとかおりさんの制作を拝見して気が付いたのですが、HTMLの書き方がだいぶん違いますね」
「そうですね。棚田さんは楽々の書き方で良いと思います。そうすれば他のお店の店長と会ったときに話が合うから」
「かおりさんや楽々の書き方はこうですね。真子さんの書き方だとどうなりますか」
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<b>
<font color="#FF0000">
<font size="+2">
開店セール
</font>
</font>
</b>
<br>
----------------------------------------
「私ならこうです」
----------------------------------------
<style type="text/css">
body {
font-size: 12px;
color: #333333;
background-color: #FFFFFF;
}
.sale {
font-size: 24px;
color: #CC0000;
font-weight: bold;
margin-bottom: 8px;
}
</style>
<div class="sale">開店セール</div>
----------------------------------------
「本にはこんな書き方も載っていました」
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<div style="font-size:24px;color:#CC0000;font-weight:bold;">
開店セール
</div>
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「秋葉原IBMプラザでホームページ・ビルダー 2000 を触ってみたのですが、あのソフトから出てくる HTMLは楽々の書き方に似ていました。やっぱりそっちが正しいんじゃないかって思ったんです」
「正しいかどうかの問題ではないと思うんですよ。私たちがしたいのはお客様とお話しすることです。でもインターネットでは、機械を通してでしかお話しできないんです。人にも機械にも優しい言葉を探してるんです。私もそのために毎日勉強をしています」
「なるほど、そういうことならよくわかります。ありがとうございます」
「棚田さん。この調子で作っていけば、開店には十分に間に合いますね。開店セール後にお願いしていた相互リンクの件はどうなりましたでしょう」
「私は良いと思います。でも弊社の社長がまだうなずいておりません。あの方も自信満々で出店を決めたわけではないのです。着陸船に置いて行かれないように、一歩ずつ月面を歩いているのです。最後には正しい結論を出します。もうちょっと待っていてください」




