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流星マスター  作者: TSUJIMO


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75/84

それから 2/3

公式ウェブサイトのリニューアル案はまだ固まっていない。


ヘッダーは背景画像を使わないで濃いグリーンにする。左端に白抜きのロゴ。大きなカテゴリータブでショッピングと企業情報を切り替え。買い物カゴのアイコン、メールのアイコン、お買い物方法のアイコンを並べる。テキストを添えたらいい。いつかはここにセキュリティシールを貼りたい。それにしても、たくさんアイコンを並べたら見にくいなあ。お買い物方法はここでなくてもいいのでは。モードで内容を変えるか。もしお客様が違うところに迷い込んだらどうするの。モードがわかるようにするにはどうしたら。お客様の前に自分が迷子になりそうだ。


初期のホームページ以来ずっと使っているパンくずリストも健在だ。迷子防止機能は強いよね。でもこれヘッダーやサイドメニューと内容が重なってるところがある。リッチにしてみたらどうだろう。動的に内容が変わるとか。でもでもそんなの無理だよね。ブラウザを信頼してはいけない。ブラウザは敵。ちゃんと軽いのがいい。内容の重複はだめなことだろうか。気にしなくていいのでは。でも気になる。


ページ全体は白い紙のようで、大きめのマージンで要素を配置する。これはいいよね。紙の会社だもの。しおりを挟んだり、赤マルで強調してみるのも面白い。うーん。やりすぎは良くなさそう。


フッターはヘッダーと同じイメージで、重みを付けるため高さを確保。記載内容は簡略な会社情報とその英語版。英語が必要かどうかわからないけど社長の指示だ。ここはこのままでいいでしょう。


社長から与えられている課題はもうひとつ。卸売のお客様、問屋や小売店へのメッセージやお知らせのページを作ること。企業情報からそのページに行けるようになってるけど、大事なことならトップページから見える場所に置くべきとも思う。フッターにリンクを置くか。それじゃあ意味ないね。もし上のほうにリンクを置くとしたらどうやる。あ、そうだ。企業情報のカテゴリータブと関係があるように見せたらいいんだ。


視線が散る。導線が交わる。私はアラクネ。



椅子から立ち上がり深呼吸をする。PowerBook 1400cs の画面にはカラフルなミミカキエディットのウインドウ。周囲にはテキストクリッピングが散らばっている。考えていたら喉が渇いた。性能に不満がないのは本当。だけど画面がもっと大きければはかどると思う。やっぱり iMac G3 買ってもらおう。何色がいいかな。


そろそろ試作してみんなの意見を聞こう。PowerBookと裕太さんのThinkPadでプレゼンしよう。やっぱりカード決済欲しかったな。



ネスカフェを作りに給湯室へ向かうと、社長と島田君がないしょ話をしていた。


「工夫して作り込んできた部分が標準になるのはいいな。安定性もあるみたいだ」

「ファイルを変換しなきゃならないんですよね。大丈夫ですか」

「海外のフォーラムでは問題の報告は見当たらない。でも楽観はしない」

「日本語版だけの問題が起こることも考えられます。Y2K問題もありますから悩みますね」

「あわててアップグレードしなくてもいい。機械の更新が難しいんだから」

「まずNT機はどれも問題ありません。それから工場のV166/S7は64MBだと軽快ではないと思います。Excelでやってる資材管理をFileMaker化するつもりなんですよね」

「工場では在庫と出荷見込みから生産計画を作るのと、そこから未来の資材在庫を計算するのをやってる。まだまだ形にならないからExcelのままだ。変更しなくていい」

「共用のV10はどうします」

「VALUESTARの新しいのを専門家に勧められた。もし更新するならV10は工場の3台目にしよう」


FileMaker Pro のバージョンアップの話だ。海外ではすでに発売されていて日本語版ももうすぐらしい。せっかくだから会話に参加してみよう。


「新しいFileMakerってウェブページの書き出しはどうなんでしょう。Macで別管理しているネットショップ用の商品説明や画像も本体のデータベースに入れられるんですか」

「レコードのエクスポートは変わらないんじゃないの。それから説明文はともかく写真はシステムを壊しかねないです」

「じゃあ発売されたら試してみましょうよ。どうせまたパソコン買うんでしょ」

「ファイル名だけじゃだめなんですか」



棚田さんがネットチームの横で文化堂の開店準備をしている。比野文具は安売りを叱られ、もうしないと約束してしまったけれど、文化堂さんはそんなの関係ないからどんどんやる方針だ。コーヒーカップを手に持って帰ってきたら、棚田さんがかおりちゃんに質問をしていた。


「FFFTP で ftp.rakuichi.co.jp/bunkado/ に接続するんですよ。それから opensale.gif をアップロードします」


----------------------------------------

/

├── index.html

├── sale.html

├── banner.gif

├── image/

│ ├── item1.jpg

│ ├── item2.jpg

│ └── opensale.gif

└── temp/

----------------------------------------


「それからタグはこんな感じです」


<img src="http://www.rakuichi.co.jp/bunkado/image/opensale.gif" width="468" height="60" alt="開店セール">


「なるほど。HTMLもこうやって入れ替えができるのですか」

「できますけど、私はやってなかったです」

「それはどうしてでしょう」

「ページを差し替えても登録した価格は変わらないのです。ひとつずつ手作業で変更します。時間差ができますし、変更し忘れがあったら怖いなと思いまして。あ、それから画像のパスは絶対パスにするって教わりましたよ」


「絶対パスにする理由は規則じゃないの。ミスった時に致命的な壊れ方をさせないためだよ」

「そうだったんですか」

「それとメルマガに流用しやすくなる」


「真子さんは休憩ですか」

「はい。すこし頭を休めて考えをまとめようかと」

「手が空いているなら、すこしだけ教えていただけませんか」

「いいですよ」


「真子さんとかおりさんの制作を拝見して気が付いたのですが、HTMLの書き方がだいぶん違いますね」

「そうですね。棚田さんは楽々の書き方で良いと思います。そうすれば他のお店の店長と会ったときに話が合うから」

「かおりさんや楽々の書き方はこうですね。真子さんの書き方だとどうなりますか」


----------------------------------------

<b>

<font color="#FF0000">

<font size="+2">

開店セール

</font>

</font>

</b>

<br( )>

----------------------------------------


「私ならこうです」


----------------------------------------

<style type="text/css">

body {

font-size: 12px;

color: #333333;

background-color: #FFFFFF;

}


.sale {

font-size: 24px;

color: #CC0000;

font-weight: bold;

margin-bottom: 8px;

}

</style>


<div class="sale">開店セール</div>

----------------------------------------


「本にはこんな書き方も載っていました」


----------------------------------------

<div style="font-size:24px;color:#CC0000;font-weight:bold;">

開店セール

</div>

----------------------------------------


「秋葉原IBMプラザでホームページ・ビルダー 2000 を触ってみたのですが、あのソフトから出てくる HTMLは楽々の書き方に似ていました。やっぱりそっちが正しいんじゃないかって思ったんです」

「正しいかどうかの問題ではないと思うんですよ。私たちがしたいのはお客様とお話しすることです。でもインターネットでは、機械を通してでしかお話しできないんです。人にも機械にも優しい言葉を探してるんです。私もそのために毎日勉強をしています」

「なるほど、そういうことならよくわかります。ありがとうございます」


「棚田さん。この調子で作っていけば、開店には十分に間に合いますね。開店セール後にお願いしていた相互リンクの件はどうなりましたでしょう」

「私は良いと思います。でも弊社の社長がまだうなずいておりません。あの方も自信満々で出店を決めたわけではないのです。着陸船に置いて行かれないように、一歩ずつ月面を歩いているのです。最後には正しい結論を出します。もうちょっと待っていてください」


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