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流星マスター  作者: TSUJIMO


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メルマガライター 1/2

もうとっくに冬なのに、朝から電話が熱い。


「流山さん、開店セールで来てくれたお客さんが300人近くいるわけだから、これ放っておくのはありえないでしょう。いますぐ追い打ちのメルマガを出すんですよ。黙って見てたら何もしない。売りたくないんですか」

「そうは言いましても。内容が決まらなくて」

「商品を売りたいんなら、商品のことを書けばいいじゃない」

「はあ」

「全部言わなきゃなりませんか。あのですね、セールで来たお客さんが買ったのは、特売のノートだけですか」

「いいえ、他にもいくつか売れています」

「ならそれを熱く書きなさい。あのね、売れてるものをもっと売る。どんな商売でもこれが基本なんですよ。狂人の真似とて大路を走らば即ち狂人なり。形からです。流山さん、あなたはなかなか筋がいい。だが店長としてもっと、自覚を持って取り組んでいただきたいです」


雑用だし。でもわかった。山下さんも裕太さんも今日はいないし、経営管理部に相談してみよう。


「ありがとうございます。神楽さん、微力ながら力を尽くしたいと思います」

「本当にしっかりね。私は御社のファンですから、黙っていられないんですよ」



冬の観葉植物がさびしい雰囲気の新事務所では、理系のインテリ風の山代さんが IBM ThinkPad 560X の画面を見ながら、手元のメモ帳に何かを書き込んでいる。耳に赤鉛筆を挟んでいるのが、細いメガネと合わなくてシュール。


「斉藤さんなら銀行訪問で留守です。何かご用ですか」

「はい。先日のセールの件で、教えて欲しいことがありまして。山代さんにご相談してかまわないでしょうか」

「楽々のセールの件ですね。それなら獲得顧客数、複数購買率、併売傾向、利益率が手元にあります」

「売上件数の多かった商品を知りたいんです。メルマガの件で」

「それなら山下さんと裕太さんが話してたけど、ふたりともいないんだよね。社長は今日は休みで奥で寝てる。呼んだら出てくるよ」

「いえ、それには及びません。失礼いたしました」


私なんかのために、わざわざ社長を起こすなんて。


「急ぎなら大雑把な集計くらいここで出せます。集計だけですよ」

「それではそれでお願いします」


古いレーザープリンター EPSON LP-1500 がうなって紙を吐き出す。壊れたら修理できないやつだ。さびしい。


「ありがとうございます」


それから良い気分で Performa 588 に向かい、メルマガの元ネタの文章を書いていた。そこへ裕太さんと山下さんが帰社して上へ上がり、即座に裕太さんが駆け下りてきた。


「メルマガはまだ出てないな。それ中止、中止」


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