クロスロード 2/2
定番のアルバムは、よくあるような透明フィルムで写真を挟み込むものとは違って、特注の半晒クラフト紙のページに直接、写真を貼り付けたり書き込みをしたりするタイプだ。商品説明にはスクラップブックからの派生と書いてある。ページを減らす代わりに表紙が頑丈になっている。
「ようこそ、お越しくださいました。桜台中学校の上条です」
上条先生は村上社長のような雰囲気の女性教諭だった。ぜんぜん似てないんだけど、イントネーションが同じだからそう感じたのかもしれない。
「学校は震災でも大丈夫だったんですね」
「建物は大丈夫やったんです。でも棚は全部倒れてしまって机や椅子もいくらか壊れました。校庭と体育館が避難所になったから、授業も卒業式も入学式もなくなってしもて。それで同窓会でやっぱりアルバムが欲しいという話になったんです」
職員室はきれいに片付いている。震災の影響はどこにも見えない。
「それでお声をかけていただいたわけですね。表紙に校名を入れたいというお話ですが」
「そうです。アルバムを渡せなかった卒業生が250名おるんです。お電話では300冊からと言われてましたんで、どうなりましたでしょう」
「たしかに割高にはなります。ただ年号が入らないなら名入れの面積が小さくなるのでお安くなります。ちょうど相殺されます」
「それならお願いしてよろしいですか」
「はい、こちらがお見積書と注文書です。注文書は契約書を兼ねております。控えをお手元に残して、ご郵送ください」
寝ないで作成した見積書と注文書を差し出しながら説明をする。話の内容次第で冊数と金額を変えた3パターンを用意しており、湊商事で借りたインクジェットプリンターでついさっき印刷したのだった。山根は別の先生に見本を見せながら仕様を説明していた。
「アルバムに写真を貼ったりするのはどうするのですか」
「当時の卒業生がみんなで作ることになってます。写真を持ち寄って、複製して配って、メッセージも互いに書き込みます。思い出のメーカーさんのアルバムだから、話をしたときはみんな喜びました。あの時はありがとう。本当に励まされましたわ」
UCCコーヒーショップでサンドイッチとピラフの簡単な食事をすませて新神戸駅に向かう。
「お土産はどうしましょう」
「社長には迷惑をかけたから高級そうなのを。それから工場長は洋菓子は喜ばない。裕太は逆に和菓子より洋菓子。他の人はなんでもかまわない」
「エコルセの詰め合わせ、高砂きんつば、神戸プリン。これでいいですか」
「けっこう高いな。まあいい、俺が出す」
「気前がいいですね」
「大変だったから、きれいに終わらせたいんだよ。誰にも文句を言われないお土産を買って帰る」
「私は楽勝でしたけどねー」




