エピローグ 聖剣エクスカリバー
ジーク視点になります。
――と思っていたのだが。
「おっすジーク」
「普通にいるじゃねえか。リビングに」
「お腹すいたので、なんか作ってください」
「その前に言うことはないのか」
「ただいま? それとも、おかえり?」
「この場合はどちらでもいいな。いずれにせよ挨拶できて偉いぞ、お嬢さん」
「あばばばっ! ほっぺたつねらないでくださいっ!」
とりあえずパンケーキを作った。
ありあわせのサンドチェリーと蜂蜜でトッピングすると、嬉しそうに食べはじめる。
「戻れなくて大変だったのです。なのでしばらく手当たり次第に迷宮に潜って暴れていました」
「冒険者ギルドから等級SSSS【黒獄竜姫】とかいう魔物の討伐依頼が出ているが」
「そうだ。お土産があるのです」
「ごまかすな。怒らないから正直に話せ」
「人間はギリ殺していないはず」
本当か? あとでギルドに問い合わせて確認するからな?
そんな視線を軽く受け流し、リコッタ嬢はソファのしたをもぞもぞと漁りはじめる。
「はい。聖剣エクスカリバー」
「待て。どっから持ってきた」
「だから迷宮ですってば。なんか地下にイフリートとかいうやつがいて」
「許可なく持ちだすのは盗掘。そもそも君は迷宮の探索許可証すら所持していない」
「しばいたら宝箱があったからよっしゃあみたいな」
「なあ聞いているか? バレたらそこそこ重罪なのだが」
「えー。じゃあどっかに捨ててくるのです」
「不法投棄もだめ!」
思わず頭を抱えてしまう。バレたら最悪、懲戒免職だ。
どうにか事情を説明して……いや、信じてもらえるのか?
この小さなお嬢さんがひとりで迷宮に潜って、どう見てもすごい力が秘められていそうな聖剣を拾ってきたなんて話。そのうえ根掘り葉掘り聞かれたら、この角ガキがエルカザードの歴史上で初めて等級SSSSに認定された討伐対象だってことまでバレてしまう。
「聖剣、埋めるか……庭に」
「なにその死んだ魚みたいな顔。めっちゃウケる」
「誰のせいでそうなったと思っている?」
「ちなみに他にもありますよ。お土産」
「あああああっ! もうっ!」
さすがに叫んだ。リコッタ嬢はそれを見てきゃっきゃと笑っている。
冗談じゃねえぞ、まったく。
頼むから、これ以上、俺の悩みの種を増やさないでくれ。
◇
その後ほどなくして、リコッタ嬢とサリナは許可証を手に入れた。
晴れて正規の冒険者――となったものの、今のところ迷宮探索には出かけていない。
「飽きた」
「ええ……。あーしだけじゃ、行くつもりないけど」
結局どうしたのかというと、たまに依頼を受けたりカフェでバイトしたりしてお金を稼ぎつつ、王都のアカデミーを受験することに決めたらしい。勤勉なサリナらしい選択である。
一緒に通おうぜと誘われたが、正直ちょっと面倒くさい。
お嬢様っぽいあの可愛らしい制服は、着てみたいところではあるが。
第1章完結になります。ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました!
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