第188話 小国レジデント②
「へぇ、レジデントってこんななんだ」
活気ある港にて大歓迎を受けているジュンは、迎えの船から降りては、開口一番に印象を口にした。普段であれば、“新界”で国を渡るも、今回はレジデント王モウリの懇願により船旅での訪問。元々の予定にはなかったが、これはこれで趣きがあると知れ、今日もまた守護者との遊覧旅行に興じているのである。
連れたる守護者は、この国の管理者として任に就いている博。博は新守護者の一人であるも、3人の中では1番に働き、功績を挙げている。
この功績は戦闘面ではない。
管理者としてだ。
そもそも管理者とは、まず任された国を知ることから始まり、代表者を補助しながら、その国の財や国力を育み、経済を回し、ルクツレムハ征服国へ多少の利益を還元できるよう促す潤滑油のような役割なのである。ここまで全て出来れば、ジュンの思い描く最高の管理者になる。自国の軍事力や国力を自分から強くしようとはせず、守護者という強力な能力者を創造するだけに終わりあとは他人任せ──自分の欲を優先──なために、属国が豊かさを手に入れるのは、ひいてはルクツレムハ征服国の、ジュンの適当国政を成功させるに必須なのである。帝国では、『外交官に近い』と発言したドラゴの言葉に頷いてみせたが、単なる外交でないのは肝。
この最高峰の管理者に近いのが博だ。
零は自国ルクツレムハ征服国の管理者に就いているため条件から外れ、月華は共和国を知り記憶する段階、紅蓮は熟知しているものの監督官に近く、任に就きたての式と紫燕はまだまだ、型は論外、国柄的に有利な商国管理者の陰牢が博の次点に位置するのは、復興を踏まえ国内利益を優先しているから。
小国レジデントは国内循環の基盤を確立し終えて、豊富な知識・技術・商品を他国へと展開している。元々モウリが先だって進めていたが、一人馬力な所が多く、進み具合が悪かった。その間に博が入った。
医者と研究者。
同種ではないが、考え方に近しいものがあり、元々販売していたレジデント産の薬品については、より詳細な説明書きが付与されるようになった。流通経路も商国に負けず劣らず程度になった。代表者と管理者の相性が良いという証拠である。
ゆえに、更に小国レジデントは他国に影響及ぼす存在となっている。
式とはまた違った意味でレジデントの民に好かれ、主と共に歓迎を受ける博は、潮風に当たる白髪をかきあげながら港に足を着けた。
「潮風が強いのはいただけませんが、失いかけた特色の1つです」
『どうか、ご理解下さい』と後付けした博は、他の守護者同様に自分の主を抱きかかえる。目線が同じになるようにというよりは、支配下の者達に実質的権力者を理解させるため。
頭を垂れるレジデントの民。丁度その頃合いに、この国の王、モウリらも姿を見せる。
「お待ちしておりましたジュン征服王、長旅お疲れさまでございます」
「ええ、ほんと。船で渡るのってけっこうかかるのね」
直線距離航路でもなかったためか、1日では到着できなかった。迂回航路を何度も余儀なくされたのは、単純な好奇心によるもの。誰か、と言わなくても理解できるだろう。
到着時刻のズレは、歓迎する側からすれば、御免被りたい案件だ。予測が違えば、一度港を離れていても詮無きこと。だからどちらも、この件については言及しない。
「ええ、大渦もあれば無人島も幾つかございますからな。観光には良いですがしかし、そういった事業は今の所考えておりません」
言い換えれば医療に力を入れたいということだ。その判断は理に適っている。能力者が蔓延り、世界が安定しているとは言えない以上、安易な娯楽は避けるべきなのである。
ジュンの【DS園】は除外。高い壁に囲まれ、ネルフェール国の境界の先が、殆ど征服国に属しているため基本安心。
しかし、小国レジデントの周辺は海。外的要因は幾らでも考えられるために、観光はまだ以ての外状態なのだ。
「もう少し安定してくれればですが………こちらは一旦置いておくとして、博様もお久しぶりです」
「ジュン様は長旅でお疲れです。出迎えはこのくらいで、一度城へ案内して下さい」
博の言動には、長時間漁の仕事を止めるべきでないというのも示唆している。
意を解したモウリは、名馬を1頭持ってこさせる。美しいその馬を引いていたのは、モウリを父とするユージーンとエリカ。
「今日は、こっちにいるのね」
「はい、王の勅命により帰省しました」
「帰省せざるをいけませんでした、だもんね?」
「ちょっっッ、エリカ何言ってんの!僕は………思ってないっ、いやほんと断じて!父さんも信じてくれるよね!?」
「んあー、あー、うむ、そうだな。我が息子を、信じておる、ぞ?」
「何で疑問形なんだよ、怒るよまったくもぅ!」
普段のユージーンは、小国レジデントを離れ、ルクツレムハ征服国の南東部を守護する軍に所属している。グラウスを上官として、アリサと切磋琢磨し、弱かった軍を指導する立場に身を置く。
仲睦まじい義理の親子の会話が始まっても、誰も文句は言わない。が、手を止めているのと一緒。大臣の一人が急かそうとしたところで────
通りの向こうから、黒い服を着た剣士が一人、歩いてきた。
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