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元神様たちの放浪記(休止中)  作者: 辛味噌
第1章 元武神さま約束の人と邂逅する
14/70

第6話 探し人と邂逅する。そして....

3/30

次話との整合性を確保する為、巨鳥との遭遇を夜明けに変更。文言追加。

 相棒に今後暫くの事を頼んで置いて夜中にこっそり出かける。

「我は綴る。基本。第十階梯。基の位。魔力、延長、効果持続(エクステンション)。綴る。八大。第十階梯。動の位。重力、開放、継続、移動、発動。飛行(フライト)

 右手の人差し指が宙に真語を綴り、呪句を詠唱し脳が術式を演算する。そして俺の身体が宙に浮く。本来半刻程度で効果が切れる飛行(フライト)の魔法だが延長してある。北東方向にそびえる巨塔に向かって飛行していく。


 夜も明け周囲に大きな建造物などない事は事前に確認済みなので高度50メートルあたりを時速50キロほどでまっすぐ飛ぶだけの簡単な作業なんでウトウトしながら飛んでいる。旅立つ前にちょっと魔法を使いすぎて精神的にも疲労が酷く完全に油断していたともいえる。勘も鈍っていた様で後ろから来る脅威をまるっきり認識していなかった。


 それは翼長15メートルほどの深紅の羽毛の猛禽類だった。上空を飛行中に下方に低速で飛行する餌を発見した。獲物を捕らえるべく猛然と降下を始める。


 それの存在に俺が気が付いたのは、相棒に言わせれば野生の勘だっただろう。後ろを振り返り回避行動を取り始めつつ簡易式で高位防護圏ハイ・プロテクション・スフィアを張り衝撃に備える。嘴で捕らえられるのは避けたが、あまり大きく避けられなかった。深紅の羽毛の巨鳥の名称を猛旋鳥(ラバルナ・ロッグス)という。飛行中に最も遭遇したくない二大怪物である。なにせ音速の三倍の速度で獲物に襲い掛かるのである。

 回避は出来た。しかし音速の三倍で襲い掛かる怪物が通過の祭の衝撃波で見事に撃墜された。高度が低く立て直す前に空中にある何かに引っ掛かった。何もないはずの場所で何かに捕らえられ電撃の洗礼を受ける。

「こんな何もない平原の上空で雷鎖網(ショックアレスト)だと!」

 衝撃波で簡易式で発動させた脆弱な高位防護圏ハイ・プロテクション・スフィアが砕け散り、止めで雷鎖網(ショックアレスト)で意識が飛びかけた俺が見たのは平原だったはずの場所に池と森が存在した。そして池に墜落した。



 池に落ちたショックで飛びかけていた意識が戻った。水深はそれほど深くなく立ち上がれば胸の辺りまでだった。

「くそ、猛旋鳥(ラバルナ・ロッグス)の存在に気が付かないとか俺も焼きがまわったな」

 周囲を見回すと見事なまでに森だな。しかし事前に幻影地図ファンタズマル・マップで調べたときには平原だったんだが、どういうことだ?取りあえず池から出よう。まだ水浴びを楽しむには早い時期だ。


 池から上がって簡易式で脱水(ディハイドレート)を発動させ濡れた衣服などから水分を蒸発させる。この魔法の難点は維持に集中していないといけないのでどうしても注意力が落ちる。

 程なくして乾いたので魔法の維持を打ち切り周囲の気配を探る。見られているような感じが左側、たぶん方角的に北の方だろうか?腰まで伸びるプラチナブロンドの髪をした少女が大樹のからこちらを伺うようにしている。そちらの方に視線を向けると慌てて隠れるが、まさかあれで隠れているつもりなのだろうか?

 脅かすつもりはないが、ここがどこか確認したいし、逃げないといいのだが……。

 最初は森かと思ていたが、木々の配置などからかなり手が入れられている。足元もかなり手入れされていて実は幻覚なんではないか?と疑っている。自然らしさが薄い。鳥の鳴き声は聞こえるが気配がない。あの少女も幻覚か何かだろうか?

「不本意な形ではあったが、結界を破壊して済まない。怪しいものかどうかはともかく、ここは何処か教えてもらいたい」

 両手をあげゆっくり少女のいた大樹のあたりへ歩いていく。


「そこで止まって、腰のモノをこちらに放り投げてください」

 大樹の蔭から金の鈴を鳴らしたような可憐な声音でそう指示される。聞き覚えのある声音だが……。

 此方はみえていない筈だが、位置を把握できているという事は魔術師(メイジ)か?振動探知(オシレート・アース)風流探知(オシレート・ウィンド)魔術師の瞳(ウィザード・アイ)あたりか?取りあえず腰の光剣(フォースソード)を大樹の方に放る。

「その後はどうしたらいい?」

「両手をあげて後ろを向き跪いてください」

 子供相手に荒事はしたくないけど大人しくしてるのは俺の性に合わん。

 大樹までの距離は15メートルほどだ。あまり足場が良いとは言えないこの場では「武歩」は使えないがそれでも詠唱させる余裕はないはず。大樹まで走る際に先ほど放った光剣(フォースソード)を左手で拾い大樹を回り込んで姿を確認しようと……。


 少女は居ない。しかも居るべき場所に目の前に火球(ファイアボール)が浮いている。

 遅延炸裂火球ディレイド・ブラスト・ファイアボールかよ!えげつない!なんてえげつない!即座に防護圏プロテクション・スフィアを展開。更に魔法に抵抗する為に気合いを入れる。

 火球(ファイアボール)が発動….しなかった。ただしもっとえげつなかったのである。火球(ファイアボール)に見えたものは眩い閃光と轟音を発したのである。


 あえて言い訳をするなら子供と思って侮っていた。まさか置き土産に映像幻覚(クリエイト・イメージ)火球(ファイアボール)に偽装し、遅延炸裂火球ディレイド・ブラスト・ファイアボールと思わせ防御を誘ってからの引き金(トリガー)を用いた閃光炸裂フラッシュ・エクスプロージョンとか普通やらないぞ!

 お蔭で鼓膜は破れるわ、閃光で失明するわ最悪だ。水薬(ポーション)使うか再生(リボーン)使うまでどうにもならんなこれ。


 そして追い打ちをかけるように次の魔法の気配を察知した。空気が変質し急激に睡魔が襲う。深き眠りの雲ディープスリープクラウドか!


 無様だが範囲外へと転がりつつ事前に入れ物(ポケット)を施してあったズボンのポケットから目的の水薬(ポーション)取り出し自分にぶっかける。

 しかし水薬(ポーション)と言えども即効性はなく、徐々にだが視力と聴力が回復していく。そして気が付いてしまった。人ではない何かに囲まれている……そして俺の頭に小さな手が触れる。


「がぁぁあぁぁ!」

 激痛に叫んだ。叫んだことが良かったのか少女の魔法には抵抗できた。感電掌(スタン・ボルト)で昏倒させる気だったのだろうが油断したな。

 とっさに引っ込めようとしていた左腕をその身につけた腕輪ごと掴み引き寄せる。

「きゃっ!?」

 小さく悲鳴を上げた少女を抱きとめようとしてその重みに違和感を感じた。


 引き寄せ抱きとめたのは、周囲にいた石の従者(ストーン・サーバント)だった。態々重量のある石の従者(ストーン・サーバント)を抱え込む事となり足止めさせられた。



 配置転換(キャスリング)を使った形跡はないので引き金(トリガー)で事前に仕込んでいたってことか。もしかして掌の上で転がされてる?完全に後手にまわっている。第13階梯の配置転換(キャスリング)を使えるという事に驚いたが結構な数の魔法を使ってる。


 そのとき5箇所ほどから金の鈴を鳴らしたような可憐な声音で「これからする私のお願いに《はい》か《応》で答えてくださいね」と言ってきた。

 お願いか……。

「って拒否権なしかよ!」

 思わず突っ込んでしまった。クスクスと笑い声が聞こえる。腹話術(リプレイス・サウンド)を使ってるようで居場所も特定できない。それ以前に気配が感じられない。まさかと思うが第15階梯の隠匿(ステルス)まで使うのか?取りあえず向こうの出方を見るか。

「用件を聞こう」

 しかしこの声音聞き覚えがあるんだが、記憶の中のものと一致しないんだよな。


「手荒なことは出来ればしたくありません。大人しく投降してください。暴れたりしなければ拘束などはしません」

 どうしたもんかな?考え込んでると

「時間稼ぎしても駄目ですよ。私はまだたくさん魔法が使えますからね」

 殺し合いなら負ける気はしないが、あっちの少女に殺意はなく捕縛が目的なのは分ったしとりあえず捕まっておくか。


「それじゃ武装を解除する」

 まず光剣(フォースソード)を投げ捨てる。続いてベルトポーチを外して放る。ついでに魔法の工芸品(アーティファクト)長靴(ブーツ)も脱いで放る。ついでに上着に手を掛ける。


「ま、待って!私は服まで脱いでなんて言ってないよ!」

 わたわたと慌てはじめて隠匿(ステルス)の維持が出来なくなったのか俺の目の前5メートルほど手前に姿を現した。


 その姿は、透き通るような肌理の細かい白磁の肌に腰までまっすぐ伸びるプラチナブロンドに彩られた麗しくも愛らしい容貌に人族では存在し得ない紫水晶のような瞳を持つ少女だった。光の加減で白いワンピースが透けほんのり体型が浮かぶ。

 なんで気が付かなかった。想定より幼かったからか?二十歳くらいと思い込んでいたからだろうか?声音も聞き覚えるあるものより幼かったし体型も……。


 ま、武装解除が先だな。

「いや、これ魔法の工芸品(アーティファクト)だし」

 そう言いながら脱いだ上着を彼女の目の前に放る。次にズボンに手を掛ける。少女は顔を真っ赤にしているが、頑張って視線をこちらに向いている。これも魔法の工芸品(アーティファクト)だし武装解除だからな。よし脱ごう。素早くズボンを脱いで放る。後は下帯だけだな。

「あ、そうだ。この下帯も魔法の工芸品(アーティファクト)なんだよな。」

 そう言って下帯にも手を掛ける。これ絵面的に俺ただの変態だよな。いや断じて違う。先方の要求にしたがって武装解除しているだけだ!

 少女の方はというと、あわあわして挙動が怪しくなってきたぞ。視線が俺から外れた瞬間……下穿き一枚の俺は間合いを詰めて驚く少女の両肩を掴む。身長差があるので屈みこむように顔を近づけ

「メフィリア」

 そう耳元で彼女の名を囁く。その次の瞬間鉄槌で殴られたような衝撃を頭部に受けて俺は昏倒した。


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