目に光を灯す 8
空港におりたつと同時に、コミュニケーターからかすかにノイズが流れ始めた。
こうなると、いつハヤトから連絡がくるかわからない。
一歩踏み出した種子島は、さすがは南国といたいほどに、僕らが住んでいる地域にくらべ、ずっと温かかった。まだ2月だというのに。
さて、ここからはどう行くのだろうね?とヒカリと目を合わせた時、ハヤトの声が聞こえて来た。
「ついたようだな。じゃあ、レンタカーを借りてまずは宇宙センターへ向かえ。打ち上げは明日の夕方で、お前たちの作業は今日の夜中だが、明るいうちにどんなところか見ておいた方がいい。少し急げ。15:30からの見学ツアーに申し込んでおいた。」
見学ツアー?
ハヤトの手際の良さに、僕とヒカリは目を見合わせた。
「なんだ、不満か?宇宙センターなんて見ることないだろ?本音を言えば俺が変わってほしいぐらいだ。じゃ、急げよ。」
言いたいことだけいって、ぷつりと通信が切れる。ハヤトの通信はいつもこうだった。
時計を見ると、現在14:10。僕らはすぐさまレンタカー屋へと向かった。
レンタカー屋のカウンターは空港内にあった。カウンターのスタッフは僕らがくるのをわかっていたようで、僕とヒカリを見るなり、「ご予約のお客様ですね。」とさも当たり前のように言った。
すでにハヤトが手配したのだろう。小さくて小回りが効いて、闇夜で目立たない暗いカラーの軽自動車だった。予約氏名がヒカリの名前だったので、ヒカリが手続きを済ませる。カウンターのお姉さんはとても愛想がよく、ヒカリに種子島の観光スポットや美味しいレストラン情報まで丁寧に与えていた。
嬉しい情報だが、今はちょっと時間がない。
人が良すぎて、他人の好意を断るのが下手なヒカリの足をコツリと軽く蹴る。ヒカリも時間がないことはわかっていたのか、ちょっとバツの悪そうな目でこちらをちらりと見ると、お姉さんに急いでいる旨をやんわりと伝えた。でも、お姉さんは気がつかない。
仕方が無いので、僕が割り込んで「ちょっと急いで行きたいところがあって」と言って、やっとお姉さんから開放された。レンタカーまで案内してもらい、そのまま乗り込んだ。
「それではいってらっしゃいませ。」
というお姉さんの声を聞きつつ、はじめは安全運転で出発した。しかし、ヒカリはお姉さんが見えなくなった頃には、思いっきりアクセルを踏み込んでいた。