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いまもなお、あまり完調とはいえない気分だったけど、とにかく僕は日課に勤しむことにした。三人分の夕食を作るのだ。
この家は休日にまとめて買出しをするため、僕が食材を調達するために外出した記憶は少なくともない。この家の景観に似つかわず、やけに宇宙的な塗装仕上げのされた冷蔵庫(さいきんの電化製品は鍍金がちにするのが流行りなのだろうか?)にはいつも、少し余計めなくらいの材料が詰め込まれている。だから僕はいつも、その中身を見てはじめて「今日は何を作ろう」と考える。
あまり凝ったものを作る気分にはなれなくて、さして思巡せず僕はさっさと取り掛かることにした。まっすぐ向かった先、キッチンから覗くほの暗い空に、薄らいで浮かぶおぼろ月が見えたけど、今の僕にとってそれはでたらめに曖昧な景色でしかなかった。




