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第一話 魔王が旅立ったようです

初投稿です。よろしくお願いします。




「あぁ~、超暇ぁ~・・・」


「何をおっしゃっているのです? アイリス様。十年分の書類が残っているではありませんか」


「うぁ~。なんで私がやらなくちゃいけないの~・・・」


「それは貴女が魔王だからです。しゃべっている暇があるなら、さっさと終わらしてください」


 机に山積みにされている大量の書類を見て嘆いている少女がいる。

彼女は魔族を統べる、第十三代魔王、アイリス・クロセリアだ。

アイリスは生まれてから既に200年程生きているが、見た目は少女にしか見えず、人間の年齢でいうと13歳くらいだ。

淡く輝く銀色の髪を腰辺りまで伸ばし、目は空の様に青く透き通っている。姿は人間と同じで、顔は芸術品かと見違える程に整っている。

 そんな美少女なアイリスは机に突っ伏しながら、隣にいる老人に話しかける。


「こんなのゼシュールの部下にやらせればいいじゃん」


「できれば良いんですけどね・・・ そこに積んである書類は魔王の仕事なのです。しかも、魔王以外の者が書類を触ると、痺れさせるというおまけ付きなのでアイリス様しかできないようになっています」


「・・・さっきゼシュールが運んできてたよね?」


「さぁ? 細かいことは気にしてはいけませんよ」


 アイリスと話している老人は、ゼシュールという。

ゼシュールはエルフだが、優れた知識と行動力を持っており、現在はアイリスの側近を務めている。


「じゃあさ・・・ なんか面白い話でもしてくれない? こんな暑くて狭い部屋に居続けたら、欝になるか熱中症で死んでしまうわ」


 アイリスが居る部屋は、約六畳程の広さしかない。

部屋の中は、机と椅子しか無く、窓も一つしかないため風があまり入ってこず、気温は20℃であるのに夏並の暑さになっていた。


「・・・確かにこの部屋は狭いですが、仕事をしてもらうためです。仕事を終わらせましたら、アイリス様のお部屋でくつろいでもらってかまいませんから」


「・・・鬼め。 ・・・はぁ、人間に転生したかったなぁ・・・」


 アイリスはそう呟いたが、小声だったため、ゼシュールに聞こえることは無かった。

 ところで、アイリスは、普通はできないことを体験している。

それは、『転生』。

 アイリスは初めは日本という国に人間として生まれた。そして70年余りの人生を過ごし、安らかに死んだ。

だが、なぜか、記憶を引き継ぎ、異世界に転生した。

その後も転生を繰り返し、ある時は勇者。ある時は王女。神として生きたこともあった。

そして、おそらく7回目の転生をし、魔王になった。今までに手に入れた能力を引き継いで。

 ちなみに、アイリスの名前は自分で付け、日本に住んでいた時の名前である、黒瀬愛莉(くろせあいり)から取ったとのことだ。


「しかし・・・ 面白い話、ですか。 仕方ありません。仕事に励んでもらうためにも、ここは一つ。最近噂になっている話でもしましょうか・・・」


 ゼシュールはそう言うと、ワザとらしくゴホン、と咳払いをし、話し始めた。


「アイリス様は『勇者』というものをご存じですか?」


「もちろん。 魔王を倒して英雄として称えられる人間のことでしょ?」


「人間界ではそうなっていますな。その勇者が先月、アイカンと呼ばれる国にて召喚されたとか」


「っ!? やっと勇者が召喚されたのね! ・・・続きは?」


 アイリスは暇つぶしになりそうな存在が現れたことを知ったからか、目を輝かせながらゼシュールに続きを促す。

もし尻尾があれば扇風機のように高速回転させていただろう。


「まぁ、そう焦らずに・・・ 勇者は召喚された後、戦闘訓練を行い、それが先日終わったようで。それで本日、国を出るそうです」


 ゼシュールが話し終えた後、アイリスは人差し指を顎に当てながら、何か考える素振りを見る。

そして、10秒程経つと、閃いたのか両手を合わせ、ゼシャールに話しかけた。


「ちょっと用事が出来たから、出かけてくるわね。無期限で」


「・・・そんな事だろうと思っていました。ダメですよ。せめて山積みになっている書類を終わらすまでは」


「大丈夫! もう終わらしといたから」


「何を言って・・・ っ!? なんと・・・!」


 書類を確認したゼシュールが驚く。

なぜなら、アイリスは十年分の書類を一瞬で終わらしたからだ。

普通ならこんな事は不可能だが、目的を見つけた彼女にとっては容易いものだ。


「じゃあ、行ってくるわね。あ、そだ。『Gプラン』進めておいてね~」


「お、お待t」


 ゼシュールが引き止める前に、アイリスは空間移動し、人間界に降りて行った・・・










「っと、着地成功」


 アイリスは草原の上に空間移動した。

アイリスが着いた場所は、辺り一面草だらけで、緑が広がっている。

そして、10キロ離れた場所にアイカン王国があり、門の近くに、勇者パーティらしき一行が歩みを進めている。


「さて・・・ どうやって勇者パーティに仲間入りしようかなぁ・・・」


 アイリスが魔王城から空間移動してきた理由は勇者パーティに入るためだ。

もちろん、他にも理由はあるのだが。

 アイリスは念話の魔法を唱えると、ゼシュールに話しかける。


「よし。《ゼシュール、聞こえる? 聞こえてるなら私の近くに、誰でもいいから魔物を送ってきてくれない?》」


「《アイリス様!? はぁ・・・ もう吹っ切れますよ? 今からウォーウルフ3体を送りますので、是非、食われちゃってください。では》」


「《え? ちょっとゼシュ》」


 ゼシュールが強制的に念話を切った。と、同時に狼の姿をした魔物が目の前に現れた。

ウォーウルフ達は涎を垂らしながらアイリスにゆっくりと近づく。

どうやら、食べる気満々のようだ。


「え、ちょっと待って。私魔王だよ? いいの? ってキャアァーーー!」


 アイリスは自分が襲われている場面を作り、役を演じて勇者と関わろうとしたのだが、予想外の事態に演技ではない悲鳴を上げた。


 そして、彼女は勇者達が助けてくれることを祈りながら目を瞑ったのであった。


 

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