表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
145/152

どうやら、船上での一時らしい2

 

「ロラン、元気出せヨ」

「うるせえ……」

「ぃよっ! さっすが毒魚マスター、素敵ぃ!!」

「うるせえっつってんだろ! ちくしょぉぉぉぉぉ!!」


 ブサを餌に使った海釣りで、突如現れた謎の巨大魚。期待と興奮に揺れる中、格闘の末にロランが釣り上げたのは毒魚だった。やっぱり何か憑いてるんじゃないかな? かな??

 そしてロランの『俺の期待を返せ』二回目である。ちょっと立ち上がれない。


 ちなみに通常の毒魚が平均二十~二十五センチ位。巨大毒魚と呼ばれ、酒の席で盛り上がるのが五十センチ前後。ロランが釣ったのは二メートル超えなので、今回の毒魚がどれだけ桁外れな大きさである事か分かるだろうか?

 ただし、どう頑張っても毒魚は毒魚である。

 期待にヒャッハーしながら釣り上げたロランにとってはさらに悲しい事に、巨大化しているせいで毒も強化されているらしく、もはや食べる事も出来ないとの事。通常サイズは頑張れば食べられるのに、『超』頑張れば。毒を気にしなければ死にはしないので。ただし、毒のせいで物凄く苦渋えぐいので、わざわざ食べる程のものでもありません。基本的には廃棄一択。


 海の生物も余程飢えてでもいない限りは毒魚を食べようとはしないので、こうして人の手で釣られなければこの世の春を謳歌し続けているのである。自分を食おうと狙う敵がいないからこそ、今回釣り上げられたこの毒魚もここまで巨大化出来たのだろう。

 そして残念なのは海中に天敵がいないからこその警戒心の無さ。それ故に釣竿を垂れれば簡単に連れてしまう。釣り人こそが毒魚の唯一の天敵であった。あとは縄張り争い的な意味で同族位か。


 釣り人からしたら毒魚に限らず毒持ちの存在は迷惑なんてものじゃ無い。

 この世界において釣りは娯楽の一つだが、食べられない魚を釣って喜ぶ風習は無いのである。釣り=食事に一品追加! ひゃっはー! なので、スポーツフィッシングなんてして喜ぶ余裕を一般人は基本的には持って無い。

 これが獣や魔獣だったらまた話は別なのだが。あっちは毛皮という副産物もあるのでスポーツハンティングが成立するのである。ただし魔獣ハンティングには命の掛け金が必要です。バリムシャァ……ッ!


 渾身のガッツポーズからのorz。見事に上げて落とされたロランは絶賛凹み中だった。

 落ち込むロランの背後からは「毒魚の主じゃ……! 間違い無い! アレを釣り上げたあの方こそ伝説の毒魚マスターなのじゃぁぁぁぁ……!!」とロランを拝んでいる見知らぬ老人の声が聞こえる。お願いだからそっとしておいてあげて下さい。そして、即行でネタにするサミュエルの鬼畜振り。

 そもそも、老人の言う毒魚マスターって何なんだろうか?


 落ち込むロランとからかうサミュエルを放置して、毒魚に呑まれたブサの救出班はアンリとリュシアン、それとおまけのジョゼである。

 船上に釣り上げられてビチビチ暴れる毒魚。暴れる巨体を強引に押さえ付けて、まずはガパリと毒魚の口を開けてみれば、口の中で全力で手足を突っ張ったまま白目を剥いて気絶しているブサの姿。どうやら、呑み込まれないように必死に耐えていたらしい。

 ちなみに針が口の中に刺さっていたので口の中に留まっていられたというのもあるらしい。針ごと呑み込まれてなくて良かったね。


 白目を剥いたその痛々しい姿からソッと目を逸らして、針を外してブサを口の中から取り出す。うへぇ、全体的にネチョネチョする……と思いながらもアンリに手渡し、ネチョネチョを拭き取ろうt……。


「……ちょっと、先に洗った方が良いですね」

「……だナ」

「……ヴニ゛ャ(……くちゃい)」


 巨大魚の口の中から助け出したブサはすんごい生臭かった。


 ……パタ


「あ、死んダ」


 もちろん毒魚の方が、である。ブサはまだ存命です。


「酷い目に遭った……」

「ご愁傷様っつーか、自業自得だロ。いい加減に学習しろヨ」

「あの程度で怒る奴の方が悪いんだろ!」

「ならもう一度釣りの餌にしてやろうか?」


 全身丸洗い後に意識を取り戻したブサを適当な布で拭き拭き。大人しく体を拭かれながら愚痴るブサに反省の色は無い。

 だが、逆ギレのような言葉を発した直後に、背後から聞こえたロランの声にビキリと固まった。

 ロランが近付いているのに気付いていたリュシアンは頭を押さえている。むしろロランが近付いている事に気付いていたからこそ、ブサに反省を促そうと話題に出しただけに真逆に働いてしまった事に頭痛を覚えていた。


 ギギギ、と振り向けば静かな表情のロラン。気付けば傍に居た筈のアンリとリュシアン、ジョゼはいつの間にやらいなくなっている。そして自分はというと、拭かれている途中だった布が体に巻き付いている為、逃げたくても逃げられない。

 視線をほんの少しだけずらせば、ニヤニヤと笑うサミュエルの横に他の面々の姿がある。成仏しろよ、と


「……ぎ、ぎなぁ?」

「……よし、第二ラウンドと行くか」

「全力で謝るからやめてぇぇぇぇぇ!?」


 土下座で謝っても、撒き付いた布と猫の体のせいで土下座に見えない。体勢だけなら普段から土下座しているようなものなので。

 そして土下座体勢なので顔を上げない限りはロランの表情を見る事も出来ない。無言で佇むロランの迫力に萎縮しきったブサは子猫のようにプルプルと震えるしか無かった。子猫の可愛げなんて欠片も無いけど。


 ガシッ!


「ひぃっ!?」

「んじゃ、第二ラウンド行って来る」

「行ってらぁ~」

「もう諦めた方が……いや、何でも無イ」

「リュシアン、止めるならきちんと止めた方が……」

「ならアンリが頼ム」

「……頑張って下さいね」「止めないんかイ」


 ニッコリ笑顔で手を振るサミュエルが憎い。途中まで言いかけたリュシアンは、どうせなら最後まで言え! とも思うがガッツリ目を逸らされてるので目が合わない。アンリ……も今回は見方になってくれそうも無い。ジョゼは、と言うと


「ヴニィ(お魚美味しい)」


 見知らぬ釣り人から小魚を貰ってご機嫌だった。猫だもの。


「よーし、大物釣るぞー!」


 目をグルグルさせながら宣言するロランは明らかに正気では無い。期待からの落差で、精神的な物が錐揉み回転しながら壁に突き刺さっているようだ。理性もお出掛け中です。いつ帰って来るんだろうね?

 もちろんアンリ達も今のロランの異常さには気付いているが、今さら止められそうも無いので諦めモードである。引っ掴まれたまま連れて行かれるブサにとっては貯まったものでは無い。


「てめぇら助けろぉぉぉぉぉ……!!」


 無理でっす☆


 テヘペロ、と誤魔化す面々。こんな酷いテヘペロは初めて見た、とブサも驚愕の無言である。

 そして、静かになったその隙にとあっさりとロランに連れて行かれるのであった。ハッと正気に戻った時にはハーネスに装着された釣り針&そこから伸びる糸。

 グンッ、と後ろに引き寄せられる感覚に絶叫が響く。


「い゛や゛ぁぁぁぁぁぁっ!?」

「大物釣ったるぜ————!!」


 大きく振りかぶられたブサに、合掌。


「毒魚マスター様が新たな伝説を作られるというのか……!? ワシらがその生き証人になるかもしれん正念場じゃぁ……っ!!」


 ……お願いだから爺様は黙っててあげて。爺様のセリフを聞いた瞬間、ブサを投げ込もうとしたロランの力が抜けたから。ベチッ、と音を立てて船べりにぶつかってから力無くブサが海に落ちて行ったから。


「いやぁぁぁぁぁ!? ……ガボッ!?」


 あ、ヒット。

 毒魚マスター、ロラン。


 正気でない理由は謎。熱中症かな?

 この時期暑いので皆様もお気を付け下さい。室内でも要注意です。麦茶うまー。


 毒魚釣らなきゃ……!!(謎の使命感)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ