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憑依してた

 結論から言おう。

 

 七海が作ったのは、うどんでした。

 具沢山の鍋焼き風うどん。弱った胃腸に優しく沁み渡るおいしさでした。

 

 ごちそうさまでした。

 

 では、なく…

 

「今ね、あたしの中にね、ハルさんがいるの。憑依っていうの?されたみたい。」

 七海さんは、いつの間にやら、波留さんに憑依されておりました。

 

 と、言うわけで、ここからはドタバタしていく模様です。

 

 

 うん。

 分かる。

 ええ。

 分かってます。

 

 さらっと流してみましたが、流れてくれませんでした。

 

 ただいま混乱の極みにおりますので、おヒマでしたら今しばらくお付き合いください。

 

 

「えぇ~っと?七海、さん?え?波留、さん?」

「え?七海だよ。」


 うん。どっからどう見ても七海だよ。

 それは俺も分かってるよ?

 

「だよね。」

「そうだよ。」


 あれ?どこ行くの?

 話まだ終わってないよね?

 

 え?あぁお茶?

 そうね。お茶飲みながらの方が話しやすいもんね。

 流石に七海は気がきくね。

 

 俺も早く落ち着かなきゃね。

 

 あぁ。お茶がうまい。

 

「昨日も、あたしここに来たんだ。」

うん。知ってる。憶えてはないけど、プリンもポカリもメモもあったし。

「したら、ヒロヤがうんうん唸ってて、熱もちょっと高くて、汗かいてて、だからとりあえずコンビニで冷えピタとプリンとポカリ買って来て、着替えさせて、冷えピタ貼った。」

「うん。」

「で、しばらくしたらヒロヤうっすら目を開けて、あれ?起きたかな?って思ったら、今度はスゥーっと寝ちゃって、しばらく様子見てたけど、起きる気配もないし、静かに寝てたから起こすのもなんだと思って、シャワー借りて、あたしも寝た。で、朝、起きたら…」

そこで七海は意味あり気にずずっとお茶を啜った。いよいよ本題か?

「仕事行く時間だったし、ヒロヤも静かに寝てたし、メモだけ書いて部屋を出た。」

中々出てきてくれません。

「そしたらハルさんに声かけられた。」

と、思ったらすぐ出てきた。

「ほう。それで?」

「なんか、頭の中?に直接声が響いて驚いた。」

ふむ。驚くよね。


 よくよく話しを聞いてみたところ、本人たちにもどうしてそうなったのかは不明らしい。でも、なぜか波留は七海に憑依した。

 で、今日一日彼女たちはいろいろと話し合った結果、良くわからんが仲良くなったらしい。

 

 憑依と聞くと意識を乗っ取られているのでは?と、危惧してしまったが、どうやらそういうこともなく、一つの肉体に二人の人格が別個にあるのだとか。

 どういう理屈でこういう状況になったのかには、興味もないが、どういう理由でなったのかには、興味がある。多分そこに今回の件の解決の糸口が有るのだが、皆目見当も付かないので、現状打破とはいかないが。

 

 まあ、とにかくこれで七海に説明の手間は省け、波留とコンタクトは取れるようになったわけだが、何かどれもこれもが釈然としない。

 

「なんか、今日は異常に疲れた。」

といって、七海が笑った。それは紛れもない七海の笑顔なのだが、雰囲気が違って見えるのは気のせいか。


「一個だけいい?」

「うん。」

「波留の身体はどこ?」

「松田記念病院。」

俺の地元の総合病院。まあそこに何かの手がかりが有るんだろうし、行くしかないと思う。


「明日と明後日休みだったよね。」

「うん。」

「じゃあ、明日、行ってみようか。日帰りできない距離でもないけど、一応一泊の予定で。」

「分かった。」


 よっぽど疲れたのだろう。横になった途端に眠ってしまった。

 俺はと言えば、散々眠った後なので、今夜はどうも眠れそうにない。中途半端になってしまった仕事でもしようとパソコンを立ち上げた。

 

「ヒロヤ。」


 眠ったはずの七海の方から波留の声がした。

 

 目だけを向けると、七海が座ってこちらを見ていた。

 

「お前、それ…」

「うん。七海さんが意識をなくすと身体が自由になるみたい。」


「でも、それじゃあ…」

「うん。七海さんが休まらないよね。だけど、どうしても一言謝りたくて…」


「謝るんなら全てが終わってからにしてくれよ。」

「え?」

「正直、何がどうなるかなんてわかんねえけど、お前は生き返りたいんだろ?そのためにここに来たんだよな?めんどくせえけど、付き合ってやっから、その時いっぱい話そうぜ。」


「ごめん。」

「もう、寝かせてやってくれ。」

「そうだね。ごめん。」

そう言って、頭を掻く仕草は昔の波留と変わらない。


 波留と七海がダブって見えた。

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