異世界人と最後のお別れ
遅くなりました!50話で終わらせたかったため長いです!おつきあいよろしくお願いします。
今まで屋台に集まっていた人たちがぞろぞろと花火が見える場所へと移動を始める。向かう先は似たような場所なのか、人の流れが自然とできる。
「行くぞ」
「へっ?」
腕をひかれ俯いていた顔を上げると同時に、身体が宙に浮く。急な体勢の変化に咄嗟に腕を伸ばすとそこは首で、やっとジルにお姫様抱っこされてることに気づいた。
「って、えっ!?」
人ごみの多い中でそんなことをされるもんだから、注目後は半端ない。抗議しようとするとギュッと力強く抱きしめられる。
「足」
「?」
「痛いんだろ?擦れてる」
指摘され、初めてズキっと痛む足を見る。鼻緒で擦れたそこは赤く擦り切れて血が滲んでいた。いつの間に擦れたんだろう。お祭りに夢中で気づかなかった。気づいた瞬間から痛み始めるそれにもう歩けなくなったと自覚する。これは仕方ないなぁと諦めギュッとジルにしがみつく。
「しっかり捕まってろよ」
「どこ行くの!?」
スタスタと私を抱えているとは思えない速さで歩いて行くジルに首を傾げる。気づけば祭りの会場から離れ、坂を登っていることに気づく。いやいや、本当にどこに行ってるの!?
「重いから降りる!」
「良いから」
さすがにこれはまずいと慌てて降りようともがくけど、いったいこの体のどこにそんな力があるのかピクリともしない。
「ここか」
「ちょっ!」
坂を上り終えて平地につくとそこには塀に囲まれた一つの扉があった。2メートルくらいの塀の中の様子は見えない。けれど、明らかに人様の敷地には間違いない。ためらいもなく扉に向かうジルを止めようと声をかけると、ジルはどこからか取り出した鍵でそこを開ける。
「えっ」
その鍵どうしたの?とか、なんでこんな場所を知ってるの?とか色々聞きたいことがあったけど、その声は目の前に広がる光景のおかげで飲み込んでしまった。
高い塀に囲まれていたから何かの建物でもあるのかと思ったけど、そこには色とりどりの沢山の花に囲まれたベンチが一つ。しかも、花の下にライトでも仕込んであるのか、ほのかに淡い光を放ち幻想的な空間になっていた。
「ルイから教えてもらった」
花をなるべく踏まないようにジルは慎重にベンチに向かい、そっと私を座らせ、さっきここの扉を開けた鍵を見せてきた。いつそんなやり取りがあったんだろうか。
「って、何してるの?」
ベンチに座ることなく、花と花の間を覗いてるジルに首を傾げる。せめて花見てあげて。
「いや、やられたなと思ってな、……、こういう魔法は俺が先に見せてやりたかったのにな」
「今何て言ったの?」
最後の方の言葉が聞き取れず聞き返すと別にと首を振られる。いや、すごく気になるんだけど。大したことじゃないと私の横に座ったジルはそういえばと口を開く。
「傷は大丈夫か?」
「えっ?あぁ、足は大丈夫」
「そこじゃなくて、ここだ」
私の言葉にかぶせるようにジルは私のお腹に触れながら聞いてくる。ジルが触れているそこは大輝の罠にはまって熊に刺された場所。
「大丈夫。ちゃんと榊さんに治してもらったし。傷も全くないから本当に刺されたのかって感じだから」
だから、そんな辛そうな顔をしないでと苦笑する。あの事件が終わり、ずっとジルは心配してくれていた。けど、傷もなければ痛みもない私はジルの心配をよそに大丈夫というしかなかった。どちらかというと、傷のない私よりも自分のことで私を巻き込んでしまったというジルの心に負った傷の方が私は気になってしまっている。いくら私が勝手にしたことだから気にしないでといっても聞き入れてくれないから困ってしまう。
「本当に大丈夫なのに」
「あの時、あの子供が来なかったら死んでたんだぞ?」
本当にわかってるのか?という今にも説教モードに入りそうになっているジルに慌てて縦に何回も首を振る。その話は説教とともに何回も聞かされた。私が刺された後で夢の中に出てきたあの女の子がどうやら助けてくれたという話。それを聞いて、もしかしたらあの女の子はこういうことになることを知っていたのかもしれないと思った。そうじゃなきゃ、わざわざ私の魂魄を抜き取った意味がわからない。いや、本当あの時はどうしようかと思ったわ。
「あの子、何者だったんだろうね」
「さぁな。けど、関係者は何となくわかったからな。戻ったら調べてみるさ」
「えっ、そうなの?」
それは初耳だけど?という目で見ると、まぁなと、あまり考えたくないのか遠い目で答えられてしまった。
「それって」
誰のこと?と聞こうとした瞬間、パンッという乾いた音が鳴る。それが何の音が分かった瞬間、夜空に色とりどりの大輪の華が咲き始める。
「これは凄いな」
魔法じゃないのが不思議だと呟いているジルを見る。その横顔はワクワクしている子供のようで笑ってしまう。
「イタッ」
笑っていたことに気づいたジルが頭を小突いてきた。いいじゃない、かわいく見えたんだから。
「綺麗だが、儚いな」
小突かれた頭をさすっていると、ジルがボソッと呟く。それは、私も思う。満開の華は、その姿を思いきり主張し、一瞬にして儚く散っていく。けれど、だから綺麗だとも思う。今日だけ咲き乱れる、この二万本の華はあとどのくらい残ってるんだろう。これが終わればジルは向こうに帰ってしまう。
あぁ、やだな。昨日あれだけ覚悟してたのに、いざその時になるとその言葉が次々と心に浮かんでしまう。こみ上げてくる熱いものがこぼれ落ちないように唇を噛みしめる。おばあちゃんになるまで待とうと決めた。それに、ジルは迎えに来てくれるといったから大丈夫と思う反面、どこかでそれは本当に?と誰かが囁く。こっちにこられる保証はどこにもないのにと。この儚い花火を見ているとますます思ってしまう。
「不安か?」
「ちがっ!」
引き寄せられた瞬間こぼれ落ちる涙にドキッとする。顔を見られないように俯いて首を振る。
「素直じゃねぇな」
まるで泣いて良いよと言わないばかりに背中をトントンと叩かると堰を切ったように次々涙がこぼれる。
「だ……大丈夫っ……だと、思っても!ヒクッ。怖いの!なんっで!世界が違うの!?」
あぁ、ダメだ。最後に困らせたらダメだと思っても一度口を開いてしまったら声にあげてしまったら止まらない。
「昨日!っつ、あれだけ、覚悟っ!したのに!」
どんな方法をとっても会いに来てくれるとまで言ったのに!これも、証だとくれたのに!止まらない。止まってくれない。
「全部吐き出せ。全部受け止めるから」
いつの間にか抱きしめられてた腕に力が入る。包み込まれる体温に安心する。
「やだ……、やだよぉ!!いっちゃ、やだぁ!!」
あぁ、わがままだ。連れていけないと言われたのに。これは言ってはいけない言葉だったのに。何でこんなに私は弱いんだろう。ジルを困らせたらダメなのに。わかってるのに。心がついてきてくれない。
「なぁ、ミコト」
「んっ?」
呼吸が整わず言葉がうまく紡げない。それがわかったのか、背中を優しく撫でてくれる。一生懸命顔を上げると、ジルは優しい笑みを浮かべて言った。
「俺と一緒に来るか?」
その言葉に目を見開く。どうして?連れていけないって言ったのに。ジルの言葉に混乱する。一緒に向こうに?なんで今更?
「それとも、俺が迎えに来る一年待てるか?」
「一……年?」
昨日出なかった具体的な言葉に首を傾げる。
「具体的な方が安心するだろ?俺もそんなに時間をかけたくない。けど、それでも待てないっていうなら連れていく」
どうしたい?そう聞いてくるジルはどこか何かを覚悟したような顔をしていた。だから気づいてしまった。
「困らせてごめんなさい」
「別に困ってねぇよ。で、ミコト?どうしたい?」
困ってないわけがない。だってわかるよ。あれだけ、連れていけないって言ったでしょ?けど、私が言ってしまったから覚悟したんでしょ?
「ちゃんと一年で迎えに来てね」
ちゃんと待とう。ジルが来てくれるその時まで。ジルに伝えたかった思いは伝えた。
「当たり前だろ。絶対迎えに来る」
「うん!」
その瞬間特大の花火が打ちあがった。これで終わりだと気づき、慌てて月を確認する。花火とは真逆に浮かんでいたそれは最後のピースを埋めるように円になる。それと同時に持っていた籠バックが光だす。バックを開き光っている物を取り出すとそれは、私の手を離れ宙に浮きながらジルの前まで行く。
「終わりだな」
テラス石が最大限の光を放った瞬間、ジルの体を淡いピンクの光が包み込み始める。
「ジルッ!」
淡い光とともに体が透け始めるジルに手を伸ばす。
「ミコト。俺はお前に会えて良かった。お前の元に来れて良かった」
「私も!ジルに会えて良かった!待ってるから!」
だんだん薄れていくジルの姿に伝えたいことを伝える。あと少しだけ、あと一言だけ。
「ジル!」
「ミコト!」
「「愛してる」」
触れ合う唇が離れる瞬間、光が弾けるとともにジルの姿は消えていった。
さっきのような寂しさはもうない。約束の日まで待つと決めたんだ。それを楽しみにしよう。
「またね。ジル」
約束のその日まで。
ご愛読ありがとうございました!これでいったん完結となります。ハッピーエンドはまだまだ先かもしれません(><)次は「やってきました!異世界へ!」というタイトルで続きを書いております。URL http://ncode.syosetu.com/n1661dp/ よければよろしくお願いいたします。
追記:やってきました異世界人番外編を掲載します。興味のある方はどうぞ。ジルヴェスターの後日談。瑠依視点の話を書く予定です。URL:http://ncode.syosetu.com/n4649dp/




