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やってきたのは異世界人  作者: 如月 玲
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自称異世界人

あわわわ。こんなにもお気に入り登録ありがとうございます。至らぬ点が多いと思いますがお願いします。

 何でこうなったのだろうか?私は今の現状を理解できないでいた。


「なら、ここはラインティアじゃないと」


「そう」


「魔法も存在しない世界」


「そう」


「だから、お前が俺を連れてきたわけじゃないと?」


「そう」


「殺すぞ」


「いや、意味わかんないんですけど!?」


 今の会話からどうしてそうなるわけ!?と目の前の男を見る。


  魔法が使えないとイタイことを言ってきた奴は、その弱りきった体のどこにそんな力を隠していたのかと思わせる力で私をベッドに押し倒してきたあげく、さっきからこの調子で尋問してくるのだ。


 本当に何でこうなったのか理解不能も良い所だ。


「なら何で俺はここにいる?」


「それはこっちが聞きたいわ!てか、はーなーせー」


 小首を傾げる奴から逃げようとジタバタともがくがビクともしなかった。そろそろ拘束されている手首が悲鳴を上げてきている。


「っつ!!」


「あっ、ごめん!」


 渾身の力で腕を引っ張ったと同時に相手の腕も動き、やったと喜んだ瞬間、目の前の奴は苦顔の表情で腕を押さえていた。どうやら、腕に負荷がかかったらしい。


 元の原因から言えば私が悪いわけではないが、ついつい謝ってしまうのが私だったりする。慌てて解放された体を起こし怪我をしている右腕を見る。ガーゼと包帯で保護しているそこは赤が侵食してきていた。


「ちょっと待ってて!」


 やってしまった。相手は怪我人だったと思い出しながら隣の部屋に置いてある救急箱を取りにベッドから降りる。


「待て」


「何!?」

 

 急いでいるのにと、私の腕を掴むその男を睨む。しかし、その表情を見て私は一瞬固まった。何て顔をしてるんだろう。さっきまでの勢いはどこへやらその表情はどこか不安を滲ませた表情だった。


「どこに行くんだ?」


 行くなと言っているかのように、腕に力を入れてくる男に苦笑する。


「隣の部屋に救急箱取ってくるだけだから」


 すぐ戻ると言えば、スッと離されるその熱を感じながら少しでも早く戻ろうと必要な物を取りに行った。





「良かった。少しだけ開いただけね」


 ホッと一安心と、軟膏を塗りガーゼと包帯で保護していく。出血も思ったより少ないからこれなら病院へGO!何てオチはないはずだ。


「癒術師はいないのか?」


「へ?」


 聞きなれないその単語に包帯を巻いていた腕を止める。癒術師とはよくゲームなんぞに出てくるあれだろうか?


「俺はそっち系の魔法は苦手だが癒術師ならこんな傷はあっという間に治す」


「マジで!?」


 医療いらずじゃんと驚いてみるものの、はてさてどこまでが真実か怪しい物だ。


「疑ってるだろ?」


「わぁお、読心術」


 心を読まれたと思ったが、顔に出てると言われてしまった。巻き終えた包帯の残りを切り救急箱に収める。


「なぁ、俺はどうやってここに現れたんだ?」


「さぁ?物音がして部屋を覗いたらあんたがいたんだけど。てか、あんたこそ「ジルヴェスター」は?」


「俺の名前だ。言いにくいならジルでもいいからそう呼べ」


 どうやらあんた呼ばわりはお気に召さなかったらしい。ブスっとした顔をして名乗るジルヴェスターに何で上目線なのかと思いながらまぁ、良いやと話を進める。


「で、ジルヴェスターはどうしてここにいたかとかわからないわけ?」


 よいしょっとベッドサイドに座るジルヴェスターの隣に座りながら尋ねる。まさか、鍵を開けて入って来ました何てオチはないだろう。


 何かを思い出すように額に手を当て目を瞑るその姿は、黙っていればカッコいいのにと思いながら言葉を待った。


「俺はここに来るまで隣の国と戦っていた。戦いの最中、守るべき奴がふらふら戦場に出てきやがった上、性懲りもなく魔法攻撃の直撃をくらいそうになったから庇おうとして、紅い光に包まれたのは覚えてる」


 そして気づけばここだったというその表情は嘘だとは思えなかった。確かにジルヴェスターという男の言葉は信じられない物ばかりだったけど話を聞く限り支離滅裂ってわけでもなさそうだった。

 

 それによくよく考えると女の一人暮らしは物騒だとセキュリティの高いマンションを借りたのは私自信だ。それをこんなに簡単に突破されるとも思えなかった。


「もし、お前の言うことが本当で、ここがラインティアじゃないとしたら答えは二つだ」


「二つ?」


 二本指を立てて見せるジルヴェスターに何だろうかと首を傾げる。


「これが夢かそれとも……異世界か」


 馴染みのないその言葉に一瞬思考回路がストップする。いや、まさかと思う反面、否定できない私がいた。


 ゆっくりと考えてみようとしたところで、しかしながら左ほほに添えられた男の手に思考回路どころかすべてがストップした。



「……え?」



「………」



 添えられた手つきが柔らかいなんて私の気のせいで、整った顔が綺麗なんて見惚れてしまったのもありえない。スッと細められた目にカッと頬が赤くなったのが自分でもわかった。



「なっ!?何すっ……いたたたたたたた!痛いわ!」



 ギュッと予告もなく思いっきり頬を抓るその手を払う。何がしたいんだこの男は。



「痛いか?」



「痛いに決まってんでしょ!」



 何残念そうな顔をしてるんだとジルヴェスターを見る。



「顔、赤いぞ」


「あんたが抓ったからでしょ!」



 実際それだけではなかったが、そんなこと言えるわけがない。しかし、ジルヴェスターは可笑しそうに嗤うと、さっと私の頬をひとなでした。さっきとは違う優しいその仕草に何がしたいんだとさらに頬が赤くなるのが自分でもわかった。



「おかげで、わかったことがある」



「今ので何がわかったか不思議なんだけど?」



 私がわかったことはジルヴェスターがサドだということだけだ。それ以外何がわかったと言うんだろうか。しかし、ジルヴェスターは一転真剣な表情をする。



「ここは異世界で、俺はこの世界の人間じゃない」


翻弄される主人公ちゃん。次の目標はジルヴェスターに名前を呼ばせることです。

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