★両親から見た大樹と向日葵
僕は大樹と向日葵の父である。
そう強く思っているので今の母さんともお互いに『お父さん』『母さん』と呼び合っている。
「ねえ、お父さん。あの子たちの事どう思う?」
「正直に言うと…恋愛感情がちゃんとあってお付き合いをしているとかの方がずっと健全じゃないかなってくらい心配だよ…」
大樹と向日葵は仲が良い、いや良すぎる。
恋人以上の距離感でくっつき合うがそこに恋心は無い。
一見すると熟年夫婦のような距離感だが2人はまだ10代、なぜその境地に達してしまったのか。
「たぶん、恋愛をすっとばして熟年夫婦…じゃなくて恋愛に進む前に心の奥底に入り込んでしまったんじゃないかなぁ…」
そう考えると心当たりがあるのだ。
大樹と向日葵は亡くなった親の事をほとんど覚えていないという。
でも小学校に上がるころの子が親を亡くして悲しくないわけがない。
死という概念が理解できていなくても親しい人に二度と会えない事は悲しいのだから。
その悲しんでいるであろう期間に大樹と向日葵はずっと一緒だった。
まるでこれ以上親しい人と離れたくないかのように2人は暇さえあればくっついていた。
夜に抱き合って寝ているのを引きはがそうとしたら泣きながら叫び続けたので、当時3ヶ月ほど母さんと向日葵はこの家にいた。
幼稚園に入る前の公園デビューから一緒だったし、この時点で人生の半分以上一緒にいたし。
うん、まあ、なぜか生きている父母よりも隣の幼馴染を選んだのは不思議だったけど。
そんな考えを母さんに伝えてみる。
「たぶんだけど親よりも子供同士の方が悲しみ方の波長みたいなものが合ったんじゃないかしら」
「ああなるほど…死がよく分かっていない2人だからこそ悲しみ方が一緒で…」
しかしそうなると…
「あの2人が健全な関係になるにはどうしたらいいのかしらね…」
「過去には戻れないから…恋愛感情でも理解してくれればいいんだけど…」
「年頃の男女からお風呂に入って『自分で洗うよりしっかり綺麗になった気がする』って笑顔で報告された時は内心頭を抱えたわよ…」
「目の前の大樹を、向日葵を、なんかこう家族愛?以外の感情を持ってくれたらねぇ…」
とりあえず再婚を今年まで待っていたのは正解だと思う。
あの2人は正式に家族になったら歯止めが外れたかのように距離が近くなった。
性的に求めないのを安心すべきか、全く興味が無いことを悩むべきか複雑な親心だ。
色々と健全とはいいがたいが今のところ問題は無いのだ。
両親の頭とか、心臓とか、胃にちょっと負担がかかる程度しか困らない。
「まあ、このまま結婚して子供出来たら子供から『パパと一緒にお風呂入りたくない』って言われて目が覚めるかもしれないし放置でもいいのかも?」
「ノーマルな関係じゃないけれど誰かに迷惑かけるわけでもないし…とりあえず様子見で避妊だけ伝えておけば大丈夫かしら…」
別段、困るわけではないし将来に大きな障害が待っている訳でもない。
しかし子供を心配してしまうのが親という生き物なのである。
「まあ…人と違っても誰にも迷惑かけなくて本人たちが幸せならOKだよね…」
「家族になったら本当にタガが外れたわよねぇ…」
願わくばあの2人と僕と母さんの胃に幸あらんことを…
2人を愛しているのと、行動にびっくりするのは別の問題だからね。
同じようなことを母さんも考えていたようで頷く。
「まあ…悪いことはしないんだから動じずに受け入れられるように頑張りましょうか。」
「頑張ろうか。2人は手加減してくれなさそうだしねぇ…」
おどけたように2人で笑いあい見守る覚悟を決めるのだった。




