お風呂回より家族愛
もうマジ疲れた…運が悪かった。
5限目の授業が早く終わり、先生からノートを運ぶ手伝いをしてくれと言われた。
この先生は担任の高橋先生。生徒のことを思いやってくれる人気教師で…定年間際で膝の悪い女性教師なのだ。
そりゃもう高橋先生に力仕事なんてさせられませんよとウチのクラスでは意欲的に手伝いをしている。今日の手伝いは俺だ。
だがこの先生、どうも稀に大きめのうっかりする癖があり…俺は30人分のノートを運ぶ先を間違えられ、学校の敷地の端から端まで2往復してしまった。
正直とても疲れたし途中で休みたかったが俺が疲れているところを見せると高橋先生は自分のやらかしを気にしてしまうだろう。
ノンストップでなんとか運びきると高橋先生に謝罪され学食の無料券をいただいてしまった。こういう気遣いを知っているから生徒たちはつい良いところを見せたくなる先生である。
そして俺は教室に戻って力尽きた。
「大樹ーお疲れー」
「おう、ありがとう…」
椅子に座る俺を後ろからひまが包んでくれる、後頭部が人肌のクッションに軽く沈む…
「…お前なんで落ち着いてんの?普通は興奮するだろそれ?」
「え?いま凄い癒されているぞ?」
「恋は下心、愛は真心と言いますがお二人の間にあるのはもう愛なんですね…」
織田と明智さんは最近コンビかなってくらい一緒に話しかけてくれる。
さすがに最初に喋るのは織田だけど明智さんもだいぶ会話に慣れてきた。
「どうする?膝枕しようか?」
「いやもう次の授業まで3分しかないからやめとくわ」
次の授業で今日は終わり。終わったらはやく帰って家事…は母さんがやってくれる日か。もう風呂入ってしまおう。
★
「ただいま、おかえりー」
「ただいま、おかえりー」
洗面所で手を洗い、そのまま風呂場へ入り湯船を洗い出す。
「あれ、今日お風呂掃除もお母さんじゃないっけ?」
「もう疲れたからさっとお風呂入って夕食まで寝ることにした」
もう疲れたので今は寝たい。だが汗を流さず布団へ入るのは嫌なので湯船…あ、いやシャワーでもいいのか。
「…今日は湯船無しでシャワーで終わらせる。」
「疲れてるだろうから体洗ってあげようか?」
「ひまが背中を流してくれるのか?」
「背中以外もほぼ全部やるよ?疲れているから労おうかなって。家族ならボクも一緒にお風呂入ってもいいんじゃない?」
「そういわれてみればそうかも…?」
俺とひまはお互いの体にくっつくくらいでは全然恥ずかしくないし全身洗われるくらいでは全然問題は無い気がしてきた。
『ほぼ全部』というのは股くらい自分で洗えやって意味だろう。
「じゃあひま、股だけ洗って湯船入って全身温めたら椅子に座って呼ぶわ」
「少ないヒントから完璧に洗われる算段立ててるのなんか笑えて来た」
クスクスと笑うひまを置いて風呂掃除を始めた。
シャワーでいいかと思ったけどせっかく洗ってくれるならめっちゃ綺麗にしてもらおう。
「ひまー準備できたから入ってー。」
「うん、開けるよー。」
タオルも巻かずに生まれたままの姿でひまが入ってきた。
「じゃお願い。」
「任されよう。」
ひまは俺の腕を取りスポンジで体を洗ってくれる。
「なんかこうやって洗われていると磨かれる銅像の気分だな」
「当たり前のようにボクの裸に無反応なのが大樹らしいなぁ…」
安心しているような甘えるような、ほんの少しだけ複雑な顔をするひま。
「魅力的な女の子だと思っているぞ?ただ興奮より癒されるというか、裸を見るよりくっついていたくなるというか」
「ははは、大樹が珍しく顔赤くしてる!そうだね、ボクもそうだよ…」
女の子と一緒にお風呂に入って裸も見てこの反応は一般男性としてはおかしいんだと思う。
でも俺の心の奥にはひまがいて。ひまが居るのが当たり前で。ひまが居るだけで幸せなんだ。
「はい、足の指先まで洗い終わったよー」
「じゃあ交代するか」
「ボクも一回湯船入ってからの方がいいからそのあとでね。」
ひまが股を洗うのはさすがに見たら失礼なので他所を向いておく。
一緒に湯船に浸かって洗うのを交代して、もう一度湯船に入って最後にシャワー。
2人で綺麗になって風呂後は宿題、母さんの料理を食べて夜はまた同じ布団で寝た。
隣にずっとひまがいる幸せな日がいつまでも続きますようにと願いながら…




