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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第30話『抗争!構想!!戦争!!!涙一族 VS ルミルミ、まで』
88/267

Aパート

東京駅、奪還作戦。

因心界側とSAF協会側。

初日は調査と戦略の立て方からだ。

それから1日が経ってからの夜。



「此処野まで東京駅に入ってしまったようだ。元、"因心界"の白岩とヒイロもだ」

「だったら囲んでシットリは外で倒すべきだろう」


嫌な口で喋りながら、戦略会議の場に足を運ぶ革新党の大幹部の数名。

東京駅からそう離れていない地点を革新党の力で買い取り、奪還作戦の具体的な話し合いを今行うところだった。

因心界という組織は昔からそのやり方ではあったが、1つの組織とは言いがたい。今の状況は特にだ。



ガラアァッ



料亭みたいな雰囲気の内装。ブルーマウンテン星団の田所が面白半分にやったそうだ。ご馳走まで置かれたテーブルに、座る席の代表者は10名。……おっと、粉雪の秘書である南空は彼女の後ろに立って参加するらしい。嫌だとか、本人言っていたけど。粉雪の説得に折れた模様。


「足を運んでいただき、ありがとうございます」

「……ふんっ」


話し合いのど真ん中には因心界の代表として、涙キッスが座る。その右に粉雪……。左側は不在。キッスの後ろにはモニターがあり、まだ映りはしないが。因心界の誰かだろう。


「ここまでの失態続きで、よくもまぁ。軽々と我々革新党を動かす気になるものだ」

「その心は評価されるべきところですな」


革新党の大幹部。全5名。

党首である網本粉雪の配下ではあるが、彼等もまた独自の組織や実行部隊を率いている。安定のためとはいえ、自分達のトップである粉雪が因心界に加わっている事には不快感を示し、このような口がでる。

この会議で出席したのはその中の3名であった。



「………我々、革新党は今回の作戦に参加できるメンバーが揃いました。もう戦略会議をして構わないでしょう。網本党首」



南空茜風。



「他はいらん。暇ではない。俺は映画撮影もあるんだ。東京駅を開放せねば、再開のメドが立たないがな」


橋下明太はししためいた

普段の仕事は広告塔となっている人気俳優。俳優であるため、40代の年齢ながら若々しい。妖人ではないが、銃火器を使ったり、部下を率いて戦う。


「戦略などと、こうして話す場は革新党だけでいいかと」


遠江タチサラ。

とある大学の50代の銀髪の眼鏡教授。……白髪じゃないし、ハゲじゃない。資源の研究を行なっており、世間ではたまにコメンテーターとして登場する。革新党に支援される形で革新党にいる。妖人でもあり、口パイプの妖精を所持している。



「いやいや、お忙しい中。申し訳ないが、あとの連中も作戦に必要でな。壌さんだけのご欠席を認めてしまってすまない」



娘が倒れたことで欠席をした野花壌もこの革新党大幹部の1人である。

軍事、政略、研究。などなど、様々な分野に手を伸ばしているが、市民への想いは少ない。というか余裕はなく


「あなた達の頑張りは国民にあるんじゃなくて?私、忙しいけどやってるわよ」

「党首に言われたらな」

「そうですな」

「はははは、私が中心に立っては不満だったかな?まぁ、来る連中は粉雪に不満があるんだろうがね………あ」



そうキッスは、この場で言うんだが。自分も凄く嫌に思っている人物が先に来てしまった。

足音だけで分かってしまう。

なんでそっちが先に来る。


「失礼。革新党の"立場メンツ"を考え、2分遅れて入室致しました。涙メグです。キッス様の左側の席で宜しいでしょうか?」

「メグさんは一番距離が離れるように、私と対面になってくれ。私の左は蒼山達だ」

「残念であります。まだお見合い写真を一枚も見てもらえておりません」


うわぁ、嫌な野郎が来たなって。因心界側も、革新党側も嫌う連中。

そして、その次にモニターから映像が流れる。



ブツゥンッ



『よーーっ!悪いが俺とカホはモニター出演だ!』

『いちお、涙一族としてこれで代表3人』

「……ナギとカホはモニターか。ならば私だけが直接呼び出された事は、見合い写真を見てもらえるという事ですね」

「ああ、粉雪が見てくれるってさ」

「おい。キッス……」

『わははははは!メグ、悪いが好き勝手は許さねぇぞ』



因心界の本部からモニターで涙ナギとカホの2名が参加。キッスの指示も悪くないと、メグもキッスから一番遠い席に座る。

そして、もういい加減。会議を始めろって顔になる革新党の橋下と遠江。これだけのメンバーでも相当なのだが、



ズンチャカ,ズンチャカ


「?なんの音……」

『これはあいつだ。間違いねぇー』


トゥートゥー


ズギャーーーーンッ


ロック調の激しい曲だが、その音源はなんか古臭い。


「COME IN!COME IN!HEY YOU GO HEVEN!」


大きめのラジカセを肩に乗せ、サンバっぽい派手な衣装。この殺伐とした空気をぶち壊すような、陽キャじゃなくバカキャラのそれ。ここに集まった男達の中でも、南空に次ぐ高齢者。しかし、それとは思えない流用なダンスと歌を披露。



「GIN,GIN,勃起っててー!!OH! OH!!PAN,PAN,イこうゼェー!!OH! OH!!飢えたCHERRY BOYS!!」


曲を流して、歌って、踊ってやってくるハゲ。


「ブッ壊してぇんだ!常識ってヤツを!!」


すでにこいつに常識ねぇだろ。そんなツッコミをしてくれるのは、


「2番まで歌おうとすんじゃねぇっ!!このハゲーーーー!!」


メンバーのリーダー。さすがに恥ずかしいと思うんだろ。


「そんな頭イカれる男の曲を歌うより、『○液ゴックン』を歌え!!猪野春!!」

「あんな電波エロソング、歌えるわけなかろうが!!宇多田!!あれこそ、頭破壊される曲だわい!!」


ラジカセのとり合いを始める、宇多田響と猪野春雅。2人の仲は悪い。

こんな奴等を呼んで大丈夫なのかと、多くが心配するわけだが。


『ぎゃはははは!!』

「ぷっ………」


ナギは爆笑。メグは笑いを堪えきれない表情になっている。一方でカホはドン引きしている。彼女達が正常。それに注意を言える人間。


「ちょっと!宇多田と猪野春。変な歌を歌わないで頂戴!!耳が腐るわ!」


歌唱力マイナスに振り切ってるお前が言うなよ、粉雪……。みんな、心の中で思っておく。


「遅れました~~」

「えひゃははは!いいですなー、猪野春。宇多田!」


派手に現れた猪野春と宇多田に反して、蒼山はコソコソと入って来て、さりげなく。そして、指名されたとおり。キッスの左隣に座る。田所翔也はその隣。

はからずも、猪野春はメグの隣の席になる。するとすぐにメグが彼に


「矢萩をよくも壊してくれたなぁ。猪野春」

「んん~……まぁ、生意気なメスガキじゃったからな」

「雰囲気は潰れてしまったが。キッス様、彼等を戦力と加える判断は間違いないでしょう。私は保証します」

『俺も、ブルーマウンテン星団には苦労した。味方なら心強いもんだ』

『……変なことを考えてないでしょうね。ナギ~~……』


涙一族の面々が彼等を推薦。正直、革新党としては涙一族も、このブルーマウンテン星団も好きにはなれないんだが。


「メンバーはこれで揃った。これより、東京駅奪還作戦。対SAF協会の作戦を伝える」


涙キッスの戦略の元。過酷な戦いに入る。

いつもの因心界メンバーとは異なり、殺し合いもしてきた者達が手を組むという人間達の異常。4つの組織が協力し合うということもだ。

全作戦も、その総責任も涙キッス。因心界の負担となっている。



◇      ◇



ヌチャァ



そして


「ぎゃはははは!!ノロマナメクジーー!!」

「ルミルミ様、ご説明をお願いします」



東京駅を拠点にしたSAF協会に、ようやくシットリが合流するのであった。

騒ぎを知った者達、あるいはそうやって動くよう指示された者達はとうにやってきたというのに、肝心のシットリがビリケツ。それも1日遅れという醜態。

此処野にこれでもというばかりに笑われるものの。ルミルミに対して、質問という威圧を忘れていない。



「……んもぉー。それは確かにだけど」


本来の戦略とズレが生じている。

とはいえ、


「結果、できたんだからいいじゃん」


あんた、それはナメすぎだろうが。


成功してればいいを提唱されて、人間を滅ぼせたら苦労はしない。どこの誰のおかげで、人間側の協力者などを用意できたか。


「身を心配しました。しからば、ルミルミ様の危険な行為は控えていただきたい」

「いーよ、お節介は!!」


説教が短めに終わり。戦略もまた立て直しになった以上。


「しばらく、このルミルミちゃんの考えにみーんな、従ってね!!」

「構いませんよ。ただし、あなたの無茶だけはこのシットリ。止めさせていただきます」

『なる結末が同じであるなら』


一通りの反省会が終わったところで。

このSAF協会も因心界を初めとする人間達を滅ぼす計画に入る。一同を広い空間に集めて


「シットリ以外には秘密にしていたけど。よーやく、この作戦を始めるからね!!シットリが考えた作戦だから!ぜーーーったい、上手くいく!」


その作戦を初っ端からぶっ壊したのは、あんたなんだけどって……シットリとダイソンは後ろで思ってしまうのはしょうがないだろう。失敗したらシットリのせいにしそうでもある。

ここでSAF協会の現状の戦力の確認。



「あたしはこれから因心界の本部に行ってーー、涙一族を全員、ぶっ殺してきます!!こいつ等だけはあたしがやる」



現在、最強の妖精と言っても良い。

ルミルミ。



「…………物騒だな、ルミルミ義姉さん」

「じゃあ、キッス様が危ないよね」


白岩印と太田ヒイロ。

因心界から追放され、SAF協会で世話になっており、積極的な戦いに参加するとは思えない状況だ。



「あの赤ちゃんがホントにリーダーなの?」

「そうだよ。あんまりそーいう事言うと、怒るから気をつけた方がいい」

「消し炭にされますよ」



寝手食太郎とアセアセ。

怠け癖のある寝手ではあるが、実力はシットリが認めるほど。おそらく、今回ではその全ての実力を見せることだろう。


そして、ダイソンの新たな相方、黛波尋。

彼女が初めて出会った人に、目を奪われた。


「なっっ……」


な、な、な、な、なんですか。あのバカでかい胸はなんなんですか!!?背はそこまで私と変わらないのに、なんですかあの胸!!バルーンみたいな異様な膨らみはなんなのですか!?反則じゃーないですか!!隣にイケメンはべらせた。ムカつく、あの女ぁぁぁっ!!!顔イマイチ(黛基準)だからって、そんな胸を持つのはダメでしょ!!

あー、あんな幸せそうな女は許せない。


どうやら、黛には白岩印を一目でイライラしてまうなにかの差があるらしい……。

一方でアセアセは


「はぁ~~……」


あの、"聖剣伝説Ⅱ"の主人公、ヒイロ様とご対面。あとでサインをいただけないでしょうか。あー、ホントにカッコイイ。あの方のお姫様になりたい一心で人間になる術を身に付けた。SAF協会に入ったのも、ヒイロ様のため!!

ネトラレチャンスありますかね……。薄い本展開でもいいですけれど……。せめて、サインだけでも。握手だけでも。



ピクンッ



黛とアセアセの目が合う。そして、それを知ってか知らんふりをする寝手。当然ながら、白岩とヒイロは彼等を気にしてはいない。



「……アセアセだっけ。あなた今、私と似たような事を考えなかった?」

「黛ちゃん。私、あなたと仲良くなれそうにないと思ってたけど。実は同族なのでは?」


奇妙な友情を出し、最低な策略を仕掛けようとするところに。

よからぬ虫がヒイロと白岩に近づいて話してきた。


「誰の首を持って来て欲しいよ、白岩よ~」

「!雑魚の此処野くんじゃ誰も殺せないよ!みんな強いんだから!!」

「……あっちにいっていろ。此処野」

「指咥えて仲間を見殺すテメェの震えがたまんなさそうだ。次はお前等だからな」


此処野神月。

イカレ戦闘狂。

現在は白岩とのパートナーでいる事が多い。戦闘能力はルミルミも一目置くほど。だが、最も恐ろしいのは殺戮に対する意欲だろう。

手加減とはいえ、ヒイロを倒し。佐鯨や飛島、マジカニートゥも追い詰めていた実力は確かだ。


「いつになく賑やかだ」


ダイソン。

箒の妖精であり、新たに黛と契約。実力は録路と五分。飛島も倒しており、SAF協会への忠義も高い。


「私としては全然OKですよ」


アイーガ。

カチューシャの妖精。ラクロに体ごと食われてしまったが、ルミルミのおかげで身体を取り戻すことに成功。



「…………お前達。少し黙れ。ルミルミ様のお言葉だぞ」


そして、シットリ。

ナメクジの妖精。

実力はルミルミ、白岩とヒイロの2人、と互角と言われるほどの実力者。それに加えて、精神面と戦略などの総合的な強さではルミルミより厄介とされる。

このメンバーに加えて、未だに発表されない2名がいる。



「でーーっ!!話聞かないと、みんな大変だよ!」


シットリの言葉がとても優しいと思える。ルミルミの嫌な言い方。本人、自覚がないから余計だ。



「とりあえず、紹介からね!!さぁー!!モニターを見て!」

「!!」


モニターの映像にしたのは、ルミルミなりに情報保護のため。

自分が運んで設置したあのタマゴ型の球体が映っている。

見えるだけじゃ、あんまりよく分からないが。禍々しい感じは伝わるし。この場所よりもさらに下から邪念の源はこいつだろうとみんなが察する。


「これがあたし達の切り札!残念だけど、正確な場所はあたししか知らない!」

「この地下にいるのは感じるぜ」


場所はまぁ……どうでも良いだろう。それがなんなのかって事だ。


「これはジャネモンを産み続け、邪念を捕食していくんだ。目的が達成されるまで邪念を追って食い続ける。みんなが集めてくれた邪念のおかげで、行動範囲も知能も……当然、力も!十分なレベルになった!あたしの手助けもあるけどさ!」


言い方はイマイチではあるが、読み取ったヒイロはそいつがどれだけの脅威かが分かった。

言葉を本気にするだけの実力がある。



「詳しくは知らないだろうけど。とりあえず、人間界をジャネモンだらけにして結構な数。死んでもらおうって事で!!作戦は以上!!」


紹介だけされて、作戦というものは特にないし。


「なんで私達、集まったんです?」

「あたしが自慢したかった!!」

「…………」



その気しかないんだろう。とりあえず、出方を伺って作戦を練る模様。全員にルミルミがお願いする事は。


「涙一族を滅ぼしてくるまで、この東京駅を守っておいてね?」

「大雑把過ぎるので、出方次第で私から皆に指示を伝える。もう発動している」



◇      ◇



ブキィィッ




アスファルトの中を這い上がってくるように、



「じゃね~~~」



地上に生えてくるジャネモン。理性や知性は低く、とにもかくにも。まだ多くが無感情でいる怪物が満たそうとするのは、喰らおうという欲。空腹を満たせる邪念。

そいつはすぐに東京駅周辺に、同種がウヨウヨといた。

ルミルミが生み出し、そして、命令故に食べられる運命をただただずっと待つ。



ガツゥガツゥ



同種を喰らうと同時に、取り込んだ邪念によってジャネモンの体が変化し始める。

1つの個体に複数の邪念を取り込んだりする事ができると考えれば、野放しにするのは危険であり。人間などの生物で可能な手段であれば、恐ろしいことになる。

そして、これらの兵隊は王の身体にも流れ込んでくるということ。



シンシン……シンシン……



SAF協会などに頼らずとも、人間の持つ全ての邪念を食らって誕生しようとする活動。

結局、東京駅に生き残ったジャネモンは数体になったが。その数体はいずれも200頭以上のジャネモンを喰らい、死体として転がる人間達も喰らっての成長。1体で200体以上のジャネモンと戦うと同じくらい。

さらなる邪念を起こし、喰らうべく、東京駅の外へ活動地域を広めたとき



シンシン……シンシン……



不思議なことに、東京駅の外側では雪が降っていた。白くて毒々しい結晶をした雪。それはジャネモンが領域内に入った瞬間、感知するように降雪量と風速をあげ、優しい雪景色から絶望の吹雪へと変化していく。

ジャネモンのどこらへんに視覚などがあるか分からないが、身体に掛かる負荷を感じつつも、この程度の吹雪では倒れそうにない。吹雪のど真ん中を進んでいき、人間のいる場所へ踏み込もうとした。



「今」



シュパァッ


雪で隠れていた何かのスイッチが踏まれて、発動。

地面に積もった雪が一瞬にして下から発生した光に吸い込まれる。穴に落ちたという表現ではなく、ぶっ飛ばされたでもなく。送り込まれるように今いる場所から違うところへ……。



「あれ?もしかして、東京駅から出られてないパターン?」

「さすがに因心界が何か準備をしていたようだ」


地下からジャネモン達の侵攻を見ていたルミルミ達であったが、東京駅の外で降っている雪を見てジャネモンがなんらかの手段で消えていくことを察知した。



「空を飛んでいてもダメなようですな」

「あらら…………」


東京駅を占拠したが、東京駅に閉じ込められてしまったような状態。ジャネモンはドンドン生まれて、東京駅の外へ行こうとするも、雪が降っているその外側までいけない。どーやって、消されているのかも分からない。

そして、降ってくる雪はじっくりと東京駅の周囲に積もり積もっていく。


「なら結構。ちょっとは楽しませて欲しいしね」

「ルミルミ様。あまり悠長な事を言っている事ではないのでは?ジャネモンの無駄遣いになるだけです。摂取できてこそ、無限になっているわけですから」



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