Bパート
「それにしても、いいんですか?」
「なにが?」
「僕はともかく。視界封じと転送の役目で、倒すのはキッス様って……楽しすぎっていうか」
東京奪還作戦。
その作戦会議が行なわれ、3つの段階でいく形となった。
第一段階での戦い方は、因心界が中心となる戦い。
「クールスノーが戦いたがると思ったんですが」
「……………」
普通に会話をしているように見えるが……。
オフィスビルの一部屋を借り、東京駅周辺を囲う吹雪を発生させつつ、戦況を操っている粉雪と蒼山。
クールスノーは政治の本を読みながら、向けたくもないスカートラインに視線を向け
「あんた、よくその姿で私に話しかけるわね」
「……あのーーーー!!僕をこんな事にしたの、クールスノーじゃないですか!!」
なんでお前が言うねん。そーいう顔。
今のスカートラインはクールスノーの雪が詰まった巨大水槽に放り込まれ、シールの能力で身体を固定され、口だけパクパク動く存在だった。そりゃあ、蒼山だからな。
「せっかく!!せっかく!!クールスノーとご一緒の作戦なのに!!なんでこんな仕打ち!?虐めじゃん!パンツ嗅がせてください!」
「顔も埋めてあげようか?」
ジャネモン達の侵略を軽々と足止めしたのは、クールスノーとスカートラインのコンボ技だった。
とにかく、SAF協会が東京駅から出るのは至難ではあった。
「まーったくっ。それじゃあ、エロ本ぐらい読ませてあげるわよ……っていうか、あんたは相変わらずね」
「ちょっとー!人の荷物漁らないでください!!ぼ、僕の同人誌、"BLUE MOUTAIN"を見ないでください!!」
「あのさ。因心界の女性達を勝手に裸にするのって、どーなのよ?内容もモテない男達の願望でしかないし」
「ぎゃーーーー!止めてください!!僕達はそれで興奮するんです!!」
少しは自由にしてあげ、本くらいは読ませるように自由にさせるものの。粉雪も蒼山が作っているエロ同人誌を見ながら
「あーあ。男ってホント最低ねぇ。胸ばっか胸ばっか。巨乳中心。自ら変態だと名乗らせるような展開……。あーあ、積極性の欠片もない男達の願望ね。こんな女があんた達の目の前に現れると思ってんの?馬鹿じゃない。モテるわけないじゃない」
「エロ本読みながら、そーいう発言を僕に向けないでください!!想像は夢なんですよ!!」
からかい方がグサグサと心に来る。
戯れというご褒美もここまでにして
「さっきの答えだけど。キッスがやるっていうから、譲ってあげたのよ」
「野花さんが無事に帰ってきたからですか」
「それもあるわね。それと、ルルのことでちょっとお怒り気味だし。あいつ」
「ふーん」
役目として、倒すのはクールスノーでもキッスどちらでも良かったんだろう。
「あら?もしかして、キッスと一緒になりたかったわけ」
「はいいいぃぃっ!!YES!キッス様の方が大好きですぅぅっ!!」
「まー、私はあんたの不満に答えられなくていいんだけど」
蒼山と話すと時間が無駄になりそうだ。
感情的なことを言ったが、戦略的な事を言うと。
「キッスの強さは抜きん出てる。久々の実践だからってのもあるだろうけど、あいつが戦場に出ればそれで十分。倒すだけならあいつの方が安定してる」
「もしかして、クールスノーはキッス様の方が強いって?」
「それはどうかしら?」
キッス達の作戦はまず、SAF協会の足止めと分断である。
地上、上空をクールスノーとスカートラインが抑え込む。
一方、地下通路の方は革新党が中心に、東京駅に通じる道を順々に封鎖し始めた。地下からなら武力でぶち壊せそうだが、それならそれでと東京駅をすぐに奪取するまで。
東京駅周辺の雲のほとんどはクールスノーの雪雲。それにキッスもいれば、すぐに東京駅の奪還はできる。
地下からコソコソと逃げる分には、こちらが穏便に"作戦勝ち"というシナリオで持ち込める。
とはいえ、性格と戦力を考えれば、封鎖しとけばまずそれはないだろうと予測はしている。
「SAF協会に多少の戦力増強があると思う行動だから、先にキッスが削るのは作戦としては正しいからね」
「なるほど」
「私とキッスがいて、……あんた等もいるわけだし、強行突破で来るでしょ。そうさせるのが狙いだし。私達の標的は、シットリとルミルミが何か企んでる奴の破壊」
涙一族に恨みがあるルミルミに対し、その涙一族の配下を因心界の本部の守護に配置したのはルミルミを呼び込むための布石。
そして、そのルミルミ以外の戦力を抑えるために、クールスノー達がいる。
「キッスを倒すのなんて、まぁ無理でしょ」
◇ ◇
ザザーーーーー
世界地図には示されていないが、衛星からの情報で取得はできる小さな孤島が日本にはある。
無論、無人。
荒波と海流の関係で、人が自力で来るにはまずあり得ない場所。
ピュゥゥッッ
「じゃね~~~」
東京駅から送り込まれたジャネモンがここにやってくる。
「次はお前か」
1対1なら望むところ。無論、複数相手も構いやしない。
飛行能力を持つジャネモンも想定しており、ここで廃棄させておくための処理人が必要。キッスはその役目である。
「じゃねっ!!」
「ふむ。君達も、……そうだな。私の両手の小指を使わせるくらいの強さはあるようだ」
『油断してねぇな。キッス』
両手の小指を向けての挑発。ナメプ。さすがにイスケを装備しているが、全力ではない。
ナメプ=勝ち勝負。それを理解している相方のイスケだ。
ドゴオオオォォォォッ
キッスの小指に切り裂かれるような傷を負って、浄化されるジャネモン達。メチャクチャな強さを見せつけ、ジャネモンを東京駅の外から出さないでいる因心界達。
戦いの1日目は、因心界側の優位で終わった。
◇ ◇
2日目。
「んんーー……すっごい、雪~。見た事ない」
『あまり顔を出すな。黛』
「この雪も、ダイソンと似た使い手がやってることなの?」
『ああ。俺より格段に強い奴だ』
相変わらず、クールスノーの大雪が東京駅周辺を包囲している。
『外の様子は分かったろ。中に戻って状況を見守ろうぜ』
その滅多にない光景に外を見にきた黛。これほどの吹雪だと、社会を麻痺させてるレベルだろう。黛やダイソンだけでなく、アイーガ、シットリ。白岩などなど……。
SAF協会の面々は、ルミルミを除いて、東京駅からわずかに顔を出した。
気分転換もあるが、個人の状況把握だ。
それぞれの思惑があり、チームワークというのは少し呼べない関係。今のところは何もできないが答えでもある。
包囲はされているが、東京駅は巨大な施設。散歩する程度、みんなが集まれる場所はいくつもあり、黛達はそこに集まって待っていた。
「シットリの野郎が指示するまで、俺達は待てか……つまんねぇな」
せっかく近くにキッスと粉雪という大物がいるというのに、待ちを選択せざるおえない此処野。
「うーん……」
別にあんたは死んでもいいから、行って来ればいいのに……。
そんな考えをアイーガは思ってはいたが、口に出さない。しかしながら、
「此処野くんがあんな雪の中歩いたら、すぐに凍死しちゃうよ。行かない方がいいよ」
「!テメェッ!!白岩!!テメェ、ぶちのめしてやろうか!!ナメてんじゃねぇぞ!!」
「喧嘩は止めろ。無駄に戦って得はない」
ヒイロはルミルミとジャオウジャンの出方を待っている。
白岩もヒイロの言葉と同じく。今は静観すべき態度をとる。此処野をなんやかんやで諌めているのも、良きところだ。
「はぁ~~。幸い、食料とかにはまだ困りませんけどー」
「篭城を続けるのは得策じゃないわね」
アイーガ、黛は溜め息をつきながら、この待機に不安を感じる。
『……寝手とアセアセはどこにいる?』
「さぁ?」
「すぐに戻ってくるだろう。あの連中はどうでもいい。それよりもシットリだ!!あの野郎、指示をさっさと出しやがれ!!姿も見せねぇしよ!」
「…………おそらく、シットリは。今のところ、ルミルミの好きにさせているところだろう。まだ余裕はある。それにまだ1日が経ったところだ。俺達が浮き足を立ててれば、信頼に関わるんじゃないか?」
シットリも不在の中。元敵ではあるが、この中でまとめ役を買ってでるようにヒイロが口を出す。
ダイソンが力不足を感じながらもヒイロを抑える役目をシットリに言われたが。こうしている限りは安全だろう。
ルミルミとシットリを除けば、基本的にみんなは誰かしらと行動をとっている。
その中で個人行動がやや目立つのがこの男だった。
「やっぱりクールスノー様だけじゃないか。……ラフォトナも一枚噛んでいるわけだね」
どこかと連絡を取り合っている。
そのやり取りを秘密にすることと。周りに聞かれないよう、アセアセが見張りでついている。
「男子トイレの個室でやるのはどうかと思いますけど」
連絡を取り合う相手は不明ではあったが、おおよそアセアセには予想がついていた。
"スリープハンズ教団"
寝手が組織している、ちょっとアレな組織だ。
ネット界隈で存在が確認される組織であり、その実態は……ブルーマウンテン星団と差はない。如何わしい組織だ。
「"決行の合図が出たら、みんなを集結させてね"」
何かの作戦。企みを感じさせるもの。
アセアセはそれに少しの不安を感じてはいる。そんな不安を知ってか知らずか、声をかけるもの
「なにをしている、アセアセ」
「えっ!?シ、シットリ先輩!!」
「さっさとみんなのところへ戻っていろ。指示は後で出す」
「わ、分かりましたーー!」
足早にみんなのところへ戻っていくアセアセ。
シットリが神出鬼没で現れてくるもんだから、ビックリしてしまう。
先にいってしまったアセアセ。それを確認してから出てきた寝手。彼を見たシットリは
「……………これでいいのか、寝手?」
「ああ、"計画通り"だよ」
シットリと寝手の妙な企み。
それを知っている者はまだ、このSAF協会の中にはいなかった。
◇ ◇
"二十四皇征"
外部から邪念をより取り込むため。より強大な力を持つ怪物を生み出す。
ジャオウジャンの誕生には、邪念の生体変化が幾つもあり。その配下の怪物達も強くなっていくのが特徴である。
その中の生体変化に、24体の強力なジャネモン生成がある。
ゴポポポポポポポ
「あたしのジャネモンを食ったのに、それだけしか強くなれないんじゃ。あんたって大したことないんじゃない?」
大雪を進むジャネモン達が、何かの能力で消され、存在すらも完全に消える。
因心界側の作戦にまんまとやられてしまっている、ジャオウジャン。邪念で動いているこいつが憤怒を見せて対抗するのは普通に想定できる事かもしれない。
ルミルミが焚きつけたのは、涙一族を葬るまで力を温存しておきたいところと世界の滅亡にはこいつがいなきゃならないからだ。
ルミルミの煽りに乗って、まだ成長途中ではあったが。
"二十四皇征"
邪念の基礎となる"24つの感情"。それぞれを怪物化させた、24体の捕食者を生み出し始めるジャオウジャン。
メゴパァッ
単純なジャネモンは邪念のままに暴れる。だが、"二十四皇征"であるジャネモンと、それから上位のジャネモン達は、まだ誕生を待つジャオウジャンの意志に従い動く。
まだ口が生成されていないジャオウジャンに代わり、生まれゆく。
姿は全て、人間体に近い。これは邪念の発生が人間に対して多く、その生物の影響をより濃く取り組んでいるからだ。
バギイイィィッ
まずはその、18体。残り6体も生まれてくるだろう。
その1体がルミルミに問いかける。
「妖精、ルミルミといったな。……我々が"何者か"を知って、共謀しようというか」
「汚い人間共を消せれば、悪魔にでもなるよ」
「悪魔か……。我々と妖精は相反する者だろう」
「あんた、名前は?」
「トラスト。ジャオウジャン様のお手伝いを務めます」
生まれることができたわけだが、ルミルミには服従関係ではなく。パートナーという関係に近い。
ルミルミに対しても、気押されずに話すトラストはジャオウジャンの感情をそのままに吐く。
「我々の邪念が許すものではありません。お前等の力を借りずとも、滅亡してみせよう」
やや丁寧語なのは、トラスト自身の個性に近いだろう。
ジャオウジャンの意志を知ったルミルミは、
「まー、好きにしなって。シットリもそーいう指示を言ってくれてるからね」
「……それと、あなたはまぁいいですが。ジャオウジャン様はこれより我々がお守りしますので。不要な護衛も守護も必要ありません」
「そーしてくれなきゃ、このルミルミちゃんが疲れきっちゃうって!!きゃは!」
ルミルミが焚きつけたのにも理由はある。
「ふぁっ……今日はもう一眠りするかなぁ。良い報告を聞いて起きたいよ」
「……言われなくとも、あなた方に関係なく」
ルミルミはセーシとの戦闘もあったし、ジャオウジャンを生み出すまであまり休まずにいた。シットリやダイソンならともかく、ヒイロ達に任せるわけにはいかないこれ。
ジャオウジャンの防衛機能が発揮されれば、ルミルミも休むことができる。因心界側にいいようにやられたが、元分はしっかりととっている。ジャオウジャンがこーいう体制をとれば、ルミルミが自由だ。
シットリ達には待機を決めさせ、自分は堂々と睡眠。ジャオウジャンにシットリがいれば、攻めて来ることはないと、安心の眠りにつくルミルミ。
目覚ましは1日後に回しておいた。
「ぐぴーーー……」
誰も知らないところでぐっすり眠るルミルミ。
一方で、トラストなど。生まれた18体の、"二十四皇征"のジャネモン達は東京駅の包囲を打破するべく行動を開始する。
「行きなさい。ジャオウジャン様復活のため」
合計24体の特別なジャネモンの内、12体が東京駅の外へ出る。
吹雪に見舞われている東京駅周辺を進んでいくジャネモン達……。
視界、足場、それらが分からない中での強行は、強さへの自信だろう。
だが、
「!少し強そうなのが来たな」
悪天候や多少の罠の危険を理解していても、こいつへの危険は薄すぎた。見えてないからこそ、甘い判断。
「そーだな。……君達は私が右腕全部を使ってやらねばいけないほどの相手だな。使うのは右腕だけにしておこうか」
転送された先で待ち構えている怪物、涙キッス。
ジャオウジャンが生み出す、特殊なジャネモンでさえも彼女の力の前では、ナメプされるだけでしかない。
ドゴオオォォォッ
「複数全員で来ても良かったが、効率的にやらせてもらうぞ」
キッスは宣言通り、右腕一本でジャネモン達を粉砕していく。彼女にまとめて掛かれば、ワンチャン驚かすくらいはできたかもしれないが。クールスノーとスカートラインに分断されるせいで、ほとんどが1対1でキッスと戦うことにされる。
そうなれば、必然の敗北。
出撃したジャネモン、12体あっさり全滅っ!!
「あははははははは!!強すぎる!!強い強い、最強だああぁぁっっ!!キッス様、たまんねぇぜ!!」
馬鹿じゃねぇのってくらいに笑いこけている蒼山。
面白いように出てくるジャネモンを、キッスの元へ送り飛ばすだけが仕事なんだが。敵を思うように葬る快感には笑いしか出ない。
「うはあぁっ。やっぱり惚れるなぁぁ。あーっ……あーーーっ」
「……ちょっと。蒼山、興奮すんのキモイんだけど。別にあんたはなんもしてないに等しいでしょ」
「いやぁ。無理無理っ。勃ってしまうよ、こんなに……こんなに強くて美しい人を」
○奴隷より極上な僕の○にする、その征服感が抑え切れねぇ。
「"今"は味方にして正解だ」
「イカれてるあたり。"あんた"もそこそこ、この戦いに想い入れをするのね」
「ふひひひひ、いひいぃっ」
普段から気持ち悪いオタクではあるが。キモさは男という人間の下種さが出ている表情だった。
乱暴に興奮する弱者そのもの。
「そろそろ第二段階の作戦になるのかな」
「そーね。少しは篭城してくると思うけど、概ねそろそろ破ってくるでしょ」
2日目。
そして、3日目。
SAF協会はこの全滅以降、なんの動きも見せずに篭城するのであった。そして、それは因心界達側も動きがとれない状態でもあった。




