Cパート
「あれりゃ?」
ルミルミの高速移動はずば抜けており、自由気ままな性格も加えて一度野に放たれると手に負えない。
シットリかダイソンのどちらかが傍にいたのも、この危険性があるからだ。
「な~んだ、ヒイロの奴。もうジャネモンを出してたんだ」
からかいに行くとシットリに伝えるも、クールスノーを足止めしているヒイロがすでにその手を打っていた。ルミルミがお遊び半分でそれをからかいに行くのを止めたのは、噂と今の現実を見るべき、様子見。
まだ、ルミルミがこの場にいる事を知るのはシットリのみであった。
「じゃね~~~」
街の博物館に展示されていた恐竜の模型にとりついたジャネモン。
古代に生きて、死んだ生物が"喰らう"野生を飼い慣らす事で現代の怪物として誕生した。
ゴチュゴチュ
肉と血、栄養。
それらを欲する生物が街に現れれば、人の群れに襲い掛かる事も不思議じゃない。
「わーーー!人間を食べてる骸骨が現れたーー!」
「あれ、ジャネモンって奴よーー!」
体長7m。まだ骨の形が多いが、人間を喰らってかつての体を取り戻しつつある。かつての肉体を求めることは食事と野性の暴力。
住民達を容赦なく、喰らい続けるパニックに。
「因心界を呼んでくれ!」
「早く連絡して!」
対抗する力を持つ、因心界の名が挙がる。
死者はざっと10人以上。怪我人も多い。急ぎの解決が必要。
そんな中で
「あれはジャネモン!人の邪念を利用して、この世界を脅かす怪物だよ!」
まだ因心界に所属していないが、ロゾーと浦安がそのジャネモンに遭遇する。妖人となったからには避けられぬ、試練であり、宿命。邪念を祓う。
「ちょっと待ってくれ」
「え?」
「なんでいきなり、あんな強そうなのと戦うんだ?」
「ええぇ」
人間を喰らっているジャネモン。凶暴さを目の当たりにし、浦安。
「いや違うだろ。なんつーかこう……弱そうなのにしないのか?」
「立ち向かう勇気が必要です!!」
「絶対に勝てる相手と戦って自信をつけるべきだ」
「どんだけ下のレベルを捜さなきゃーならんのですか!?」
怖気づいている……というわけではないが、避けている。
この男
「というかなんで、俺が戦う?」
「いやいやいや!せっかく妖人になったんだよ!」
「させられた感じなんだが……」
「頑張ろうよ!!」
やる気がない。加えて、自分の意志を感じさせない。
とんでもない素質を秘めているのだが、とんでもない人間性じゃないのかとロゾーはこの時、遅いながら感じ始めた。
妖人の素質は人間性の欠如からくるものだとすれば、こいつは相当な感じだ。
人間として生きている意味を完全に放棄している。まるで人形のような人間。
「じゃね~~~!!」
ジャネモンが浦安とロゾーに襲い掛かってくる。もうヤバイと思って、浦安がロゾーに言ったのは
「助けろよ!」
「もーーっ!」
他人事だった。
シュピイィィッ
地面から4つのスタンドライトが生えてきた。そのライトはそれぞれ白、黒。赤、水色に光り輝き、浦安を照らす。
彼の身体がカラフルに光り出し、変身していく。
西洋の甲冑と、魔法使いのイメージのローブ。
「え?意味とか言うの?」
「そうだよ!!」
少し恥ずかしがっているのか、顔を赤らめている浦安。もう襲われかけているところなのに、なんで流れに逆らうとロゾーは思っている。
仕方なしの感じだが、
「『この世の全てを明かす者』、"グランレイ・プルーフ"」
意味にポーズもとって、
「じゃねぇぇーー!」
バヂイイィィッッ
ジャネモンに踏み潰される……。
さすがに長い変身時間は待ってられないと、先制攻撃。
腰が砕けるように地面に尻をつけるプルーフを守ったのは、変身のために使っていたライトの光だった。
「絶対証明の光!!」
「じゃ、じゃね!?」
恐竜のジャネモンは何度もプルーフとロゾーを踏み潰そうと躍起になるが、光りが壁の働きをしているような現象でそれができない。
「は、はへぇっ……」
「この光がある場所は絶対領域」
かなり狭い範囲なのが欠点であるが、即席にしては強力。だが、攻撃と呼べるものに反応している。多少の知能があればまず、そのライトの光を遮ってからの攻撃で突破可能。
ロゾーはその欠点も知っているから
「さぁ、立とう!」
「あ、ああ」
プルーフになれば、自然と高まって来る奇妙な力。抑えきれない力はまるで、天から与えられた才能をその体に宿したよう。身体を形成する細胞達が、かつてない戦意で燃えている。
防御がまだ成り立っている内に、反撃の拳をジャネモンの身体に叩き込む。
浦安という人間にとっては、初めて怒りも出さない拳であった。
ベギイィィッ
「!!いでええぇぇっ!?」
「ええええぇっ!?」
その猛った拳はあまりにも非力であった。
「え?え?骨いっちゃった?」
確かに超人的な能力ではなく、魔法的な能力。マジカニートゥやスカートラインなど、多少の身体能力強化があるレベルであり、最下位ではないが、低い方の身体能力。
「痛い痛い!なんだこの、怪物の皮膚!!」
「あ、うん……その……」
マジカニートゥのジャネモンの初戦は、決して硬度のある存在じゃなかった。しかし、プルーフの初戦は不運にも凶暴で肉体的にも強い怪物。浦安本体の非力さもあって、彼の拳が一撃で痛打したのには納得がいく。
「頑張って!!」
「お前が強くないのが悪いだろ!!」
「え~……」
浦安、逆ギレ!そんな不和につけこんで、ジャネモンは攻めて来る。
人間を喰らって来た牙。強靭な顎。それに似合うだけの暴を持つ怪物の肉体。
ガシイィッ
「ずるいずるい」
建物の一つをその尻尾で払いのけるだろうに、たった1人の女性の片手一つで捕まえられ、動けなくなった。
彼女は少々、心が分かってくれる同類に抜け駆けをされてご立腹中。
『レゼンくんに嫉妬するなよ』
「味方のバフもできるなんて、マジになんでもアリじゃん」
その怒りを生み出されたジャネモン相手に、生身+身体強化で挑む。
「セーシと組んでる時よりはかなりパワーダウンしてるけど、これで十分よ」
野花桜VS恐竜型のジャネモン。
「ふんっ」
セーシをして、野花の戦闘技術は粉雪に匹敵する技量。本人がセーシとの妖人化を拒むだけの、本体の強さがある。尻尾を背負い投げしてから始める。
ドゴオオォォッ
「じゃねぇっ!!」
皮膚、筋肉、骨。どれも高密度であるが、柔らかさは並程度。カウンターに酷く脆い。
一本背負いからは尻尾を手から離し、起き上がり襲い掛かって来るところまで待つ。初手は不意打ちであったが、2手目からは戦闘技量の差を見せつける。
ガヂイイィッ
「口を開けたまま、走らない」
前傾姿勢で走ってくる恐竜の構造の弱点。顎、首が隙だらけ。ただ強く殴るのではなく、向こうが噛んでくる力に上乗せする形で顎を締めさせる。怯んだ隙に首筋の上に立つ野花。落ち着いていれば、野花からの有効打はここからは少ない。だが、パニックになったジャネモンは野花を振り落とそうと動いた。その時、見せる抵抗は無意識に弱点を晒す。
鉄壁な肉体だが、
「爪は尖っていても、剥がれやすい」
長い首を捩じって、野花の様子を探る隙。デカいだけが全てではなく、3つ、4つは先を読んだ動きが実力差をつけている。超接近戦は逆に小回りが利かず、いくつもの急所が狙われる。
まずは危険な爪から剥いでいく。マジカニートゥのバフもあって、本来は固いところも難なく千切れる。狙い所がエグイが、粉雪と違いスマートな戦い。その剥ぎとった爪を使って、ジャネモンの足の関節に一刺し。
「じゃっ!?」
傷を知らない者が味わうパニック。乗じて、体勢を崩す。相手の攻撃を止め、こちらから一方的に攻撃する。
「ふーぅ」
長期戦としてみれば、野花の勝利は確定している。もっとも、彼女の勝ちは絶対なのであるが……
『こいつ、タフだぞ』
「分かってるわ、セーシ」
力を借りずとも戦える事で、この決まった足止め役をする野花。
この間にすべきことをマジカニートゥに託していた。
「は、初めまして!」
少し緊張した声でマジカニートゥとレゼンは、プルーフとロゾーの2人の前に立った。
マジカニートゥの任務はプルーフの確保。因心界への手引き。そして、
「ロゾー!」
「お兄ちゃん!!」
レゼンとロゾーは兄妹。こんなにも早い再会に、両者抱き合って喜びを分かち合う。
「はははは!良かったぁっ!人間界に降りたと聞いてビックリしたから!」
「お兄ちゃんこそ!任務、お疲れ様!!今まで無事で良かった!」
ホントの妹がいたんだ……。
妖精の仕組みについては色々と謎があるものの。緊張しつつも、マジカニートゥはプルーフに話す。
「あ、わた、私は!マジカニートゥ!あなたと同じ妖人です」
「……………」
「私達、因心界はあなた達を保護しに来たのです!」
自分も体験してきただけに、分かっていると思う。妖人となった時に漲って来る確かで未知な力。プルーフの誕生からまだ1日も経っていないが、
「保護とか勝手に言うな」
「え」
「いきなり現れて、怪物も出てきて!俺はこんなの望んでない!」
「ええーっ!なんでそんなことを~……プルーフ!あなた、選ばれた者っていう気持ちで」
「これは選ばされた者だろう!?ロゾー!」
見知らぬ人について行かない。そんな気持ちもあるが、面倒ごとを嫌う方が強いか。
「ほっといてくれ!」
マジカニートゥではなく、表原として感じた浦安或の印象。
まるで、1か月前の自分が……
「俺はあんた達に興味なんかない!」
レゼンや因心界のみんなと出会わず、過ごして生きていた自分のようだった。
「プルーフ!因心界の人達が迎えに来てくれたんだよ!」
「だからなんだよ!俺は束縛される事は嫌なんだよ!」
野花がジャネモンを相手に押している事と、自分と同類だと感じてはいるマジカニートゥを見て
「なんなんだよ!俺はあんた等と関わりたくない!」
「うーん……」
マジカニートゥは首を傾け、腕組みまでして考え込む。見た感じ、年上だろう(そうです)。そんな相手をどうやって説得するか。
閃くと、野花達の方に指を差し
「あそこにいる、ジャ、ジャネモンとか!他にも危険な組織があなたを狙うんですよ!」
「じゃあ、このロゾーをなんとかしてよ。解約させてくれ」
「ええぇぇっ!?契約しちゃった以上、力を解放するまで解約できません!」
「なんのスマホだよ!?」
ああ、こんなやり取り。レゼンとした気がするなぁ。
って考えている場合じゃない!
シンシン…………
「雪が降ってきているのも、お前達のせいか!」
「!」
まだクールスノーの本気の力をマジカニートゥは知らない。だが、時間を掛けてんじゃねぇってオーラを感じさせる雪だ。向こうも相手がヒイロなんだ。
「ホ、ホントに危険ですよ!1人でいるのは危ないです!」
「知った事か!」
マジカニートゥの言葉にはどこか、嫌な予感が今にも起こりそうだったから。
言葉足らずも、声は大きく。プルーフの両肩を掴み。
「1人で生きていこうなんて!思い上がらないでください!」
どーいう風にこの浦安或とロゾーが契約をしたのか分からないが、この浦安或という存在が非常に厄介だ。
そういえば、妖人の適性にはそーいう人間の方があるというのを思い出すと、本当に性質の悪い事。
「おまっ」
「ふんっ!」
反論の声を挙げられる前に、マジカニートゥがプルーフに仕掛けたのは素人臭ささを出す足払いであった。
これにまったく反応する事なく、無様にやられるプルーフ。そして、寸止めの拳。
「言っておきますが、私は1か月前に妖人になったばかりです」
「っ……」
「知ってる限り、私より強い妖人は10人以上はいます」
殺す気なんて一切もないが、倒そうと思えば倒せることをプルーフに伝えた。
ピカッ
「!」
「!さがれ、マジカニートゥ!」
プルーフは両手の甲に仕込まれた光源でマジカニートゥを照らした。それだけでマジカニートゥが即座に身を退いたのは経験的なもの。レゼンの声よりも早く、身体が引いた。
「嫌だね」
「ちょ、ちょっと!プルーフ!ここはね!」
離れたマジカニートゥとレゼンを見つつ、起き上がるプルーフ。
「俺は別に好きじゃない。属する事なんか嫌だ」
マジカニートゥの仕打ちにキレたわけじゃあない。力がまだまだ漲ることを自覚し、開放するためでもない。
本人。関わりたくない。
だから、戦うという考え。
ロゾーは彼の足を引っ張ってまで、止めて欲しいと動いているが聞いてはくれない。
「なんで、お前等なんかといなきゃけない。なんで、危ない事をしなきゃいけない」
もっともらしい事。安全圏なら何でも言えたこともあるが、こうしたわずかな危機に直面して本音が出て来る。
誰しも危険な事に突っ込みたくない。そんなことは分かり切っている。
危険な事に挑む存在を、応援という名で自分に酔いしれる事に否定はなく。
立場変われば、自分の保身を大事にするし、そんな酔った奴を嫌う。
「……そっくり」
「あ?」
「ううん」
ふと、ついに、……漏らした一言。
この手のアレには何を言ってもしょうがない。
なにせ、彼の言葉は全てを否定したい=自分を認めて欲しい、という隠せないでいる承認欲求。
今手にした力がどーいうものか。
「承知しないぞ」
たぶん、今までに。力と呼べるものや誇れるものがないんだろう。
その癖、プライドだけは強く。個性や特徴なんてものがあるんじゃないかと、思い上がる。
グランレイ・プルーフの力でマジカニートゥを懲らしめてやろうとしていた。
「マジカニートゥ」
すでに本気は使ってしまった。
"推しが武道を志す(バイバイキルト)"
設置した空間内にいる味方・第三者の身体能力の強化、回復力の効果を促す力。
住民の被害、負傷者の補助。そして、戦闘員のサポート。この場に合わせた本気の空間だ。マジカニートゥにも、プルーフにもその効果は適応されており、ハッキリ言って能力なしと言えるだろうが。
「大丈夫」
レゼンの心配もなんのそのって、マジカニートゥは戦う構えをとった。
彼の手の甲から出て来る光が何かヤバイ。だが、長時間浴びてはいけないという落ち着いた思考をしている。
プルーフは大胆というか、考えもなしに自身の能力を使った。光を浴びた者を証明させる力であるが、それすら考えてないで使っている事だろう。
マジカニートゥは落ち着いてプルーフを諭す。
「次は、痛い思いをしますよ」
別にこっちの言う事を聞けと言っているんじゃない。
落ち着いて話をしたいし。味方になって欲しいのだ。戦うこと事が間違っている。
「五月蠅い!お前の方こそ、酷い目に合っても知らないぞ!」
「それはそっちですよ」
プルーフの動きはマジカニートゥにとっては、答えが載っているテストをやるぐらいの事だった。プルーフにとっては拳銃でも握っているような武器なんだろうが、それ以上の武力を持っているマジカニートゥにとっては玩具のよう。
様子見を挟んだのは効果時間を今一度、確認するため。
バシイィッ
「はあぁぁっ!!」
「!?」
プルーフの隙だらけな右手首をとって、小手投げを決めてみせる!!
照射され続けると発動するため、10秒以内に光から逃れるよう頭にインプットした。加えて
ガシイィッ
「ぐぅっ!腕をキめるなっ!」
「だ、だったら!この光を出すの、止めてくれませんか!?」
プルーフを地面に倒したのち、うつ伏せの体勢にして、腕をキメる!手の甲から放たれる光は地面に当てさせるように、手首をしっかりととっていた。最良な戦闘を瞬時に実行してみせた。
互いに必死にやっているが、戦闘経験の差がモロに出ており、互いにそれを理解していないのが面白い。
「つ、強いね。お兄ちゃんのパートナー」
「いや、自覚がそんなにねぇからまだまだだ。ロゾー」
戦闘一つで得ている経験が並の奴とは違っているし、これくらいの対応はレゼンも想定内という怪物ぶり。
そして、痛みのせいか。プルーフは妖人化が解除され、元の浦安或に戻る。
「ぐっ……」
力を失ったとみて、マジカニートゥもキメ技を解放する。
いつの間にか暴力をしてたと、ハッと気付く。順応しすぎた。
「わ、分かりましたか!」
「……話は聞くよ」
少々力づくだったのが、気に止んでいるところ。
だが、意味なくぶつける拳は収まった。
「……ん?」
そして、雪降る空からマジカニートゥはある気配を察した。
「は~~~………大人しく」
怒り顔の大魔神が空からやってくる。
身体を強く回転させながら、標的である浦安の腹めがけて
「こっちの事情に従え!!クソガキッ!!」
クールスノーが着地&攻撃をぶちかますのであった。
「ぐぼらあぁっ!!?」
「や、やり過ぎですよおぉっ!!」
当然ながら、一発で昇天する浦安。
上手い事、彼を抑えて説得も上手くいくかと思いきや、……。最後の最後で台無しにするクールスノーの一撃。
「ちょっ、何してんですかぁぁ!?」
「えっ!?私が悪いの!?」
「悪いです!はい!!」
「言うようになったわねぇっ!」
なんかムシャクシャしているクールスノー。ヒイロの事はどうなったんだろうか。
「一刻も早く、彼を連れて本部に戻るわよ!」
「は、はい!」
「ちょ!クールスノー!だったら、手伝って!このジャネモン!ちょっとタフなんだけど!」




