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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第26話『ロゾー編!厄介者の浦安と改心中の表原!』
76/267

Dパート

因心界本部の病室にて。




「あんたぁねぇ……。またまたまた、やりすぎですよ」

「急いでたからよ!」


なんかまた同じやり取りをしていると、古野は粉雪に言っている。

大ダメージを負った浦安はすぐに治療。なんとか回復できるだろうと古野達は判断していた。だが、粉雪のやり方には


「スマートにやってください」

「ヒイロの奴が時間稼ぎばっかりするし、シットリが野花達を狙っている事が分かったから急いだの!!」



浦安の意識がない方が事は上手く行きやすいと判断。

白岩がいない事実をみて、ヒイロと交戦をしたが。シットリの存在も確認できた事で


「同士討ちや共倒れを避けたというわけですね」

「いいえ、メリットがないからよ」

「……素直ではありませんね」


任務が浦安の保護が第一であり、その次に戦力を削られないことだ。

シットリと戦う事に抵抗はないが、彼と戦う危険は今ではないという判断。ヒイロとシットリに目晦ましの大吹雪を浴びせて逃亡し、浦安の保護を優先した。

シットリが出てきたタイミングも上手かった。



「粉雪が本気となれば、浦安どころか表原ちゃん達にも危機が及んだだろう」

「キッス。なんで本部から抜け出してるわけ?」

「父とメグさんに任せたからだ」



こっちもタイミングが良く、涙キッスもここに訪れていた。

確かに粉雪の判断は正しい。

勝敗は分からずとも、その被害は尋常ではない上にルミルミが外で暴れている情報も出て来た。シットリを完封かつ瞬殺するなど、さすがの粉雪でも無理だ。状況を立て直すのが大事。



「ったく、本気で殺せるタイミングで現れて……」



フィールドが完成した直後にシットリ。ここであの怪物を倒せるという条件が整ったからこそ、選択肢はいくつもでき。クールスノーは任務を優先したのだ。



「ずるっ」



終わってみれば粉雪とシットリ、2名の敗北。ヒイロの1人勝ちと言える結果。疲れなどを加えると、粉雪の1人負けとも言える。

あくまで、個人で見ればだ。目的は達成した。安全なところで彼とロゾーを大切に育てていきたい。因心界とSAF協会はまたぶつかるだろうし。

それにここへ、キッスが来た理由もある。


「メグさんが来た以上、私の権限もそこまで強くはなくなった」


キッスが涙一族の棟梁ではあるが、その内部でキッスの協力者は家族と一部の人間だけ。その多くは涙メグが中心とした派閥が幅を利かせていた。ヒイロと白岩、佐鯨の穴を埋めるためとはいえ、その代償はデカイ。


「キッス様。表原も呼んだよ」

「話しごとってなんですか?(野花が浦安の病室を警護している)」

「ありがとう、ルル。古野さんもまだ、私の詳しいことを知らないだろうから聞いてくれ」

「そんなお話かい?」

「とても大切な話しだ」


ここにいる、キッス、粉雪、表原、レゼン、ルル、古野の6名。

幹部の中で細かく知らない表原と古野のために、キッスはこの場で因心界が抱えている、凶悪について話した。その元凶の1人もいるわけだが……。


「私の両親が、……涙ナギが因心界を設立し、私が今その座を引き継ぐまでの話しであり。涙一族の危険性については、古野さん達にも覚えてもらいたい。これから戦うであろう、ルミルミとの関係もある」


自分の一族を危険因子と呼ぶほどである。

確かにあのメグという人物が、奇妙奇天烈なのは表原も古野も察することができた。



「"因心界いんしんかい"の名は、"もと"の"こころ"の"せかい"の意味と、父親が付けた組織の名だ」


キッスの切り出しは、組織の由来から始まった。

ルルも知らないだろう。0から教える因心界の歴史と、その歩み。


「40年ほど前からでも妖精、妖人を管理する組織はいくつもあったらしいが、涙一族が最大勢力であっても、国家というものからには信頼を得られていなかった。今でも情報工作は続いている」


妖人に疎い、あるいは都市伝説扱いをしていた人物も珍しくないのはそーいう理由があった。

だが、人類の発展に伴い、その隠蔽も難しく。適応していくように社会をコントロールしてきた。

国は妖人を受け入れができる組織が必要とされ、その当時で最大勢力であった涙一族が担うようにと申請された。が


「妖人についての研究をしており、その研究は非人道的であり、夢想とも言えるもの。1000年も進んだ世界を作ろうとしているものだ」

「1000年も進んだ世界……?」

「彼等はそう言うが、人が数えられるほどしか生きない世界だぞ」



考えがつかないが、真っ当ではない。

キッス自ら。



「ハッキリ言って、国も世界も、そんな思想を持つ涙一族に託せなかった。だが、涙ナギと涙カホはその中でも良識的で力を持っており、"涙一族"に対抗するため組織であり、国と世界に認められた組織、因心界を作った」



危険過ぎる"涙一族"に対抗するために、"涙一族"の者達で"因心界"が誕生したという皮肉。

当然、本家の者達は黙っていられるわけもなく。研究の過程で生まれた怪物。



「"ムノウヤ"という無敵怪物。並びに邪念を糧に生まれる怪物、ジャネモンを世にばら撒いてしまった」

「お陰様で10年以上は戦ってたかしら?」

「世代で言えば、私の両親が全盛期だった時だ。この事を良く知るのは、今の幹部では私と粉雪ぐらいのものだな」



さらっと今。粉雪さん、相当な年齢だって分かってしまったぞ。



「ほとんどが戦死していて、引退できた人は少ない」



エンジェル・デービスなどの組織ができるよりも前の時代。およそ、妖人と呼ばれる存在も少ないとされる時。怪物の軍団と戦うため、妖精を多く召喚し、数多くの妖人を作った。

粉雪の言葉通り、このムノウヤとの戦いは10年以上の戦争が続いた。だが、その内訳には単純にムノウヤだけではない巨悪も生まれて動いていた。人間が妖人となれば、その力をどう使おうか他者には選べない。




因心界。革新党。ブルーマウンテン星団。

そして、涙一族、ムノウヤも加わる。

大混戦となった戦争は、因心界は涙一族と革新党が3つの組織が手を組み。

ムノウヤがブルーマウンテン星団と徒党を組んだ。



激しい戦いではあったが、ブルーマウンテン星団の壊滅とムノウヤの封印によって一つの時代の幕は閉じた。


「一時の停戦という平和があったが、この原因は涙一族にある。そして、彼等は今も研究を続け、邪魔となれば我々を始末しようと考えている」

自作自演マッチポンプそのものじゃないですか!!あの人達!!」

「自覚はないぞ。特にメグさんはな」



原因を辿ると、我に有り。といったところか。

そんな涙一族と再び手をとって戦う、SAF協会。


「私の両親が復帰したのも、ようやくルミルミと戦う瞬間になったからだ」

「!」

「ルミルミは元々、涙一族の血を持つ人物の妖精であり、因心界の幹部も任されていた人の妖精でもある。……つまり、私と粉雪の元仲間であり、両親にとっては同僚であり、一族なんだ」

「…………なんとなく、そうじゃないかと思ってましたがね」



キッスがこれから語る、自分達の一族のこと。最大の強敵であるルミルミのこと。

かつては共に手を取って戦ったルミルミが、どうして因心界と対立したか。

キッスの視点。因心界からの立場での話ではあったが、



「!……ちょっ、それ……ホントなんですか!?」

「ああ。だから、あいつは人間を滅ぼし。妖精だけが住む世界を創ろうとしている」



概ね、間違いはなく。

ルミルミがその時抱いた感情は、正常なる憎悪。激しい苦悩。それが伝わる事であった。

純粋過ぎる妖精としての生まれを否定された出来事は、因心界や涙一族、その他含めても滅ぼす事しか考えられなくなった悲しい妖精。

キッスと粉雪が、ルミルミがどーいう存在か言うと。


「正直に言うが、奴は頭が良くない。厄介なんだよ、ルミルミは」

「核兵器を持った子供って感じ。赤子の妖精らしいわ」



そう締めくくった。



◇      ◇



ガシュッ



「ふーーっ。5年ぶり以上の椅子だな」

「随分、本部の部屋も変わったね」


因心界の本部にて。

涙ナギ、涙カホが、久しぶりに因心界の棟梁の椅子に座った。かつてはトップであったもの。


プツンッ


『……ナギ、カホ。なんで戻ってきたんだい』

「いいだろ。お前が抱え込み過ぎるのは良くねぇーんだ」

「1人より3人じゃない?」


今は妖精の国からの電波で、モニターの中からパートナーであるサザンの姿が映し出される。昔ならナギかカホの肩の上に乗って、一緒に雑務も戦闘もこなしていた。


「あー、それとサザン。あいつが話しをしたいんだと」

『構わないよ。彼でしょ』


モニターを別方向に。その相手は部下を付けずに、自らも対等だという振る舞い。

テーブルに置いた飲み物はビールと枝豆。仕事が終わった中年サラリーマンのように、ガニ股で座り



「久しぶりぃ、今は妖精の国の王様かな?サザン様、お会いできて光栄です」

『はーっ、メグ。君はしつこいねぇ』

「ふふふふふ」


枝豆を食いつつ、ビールを喉に通す。

もう酔っ払ったのか?って思わせたいのか、メグの口から出る言葉は異常そのものだった。



「サザン。今のお前は、"何年先から俺達を視てるんだよ"」

『……………』

「おいおいおい。黙るなよぉ~。この私が会いに来た事は、お前はずっと前から知っていたはずだ。そして、俺の次の言葉も聞いているだろう?」

『……そうか』

「"時代ラグ"を引き起こしてるお前は、王様じゃなくて、神様気取りなんじゃねぇーの?」



………………。

涙一族の研究と、妖精の国という場所の秘密。その両方を知り得ているのは、涙一族の棟梁。

この涙メグしかいないだろう。


「妖精の召喚される場所と時間が分かっているのは、お前がこの過去げんざいを見ているからだ。そして、世代の違う妖精が人間達とは違う時間干渉を経て、生きている」

『私に何を答えろと?』

「いや、分かるだろ?」


薄々はそうなんじゃないか。立証する事など不可能であるし、興味もさほどは出していないナギとカホ。しかし、メグの表情は明らかに興味であり、挑戦をしている目だった。

メグとサザンの会話は、高速キャッチボールだった。



『確かに"時代ラグ"……時間のひずみは生まれているよ。私のこの姿は、君達でいう未来から届けている』

「今と過去、未来を並行して視ているんだろ。枝豆の数はいくつになる?」

『20分後くらいには、あと5つくらいだね』

「ほぉー、会話が弾むんだな」

『話す相手が今、いないんでね』

「じゃあ、お前。ナギとカホを護りてぇなら、その未来を言えよ」

『無事に決まってるだろ。私も、ルミルミとの決戦には"間に合う"。結果も見えている』

「馬鹿かテメェ?ナギとカホを死なせたくねぇなら、怒るのが普通。協力しねぇのが護る方法だ」

『ルミルミは私達の問題だ』

「そのルミルミが問題なんじゃねぇか。強ぇんだろ、想像よりも遥かに強くなってるんだろ。頭、バカのままだけど」

『失礼だな。だいたい、君はルミルミに固執してないだろ?』

「まぁねぇ。涙一族は、人類の祖先か。1000年先で生きる生物というもの。お前が知れる未来は本物か、予測に過ぎないのか。検証したいところだ」

『叶わないね。未来は知らないけど、君達にはできない』

「涙キッスがいる。あれは、お前達が恐れている事を可能にしている。……ハイブリッドな、人類の種と妖精の種が混ざり生まれた偶像。彼女の肉体はそれを可能にしている。彼女の意思があれば、それができる」

『君が死んだその先を心配してどうするんだい?』

「一族の血が途切れんのが大切なのだよ。彼女という奇跡と釣り合う男さえいれば、それで完成するはずだ」




ポリポリ……ゴキュゴキュ……



「ぷは~……ナギ達も食えよ」



枝豆とビールで喉を潤し、十分に未来との話ができたメグ。

ご満悦の表情で、ナギとカホにつまみの枝豆を食べるよう促す。

だったら、ビールを人数用意しとけって呟きながら、食べるナギは



「サザン。まだお前が"そっち"にいるって事は心配だが、"間に合う"のは確かなんだな?」

『ゴタゴタが色々とあるからね』

「サザンが来なきゃ、あたし達は妖人化できないんだからね!」


すぐに来て欲しいと思う一方、サザン側の問題もある。そう妖精の国を留守にはできない。最大限、ルミルミと戦い。最小限、始末をつけて帰って来るようにしたい。


「私達は本部にいる」

『メグがいるの嫌なんだけどなぁ』

「そう言うな。私の能力を知っているなら、守護が適任だろ?」



キッスが本部をナギとカホに、権限を含めて譲った理由の一つには、中に置いておく戦力に信用がおけないからだ。

実力を認めるも、人間性やその経歴に問題があるものばかり。

力を合わせて頑張ろうなどという、友情パワーを感じさせない。ギラギラと睨み合う、空腹な狼達の群れ。SAF協会が単体で攻め込む事に対し、不完全な団結でいる因心界と涙一族、その他。

内部のギスギス具合はすぐに表面化。

協力者であるが、その態度は図々しい極まりない。

今、本部の中では涙一族の実働部隊が本部の改修作業を無断で行なっており、少しパニック状態になっていた。


「ちょっとちょっと!ここはエロ漫画制作部!」



そんな部屋、撤廃しろよ。



「勝手に拷問部屋を壊したら、北野川が怒るよ!」



それもいらねぇ。



「ついでとばかりに僕のお部屋も壊さないでーーー!!」



なんか壊されてるところ、因心界の悪いところばかりなので、まぁいいのかも……。

涙一族の勝手な行動に振り回され、被害を被っているのは蒼山ラナだった。

しかし、その壊した部屋をどうしたいか。指揮をとっていたオッドアイの少女は言う。


「クマちゃんハウスを作るための犠牲です!!」

「なんだよ、それ!!」

「なんとも深い不潔極まりないお部屋ばかり!涙一族が住むんですから、臭いから改善です!あんたの部屋はイカ臭いので論外です!こんな同人誌、破きます」

「ふ、ふ、ふ、ふざけるなぁぁっ!!思春期の足らん子供に何が分かるってんだぁっ!!」

「お前が変態という事は、分かる……っ!」


蒼山ラナと矢萩香の口論。

涙一族の部下達、十数名による大改造劇的ビフォーアフターに、当然ながら本部にいる者達も混乱が激しい。

こーいう時にキッスや飛島、ヒイロなどがいてくれたら……止められるんだろうが、不在。蒼山では頼りなさ過ぎると誰もが思っており、諦めの顔も出ていた。


「ううぅっ、まだ。同人誌完成してないのに、……こーなったら、僕の部下達を呼ぶぞ!」

「勝手に呼べば?返り討ちですけど。それと、あなたなんかに人望があるとは思えません」

「そ、そーいう事は言わないでよ!僕より年下の女の子の癖に!生意気な!何を知っているんだ!」

「気持ち悪い。メグ様ほどのキモさがあなたにはあります」

「グサっと来たーーー!!」


廊下の隅で弱々しい声を挙げて、止めて欲しいと訴える蒼山の情けなさ。因心界の内部がゴタ付き具合は酷いと聞くし、なんでこんな奴が"十妖"の一員なのか。よほど、人材難とも言える組織。

矢萩はメグの指示通り、本部の構造をチェックし、改造を行っていた。

そんな時、



「"統括"!この騒ぎはなんですか!」

「本部に呼ぶほどですから、装備を整えて来ました!」


蒼山の組織。ブルーマウンテン星団の部下達、5名が到着。


「おおー、来てくれたかー!待ってたよー!」

「なに、あのおっさん達……?」


蒼山よりも年上の中年男性達。矢萩からして、蒼山同様に汚らしいおっさん共。少々、メグと似たところもあるが、品性のなさはあちらの方が上手と見た。

妖人のようだが、たかが6人。こっちは4倍以上も人がおり、妖人もいる。結束なんかする必要なく、いざとなれば力技でも構わないともメグの指令だ。

そして、


「……さぁーて、私の部屋まで踏み込んで。あまつさえ、侮辱し、宝物まで奪うんだ」

「!」


先ほどまで怯えているような様相を出す蒼山だったが、


「女の子は生意気でも構わないけど、君は丁重に扱わないよ」

「……なに、あんた……?」


雰囲気がいきなり変わった。

交戦の構えをとるだけの時間も与えてくれたのだが、そこから放たれる彼の狂気は恐ろしく。



ペロペロペロペロ



「た、大変に申し訳ございませぇんんっっ!!ブルーマウンテン星団の下僕として、恥じますぅぅぅっ!!」


わずか27分後には、強気の態度を示し、涙一族への忠誠心もあった矢萩が、地べたに座る犬のようになって蒼山の太ももを舐めている。淫らに破れた服の上から、まだ成長途中にある胸を鷲づかみされても、あまり抵抗を見せない。言葉だけでなく、体と表情に現れた変貌。人格をそこまで壊された矢萩の姿があった。

蒼山は……


「涙メグに言ってくる。何をする気か、知らないけど。僕の空間を汚したのは許せない」

「ラフォトナ様。やはり、……いや。いよいよですか」

「私共の解放ですか」

「動きましょう!統括!」


矢萩を含め、近くにいた涙一族の者達を一方的に倒し、多くの人格を再起不能なレベルで破壊させた。ブルーマウンテン星団の実力は確かなものであると同時に、非道な面ではこれまで登場してきた連中とは一線を画す。


「まだ、キッス様と粉雪さんのパンチラとか撮れてないんだよね。でも、メグがこんな事をしてたらキッス様達が本部にいてくれないじゃないか。だから、困る」

「……独立はまだですか」

「統括の御意志なら、私共はつき従うまでです」

「行きましょう、涙メグの元へ!」

「この命に代えても、お使えします!」


ブルーマウンテン星団の動き。どうやらかつては、因心界と涙一族とも対立し、悪の組織であったとされる。その詳細についてはあまり明かされてはいないが、相応しい実力を持っているのは確かなもの。

一方で、別の場所でも戦闘の様相を見せていた。

その相手とその場所は……



「テメェ等、何してんだ?」

「それはお前の方じゃないか?どうして、犯罪者が普通にうろつく?」


録路空梧VS大銛満。


『な、なになに~。説明してよー、マルカー』

『どうなっちゃうの、因心界』

『そ、それはその。ちょっと混乱中です』


因心界が確保していた妖精達が住んでいる管理部屋。警報が鳴るほど強引なやり方をする涙一族の連中。その様子を見に来た録路。


『ど、どこに運ばれちゃうのー!?』

『適合者いるのー!?』


妖精達の声は分からないが、不安が出ているのは伝わる。涙一族に配慮なんてないんだろう。特殊な透明ケースの中へ、乱雑に妖精達を詰め込む光景。堂々とした


「万引きか?」

「保護と言え」


キッスからの指示はないし。ここの妖精達がどうなろうと、録路個人には意味のない事ではある。事実な侮辱は置いといて


ガリィッ


「テメェ等、気に入らねぇーな。マルカ、やるぞ」

『うん!こんな勝手なこと!思惑!同じ妖精として見過ごせない!』


たったそれだけの気に食わないことで、突っかかる男。


「騒ぎになるか。お前を倒してもメリットはないが、仕方ないか」


大銛は部下達を録路へ差し向ける。

忠誠心がある者、あるいは虚ろな瞳で操られている者もいる。


「『このナックルカシーに食えねぇもんはねぇ!』」


録路も妖人化。直接戦闘を得意としているナックルカシーだ。大銛側も、戦うメリットよりも彼の実力を測りに来ていた。

妖人化した瞬間に、ナックルカシーは確信する。マルカが佐鯨の妖精、バーニからその力の一部をもらったこと。自分自身も死線を乗り越えたことで、強くなっていること。まだ体調が万全でなくても、こいつ等の圧倒はできると判断している。



バギイイィィッ


「おらあぁぁっ!!」

「野蛮な」


格闘戦では相当強い。因心界が無理にでも、彼をここに置いた理由にはなる強さ。この数での人海戦術ではナックルカシーを止められないだろう。


『うわーーーっ』

『戦闘だよーー!』


静かにやれってのが無理がある状況。

ナックルカシーの攻撃で雑魚共がぶっ飛ばされ、壁にぶつかる衝撃は本部内に響いていた。完全に無双状態であった。


「おらあぁぁっ!!」


このままでは大銛も妖人化しなければ、ナックルカシーにやられるだろう。

そんな時だ。


「騒がしいからいるのかと思ったら、メグはいないんだ」

「ラフォトナ様!あれはナックルカシーです!」

「あ?なんだテメェ等?蒼山、どーいうつもりだ?」


蒼山が率いるブルーマウンテン星団が、騒ぎを聞いてこの場にやってきた。メグがいるのかと思って来て見たら、空振り。


「じゃあ、危ないんで僕達帰ります」

「いや、帰るのかよ!何しに来たんだお前達!?」


事情を知らないナックルカシーからすれば、そのツッコミは当たり前である。手伝う必要はないが、蒼山もこの涙一族のやり方には不満があったんだろうとは察した。

戦闘中に目を離す行為は危険であるが、大銛達にナックルカシーを止める手段はない。


「まぁいいぜ。だが、涙メグと戦う気なら止めやしねぇ」

「……そうかも……!」


ナックルカシーが風を斬るように大銛に攻撃を仕掛けたとき、横から割って入って来たのは"普通"の人間。妖人化しているナックルカシーを相手に


バギイイィィッ



「!!?」


ダメージにはならないが、彼の体を弾き返すほどの剛の拳。



一方で、


「いだだだだだっっ!」

「大丈夫大丈夫!少しキメるだけだから」


油断していた蒼山にも、関節技を極める者。

助けに来たという雰囲気ではなく、治めに来た印象の二人。


「退け、録路空梧。蒼山ラナ」

「……確か、涙ナギと涙カホだな?」


長期戦になれば、ナックルカシーの方が勝つであろうが。人間状態で妖人と戦うだけの戦闘力は警戒するもの。おまけに全盛期じゃないのに、この強さ。


「大銛。少々、勝手を変えるぞ」

「メグ様」


お目当ての涙メグまでこの場に現れた。混乱は承知していたが、やらないといけない。


「さすがにキャスティーノ団と、ブルーマウンテン星団の現トップと変人部下共を相手にするのは今ではないだろうな」

「俺達も中に入れろ」


混乱を作っている張本人。不始末を願っているナギとカホ。

持っていたカバンからメグが取り出したのは、100均ショップで売っているとある代物。


「これが私の妖精。ワイヤーネットの"ピネス"だよ」


言い方が悪いが、メグの扱い方は妖精を道具としか思っていない。

本来。契約は妖精側から決めるものであるのだが、涙一族達にとっては逆のようだ。妖精側に押し付ける形で契約させている。

故に力だけを寄越せと、彼等は言っている。

非道さから言って、彼等はできているのだ。



「『翼を授けよ、レッドブルー』」


蒼山の部下達と同じく。中年男性、あるいは年相応な見た目である涙メグ。その男の体が妖人化と同時に、細かいブロック状に体を変化させ、ダイヤルを変える様に体が変身していく。


ジャキーーーーンッ


妖人化したその姿、レッドブルー。


「3年ぐらい若返ったね」


髪は青色、瞳は赤色。

清潔で華奢な美青年に似合う、ポロシャツはサラリーマンのそれとは違ったお似合いぶり。その姿は普通にイケメンと呼ばれる、20代。それは……


「誰だよ!テメェっ!!」

「3年どころじゃねぇ、若返りぶりだよ!!」

「もはや、別人じゃん!!」


ナックルカシーの方はあまりにも涙メグとの見た目から、変わり過ぎている事からの指摘。蒼山ラナ達の方からは、中年男がイケメンの青年になるとかありえねぇーわっていう指摘。


「3年ぐらい若返っただけで、そう騒ぐな若人。なぁ、ナギ」

「お前のは3年とかそこらじゃねぇよ。人体改造レベルだ」


歳の近いナギをしても、整形手術レベルじゃないほどの変身ぶりである。


「大人しくしてりゃ、あいつの妖人化はイケメンなんだけどね」


女性のカホからも、レッドブルーの容姿については認めているところはある。

無論、実力もそうだ。


「悪いが、君達には出て行ってもらうよ」


レッドブルーが言った瞬間。

本当に、ナックルカシーと蒼山達をこの本部から追い出す。その手際をナックルカシー達は確かに見えてはいたのだが、



パァッ



「!?うおおぉっっ」

「な、なんだーーー!?」


知らぬ間に因心界の本部の外へ文字通り放り出され、空から落ちていくナックルカシー達。

発動した瞬間も見えず、何をされたかも分からない攻撃。


「ちょっ!地面にぶつかるうぅぅっ!!」

「!"荒猛努アラモード"、"卯砂実うさみ"」



ボウウゥゥンッ


ナックルカシーは体をホイップ状に膨らんで、衝突の勢いを吸収し無事に着地。



「うわぁっ!ホイップ!?柔らか!」


ついでにブルーマウンテン星団の者達も助けてみせる。

そして、状態を解除するナックルカシー。

放り出されてしまった一同、因心界の本部を見上げる。そんな彼等にメグがマイクで伝える。


「ここは私達が護らせてもらう」

「なんだと」

「君達はどこか別の場所に行きたまえ」


ほぼ完全に。因心界は、涙一族に乗っ取られたような事になったのだ。


次回予告:

クールスノー:んー、次回はもしかして久々に見れちゃうってわけ?

エクセレントチェリー:私を見ながら言わないで……

クールスノー:普段だと、絶頂しっぱなしで話もロクにできないのにね。このコーナーでは特別

エクセレントチェリー:絶対しない!ルミルミとかと戦う事になったらするかもで!

クールスノー:じゃあ、するってことね。次回!

エクセレントチェリー:『ロゾー編!東京駅襲撃事件!ルミルミの生殺与奪!』


挿絵(By みてみん)



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