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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第25話『新生、マジカニートゥ!ヤバくて濃すぎる涙一族!』
70/267

Aパート

キャスティーノ団壊滅から3日が経ち。

ようやく、事態の収拾がついて、現状の"十妖"と表原麻縫とレゼンが、因心界の本部に集められた。その集まりは以前と違って、殺伐とした感じに包まれていた。


「……全員、揃うことはできなかったな」


再び集まった時、いない者もそうであるが。あの時とはまるで違ったような者もいれば、変わっていない者達もいる。


「気付いている者もいるが、佐鯨貫太郎は戦死。そして、白岩印、太田ヒイロの2名は違反行為により、因心界から追放という形になった」

「!……」


キッスの口から3名の名前が挙がった時、無言ではあるが、目の鋭さに殺意を現すような北野川の視線がキッスと粉雪に向いた。プレッシャーだけで表原と古野の2名が、やや震えた。付き合いの長さというより、仲の密度としては北野川が一番だろうから。そんな北野川をまったく気にせず、キッスは話しを続ける。


「これよりSAF協会との戦いになるが、この失った戦力を立て直す必要がある」


そりゃあそうだ。その中でメンバーの全員とその本人も分かっていた事だが、


「以前に話した通り、表原ちゃんが今の空いた席の1つに座ってもらう」

「は、はい!」


幹部になっちゃった。という言葉だけが今、頭をいっぱいにさせた。責任というのが出てくるんだろう。それに誰も異論はないし、おめでとうの声もわずかに挙がった。


「それでなんだが今、私が集められる優秀な戦力を"3名"も連れて来た。じゃあ、まず2人。入ってきてくれ」

「?」


粉雪は、2名は知っていた。

キッスのご両親であり、サザンの元パートナー。そして、



「おーーすっ!久しぶりだなっ!」

「初めましての方は少ないようでなによりです」



キッスに呼ばれて入って来た2名。元気一杯の声を出し、漫画雑誌ジャンプを手に持ったスーツの金髪男。凄くチャラそうで若々しく見えるこの男が、涙ナギ。

因心界の創設者。

そして、隣にいるエプロン姿で若い主婦感しか見えない女性が、涙カホ。

キッスの両親なのだから、その年は……結構なお年になるのだが、双方10か15くらいは下に見えるほど、エネルギッシュな姿だった。


「ナギさん!?」

「それにカホさんも!」


飛島や蒼山、古野だって驚いてしまう人達だった。表原以外は全員会っていたからだ。そして、ナギという男は


「俺が戻ってきたんだ!パーッとしてくれよ!電撃復帰なんて早々ないぜー!それより飛島、デカクなったなー!可愛い格好までしてよ」

「は、はははは……」

「蒼山!お前、相変わらず下着追ってんのか?それじゃあ、彼女できねぇぞ!」

「あ、あの!そうですけども!下着にもロマンあるんですよ!!」


メチャクチャ喋る、コミュ力の塊のような男である。いつも漫画雑誌を持ち歩いているのが特徴だったのだが、その下には


「IPAD買ったんですか?アナログ人間だったのに……」

「桜ちゃ~ん!そうよそう!電子書籍で買うようになってきてるんだよ!歳は事実でも、心はまだまだ若いまんまだぜ!」


漫画を読むためのIPADを持ち歩くようになっている。なんていうか騒がしい人だが、趣味は表原と少し似ていた。一方でカホは残念でした~って顔をしながら近寄ったのは、なんと粉雪の方。


「ちょっと粉雪。あんたはいつになったら結婚するの?」

「カホ、余計なお世話」

「あら?呼び捨てできるようになったんだ」

「そりゃあ、私も偉くなったからね」


カホはカホで、粉雪と対等の立場だと威圧的な話し方をする。すげー濃い人達が来たと表原はビビリまくる。あの粉雪にこの姿勢をみんなの前で見せる胆力がヤバイ。


「だって、あんたが結婚しないと、まだうかうかできないんだもん。ナギを狙っていた泥棒猫なんだから」

「あ~、不倫相手が私だと思ってるわけ?ナギさんは色んな人と喋るんだから、正妻はどんと構えて家で待ってなさいよ、お気になさらずね」

「……粉雪、噂だったけど。ナギの側室気取りしてたのかしら?それを確かめにも来たんだけど」

「さぁ~ね?」


殺伐とした空気が二分に別れる。

ナギが作りあげる、明るくて活気が出てきそうなムードと。カホと粉雪が女のドロッとした修羅場ムード。っていうか、


「こ、粉雪さんって何歳なんですか?」


粉雪の見た目は野花や北野川をちょこっと上くらいだと感じていただけに、こんなやり取りを見ればいくつなんだと不思議に感じる。見た目の若さって分からないもんだ。

表原はコッソリと、粉雪をよく知る野花に聞いてみたが。


「ごめんね、それ私も教えられてない。南空さんは知ってるはずだけど」

「えっ」

「でも、私よりも年上よ」

「そりゃそうですよね。あんな会話になるんだから」


っていうか、ちょっと待って。粉雪と野花は親友のようなやり取りをしながら、年齢が結構違うのか。ビックリした事実。バレバレに聴こえている粉雪は、注意しつつ怒りを見せている。


「の・は・な~。ちょっと、23歳だからってこの会話に年増とか感じてるんじゃないでしょうね?……色々とバラすぞ」

「いえいえいえいえ!別に何も思ってないからね!粉雪!」


野花さんって23歳だったのか。粉雪に年齢の類いはタブーなんだろう。でも、30代には入ってそうな感じなのか。

30代の女性で妖人化はキツイな、色々と……。表原はまだ考えないようにする。

やってきた二人の印象として、ナギは明るく誰とでも接し、カホは粘着質と独占欲が滲み出ている性格。夫婦であり、キッスとルルの両親。見た目では、キッスは母親のカホに似ており。ルルは父親のナギに似ている。

性格は……2人共、父親の影響が強いような気もする。


「キッスの頼みとはいえ、ナギの近くに寄らないでよ!粉雪!」

「私だって、あなたの事。好きじゃないんだけど。嫌いな部類」


粉雪とカホの険悪ぶりに、当の本人はまったく気にせず。


「よぉー!粉雪!2年ぶりかー?変わんねぇーな!でも、綺麗なままだな!」

「あら。ありがとうございます。ナギさん」

「お前にも見せたいもんがあるんだがよ」


粉雪と言葉を交わしてIPADを見せながら、つい先日の家族旅行を幸せそうに見せ始める。引退してから、カホと一緒に国中を回っている。

山を登ってバーベキューしてたり、海中で一緒に魚と泳いでいたり、スカイダイビングをしていたりと……。ゆっくりと引退ライフを楽しんでいる家族写真ばかり


「…………」


なんていうか、空気の読めねぇー奴。


「娘2人だけじゃなく、お前ともよ。一緒に外国に行きたいぜ」

「……そーですかー」


誘ってくれるのは嬉しいが、家族旅行しよーぜのお誘い。


「家族と家族の旅行とかな。南空の爺とか了承してくんねぇの?」

「それはちょっと、ムズカシイですね。イロイロと……」


粉雪が途中からカタコトになっているのは、そこそこに未練というものがあるような雰囲気。少し気の毒に思ったのか、カホは粉雪に


「ナギもあの頃からまったく変わってないわよ」

「みたいね。魅力もそのままだけど」

「?なんのだ?」

「「なーんでもない」」


口を揃えて、気付いてないフリをするカホと粉雪であった。

ナギとカホの両名が入って来ただけで、大きく騒がしくなった場。粉雪も、かつての仲間と共に戦う事で少しばかし、気が緩んだのかもしれない。

カツを入れたのは娘の声。


「着席してくれないか?父さん、母さん。話しが進まない」

「おーっ、そうかそうか」

「実の娘に言われると不思議な気分ね。成長したわね」


世代交代を自覚する言葉を受け取った両親。ちょっとズルいかもしれなかったが、娘がこうしてリーダーとして、言葉を直接受け取るのは感慨深い。

元、因心界のトップなだけにメンバーとの打ち解けは良好だった。続いて、


「見た通りだ。で、もう1人なんだが。とりあえず、入って来てくれ」


キッスはもう1人の戦力を呼んだ。

名を呼ばず、この部屋に入って来いとの指示でやってきた人物。

今は包帯やら松葉杖やら、大怪我をしている状態でありながら、左手が掴んでいるかっぱえびせんの一袋をちょびちょびと食いながら、ノッソリと入って来た、デブな男。


「え?」


キッスを除いて、全員がその言葉を口に出した。一方で男はなーんにも喋る気がなかった。

そして、もういい加減にしろって、レベルの顔でブチ切れたのが北野川だった。


「なんでこいつがここに来てんのよ!!」

「貴重な戦力だからだ」


簡潔過ぎる理由で連れて来られた男は、


「録路空梧よ!!なんでこいつをここに入れてんのよ!!キッス!!」


なんと、あの録路空梧であった。キャスティーノ団を纏めていた男であり、佐鯨を倒して殺した男。白岩とヒイロが追放されるという処罰を受けたのなら、


「私の勝手で死刑にするわよ」


殺されるか、終身刑もあり得る。実際のところ、世間的には録路が組織を動かしているという状態だった。ヒイロや白岩の罪を知っているのは、今でも数少ない。

北野川の怒りに対しても、録路は黙秘をしている。喋れないわけではないが、北野川の怒りや周囲の困惑に興味を示さず、空いていた席に座った。丁度、飛島と古野の間にだ。飛島はそれだけを許したが、戦う面になっている。が、


「戦力としての実績はある。人としての器もちゃんとしている」


キッスが録路の負傷を込みにしても、利用できる戦力と見ている言葉。

だが、それで北野川が納得するわけがない。



ドガアアァァッ


「だからなんだってんのよ!!?こいつがなんでここにいんだ!!白岩が抜けて!佐鯨が死んで!この豚が来るとかふざけんじゃないわよ!!」



机を蹴っ飛ばし、乗っていた物まで散らかる始末。

北野川の怒りに乗るわけではないが、粉雪もまたキッスに対し



「私も反対ね。キッス」

「粉雪もか」

「革新党にも迷惑をかけてる男だし、一般人を大勢巻き込んだ事件を犯し続けた組織のトップ。そいつをこの腹の中まで入れるのは、危ない事じゃない?」


頭鴉ほどではないが、色んな悪いところには顔が利く。因心界の事情を知られるリスクもあるし、やってきた事も悪さが目立つ。実力あれど素行と経歴の問題。だが、


「北野川も今はやっているだろ?」


よくよく思えば、北野川も別の組織を率いた時期もあり、能力的にも危険過ぎるもの。

だが、北野川にとっては地雷原の上で何往復も素足で走っているような、キッスの軽率な言葉にさらに怒り



「私も因心界を辞めるわ!!もう二度と来ないわ!!」


もう何もかも見たくないと、この会議室から出て行ってしまう。

一連の事が起きても未だに言葉を出さない録路。それでも菓子は食っているまま、……。少しでも謝れば変わるわけでもなかったが、しないよりはマシと。


「謝るべきかと……」


表原は小声で録路に言ったが、シカトされる。

混乱に激怒も、想定していないわけではないキッス。事実も言っていたし、録路に関して言えば


「実力は買っている。SAF協会と戦う上で、信頼できる人物でもあるしな」


ダイソンと戦っているところから、SAF協会とは相容れない考えの持ち主であり。白岩とヒイロの事を途中で勘付いた事と協力したところ。なにより、録路の本人の事を考えれば、檻の中よりも外にいたい事だろう。


「皆がそう嫌うのは分かっている。録路はしばし、私と組んでもらう」


そういえば、萬との戦いでもチーム分けの行動を促していたキッス。

今回は自由に決めさせる気などなく。


「任務については次で話すが。粉雪、野花、表原ちゃんをAチーム。蒼山、飛島、北野川、古野さんをBチーム。ナギとカホはCチームで所属している妖人達の訓練を任せる」


引退からのカムバックだ。前線ではなく、ヒイロがやっていた教育面をナギ達が任される。北野川が話しも聞かずに出て行って、なおかつ辞めるだなんだの騒ぐ始末。


「飛島と蒼山は病院を任せる。北野川はソッとしてやれ」

「分かりましたが、キッス様の方は」

「心配ない」


配置を聞いた瞬間。戦時じゃない時であれば、ヒイロの不在と離脱は痛すぎる。

彼が担っていた役割を分散させても、組織としての負担が大きい。それに加えて、キャスティーノ団を裏で操っていたんだから、本気でやべぇわ。

録路なら少しはその穴を埋められるかもしれない。やる気ねぇかもしれないが。

使える奴はなんでも使うという、キッスの大胆さに粉雪と飛島は納得し。


「分かったよ。で、Aチームは何をするわけ?」


白岩不在の大穴を埋めなきゃいけない、大仕事。

引き続き、戦力強化であったのは明白。


「ひとまず、私が用意できる戦力は以上だ。Aチームは、これより妖精の国からサザン様の勅命で召喚される、一名の妖精を確保してもらいたい」


まるでレゼンやんけって顔で、表原も周囲の大半も、彼の方に視線がいった。その指令にレゼンはややテレ顔を見せるが、ついこないだ自分が送られたばかり。サザンの信頼を得ていて、自分並の評価をもらう奴なんてまずいない。

一体誰なんだと、思っている。

キッスの口からこれから確保すべき妖精の名が伝えられる。


「妖精の名は、ロゾーという」


世代としては、レゼンやカミィの次であるため。あまり知られている妖精ではないが、レゼンにはその妖精の名を聞いた瞬間。


「はああぁっ!!?どうしてロゾーを送るんだーー!?」

「なによ、でかい声出して」


驚きより困惑。表原が注意するし、周りも何事かと思っていたが。


「止めてくれ!今すぐ、召喚を取り消してくれ!まだ早いだろ!!」


レゼンの必死な声。とはいえ、キッスに言ってもしょうがない。もう手続きは終わっている気がする。キッスは概要を聞いているが、ナギとカホは別の意味でキッスに聞いた。


「サザンはまだなのか?」

「サザンがいれば、私達と合わせて万人力じゃん」

「色々とあるが、決戦には間に合わせると本人が言っている」


サザンが降りてくれば、他の妖精を無理に戦場に出さなくて済む。それだけの信頼を持っているんだが、他の奴を先に送り込む辺り、戦力なのは間違いない。


「ロゾーをどうして出す!ここには俺がいるんだぞ!止めてくれよ!」

「あー、分かってる分かってる。レゼンくんの気持ちもね」


似たような気持ちになっている、キッス。それとはまったく違って、パートナーである表原は


「さっきから五月蝿い」

「むがー」


レゼンの口を抑えて、頭の上から机の上に置かされる。

しかし、こんなに動揺しているレゼンを初めて見れたことに、弱みでも握れるかと悪い顔が少し見える。で、どんな妖精か。キッスはホントに直球で


「ロゾーという妖精はだな、そこにいるレゼンくんの妹に当たるんだ」

「そうだよ!ロゾーにはまだ、妖精の国にいるようにと!」

「しかし、こちらもマズイから。彼女に来てもらうよう……サザン様が頼んだらしい」


キッスはこっちがやばいから呼んだとは言わず、サザンが悪いんだよって、軽口で言っている事が少しセコさを感じさせる。


「どうあれ、肉親を護りたいなら。これから来る彼女を出迎えて欲しい」


涙ナギ、カホ。録路空梧の加入。

そして、レゼンの妹、ロゾーと。妖精の国の王、サザンがこれからやってくる。

因心界はその受け入れと戦力増強を持ってして、SAF協会とぶつかる。


だが、戦力の増強だけではない問題が因心界にはまだあった。



◇      ◇



一方。



ぺらっ……ぺら……



因心界の本部に革新党のものではない、高級車が向かって来ていた。

運転手と、助手席には使用人。そして、後部座席には涙一族の本家と呼ばれる存在の、気のよさそうな優しいおじさん。そんなおじさんが見ているのは、涙キッスの写真が沢山詰められたアルバムと、色んな男性が乗っている写真。どうやら、見合い写真のようだ。

おじさんはそれを見ながら、特にキッスに対して


「お美しい」


自分の娘ではないが、同じ血を持つ存在。親戚関係。


「早く子を身ごもって頂きたい。あなたの子をこの手で抱いてさしあげたいものですな」


いやぁ、ハッキリ言って。運転手と使用人は、内心で留めるが。

このおっさん、超キモイ。見かけの優しさが壊れるほど、内面は一族の事しか考えていないど変態おじさん。

人んちの子供に対して、子供を産んでくれとか願うのはどうかと思う。いい迷惑だ。


「急いでくれたまえ。因心界で忙しい中、私が集めに集めた、優秀な男達の見合い写真を見ていただく事になっているんだから」

「分かっています」



このおじさんの名前は、涙メグ。

涙一族の元トップであり、現在では涙一族のとある勢力を纏めている。基本的に、キッスが因心界にいるため、現在もまだ涙一族を纏めて、組織内でも高い権力と実力を持っている。

キッスはこの人物が非常に嫌いであったが、因心界の現状を考えると必要な母体。SAF協会とも因縁があるだけに、協力はしてくれるんだが……。

因心界との仲は悪い。



キイイィィッ



車が因心界の本部に着いた。

使用人が助手席から外に出て、涙メグを丁重に出そうと後部座席のドアを開けたのだが……


「先に行かれましたか」


涙メグの姿はもうどこにもなかった。

その彼が今、どこにいるか。



「ほう、メンバーが少々代わっておりますな」


もうすぐ、解散だってところに、"十妖"が集まる会議の場に、突如乱入してくる、中年のおじさん。見合いの席の紹介役みてぇな格好で、アルバム集が詰められた紙袋を持って、易々とキッスの背後をとる。


「!!?」

「げっ!」


知っている人もいれば、知らない人もいる。だが、全員。この涙メグには警戒的な態度をとった。当の本人はそんなもん知らんよって感じで、後ろからキッスの左肩を掴んで、目当てのご本人に挨拶。


「キッスちゃん、あなたに新しい男を紹介しに来ました、涙メグです」


なんやこの変態おじさんは……。随一の変態である蒼山も含めて、ちょっと退いている"十妖"のメンバー。キッスはメグに対して、顔を合わせずに後ろ向きで、優しくデコピンを額に叩き込む。


「キモイぞ、メグさん」



ドゴオオオォォッッ


優しい一発であるが、メグの体を宙にふっ飛ばし、天井に体をメリこませるパワー。


「うへぇっ!?」


初めてキッスの戦闘能力を見た表原が、ビビるのも無理はない。周囲もまた、人間一人が優しいデコピン一発でぶっ飛ぶ光景には驚く。人間状態でこの戦闘能力なのだ。

颯爽と怪しく現れ、天井に突き刺さりながらも、メグはマイペースにキッスにだけ話しかける。


「素晴らしいパワーです。そして、お優しい。あなたが本気ならば、私。死を覚悟しておりました。どうですか?結婚を考え、子供を作っていただけないでしょうか?あなたのお子さんを抱きかかえたいものです」


メグの体からゆっくりと血が流れていく。その姿に体を心配する一同であるが、心はもうキモ過ぎると余計に心配するレベルだ。この気色悪さに



「こいつ、変態じゃないか!」

「お前が言うなよ、蒼山!」


蒼山と同レベルと見ている周りだが、本人はこんなおじさんと一緒にして欲しくないという表情。そして、メグに制裁を与えたキッスは頭を抱えながら


「すまん。知っている人もいるが、涙一族の涙メグさんだ。私に代わって、今でも涙一族を纏めてくれている人だ。元棟梁だし」


知らない人にも、彼がどんな存在で役職なのかを教えたわけだが。キッス自ら、こっちの方が大事だとして、


「見ての通り、私に見合いを要求するおじさんだ」


なんでこんな人物まで呼んだんだろうと、本人が一番思ってそう……。


「これは協力者とは言えんな。同盟というか、……これからSAF協会とやり合う以上。今までよりも激しい戦いになる。涙一族の勢力もこうして迎え入れるよう、本部に招いた次第だ」


いや、変態増やしているだけにしか見えんのだが……って、メグの行動から感じ取る者達は多い。だが、キッスと同じく涙一族であるナギとカホ。


「あー、メグの奴は一族崇拝気質だからな」

「元々、ナギとは違って、本家の血が流れた人間だから」


メグのみを例外とは言わないが、ナギやカホのようにちょっとズレているが真っ当な人間が涙一族にはいると説明する。それに


「私はねぇ、キッスちゃんしか興味はないですよ」


自力で天井に刺さった体を抜いて、落ちてくるメグ。


「ですので、そこにいる。未婚者に対して、見合い相手を紹介する気はないですよ」


誰とは言っていないが、メグの視線が明らかに粉雪に向いていること。

革新党と涙一族の仲は非常に悪い。

粉雪も粉雪で、シカトを決め込んでいる。が、非常にイライラしているせいか。指で机をツンツンしている状態。彼女も当然、この涙メグがウザくて嫌いだった。

ま、お互い、そうであるため。


「私共は、キッスちゃんの味方。故に、あなた方と仲良くするつもりはございません。協力者としてはカウントしてないでしょう?」



涙メグを初めとする、涙一族の一派も因心界と合流。

ギクシャクした関係ではあるが、数と実力を信頼しての協力であった。



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