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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第23話『決戦!因心界VSキャスティーノ団!その2!』
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Bパート

行き着けの洋菓子店にて、録路とマルカは真剣な話し合いをしていた。

すでに3杯のパフェを平らげながら


「できるんだよな、マルカ」


ナックルカシーの"荒猛努アラモード"は独自で生み出した戦闘方法であった。

本人も、相方の妖精マルカも、


『た、たぶん。不可能じゃないと思うし、そーいう発想は……』

「じゃあ、できるな」

『ええぇっ!?そ、そんな決め付けは……』


己の持っている能力をさらに拡張することであっても、未知の領域であった。

自分のできる事が分かっているというのは、限界もまた見つめられるもの。自信なしが本音のマルカ。そこへダメ押しするように録路は伝えた。


「お前の能力は俺好みだが、正直にクールスノーやレンジラヴゥには敵わねぇ」


いや、さすがにその2人と比較しないでよって。内心思っているマルカ。自分からすれば見上げるほど、高いところにいる存在だ。自分は並以下の妖精。ほとんどが録路のおかげで、実力を保てている。


「すぐに奴等に挑むつもりはねぇが、今後それだけの相手と戦うこともある。その上でどうしようもねぇ、出力の限界を克服する手段は欲しい。相手によっちゃ、菓子を食う暇もねぇ」


実際、ブレイブマイハートとの戦いでその窮地にたたされ、打つ手がなくなった。

妖人化しても本領は菓子を食ってからであり、その持続性と出力は回復が主。攻める手段に限りがある。純粋な力の増強もまた、マルカには厳しい。

心当たりに。


「茂原の馬鹿ほどの制約を作る気はねぇ。そんなのパワーで押されるだけだ」

『うーん。でも、やれるのかな』

「やるんだよ」


逃げる、生き残るための力だけでは、この道で生き残れない。マルカの本人の弱さと精神の弱さを自覚させた上で、録路はマルカに進言する。

相手を喰らい尽くす生き方。


「俺が。この"録路空梧"の状態のまま、"ナックルカシー"の能力を発動できるようにしろ」


戦闘中という場面で食べるという行為は、菓子であれば簡単な縛りな部類であるが。大量摂取は難しい。ナックルカシーの妖人化の時間は長い方でも、大量に食ってる余裕はない。

しからば、準備だ。

そういう考えに至ったが、糖尿病などを心配してしまうマルカ。これ以上のお菓子の量を増やすのは……、彼の健康面を不安がる。

それでも、強くなるんだろって。自分にしか負わないリスクだったからの提案。無論、菓子が好きなのもあるけど。



パクゥッ



「チョコレートやクッキーよりか、バナナにイチゴ、クリーム、アイスとありゃあ。こっちの方が出力はあんだろ。だが、ナックルカシーの状態で、パフェなんか食ってられん。溢すのはもっとムカつく」

『その上で、その条件を組み込むわけなんだね』


正直なところ。


『どーいう出力でどーいう力を与えるか、あたしにも検討がつかない』

「構わねぇーよ」

『辛くなっても、だよ』

「おうっ。これで心置きなく、パフェを食いまくれる。搾り出せよ」



◇      ◇


『録路、"荒猛努"はあなたの望みを叶えられていない』


マルカの言葉に偽りはないが、1つだけ伝えていない事があった。

録路空梧で食べた菓子をナックルカシーの能力に変換することはできなかった。

だからマルカは、ナックルカシーが補給している菓子の分を出力に変えるのではなく。これまで摂ってきて作り上げている録路空梧本体が、形成されている菓子で得られた栄養分を出力に出している。


ニュアンスがやや違うが、録路が想定している以上の消耗を抱えての出力だということ。

倒すための強さではあるが、諸刃である。



「おおおおぉぉぉっ!!」



力が沸き上がるだけでなく、異様な肉体変化を起こし、後に急激な脱力が来る事をナックルカシーは体感。


「いくぞおおぉぉっ!!ブレイブマイハート!!」


周囲の状況変化は、自分によって変わった事などまったく分かってない。

目の前という事も見えず、敵と思ってる奴だけをぶっ倒すためだけ



バギイイィィィッ



「ど、ど、どこを狙ってるの!?暴走!?」


咆哮と異なり、あらぬ方向に攻撃をしている。その攻撃もアイスのような柔らかさと冷たさを持った、巨大な腕から放たれたもの。

攻撃した瞬間、その床の部分が氷結していく。激しい攻撃ではあるが、何をしているのか分かっていない状態であると、ブレイブマイハートは本能で察知。隙だらけのところに熱い拳をお見舞いする。



「ぐううぅぅっ」

「心を制御できてない奴なんかに、あたしは負けないよ!」



目が覚めるような一撃を与えたつもりだが、手応えが少ないと拳が伝えてくる。

この怪物、防御力と耐久力、回復力。どれもナックルカシーの上位互換。


「強い!」


だが、前の攻撃で分かった。ナックルカシーはこの形態を初めて使い、体と精神が理解していない。いかに身体能力が増強されようと、活かせる頭がなければこいつの攻撃は回避できるし、防御の隙を存分に叩ける。

つまるところ、倒しきるか、制御を成功させて倒すか。



「ふーーーーぅっ」

「はぁーーーーーっ」



爆発的な強さには恐れ入る。

それでも、代償は大きい。差を縮めたのか、あるいは離されたのか分からない。

強さと勝利は=ではない。

ナックルカシーがこれから勝利を摘み取るには、高い壁がいくつもある。己の制御も含めてだ。ブレイブマイハートの攻撃も容赦なく来る。



ドゴオオオォォォッ



「ぐうぅっ」

「おらああぁぁっ」


見守る各々の妖精達。


『ナックルカシー!!早く意識を取り戻して!ダメージを受け続けたら、死んじゃうよ!』

『さすがブレイブマイハート!!このまま押し切れーーー!』


考えがついてこねぇ。だが、体が動く。

ブレイブマイハートの動きはそれに尽きている。今のチャンスにどれだけ攻め続けられるかは鍵となっている。相手への敬意を込めて、奴が立ち直ってくる予感があった。

それは決着がつくよりも早ぇぇっ。


バギイイィィッ


体格差が明確とはいえ、空中でのかかと落としが決まった。

その一撃で予感が確かだとするものを見た。


「!!」


今、攻撃に合わせて防御しようとしていた。そして、攻撃をもらってからの反撃も早く、鋭くなってきた。


「うおおおぉぉっ!!」


どこに目や耳があるか分からないが、確実に姿を捕捉し始めた。こいつ、意識を取り戻してきている!なおの事、退けねぇ!!


モコモコモコモコ


膨張するようにデカくなっていたナックルカシーの姿はやがて、色こそはアイスのように白くなってはいたが、徐々に人のような形になっていくよう収縮していく。

馬鹿げた出力はハッキリ言って、無駄な消費であり、それを意識して抑えていく体は元のナックルカシーの体型に近づいていく。


『!!意識が、戻っていく!!』


マルカもそれに気づく。この暴走を制御できている。目から感謝の涙が、早くも零れた。

そして、打ち込まれながらもナックルカシーは無意味な反撃を一切せず、機を待った。

押し切りたいブレイブマイハートとしての心理を読みきり、連打の回転が終わった瞬間を待っている。わずかでも防御をとらせたくない。意識がハッキリしているからこそ、守りと駆け引きをする。演技もまた上手く、ブレイブマイハートは気付けていない!


「おおおぉぉぉっ!!」



バヂイイィィッ



激しい攻撃を叩きこんでいる時に、呼吸する瞬間があり、やや回転が落ちる。それをドンピシャに合わせ、ナックルカシーが意識した豪腕からのラリアットが



「うおおおおぉぉっっ」

「!!!」



ドゴオオォォッ



ブレイブマイハートの鎖骨付近を捉えた!!



◇      ◇



ブロロロロロロ



前からそんな気はしていたが、


「佐鯨。あんたさ、私の部下にならない?」


失ったモノがあれば、何かで平坦に満たそうとする。その何かを満たすのは自分を惹きつける、魅力。強さなのか、あるいは……人柄とか?

こんな秘密をサクッと見つけてしまう、あの2人の気の周りがちょっと、鬱陶しいけどありがとうと言える。


あの日。

白岩や表原達と一緒に、テニスでもしようとしていた時。

スポーツ公園に向かうため、自分のスポーツカーで佐鯨と一緒に。


「なんでだ?仲間じゃねぇか」

「部下と仲間もしてくれないのね」

「?ああ、そうだな」


分かってくれない。

そーいう鈍いところもいいんだろう。その鈍さにも種類があって、白岩の鈍さは天然で、佐鯨のそれは自分と似ている我の強さのある、鈍感気味。


「北野川から話すもんだからよ。ちょっと間が悪いけど」

「なによ?」

「助けに来てくれてサンキューな。白岩から聞いたよ、お前から俺達を助けに来たって、やっぱ助け合える仲間を持つべきだよな」


そーいう余計な事を言うなって、アクセルを余計に踏んでしまう。


「別に助けたいからじゃないわよ。お礼欲しいとかでもない」

「俺。今度はお前のピンチに駆けつけ、ぜってー助けてやる!」

「そんなの一生ないわ、ピンチになる前に助けなさいと思うし」


言葉じゃなく、真実で言える男って今時珍しいし。そんな奴にこーいう感情を抱くのは、あたしもやられたというところか。

勝手にズカズカと、その気持ちをハッキリ言えるあんたが、めっちゃ羨ましい。


「もし、北野川が同じ班だったら巻き込んでた。それぐらいあの時、熱くなってた」

「あたしはね。あんたと同じ班だと、妙に意識しちゃって来てたのよ。まったく、整理ができないくらいに!」


佐鯨は年下だし、あたしより背低いし、暑苦しいし、真剣な奴だし、馬鹿だし。


「少しはあたしの大切さ、分かってくれたかしら?」

「おう!北野川は俺達の大事な仲間だって事をな!!」


カッコイイんだよ。あんたの眩しい生きていく姿勢が。好きになってたんだよ!!


「分かってないじゃない」

「いやいやいや、分かってるって!」

「ふんっ……」



◇      ◇



「………………」


ナックルカシーの一撃で、意識が1秒、トンでいた。

その時、脳裏が作り出したものが、再び意識を取り戻らせたのだろう。大事な仲間がいる事がブレイブマイハートを支えた。


「っ……」


帰る場所があるし、帰りを伝える相手もいる。



「はは」


奴のカウンターが見事過ぎる。誘いも上手かった。正直、こんなに早く目覚められなかったら、ナックルカシーは甘くねぇ追撃を確実にもらっていた。いつも俺を助けてくれんだな、北野川。

お前が俺をこれから支えてくれるなら、俺は立ち上がれる!



ドゴオオオォォォッ



巨漢を活かしたナックルカシーの踏みつけは、ブレイブマイハートを逃してしまった。加えて、体勢を立て直すことまで許す。

与えたダメージは本物だ。回復能力のないブレイブマイハートには痛いはずだが、まだ運動能力が死んでない!



「ぐぅっ!」

「はぁーっ!」


カウンターもまた見事であったが、もらい続けていたナックルカシーのダメージも深い。あの一撃を避けられたのは痛い。

両者、一度。膝が笑って動けなくなる。


「っ!おおおぉぉぉっ」


負けちゃいけねぇ!!俺には待ってる奴がいる!!俺を支えてくれる奴がいる!!


ナックルカシーよりも迅く。ブレイブマイハートは突進していった。先にダメージを与えた方が勝つ!もう残りは少ない、最大火力を叩き込むため。

こちらも最強の技を使った。


「"熱闘動神ねっとうどうじん"」


右拳を強く握ったまま、マッチを擦るように腕を動かし、熱を呼ぶ。

自分が発する熱を一箇所に集中させ、熱をも超える熱と、表現するべきほどの闘気。

発動した瞬間に、この空間にあった水分という存在が蒸発していくほど。

ナックルカシーが作り出していた冷気や氷が、一瞬にして熱気や気体になっている。そして、ナックルカシー自身も浴びせられる熱で水分が一気に蒸発していく!


「!!ううぅっ!」


触れてもいないのに、体を熔かされる熱量!大詰めの切り札だな!


「おおおおぉぉぉっ」


この右ストレートを喰らえば!!どんな奴だろうが、立ってこれねぇ!!



グニョンッ



一方で、ナックルカシーは右腕を柔らかく大きく太らせていくように変型させた。その滑らかな変化はクリームやホイップのような感じだ。


「"卯砂実うさみ"」


体が焦げていく。特に変化させている部分の焦げは酷い。ナックルカシーも、この一撃で決める気だ!両者、右ストレート!


「いくぞおおおぉぉぉっ!!」


反応は互角、パワーも互いをぶっ倒すほど。やる前から分かっていたわけじゃねぇが、この場面でそれができるのかって、一手先に進められた。



ドゴオオオォォォッ



両者に明確過ぎる差があった。カンケーねぇと、言い張れない引き出しの差もしかり。

右拳と右拳のぶつかり合いだが、リーチ差が明白。だが、ブレイブマイハートにはあの熱がある!!


「伝わるぜぇ!!この熱っ!!」


ぶつかりゃあ、全てを焼き尽くす熱の拳。あの巨体のナックルカシーに対し、振り切った会心の右拳!膨れ上がったナックルカシーの右腕が焼かれて、吹っ飛んでいく!

勝ったぁっ!!倒したぁっ!

歯を噛み締めて、前を向いた時!

ナックルカシーは正面におらず、自分の右側に周りこんでいた!


「お前は強かったぞ!」

「!」


右腕を、デカくしただけじゃなく、切り離すこともできたのか!リーチ差を埋めるだけじゃなく、目暗ましの壁として、……!



ドゴオオオォォォォォッッ



ナックルカシーの体重が乗った蹴りが、ブレイブマイハートの側頭部を正確に突いた。その衝撃で遥か先の壁にめり込んでいく、ブレイブマイハート。そこからわずかに体が動いたが、意識が遠のいてくる。わずかに出せる声は


「……き………た……」


……わりぃ。


せめて、これくらいしか言えねぇのか。

だったら一度、そうやって、直接呼んでやれば良かったな。


「……話法……、悪ぃ……」


こうやって、昔を思い出せちまうことに……。悪ぃ……な。


「……………」


ブレイブマイハートVSナックルカシー。

激戦の末、勝ったのはナックルカシー!


ブレイブマイハートこと、佐鯨貫太郎。

戦死……。



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