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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第15話『”聖剣伝説”の再び、激闘の因心界VS萬!』
37/267

Cパート

戦う事を好んでいないのは実はお互い様であった。もっとも、好き嫌いの話しであれば。表原達は嫌いであり、代勿側は好きである。



ドボオオォォッ



栓抜きして空いたビール瓶がその瞬間だけ、白い気泡を放出するかのように白煙を上げ、店内の壁に穴を空けたのだった。ドゥーム・ザ・ホールは自ら空けた穴に向かって走っていく。


「まー、なんでもいい!追いかけてみろよ!!」

「なっ!?」


お互いが戦いあうことが、戦いというわけでもない。ドゥーム・ザ・ホールにとっては逃げ切るか、捕まるかというものが戦いなのである。その戦いの中で破壊だったり、殺しだったりが行なわれているに過ぎない。

妖人化したならば身体能力強化も当然ある。


「捕まえられっかな!?テメェ等如きによ!」


ドゥーム・ザ・ホールの身体能力は、白岩や録路のようなタイプではない。人間より優れてはいても、超人の域。


「走れ、スカートライン!!」

「そうです!」

「えっ!?」


二人に命令されて追いかけるスカートラインも速い。そして、2人に続くように表原と野花も追いかける。

店を貫通させる穴を空け、自由な逃走経路を作れるドゥーム・ザ・ホールにとっては街中での逃走は得意。


「はぁっ……はぁっ……疲れた」

「コラァァ!!スカートライン!何してんのよ!?へばるなぁ!!」

「じゅ、10mも全力疾走したんだよ!」

「短っ!!妖人化しているのにどんだけ体力ないんですか!?」

「耐久力に自信あるけど、持久力はないから!肺、苦しいっ……」


おまけにこの手の持久力勝負、スピードは幹部どころか全ての妖人の中で最弱と言える、スカートラインが追いかけるのには無理がある話だ。本人が言っているように戦闘向きではない妖人なのだ。

無様に四つん這いで疲労を吐露しているスカートラインに容赦なく、2人は大激怒。


「相手を取り逃がすでしょ!なんとか追いかけなさい!!」

「そうです!これからあたし達が妖人化しても、見失いますよ!!」


いや、絶対選出を間違っているよ。

この距離まで近づいておいて、表原と野花が戦わないのが悪いと内心思いながら、


「分かったよ。これでも幹部だ!正確性は微妙だけれど、追跡の手立てはある!北野川にも命令されてるし……使いたくないんだけど……」

「ホントですか!」


スカートラインは少し渋りながらもポケットから取り出したのは、


「たらりらったら~!!麻生町7丁目44番23号アトリエッタアパート、402号室にお住まいの磯野ちゃんが履いてた、Tバック~~!!」

「なに下着出してんだーーー!!つーか、下着ドロしてるな!」

「ふざけんのも大概にしてください!!」


超ど級にふざけた秘密道具に、のび○虐めるジャイ○ンとスネ○よろしく、スカートラインに暴力を加える表原達。

こっちを先に捕まえてやろうかと制裁中のところ


「ちょっ、ちょっ!お、落ち着いて!落ち着いて!暴力良くない!」

「下着フェチの度も良くないわよ!!」

「すでに追跡の手立ては整ってるって!!」


スカートラインが出したTバックはヒラヒラと宙に舞っていくが、それは明らかに風で飛んでいく軌道ではなく、何かをロックオンしていくかのように向かっている。それがドゥーム・ザ・ホールが空けた穴を通っていくことで理解する。


「"追跡道具ロックプラン"、あの下着は代勿を自動的に追いかけるように施した!スピードはないけれど、これで相手がどこに隠れようと追跡できるよ!」

「なんで下着にすんのよ!あたし達、あれを追いかけるの!?」

「パンツ飛ばされた子供達みたいな事をしなきゃいけないんですか!?」

「だって、壊れたら能力が消えるんだよ!布や糸の集合体の方が、追尾には向いているんだ!!隙間とか通り抜ける高度な自動追跡にもしてるし!」


なんかずりーと、酷い言い訳を聞いた2人。

仕方ないが


「表原ちゃん、追いかけるわよ!」

「は、はい!」


宙に舞っているTバックを追いかける。

もうすでにドゥーム・ザ・ホールの姿はなく、完全に取り逃がしている状況。


「なんか凄い嫌だ!」

「あんまり速くないわね!これ追いかけてたら捕まえられっこない!」



それは一定のスピードで追いかける能力である。スカートラインが追いかけられる速度をベースに作られているため、妖人化せずとも追いかけることも可能。



◇      ◇



「追って来ないよーだな」


なんていうか、手応えのない連中だった。

ドゥーム・ザ・ホールは十分な距離をとって作戦を練る。とは言うものの、この手の感覚には覚えがある。



おそらく、なんかしらの追跡手段か、位置を特定できる能力者がいるってところか。

普段なら警察達が来る前にトンズラしているのに、奴等が到着してきたのには予知的な事か、情報を得られるなんかしらがあったと見受けられる。

グループでの行動だとよくある事だし、これを防ぐのは無理があるもんだ。

一方で前者なら能力者を始末できるチャンスは来る。おそらく、あのスカートラインに俺を追跡する能力があると見た。奴だけは俺との対面で妖人化をしていたからな。



逃げ切る事を勝ちとするなら、ドゥーム・ザ・ホールの勝ちはスカートラインを倒す事である。彼が倒れれば、追いかける手段がない。なんとも変な追跡方法をとっているわけだが、そこに気付く方法はもうちょい先となる。

妖人化を解除するドゥーム・ザ・ホール。解除すると、割れたはずのコットウも再生する。


『逃げ切らせてくれた感じだな』

「ああ。タバコとるぞ」


コットウの中からタバコを取り出す。コットウの中は薄暗いが、コットウの体積以上にいろんな物が入るらしい。



「ふーーーぅ」



タバコで一服。それほどの余裕があるって事は、長期戦を望んでいるとも思える。

数で囲んでとっ捕まえる。

確かに録路や茂原のような戦闘なり戦術を用いられないからこそ、じっくりと確実な手段で倒すのがセオリーと言える。捕まるわけがないとタカを括る代勿の悪い癖。それを指摘するようにコットウは告げる。


『連携をとる前にこちらからも仕掛けるべきだ』

「ん?」

『俺とお前の能力なら捕まらない。そして、俺の中には録路からもらっているジャネモンを出せるアイテムがある』

「知ってるよ、知ってる。だけど、俺の都合の時にしか使わない。そーいう決め事だ」


キャスティーノ団とSAF協会が共に戦わないのも、人間と妖精の意識、思想の差がある。

コットウの悪意はコココンの程ではないが、敵と見なした相手には無関係な存在を巻き込んでも構わない考えを持ち。代勿は、自分の悪意に対して、無関係な人間を巻き込むことは好んでいない。

彼の楽しみは知る人の不幸を哂う事にもあるからだ。


「勝負ってのは、ギリギリの緊張感あっての事だぜ?コットウ、お前との付き合い長いけど、理解してくんねぇのな」

『分からん。勝つ事が楽しいと、なぜ理解できないのかがな』

「楽しむって事が戦うって事なんだぜぇ」



表原とレゼンのような仲の悪さではなく、意識の違い。


「ギリギリに追い込まれても、逃げ切られる悔しさを見ると爽快なんだよ。まー、見とけよ」


およそ800mの間合い。

確証がとれないにも関わらず、自分の位置がバレている事を感じ。なお、余裕の顔を作る代勿。

下着が代勿を自動追跡している速度は、時速5キロほどと遅い。これは徒歩とほぼ同じぐらいの速度だ。

確実に辿り着くが、そこまでの時間でどれだけの被害が生まれるだろうか。

とりあえず、指揮をとっていた代勿の管轄から外れた部分では争いが起きている。



「ゆ、ゆるさねぇ」

「い、因心界の奴等。駐車してるとこに体当たりしやがって」


代勿の強盗仲間。車を破壊され動きはとれなくなったものの、アイテムを使う程度の力はあった。


「この怒り、収まらねぇ!」

「このジャネモンを出せるアイテムでぶっ倒してやるぜ!」


そう言いながらも、すでに表原も野花も現場を離れた後。すぐ近くにいる蒼山もこの事件場の方に意識などいっていない。わりと虚しい戯言……。

自分達の体から発している邪念を糧に、どうなろうと知りもしないで使ってしまう者達。


「じゃねも~~~!!」


駐車違反にキレてる車型のジャネモンが誕生。

走っている車や人間に反応する迎撃型の能力を持ち、因心界はこのジャネモンの対応に追われる始末。現状、代勿を追う事ができるのは表原と野花の2人しかいない状況。

その追跡は……




「はぁ~……はぁ~……休憩、いいですか……」


表原も息切れ停止中。頑張ってみたが、さすがに限界。

時速は徒歩ぐらいの速度でしかないが、あの下着は信号や障害物を上手に通過し、代勿の現在位置を最短距離で転送させる。なんだかんだで、一般人が走る速度となんら変わりないこと。

逆にそれくらいの遅さであるため、車で追いかけるのも少々難がある。走って追いかけるほうが気付かれにくさはあるが……。事件現場でジャネモンが出現したのは野花のスマホにも情報が届いてた。


「早めに飛島か佐鯨に連絡すれば良かったかも……」


作戦を決めた北野川をちっと恨む、野花。

まだ彼女には体力の余裕が感じられるが、並ぶことはなかったものの表原を待ってくれる。しかし、そんな様子を表原とレゼンは似たような考えで、野花に聞こえないよう話し合った。


「気付いたか?」

「うん」


この戦いはとうに終わっているはずなのだ。それでもまだ続いている事。前々からの疑問であるが、


「野花さん。一生懸命なの分かるけど、"自分が絶対に戦わないようにしてる"」

「ああ。俺は気を遣ってやっただけだが、俺達の力なら相手を捕捉する事だけなら困らないだろうに、野花さんは俺達を代勿と戦わせる気だろう。妖人化を促さないのはそーいう事だな」

「あたしとしては良いんだけど、なんで?」

「分からねぇよ。想定できる事といえば」


考えられる配慮としては、妖人化で得られる能力が原因と思う。

敵味方問わず攻撃しちまう凶暴な戦闘向きか。住民を巻き込む能力。あるいは戦闘向きじゃなく、古野や蒼山のようなサポートに徹したタイプの能力。あとは使い時が非常に限られた、特殊な条件化で発揮する能力。


「なんだろうが、いかんせん。解せないんだよな」

「解せない?」


野花との交流はそれなりに多く、彼女が妖人化するべき場面はいくつもあった。

それを見てきた事と、仲間達の反応を見るに。


「さっき挙げた事例がどれもこれも当て嵌らない」

「……確かに」


自分の危機に瀕した時も、妖人化しないで捕まったりしたのも不思議なことだった。

そして、野花は少し急かせるような声を出し


「ほら!行くわよ!表原ちゃん!」

「えっ!?ちょっと、待ってくれません!」

「ダメよ!今は蒼山のアレが頼り!」

「だ、だったら!野花さんだけでも追いかけてください!」

「1人で下着追いかけるのって、アホに見えない!?イヤ!」


まともそうな人だと思ったけど、なんか妙なところあるな……。


「そもそも今度戦うのは、表原ちゃんとレゼンくんよ!」

「えっ?」

「俺達がやんのかよ!」

「えっ!?レゼンくんもそんなこと言うの!スパルタ教育が有名じゃない!」


それは教育方針であるが、この状況は教育ではなく協力のそれである。


「俺達はA班、野花さん達はB班だろ。この事件を引き受けてるのはB班。今回、表原はそのサポート役!実際に戦うべきは野花さんだろ!」


最もらしい返しなのであるが


「わ、わ、私は戦闘向きじゃないのよ!!」


なんかどもった声。話しをする時の声ではなかった。何かの抵抗を感じられるものである。

そんな中。野花の胸下が急に震動する。


『レゼンくんの言うとおりじゃないか、野花!』

「コ、コラ!勝手に喋らない!セーシ!」

「……セーシさん。理由は聞くよりか、見た方が早いと思うんだ」


なんとなく分かっていた事ではあるが、野花が"まったく戦う気がない"のではなく、"妖人化をしたくない"という事で話を進めると、辻褄がモロに合う。

セーシという、バイブ型の妖精が野花のパートナーなのだ。見た目だけ見ても、普通じゃない。表原も顔がひきつってしまう妖精である。

とはいえ、そんな外見からは思えないような、野花への配慮がある。


『単刀直入に言うが、野花は俺との妖人化をしたくない。この件、なんとかしてレゼンくん達が解決してくれると嬉しいのだけれど……』



セーシからまさかのお願い。レゼンはいちお、聞き取れない表原に優しく伝える。


「表原。セーシさんと野花さんは、妖人化ができないみたいだ。なんとか、代勿と戦ってくれるか?」

「えっ?……ちょっ、あたしがやるの!?」

「いや。できないは言い過ぎだな。したくねぇーんだって……」


正直言ったら、どー考えてもこいつは言うだろう。


「なんですか!?そのふざけた理由!!」


当然である。いや、誰が聞いてもそーいう返しをするのが自然。レゼン本人もそのような言い分を認めるわけにはいかなかった。真正面に言われたものだから、野花もバツが悪そうな顔をするも


「ううっ……でも、しないわ!何を言われようと、自分の姿を曝け出すことしないから!」

「状況、分かってるんですか!?」

「私の事を考えても!分からないだろうけど!とにかく、私は絶対に、本当に危機が迫った時にしか妖人化はやらないって決めてるの!!絶対にしない!!どーなるか、分かったもんじゃないし!!」

「見損ないました!!」


表原にそれ言われるのはショックだろうな~って、レゼンは同情する。


「分かりました!ともかく!!ともかくです!追いましょう!代勿と接触できてから、考えてください!そのこと!戦うのはあなたですよ!」

「……分かったわ……その時まで、考えておくから」


言い合いになってしまったが、2人揃って代勿を追いかける。

この距離だったら、妖精同士の会話ができると判断したレゼンは、また野花の内ポケットに入れられてしまったセーシに、もう一度伝える。


『俺は表原を守るためにあんた達を盾にする。あんたが野花さんを戦わせるべきだぞ』

『器用なことして伝えてくれるのは嬉しい限りだな』

『ゴマすっても、俺も戦わない。表原も調子悪いって言ってるんだ。今日ばかりは傷つけさせるつもりがない』


だいたい分かってきた。野花の能力は間違いなく、戦闘特化。

元々、セーシの内に秘めている強さには気付いているレゼンだ。譲歩して伝えることは


『とはいえ、代勿を野花さんの戦闘範囲に引き摺りこむくらいは手伝ってやるよ』

『……』

『そこから先はホントに野花さんとあんたに託すぞ』

『…………100mあれば十分だ』

『100mか?』

『住民や周囲への被害を抑えるため、野花が周囲を意識して戦える最低ラインは100mと見ている』

『分かった。あとは表原と野花さんをどーやって説得するかだな』


そりゃ各々か。まだ野花を説得するよりかは大分楽に思っているレゼンだ。

代勿を追いかける手段はマジカニートゥの本領発揮を見せずとも、現状使ってきた能力と今の現状でなんとかなりそうだ。問題は野花だ。野花が戦ってくれないことには表原の本気も水泡するって事だ。

他人や仲間のやる気のなさで。自分の本気を奪われるってのは心に衝撃が来る。チームプレイ……というより、信頼し合う事に関しては、マジカニートゥの能力はいかんせん出来が良すぎる。レゼンはセーシをも試している。


『まだ少し、居てくれ。レゼンくん』

『俺もそんなこと思っていた』


正直、追いかけているだけじゃ、2人のきっかけは作れないだろう。今、多少。亀裂も入っている状況だ。

きっかけがねぇと、動かないこの情けないヒーローをなんとかしろって。



◇      ◇



バリイィィンッ



「はろー?いいバイクを奪いに来たんだが……」

『この俺をハンマー代わりにするな』



一方で代勿は逃走用のバイクを調達しに行っていた。バイク屋を襲撃し丁重に暴力で奪い取る。

妖人化せずとも、この重量感ある壷の妖精コットウを振り回すだけの怪力も持ち合わせる代勿にとっては、一般人を軽くあしらう暴力を有している。


ドタァッ


「金目の物もいちお奪っておくか。しけたんだがよ」

『部品もいちお奪っておくか?まだまだスペースに余力はあるぞ』


遊び目的と逃走目的とで違う意見がある。ならばここはと


「両方だな」


がめつさで解決。

バイクも奪い取って逃走再開。


『逃げるのならアジトは止めておけ』

「なんでだ?」

『奴等が追って来ていると思うが、お前をダシにアジトの居所を掴もうとしているのかもしれない』

「映画でよくある手だな。潜入捜査のつもりか。だったらここは、俺の得意なところに招待してやるか」


柔軟な思考で逆に追いかけている表原と野花を倒そうと目論む。

コットウとしてはそーいきたいのであるが……。長い付き合いだ。分かっている。

代勿にとっては遊び相手ってところ。本気で殺しに行くことはない。道中を楽しんでいる馬鹿。

一般道を爆走していき、事件現場がかなりの距離が離れ、2つほど先の街に行ってしまう。もう完全な追跡は難しい。

そう思われたが、



ブロロロロロロ


「?」


代勿が運転するバイクと並走する、ワゴン車。

フロントガラスが空き、代勿に顔をのぞかせたのは……。


「あー、バイクで逃げてもらってありがとう」


野花であった。その左手には拳銃が握られており、それも携帯してたのかいと、後部座席に座らされた表原はビビリながら、このカーチェイス戦を見る。


パァンパァンッ



「うぉっ、おおおぉっ!?」



な、なんでいきなり追いついた!?


代勿は急ブレーキをかけ、銃撃を阻止する代勿。そして、躊躇なくの妖人化。


「『高値に決めちまいなぁ!ドゥーム・ザ・ホール!』」


不運と幸運は収束するものだ。

いかに早く逃げる事が逃げ切れる最善というわけではない。発端はラチがあかないというもの……。

時間は30分前に遡る。




「蒼山!!あんたの転送能力、どーにかなんないの!?スピードが足んなくて、敵に追いつけないわよ!」

『そ、そうはいっても!自動転送の分、制約もあるから……』

「あなたホントに使えないわね!!」


野花は蒼山に連絡をいれ、あの下着にかけている自動追跡能力について、色々と聞き出した。

蒼山曰く、それは相手の位置を正確に捉えて、現在位置と追跡者の状態から最短なルートを組み込むものだという。かなり高性能であるが、肝心な追跡速度が足りていない。


『も、元々その能力は……。僕が気にしている女の子を追跡するていで生み出した力だから……』

「なに恥ずかしがった声でとんでもない事言ってんのーー!?」


スマホを投げつけるかのような勢いで、電源を切る野花。やっぱり、あいつダメだわ……。

などと思いながら、その本人よりも頼りになる頭脳で対応する。

少々気が引けるが野花は今なお追跡している下着に、



「セーシ!あの下着にぶちこみなさい!」

『……ん?どーゆうこった?』

「いいから!!黙って言う事を聞いて!!」


伸縮自在に先端を伸ばせるセーシ。Tバックの間上手い事を貫いた絵面は少々卑猥ではないかと疑う。

だが、そんなことなどどーでもいいわと、野花がふつふつと湧き上がっている。絶対拒否にして本末転倒な覚悟を決めた女の顔は、なんとかしちまいそうな決意。男にはできないハンデを抱えた時の覚悟。



「やってること変なんですけど、カッコイイですよね。野花さん」

「どんだけ妖人化したくねぇんだ?」


マジカニートゥの能力なしでどーやって追跡する気だ?

表原を戦わせる感じもないし、ガチでこっから敵をどう追い詰める。



ビィーーン



セーシは転送されていく下着を離さないで支える。木の枝に引っ掛かり、風が吹き続けているような形。なんとも言い難い状態であるが、これで追跡としての役目ではなく、


「場所だけ指してくれればいい!また車を手配して、追いかけるわ!」

『おー!そーいう考えか!俺、この下着を固定する役目なのな!損な役回りだな』

「知らない人が見たら、絶対に信じませんね。蒼山くん、ホント馬鹿です」

「確かに位置は分かるが、どれだけ相手と近づいたか分からないから慎重にいかないとな」



……という具合に、下着を目的地を指すコンパスのように工夫し、車での追跡を開始したわけだった。

表原+野花 VS ドゥーム・ザ・ホール。


「ここで決めさせてもらうわよ」

「ひゅー、たまんねぇな。この緊張感、ワクワクしてくるぜ。こいつぁよ!」


逃走・追走戦を制するのは、果たしてどちらか?



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