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MAGICA NEAT  作者: 孤独
第11話『蒼山ぶっ殺す!蒼山ぶっ殺す!!不正妖精の襲撃?そんな事より蒼山ぶっ殺す!!』
25/267

Cパート

『コココココココ』



噂には聞いていたが、想像以上の傑物。レゼン。

この俺をぶったぎりやがった野花とセーシさんを分離し、閉じ込める事でひとまず良かったと思った。なにしろ、直接的な戦闘になれば、不向きな俺じゃなくとも大抵の妖精やジャネモン、妖人も始末されてしまうからな。

だが、なるほど。レゼンもここで始末するべきだ。セーシさんよりも手強い、確実に……頭もキレやがる。奴はまだ妖人化できるし、能力も未知数。できるなら、次に始末しておきたい!奴とパートナーになっている女を引きずりこんで、戦闘不能にしてやる。

それと十妖の飛島華。情報は少ないが、この中では野花に次ぐ戦闘能力を持っていると見た。分析力もあるし、奴の妖精、ラクロは臭いで追跡ができる。俺に辿り着ける可能性がある奴だ。



『コココココココ』


だが、勝てる!!

野花だけでなく、多くの人間を人質にとった状況。奴等が要求を呑むラインとそうでないラインを見極め、このホテルに閉じ込め、始末できる!!

十妖を3名に加えて、レゼンも葬れば。俺はSAF協会に迎えられる良い手土産になる。

キャスティーノ団は利用価値もあったが、もう力を蓄えた俺には必要ない。人間共を自由に飼える世界にしてやる。



『コココココココ』



不正を働いている妖精の中には、人間と契約した際。対象者も知らない裏の契約も結ばれており、知らぬ間にほとんどを取り込まれてしまう事もある。悪意を持って事実を隠し、エネルギーを吸収し、成長を遂げる。

喋る言葉は一文字だけしかないが、意外な事に頭の回転と秘めている邪心は本物。

今回の襲撃犯の正体は、コココンである。

キャスティーノ団の一派、"萬"。野花とセーシに倒された、セッティが所有していたラッコ型の妖精。

野花達の一撃によって、体を切断されたかと思われたが。セッティの命と余力を取り込んで生存し、密かに現場から脱出。野花達に復讐するという理由と、次の所属先への手土産を用意するための襲撃だった。

SAF協会は因心界と敵対し、そのほとんどが自分と同じ不正な妖精の集まり。セッティ達などから力を蓄えたコココンにとっては今こそ、加入するべき場所と時であると判断していた。



『コココココココ』



十妖を何人も葬れば、シットリの方から交渉してくるだろう。

ひとまずはSAF協会の中に入って心と体を癒し。次の宿主も捜してもらうとするか。もっと強い宿主を見つけたら、今度はSAF協会を丸ごと乗っ取るか。あいつ等の理念に興味なんかねぇし。力だけは貸してやる関係で……と。悪い癖だ。まだ残り、3人ほどいるんだ。きっちり捕えて殺してから。援軍を呼ばれたらマズイからな。

奴等はどーやら監視カメラの情報を得ようとしているらしい。

人質がいる事を教えないと行動を縛れない。



◇      ◇




ギイィィッ



「辿り着いたな」



ホテルのロビーに戻った表原達。すると、周囲がざわつき始めていた。


「お、おい!シェフが急に消えたぞ!清掃員も何人か消えちまった!」

「彼女が急に消えちゃったんだ!!」



予想していた通りではあるが、ホテル全体を攻撃されており、従業員や宿泊客も巻き込む大騒動になっていた。

飛島を確認するとすぐに駆けつける受付担当の人。


「あ!あなた達は無事ですか!?飛島さん!」

「いえ、野花桜さんが消えちゃったわ。間違いなく、ジャネモンか妖精の仕業と見ている」

「そ、そんな……桜お嬢様が……!で、ですがセーシ様!あなたは無事でしたのね!どーすればよろしいでしょうか!?」

『レゼン、悪いけど俺に代わって話してくれ』

「桜お嬢様は敵に捕まったと思う。敵の正体を掴むために監視カメラの情報や目撃者の情報を明かして欲しい。ここは因心界に任せてくれ。必ず、全員救出する。っとセーシは言っている」

「分かりました!全力でご協力します!」


混乱は大きい。

情報も錯綜している。


「表原ちゃんとレゼンくんは監視カメラの状況を確認しに行って。蒼山、あんたは因心界に連絡!私は目撃者からの情報を集めるわ」

「わ、分かったよ!」

「分かりました!」


この混乱を整備しようとする最中、敵側から仕掛けてきた。

互いが狙っていたように。



「ん?」



ホテルのとある階から外に落とされたのは貝殻だった。こっちの状況が分かっているように良いタイミングで、仕掛けてきた事。



ドガシャアアァァァッ



「は?」

「え」



貝殻が地面と激突し、砕け散ったとき。本来あり得ない、四次元的な空間にその衝撃は流れ、人体を襲った。無防備な彼等は有無を言わさず、死を迎える。9名の人間が落下事件に巻き込まれたような形で、外に転がった。



「きゃあああぁぁっ」

「な、なんで人が空から落ちてくんだよ!!」

「何人も落ちてきたのか!?」


さらに場が混乱する。表原も目を背けるほど、悲惨な死に様。


「蒼山、連絡は止めなさい」

「い、いいの?」

「敵に視られてる。それだけ分かれば十分な収穫よ」

「?」


あの死んでいる人達の中に野花さんはいない。

変に地下の駐車場なんかで因心界と連絡を取り合えば、野花さんを問答無用で殺したでしょう。


「みなさん、申し訳ないですが。このホテルから出ないでください!これから私達因心界が、ホテル内を調査いたしますので、自分の身を護りたいのならこのロビーでお待ちください!」


飛島の大きな声からの指示で、多くの人間の混乱が止んだ。自分達があのように死んでしまうかもしれない。その中で、まだ無事だという意味を分からせる。


「敵は私共が必ず見つけ、倒します!」


プルルルルル


「!」


ホテルの受付に繋ぐ内線。静まり返った事と激しく動いた事で、全員がそのコールに注目してしまった。仕事柄、受付の人が受話器をとろうとした時、飛島がそれを力ずくで止めた。

罠があると見越している。


「ラクロ。受話器をとってあげて。レゼンくん、私の代わりに話して」

『分かったよ』

「表原、電話の近くまで行ってくれ。セーシさんも聞いといて」

「うん」


妖精にこのルールは適応されない。その読みは当たっている。

電話の主。コココンはまず、因心界の対応を褒める。


【ふふふふ、素晴らしいな。今のやり取りの中でお前等の内の誰かを消せたと思ったが、無傷で切り抜けた】

「テメェか。野花さん達を消した野郎は……。無事なんだろうな?」

【お前達の行動次第だ。無論、お前達が消えるのも行動次第なわけだ】



刑事ドラマやっているみたい……などと、ちょっと暢気な事を思っている表原が近くにいる。巻き込まれているわけだが、緊張感が追いつかなくて麻痺している。



【残りの人質を救出できるチャンスをやる。分かっての通り、俺を倒すことだ。レゼンくんに、セーシさんよぉ】

『!!この声はもしかして』

「ああ、そうだろうな。居場所を教えてくれるか?」

【それを捜すゲームだろうが。1つの注意事項だが、因心界に連絡するとかはなしだぜ。ホテル内に近づく輩、偶発的だろうが。いりゃあ、残っている人質を殺す。さっきみたいになぁ。分かるよな?】

「!!」


ホテルの外では当然、人間が外から落ちてきて衝撃音も響いた。

通行人ももちろんいる。外から因心界や警察を呼ばれたら、有無を言わさず殺す気だ。



「分かったよ、10分かそこらでテメェを見つけて始末することをな」

【ふふふふ、注意して捜したまえよ】



ガチャァッ


「ちょっ!?レゼン!あんな切り方で良いの!?」

「あまり時間はないが、人質がいる以上は仕方ないな」


敵と会話をする事ができたが、その内容で得られた情報は少ない。少ないが、掴めたことはある。

まずは敵の正体とその位置。


「敵は不正な妖精だ。今の電話の声からして、強制的に適合していない人間と契約し、操って話してやがる。それとホテルの内線を使ってるところ、奴は上にいる。いながら、こっちの中の状況をある程度は把握できるみたいだ。仲間どころか、第三者がこのホテルに向かってくるだけで人質を殺すつもりだ」

「えっ!?やばくない!?」


妥当な読み。読みきれるところであるし、


「こっちの制限時間はおよそ15分が目安だろう。敵の能力はこっちの状況を把握できる事を踏まえれば、特定の物体に特殊な罠を仕掛けるタイプ。俺達が焦って捜してくれれば、ひっかけられる算段だろうな」


動ける妖精の俺やラクロだけじゃ、時間はかかるし。見つけたとしても、不正な妖人にはとてもじゃねぇが敵わねぇ。表原達を連れて行く他はない。


「受付さん。主の育さんに一報を入れて欲しい。自宅にも監視カメラの情報が届いているなら、ご自宅から私の連絡先に繋いで情報を送って欲しい。娘さんの一大事だと伝えてな!ただし、ホテルの物は使うな!」

「は、はい!すぐにご連絡します!」


レゼンの思考と平行するように飛島が的確な指示と行動をとっている。

その様子はとても凛々しくて頼りがいのある風格があった。


「蒼山!!お前は階段から上がって行け!私と表原ちゃん、レゼンくんで最上階から調べる!」

「えっ!?僕、階段で行くの!?僕1人!?」

「一大事だろ!!さっさとしろ!!奴は隠れて行動している!見つけさえすれば、お前でも捕えるくらいはできるはずだ!!人の命が懸かっているんだぞ!!なよなよしてんなっ!!男だろ!!」



飛島はポーチから動物用のシャンプーを取り出し、ラクロにつけてあげる。


「『隠れもないクリアを、ピュアシルバーは照らす』」


ピュアシルバーとなって、……大きく成長し、シャンプーの首輪をつけられたラクロとなる。


「こ、これが飛島さんの、いえ。ピュアシルバーなんですね!!ラクロくんが変身しただけじゃないですか!?」

「そんな気にしてるツッコミはいいから、あなたも早く!時間との勝負になったのよ!」

「ああ。一気に行くぜ」



ボオォォンッ



レゼンもドライバーに変化し、表原の頭上に突き刺さって回転する。



ウイイイィィィンッ


「うぎゃあああああああ」

「あなたも結構気の毒じゃない」


そして、超高速回転は止まり、震えながらも立ちポーズに移行し、



「『あ、あたしだけかい!マジカニートゥ!!』、うっ……」


よく考えたら、今日二度目の変身だった。


「おええぇっ、無理。連続無理!1日2回はキツイ!」

「妖人化は体に負担掛かるからな。少しの間だ、自衛考えてふんばるしかねぇ!」



吐いている表原に飛島と受付さんがしっかりと介護してくれる。

背中をさすってもらっている。


「お、お客様!しっかり!」

「おええええっ、頭も痛いよ。今までにない、負荷がきてる、おえええ」

「すまない。手短に終わらせる……蒼山!お前も早くするんだ!」

「えっ!?僕もやるの!?嫌だよっ、飛島の前でやるの!」


そして、ついに蒼山の妖人化に回る。

だが、本人は野花のようにするつもりがない模様。


「お前!なんでそー、頑なに拒否する!?命が懸かっているんだぞ!野花さんが囚われているんだぞ!人格最低のお前の事を、能力だけは評価しているんだぞ!」

「僕"は"全否定されてるじゃん!!それと初めて知ったんだけど!!でも、分かったよ!野花さんのパンツで○○○○したから、その借りをこの戦いで返すよ!」


蒼山ラナ。

オタク姿に下着フェチ、盗撮好きという変態性。それでもなお、因心界の幹部を任されているのには相応しい実力と希少性があることだ。彼が上着の内ポケットから取り出したのは、カメラ。これが蒼山の妖精、フォト。


「フォト!ドレスアップ!!」

『了解』


フォトを使って、自撮りする。そして、その写真の中にいる自分を好きなコスチュームにセッティングさせ、今日の気分で決まればロードする。蒼山の体は光り輝きながら、変身していく。


「『はかまなびかす空を護る使者!スカートライン!!』」


オタク姿から一転したライダーヒーローに変身。まるで別人とも言えるコスチュームとなった、スカートライン。そんな彼にすぐさま掴みかかってきたのは、



「なんなんだ、あなたの妖人化はーーー!?私達と違って、すっごく羨ましい変身するじゃないのーーー!?理想形の1つじゃないのよ!!」

「ちょちょちょっ!ピュアシルバー、落ち着いて!!」

「落ち着けるかーーっ!!クソより汚いお前が、なんで妖精変身ガチャ当ててんだーーー!!?」

「だから、ピュアシルバーの前でやりたくないんだよぉぉ。踏むな!」


この2人は本当に大丈夫なのかと、不安に思ってしまうレゼンとセーシ、ラクロの妖精メンバー。チームプレイもできていないが、幹部なのだ。少しは信用するべき。いや、してくれないと野花達が助からない。


「まったく、マジカニートゥ。自分の身は自分で守れよ……?マジカニートゥ?」


さっきまで気分を悪くしていたマジカニートゥであったが、ふとした怒りが沸いていた。

レゼンが一瞬だけ、目を離した隙に消えてしまった。敵にやられたのかと思ったら、



「こっちは目が回るわ、吐くわの、身の痛い妖人化なのに!!あなたはなんですか、自撮りって!?楽しすぎじゃないですか!?変態のくせに女の可愛らしさある変身をしないでください!!」

「君も僕を踏むの!?」


ピュアシルバーと一緒に、床に転がっているスカートラインを踏み続けるマジカニートゥ。

相当拘りがあるんだろう。よりにもよって、変態キモオタ男が妖人化の変身ガチャに大当たりしているんだから、神様がいるんだったら、訴えたいものだ。


「ふざけんじゃないわよ!ど変態が報われる運を一般人が許すとでも思うか!!」

「気色悪い人がそーいう趣味とか、そーいうことすると。汚らわしいとしか思えないんですよ!!私達は!!」

「踏んだり蹴ったりするの止めて!!ホント止めて!!僕、どM体質薄いから!泣いちゃうから!」


敵が倒すよりも先に、味方に殺されそうになるスカートラインであった。

少々、時間を無駄にしてしまったが。


「スカートライン!あなたは階段から敵を捜しなさい!!いいわね!?」

「これで無様な事しかしてなかったら、ホントに恨みます。行こう、レゼン。セーシさん」


マジカニートゥ達はエレベーターに乗って、最上階に向かう。すでにズタボロになってしまったスカートラインは果たして、ちゃんと活躍するのであろうか?



◇      ◇



ウイイィィーーーン



「……マジカニートゥ、これから敵を捜すわけですが」

「はい!」


エレベーター内で軽く打ち合わせをする。


「不用意に物に触らないでください。それがまず1つの、敵の罠の条件です。ラクロが敵の臭いを感知すれば、一気に追跡しますが、その間に妨害はあり得るでしょう」

「分かりました!ところで、どーやって敵を?」

「そこは育様の連絡次第。少し前の時間に、どの部屋の内線を使っていたか。敵がどんな奴なのか、情報をくれる事でしょう。あのご自宅とこのエレベーターの中なら、敵に情報が伝わらないのもメリット」

「え?」



敵がどのような条件で人間を消しているのか。ならびに、相手がどのようにしてこちらの情報を得ているのか。

これは消す条件と情報を得られる能力が一緒である可能性が高い。

密室になっている空間ならば、その罠は置かれていないと判断できる。

単独犯である事も、先ほどの内線からのやり取りで概ね当たりと見ている。人質と読めない時間制限をチラつかせたのも、敵が単独犯で逃げ道が少ないことも曝け出している。


『……敵はコココンだ。あーいう下種な事をする妖精なら奴だ』

「セーシさん。知ってるのか?」

「え?知り合いなの?」

『以前、奴と戦って俺と野花で倒している。逆恨みでやってきたかもしれない。奴はラッコ型の妖精だ。だが、陸でもこのフロアくらい自由に動き回るくらいの生物だし、知能も高い』

「敵の正体はセーシさんによれば、ラッコ型の妖精らしい。名前をコココンだと」

「ありがとう。こちらに戦力を集めて正解だったわ」



正直、スカートラインは要らなかったかもしれない。

マジカニートゥの保護も含めてだが、レゼンとセーシは頼りになる妖精だ。



ブイイイィィッ


「もしもし」

【飛島さん、話は聞いたよ。今、エレベーターの中だね?】

「育さん。ええ、ご無事ですよね」

【当然だよ。娘が攫われてジッとできる父親などいない。しかし、娘を助けられるのは君達しかいない】

「あなたのお力がなければできませんよ。育さん、数分前にホテルの受付に内線を繋げた部屋は分かりますか?」

【それは31階3112号室からだ。監視カメラに内線を繋げている人物が見える。なんか背負っているな】

「ラッコとか、毛皮みたいなのですか?」

【そう見えるね……!内線が終わったら、男が倒れて。背中に憑いていたのが剥がれて、部屋を出た!廊下を走っているぞ!エレベーターに向かっている!】



監視カメラを通し、電話を経由し、情報を得ている。この一連の流れでリアルとのタイムラグが生じるのは仕方のないことである。敵の動きを観察できるのは能力だけとは限らない。


『ココココココ』


エレベーターで上がって来る。こっちの情報が入らないと判断してか、楽をするためか?だが、残念。すでにそれは読んでいる。エレベーターを支える綱、これを全部ぶち斬ったら、どうだ?

一階まで落ちてもらおうか。

エレベーターを一時急停止させ、綱を斬るまでの時間は十分にとれる。



ビーーーーッ


「え、エレベーターが止まった!!」

「マズイ!これ落とされたら一溜まりもねぇ!!」

【すぐに近くの階に逃げ込むんだ!奴は綱を噛み千切り始めている!】


バギイィィッ


そこまでの思考を瞬時に思い描くのには経験が必要であった。コココンがしてくる手を先読んで、エレベーターの天井を壊したピュアシルバー。近くの階に逃げ込もうとするのか、ラクロに全員が乗る形になっている。だが、その避難よりも早く


『コココココココ』


グッドラック(笑)。


ブチィッ


コココンがエレベーターを支える全てのワイヤーを噛み千切った。それは落下を意味する……はずだった。

全てを支えるものが無くなったのに、エレベーターは落下をしない。物理法則を完全に無視したこの現象に、コココンも驚きを隠せない。


『!?』

「エレベーターはすでに"保護"しました。ワイヤーが全て切れようと、機械が故障しようと。このエレベーターの位置、傷は変わりません!」


ピュアシルバーの能力がエレベーターの不動となっていた。それを感じ取ったコココンは余裕の笑みを消し、すぐに逃げ出す。自ら開けたエレベーターの扉、31階へと逃げ込んだ。マジカニートゥがいる階層は23階。


「この高さならラクロが跳べばいける。そーでしょ?」

『もちろんだぜ!!臭いを記憶すれば、即。俺が噛み殺していいよな?』

「ラクロくんも性格が変わるんだ!?というか、跳ぶの!?」

「捕まっておけ!!」


ドウウゥゥッ


ラクロはピュアシルバー達を抱えながら跳躍し、コココンが開けたエレベーターの扉まで前足をかけるのであった。

逃げながら振り返るコココンは、


『コココココココ』


こいつがピュアシルバー!そーいう能力なのか!だが、逃げ切ってやる!俺が近くにいると分かった方が罠には嵌めやすいし、ホテルの中の方が隠れるスペース、逃げ込めるスペースは多い。


「よっと。敵は、逃げちゃったのかな?」

「当然だろう」

『追い詰めたのも同然だ。臭いはしっかり記憶した』

「気をつけるとしたら、人質がいるということ。外に人を収容しているモノが投げられたら、この高さじゃ一溜まりもない」


31階に辿り着いたマジカニートゥ達。



『早く噛み殺しに行っていいか?』

「人質がいるって言ったでしょ。まだ勝ちと決まったわけじゃない」

『理想は瞬殺だろ?ピュアシルバー』

「そうだけれど」


まだ相手の能力の全容が分からない。

おそらく、コココンは部屋に隠れている。罠がたっぷりあった部屋の中にいる。廊下にコココンの毛がわざとらしく落ちており、勝手に抜けていった感じには見えない。


【飛島さん、ラッコは3108号室に逃げ込んだよ】

「分かったわ」

【!……ちょっと待ってくれ!】

「?」



全体の情報をキャッチできる育は飛島達が確認できないものでも、見通すことができる。だからこそ、驚き隠せない事がある。目が喜んで疑う光景で


【2つ下の階に桜がいる!!桜が倒れている!!】

「!野花……桜さんが?」

【急いでくれ!桜が動いていないんだ!!】


この騒動に乗じて野花さんが敵から脱出した。その可能性は高いけれど、随分と都合のいい罠ってところね。


「……俺とマジカニートゥが行こう、ピュアシルバーとラクロは敵を追跡できる!」

「そ、そうです!野花さんが下の階にいるなら、すぐに助けてあげないと!」


レゼンもそれを承知している。

これが時間稼ぎの罠か、さらに二手に別れさせての罠か、普通に嵌める罠か。


「お願いするわ、マジカニートゥ」

「はい!」


ピュアシルバーの判断は?マジカニートゥは野花を救えるのか?



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