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運命の日  作者: スカーレット
22/25

第22話 決戦1

 最後の日が始まる。勝つのはレインとマイか、檜と繋花か、ブラックか……

 もしくは勝者が出ずにこの戦いが終わるのか、この日が終わればすべてわかる事。

 レインとマイ、檜と繋花は、空間が歪んだ場所へと出ていた。

 その場所は、宇宙空間に幕がかかったような、掴み所がまるでなく、そして落ち着かない場所のようにも感じる。

 暫く歩いていると不意に、何かの気配を感じた。レインはわずかな気配を感じ取り、その敵へ短刀を飛ばす。


「ひどい挨拶だな」


 だがその敵は、短刀を大太刀へあっさり叩き落とすと、レイン達に視線を向ける。この空間に潜むものなど一人しか存在しない。

 ブラック、彼がそこに立っていた。どうやら魔魂への魔力は足りないらしい。背後に蠢く魔力の塊を確認できるが、あれは魔力を蓄えている最中らしかった。

 ブラックが魔力で作った剣を投擲する。その剣は凄まじい速度で迫るが、相殺できないほどではない。レインは咄嗟に同じ魔力の剣を作り、投擲。軌道を逸らしその攻撃を防ぐ。


「レイン君、避けろ!」


 檜の放った言葉に、最初は戸惑うも目の前の光景を見て即座に理解し、迫りくる『何か』から避けるレインとマイ。

 ブラックの背後の魔魂から、炎が噴き出し、灼熱の業火となり、レインとマイ、檜達を分断したのだ。

 突如発生した業火は、まるで意思を持っているかのようであった。どうにか檜達に近づこうとしてみるが、あまりにも炎の火力が高すぎる。

 何かの気配を感じ、炎の先に目を向けるレイン。炎の中、黒い髪を揺らし、白いワイシャツのようなものに黒いズボン。そして肩に羽織るのは黒いコート。間違いない、ブラックだ。

 炎の中に揺らめく三つの影、灼熱の空間の中にレインとマイ、そしてブラックは立っていた。


「……人ではないお前が、今さら何を願うと言うのだ」


 戦いによって、全てを失ったブラック。だからこそ彼は人類の破滅を願う。そして、彼は未練ある者達の魂を取り込み、彼は強くなった。全ては人類の破滅という『争いのない世界』のために……

 だが、それでいいのだろうか。人類の歩みは止めさせるべきではない。


「俺は未来のためにこの戦いを勝ち残る。そう決心した」


 レインは未来のためにこの魔術大戦を勝ち抜く。そう彼は決心したのだからこそ、彼はブラックに向けてその言葉を放つ。あの時、レインを殺そうとした大太刀を持つブラック。武器の持った彼を見てレインは構える。


「ならば……俺は、お前を倒し、望みをかなえる。お前は、俺を倒し、俺の望みを破壊するというわけか」


 景色が変わる。どこかの廃墟だろうか。

 夢の光景は紅蓮で包まれており、細部はわからなかったが、所々焼け焦げた部分などもあるものの、その原型は留めている。

 なんとなくだがレインはここがどこだかわかった。

 ここはかつてのブラックの治めていた国だ。

 彼が国、家族、恋人を一夜にして失い、ブラックが『争いのない世界』の願いを生み出した場所でもある。

 最後の決戦としては申し分ない場所だとレインは思う。

 赤黒い魔力に包まれるブラック。あの魔力こそが数百……数万の人々の魂。数万の魔力がブラックを包んでいる。


「その前に、貴様にはしばらく退場してもらおう」


 ブラックの視線がマイに向く。やるべきことは分かっている。ここでブラックを倒す。


「マイ!」


「……ごめんレイン。私としたことが、少し油断したわ」


 ブラックへ向かおうとしていたマイの動きが止まっている。嫌な予感がよぎり、マイの足元を見るレイン。予感は的中していた。禍々しい色をした魔方陣が彼女の足元にあるのがわかる。

 どうやらあれは動きを束縛する能力があるらしい。それによってマイの動きを封じているみたいだった。


「お前の実力が知りたい。だから今は、部外者など必要ない」


 魔方陣が輝き、その余波と共に消え去るマイ。あまりにもあっさりしたその光景にレインは目を見開く。

 今のは間違いなく転移魔法の部類、それでマイをここから弾き飛ばしたのだ。

 息つく暇もなくブラックは走りだす、一直線に敵へ走り出し、目の前の存在を討ちに迫る。マイはどこかへ飛ばされてしまった。なら今は自分が直接ブラックと戦うしかない。腰を落とし、正面の敵を見据えるレイン。


「俺に、俺に力を貸してくれ……天使達!」


 魔力が流れ込む……マイに流し込んでいた魔力を応用し、それを自分へと向けさせ、レイン自身の強化へ使用する。この相手に出し惜しみは不要。戦いは今日ここで終わるのだから。

 手に持つのはいつだか闇の中で使っていた刀身がクリスタルで構成された剣を振り抜く。


「!!」


 さすがにブラックもそれには驚いたのか目を見開くが、それで怯む体ではない。ブラックの大太刀はレインの剣の振り抜きを受け流し、その大太刀を心臓へめがける。


「やらせるかあ!」


 その一撃を間一髪で回避するレイン。その刹那に消えるようにブラックはレインへと接近し、死角から急所を狙う。

 ブラックの攻撃は、一撃一撃がレインにとっては致命傷となるだろう。なんとしても、それを受けるわけには行かない。

 レインもまた天使達の力を取り込んでいるため、彼の瞬間移動じみた動きは、ついていくことができた。

 燃え上がる炎の中で、剣と大太刀が舞う。マイの助けは、今は頼ることができない。ならば、自分がブラックを止めるしかない。

 ブラックにとってはこんな戦いなど余興にも等しいだろう。だが、レインは諦めるわけにはいかない。今はレインができることをやるだけだ。

 直後、動いたのはブラックだった。まるで川の水を切り裂くように、魔力を使った高速移動。

 レインはブラックを薙ぎ払うべく、剣を振るう。

 それを大太刀で防ぎ反撃し、剣と大太刀がぶつかり合い火花が散る。そのままブラックは体を捻り、黒の大太刀で勢いよく突きを放つ。


「くっ!?」


「レイン、腕を上げたな」


 剣で防ぐも、離れた大太刀がすぐさま襲い掛かる。ブラックの速度だからこそ出来る技だ。

 だがレインも甘くはない。自身の剣を巧みに操り、その大太刀を剣で止めることはできた。だがそのまま押し返そうとするブラック。

 そして、ブラックの大太刀が大きくレインを薙ぎ払い、そのまま二撃目を振るうブラックだが、レインは連続でバク転をし、それを回避、そのまま空中へと飛び上がる。


検索(サーチ)……」


 この状況でブラックに一撃を放てるものを、レインは自身の中に宿す天使の能力を調べる。

 検索……一致、あった。その天使の能力を自分へと一時的に憑依させる。これが持つのは槍を創りだせる能力を持った天使……

 そして左手に現れるのは白く輝く槍。その狙いをブラックに定める。


「この一撃は空を引き裂き、地を薙ぐ一撃!!『血に濡れし最果ての槍(ロンゴミニアド)』!!」


 ロンゴミニアド、その天使が持っていた槍。一点集中の一突きはあらゆる存在を貫く槍。

 その天使が用意した中でまさに決戦兵器そのもの。この一撃はまさに究極の一振り。それを投擲するレイン。

 それを大太刀から繰り出される斬撃で一瞬受け止めるブラック、だがその後、瞬時にブラックはレインの視界から消える。

 現れるのはレインの背後。とっさに後ろに顔を向けるノワールだが大太刀による攻撃は避けられない。

 とっさに剣を背中に出すも、受け止めきれず吹き飛ぶレイン。それを追うように迫るブラック。


「とらせてもらう」


「させるか!!」


 咄嗟に魔力でつくった剣。それを足場にし、レインは体勢を立て直し、それを足場としてさらに飛び上がる。

 まだだ、彼の大太刀の攻撃をしのぎ切るには……

 剣を持ち直すレイン。なにか強い防御力を持った盾が必要……

 大太刀が迫る。なにか、なにかあるのか……

 必死に探るレイン。あった、数ある天使の中であの大太刀を防げる盾が……左手を目の前に掲げ、一つの盾を創りだす。

 白銀に輝く金属製の盾で、その中央にはアリマタヤのヨセフの血で描かれた大きく赤い『血の十字架』が存在する盾。


理想なる赤(アリマタヤ・)十字の白盾(ブラッド)!!」


 円卓の騎士の一人『ガラハッド』を象徴する聖遺物である盾。聖人であるアリマタヤのヨセフの血によって十字の描かれた盾。

 この盾は守りの加護が込められており、敵の攻撃を盾で受けそこへ含まれる魔力を吸収、さらなる強度を生み出す。

 要するに魔力で出来た攻撃を受ければ受けるほど強くなる盾である。

 だがそれは同時に、盾の強度が強くなればなるほどレインの魔力消費量が大きくなるということ。

 まさに一長一短な盾。彼がこれを選んだのはブラックの大太刀の持つ魔力である。

 あの大太刀は刀身が常に魔力を発しており、斬った対象に斬撃と魔力波の二重の攻撃を与える仕組みになっている。

 そしてこの今創りだしたこの盾。

 これは魔力を持つ攻撃なら、その魔力を吸収しこの盾の防御力そのものにすることができる。

 ブラックの攻撃を白き盾で防ぎ、お互いは地上に降り立つ。レインは創りだした、刀身がクリスタルの剣、そして左手の白き盾を構え直す。


「なにもかも理不尽に食い荒らし、他種族を憎み、暴走し亡き者にする。オレの国、家族にした仕打ちを……いや、それ以上のことをやるのが人間だ」


 赤黒い魔力を吹き出しながら、言葉を紡ぐブラック。レインにはあれが彼自身から発している言葉には見えなかった。

 彼の中に眠る数百の魂、あれらがブラックを乗っ取り、話しているように感じられた。


「この世界を、貴様ら人間などいなければこの国は、家族は!!」


 微かに目を伏せ、勢いよく開け、剣を構えるブラック。魔力を吸収したことによって、この盾の消費する魔力量も多いが、まだ許容範囲だ。

 風が吹き抜ける。同時に二人は駆けだした。円を描くように繰り出される一撃は激しくぶつかり合い、火花を散らす。

 剣と大太刀、それを同時に引き、ぶつかり合った反動を利用し、お互いは懐に入り、その心臓に目掛け、レインは剣を振るう。それをブラックは大太刀で受け止め、滑らせ受け流した。

 やはり手強い。彼の一撃を白き盾で防ぎつつ交戦するも、これではこちらの不利が続くだけだ。

 勢いよく飛びかかり、大太刀は上段、剣は下段から振るわれ、その二振りは凄まじい金属音を奏で、鍔迫り合いへと持ち込まれる。

 ……どれだけそれが長く続いたのだろう。動いたのはブラックだった。彼がわずかに力を抜き、引いた。それに釣られバランスを崩すレイン。それをブラックが見逃すはずもなかった。

 即座に体制を立て直し、ブラックの振るった一撃をレインは回避する。


「今なら……!」


 ブラックに発生する僅かな隙……レインの直感が告げる。今がチャンスだと……

 彼は大太刀を大きく振り下ろした直後だ。今ならばブラックを狙う事が出来る。魔力を使い体の体勢を素早く直した後、そのままブラックへ斬りかかるレイン。

 だが、その攻撃が着た直後、ブラックの口元が緩んだ。

 レインの一撃は明らかにブラックを捉えたはずだった。だがレインは一つ重大なことを見逃していた。

 極限状態からの一瞬の隙、そのようなものが生まれれば相手は間違いなくそこに噛みつく。それこそブラックの狙い。

 先程の振り下ろしはレインを狙う様に降り下ろした大太刀。それをわざと空振りして見せた。

 直後、ブラックを狙って振るわれたレインの右腕から鮮血が噴き出した。

 彼の大太刀がレインの腕を斬り裂いたのだ。その腕を落とす……まではいかなかったが、剣を落とすには十分な傷であった。


「……よい余興だった。これで終わりだ」


 蹴り飛ばされ、その勢いで吹き飛び、倒れるレイン。まだ左手で構えれる盾がある。だがそれでどこまで持つか。激しい痛みを耐え、立ち上がろうとするレイン。まだだ、まだ自分は終わるわけにはいかない。

 だがダメージが大きいようだ。立ち上がる事が出来ない。

 このまま、このまま終わってしまうのだろうか……

 ……あの時と同じだ。辺りは炎で包まれ自分の記憶すらもない。自分が何をしていたのかも、なんでここにいるのかも。

 なにもわからず、抵抗なく自分は諦めるしかないのか。諦めればこの痛みからは逃れることができるだろう。だけど本当にそれでいいのだろうか……

 ブラックが歩み寄るのを感じる。

 もういいのではないのだろうか、全てを投げ出しでこのまま目を閉じれば、きっと楽になると囁かれるのを感じる……

 生きることは地獄なのかもしれない。だけど……

 刹那、脳裏に人影がよぎる、自分の傍らにずっといた少女の影……

 この戦いでなにを得た……とてもかけがえのないものを得たのではないのか。

 その人影の姿が鮮明になってくる。

 弱い自分ながらも折れそうになれば支え、共に一歩を確実に歩んでくれた『マイ』。マイはこんな自分を好きと言ってくれた。

 自分が全てを投げだし諦める……それは同時に彼女の存在を否定することになる。

 そうだ。あの時……檜に問いただされたとき、自分はパンドラの箱なら、天使である自分にも、きっと意味をもたらしてくれると……そう思ったはずだ。


「まだだ……」


「なんだと、お前に、何の想いがまだ残っていると言うのだ」

 

 全身に力を込め、立ち上がる。激しい痛みによって苦痛に表情を襲うもあきらめない。

 右腕が斬り裂かれた、だがなんだというのだ。動けるなら関係ない。俺はまだ生きている。

 驚いているブラックに多少の愉悦を感じながらもレインは応えた。


「あるさ、マイと共に明日を歩みたいという想いがな!!」


「よくぞ、ここまで持ちこたえたねレイン君」


 どこからか聞こえた男性の声。それがレインの思考を一瞬停止させた。今まで幾度なく聞いたこの声、その言葉は間違いなくレイン自身に向けられていた。間違いない、この声は……


「さあ、下がっていなさい。ここからは僕と繋花の番だ」


 炎が払われ、声の持ち主である檜、そして槍を構えた繋花が前へと躍り出る。普段の彼ならば確か、銀色の杖を、持っていたはずなのだが彼の手には、それがなかった。

 その刀身が業火によって燃え盛る剣。彼はそれを持っており、その切っ先をブラックへと向ける。


「さあ、僕自身も戦わせてもらおう。正直、戦いは苦手なんだけどね」


 ブラックの大太刀の突進を繋花の槍によって受け流し、檜がそこへ攻撃を加える。揺らめく炎の中、槍と大太刀、そして剣が舞った。

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