兄弟とか
「……」
考え事があるなら専念してもらいたいところだが、知り合ったばかり人と、無言で歩くというのも居心地が悪い。
俺はなんとなく、これまでの会話から思ったことを口にした。
「先輩って、兄弟とかいるんですか?」
「うん? なんだいいきなり」
「あ、いえ、なんとなく思っただけです。なんというか、柳先輩はお姉ちゃんっぽい雰囲気が板についてるなと思ったので……」
「そうかい? 板についていると言われればそうかもしれないと答えるよ。弟と妹が一人ずついるからね」
やっぱりか。
「そういう君は?」
「俺は一人っ子ですよ。兄弟はゼロです」
先輩は「だと思ったよ」と言う。
「君、いかにも話しなれていない風だからね」
「話しなれる?」
「うん。親友と呼べる人がいないことも関係しているのかもしれないけれど、君はわたしや四葉ちゃんに比べて、話し方が硬すぎる。一人っ子で、あまり友達のいないタイプの子は結構そうなる傾向があるんだよ」
「……」
「ほら、そうやってすぐ黙る」
「……友人はいますけどね」
「責めてるわけじゃないんだから、怒らなくてもいいじゃないか」
「怒ってません」
「そうかい?」
くすくすと笑われる。
まるっきり、お姉ちゃんに馬鹿にされている気分だった。
気さくというのとは少し違う。落ち着いていて、独特の雰囲気を持っている。たぶん、この人が慕われる理由は、人当たりが良いとか、優しいとかじゃない。気が付くと先輩のペースに乗せられてしまうこの雰囲気にこそ、その理由がある。
一緒にいると、癖になってしまうような、心地の良い不思議な空気を醸し出している。
「さて、今日はここまでだね。君の家はあっちだろう?」
気が付くと、分かれ道まで来ていた。
互いの家が近いとは言っても、お隣同士というわけではない。
「とりあえず、四葉ちゃんの件は保留ということでいいかな?」
「はい」
「もし、なにか思いついたら連絡するよ。それまでは、他言無用だ」
「了解です」
スマホと取り出し、アドレスを交換し合う。
霧生木さんの問題は気になるが、なにかに気づくとしたら、俺ではなく、先輩だろう。先ほどの分析力を思うと、俺がぐちゃぐちゃ考えるより、先輩に任せてしまった方が遥かにマシだ。
「逆に、君が気づいたら連絡して欲しい。あ、それと、陸上部へ顔を出すのは控えた方がいい。基本的に四葉ちゃんとわたしは一緒にいるから、怪しまれるかもしれないからね」
「分かりました」
今日の部活でもずっとべったりだったのだ。
気をつけた方が良いだろう。
「よし、それじゃあ、またそのうちにね」
「はい」
手を振る先輩に見送られて、俺は家路に着いた。




