触らぬ猫に祟りなし。
「つかさ、ちょいとお待ちよ」
「ミーコさん、とめないで!」
猫をコケにしたやつを無傷のまま放置するなど、猫バカの名がすたる!
「そうじゃなくて」
やれやれといった感じで、ミーコさんがため息をついた。
「あの世界の子達が、猫をどうこう言うわけないだろ?」
……どういう意味だ?
いや、待て。そういえば、エアラは猫を初めて見たようだった。
元から存在していないのか、はるか昔に絶滅したのかは分からないが、あの世界の人間は猫と会ったことがないのだ。
つまり、うちの猫達がファーストコンタクトということになる。
あ、ヤバい。エアラ達はコレが標準だと思っているかもしれない……。
違うからな! 猫はかわいいんだよ!?
いや、うちの猫達もかわいいのは間違いないのだが……。
「ということは、言ったのは別のやつってことになるだろ」
「確かに」
ミーコさんがいてよかった。
カンチガイで、うっかり世界を滅ぼすところだったな。
「気をつけておくれよ」
「ごめん、ごめん」
あははうふふと笑う私達とは裏腹に、魔王サマ達の顔が青ざめていく。
「……じゃあ、誰が言ったかといえば」
「猫を知っていて、あの状況を作り出したのは」
ぐりんっ、と私とミーコさんがヴラドの方へ首だけを向けた。
ヴラドが、ひっとまるでホラー映画の登場人物のような悲鳴をあげた。
「あいつは、どこ……?」
「あ、あ、あいつとは誰のことですか?」
ヴラドの声が裏返っている。
うふふふふふふふふ。
ごまかす気かなぁ……?
「あの裏切り者だよ。あいつが猫をバカにしたんだよねぇ……?」
私がにっこりと笑ってみせると、なぜかヴラドだけではなく魔王サマや酒天童子達もだらだらと汗を流し始めた。
おやぁ、そんなに暑いかなぁ……?
あれ、でも、震えているねぇ……?
じりじりと近づく私に対し、ヴラド達は身を寄せ合っている。
一番前に押し出された酒天童子が、なにやらわめいていた。
「か、彼は引き渡せません!」
魔王サマの影に隠れながら、ヴラドが叫んだ。
「まだいろいろ話を聞かなければいけませんし、第一、すでにエリザベートがぼこぼこに、あ、いや、あの……」
なるほど。まぁ、エリザベートにはぼこぼこにする権利はあるだろうしな。
だが、ソレはソレだ。
「大丈夫、大丈夫。チャビの『回復』があるから」
「にゃお」
私の足元でチャビが鳴いた。
「え、まさか……」
「永遠ニ繰り返すつもりナノでは……」
……なんのことかなぁ?
さっぱり分からないんだが……?
「つかさ、その辺にしておやり」
ミーコさんがあきれたように笑う。
「この子達を怖がらせるんじゃないよ」
「……あー、うん。ちょっと八つ当たりしたかも。ごめん」
私がそう言うと、魔王サマ達はほっとしたようだった。
別にそこまで怯えなくてもいいだろうに。
猫達ならともかく、私ではどうせ魔王サマ達には勝てないんだし。
「お前、俺達を引きずって〈傷痕〉へ向かっていったんだぞ!?」
「蹴り倒すは、投げ飛ばすはで暴れまわっていたでしょうが!」
「?」
そんなことしたか?
記憶にないが。
「あいつのことは、あとはあたしに任せなよ」
ミーコさんが八本のしっぽをゆらゆらと揺らした。
魔王サマ達はほっとしたような表情を浮かべた。
だが。
それも一瞬のことだった。
「じっくり、ねっとり、たっぷりと思い知らせてやろうじゃないか」
そう言って、ミーコさんはにたりと笑ってみせた。
いや、だから、どう見ても猫又なんだって……。
ため息をつく私の肩に、手のひらサイズになったりゅうたろうがひらりと飛び乗った。
完
これにて完結となります。
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「……!」
「にあん!」
「にゃ!」
「にゃお(ごろごろごろごろ……)」
「にゃあ!」
「にゃん!」
「にゃう!」
「にゃ……お」
「ピィー!」
「って、こら! みんな、ばらばらな方向に走り出すな!」
いずれ、また!




