17 人としての記憶
『我は、何故かは分からないのだが、人として生きていたときの記憶があるのだ』
食事を終え、リーダーの家に招かれたヴィーヴルは、向き合って座っていたリーダーにそのような告白を受けた。
今日、それもつい先程、知り合ったばかりではあるが、今までのリーダーの行動や言動を見る限り、何ら可笑しなことではない。
不思議なことがあるとすれば、何故、ゴブリンに人としての記憶があるのか? だ。
「生まれ変わった訳ではないのじゃ?」
『どうだろうか? ゴブリンとして生まれてきて、ゴブリンとして生活していた。
人間との戦いで、生死をさ迷うような怪我をした時に、人としての記憶を思い出したんだ。
だから、ゴブリンとしての我と人間としての我の2人が自分の中にいるような感じだな』
「人間の部分が、ゴブリンの部分を否定せぬのじゃ?」
『今はどこからどう見てもゴブリンだ。
それに、ゴブリンとしての本能の方が強い感じだ』
「戦い方や、村を守るために土壁を作るのは、人間としての知識が使われておるのじゃ?」
『あぁ、その辺は人間の知識が役立つのでな』
「成る程なのじゃ。
薬草の知識も、人間の時のものなのじゃ?」
『人間の時は、そこそこ有名な冒険者だったらしいからな』
戦い方が上手いのも、その辺の知識があるからだろう。
単独での戦闘が強いのも、人間の時の戦い方を上手く利用しているのだと思う。
勿論、ゴブリンである今ではそのままとは行かないであろうが、ある程度の実力者ならば調整もできるだろう。
「世の中には、不思議なこともあるものなのじゃ……」
リーダーはこちらを見つめている。
『その様子だと、信じてもらえているようだな。
信じてもらえないと思っていたのだが……』
「あの戦いを見ておらねば、信じていないのじゃ。
それに、村へ来て様子をみれば、信じるしかないのじゃ。
とても、ゴブリンには出来るとは思えないことばかりなのじゃ」
『我も、人間の記憶を思い出さねば出来なかったことばかりではあるな』
ヴィーヴルはここで少し考え始めた。
『どうかしたのか?』
「……お願いがあるのじゃ」
『何だ?』
「暫くの間、ここに居させて欲しいのじゃ。
妾にも学べるものがありそうなのじゃ」
『我は構わんが、長老にも聞いてみないと許可できない』
「では、早速聞いて欲しいのじゃ」
『ここにいる間は、村の者達と同じように扱うぞ』
「構わんのじゃ。
手始めに、明日にでも村の囲いを強くするのじゃ」
『どう言うことだ?』
「妾の土魔法で囲えば、そう簡単には崩されないのじゃ」
『それは助かるな』
「よろしく頼むのじゃ」
『あぁ、こちらこそ頼む』
翌朝、土壁の強化と引き換えに、ヴィーヴルの村への滞在が許可された。
その後、ヴィーヴルが村の外に自分の寝床を作った。
最初は村の中に作ることを許可されたのだが、ある程度の大きさが必要ということで村の外に作ることになった。




