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ある龍の物語  作者: まっこ
第3章 流転
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15 ゴブリンの村へ……

 リーダーらしきゴブリンが、火の玉をまともに食らってしまったゴブリンの元へと駆けつけようとしていた。


 その途中、こちらに向けて棍棒を振り投げてきた。

 ヴィーヴルは、慌てずに火魔法を放ち棍棒を焼き払った。


「随分な挨拶なのじゃ。

 妾が居ることを知っておったのじゃ?」


 ヴィーヴルは枝の上から地上へと降り立ち、リーダーと思われるゴブリンの目の前に立った。


『我らに言葉が通じるのか?』


 リーダーらしきゴブリンは狼狽えた。


「分かるのじゃ。

 ところで、何時から妾がいることに気が付いていたのじゃ?」


『戦闘開始前からだ。

 殺気が感じられなかったから、後回しにしたんだ』


「今でも戦う気はないのじゃ」


『それは分かっていた。

 先程の棍棒は挨拶代わりだ』


「随分と手荒い挨拶なのじゃ」


『気配から、あれぐらいは何てことないと思った』


「まぁ、こっそりと覗いていたこちらも何も言えないのじゃ。

 妾はヴィーヴルなのじゃ」


『我は……と名乗りたいところだが、ゴブリンに名はない。

 好きに呼んでくれて構わん』


 名乗りをしようとするあたり、やはりただのゴブリンではないようだ。


「では、リーダーと呼ばせて貰うのじゃ。

 先程の戦闘でも、リーダーとして動いていたようなのじゃ」


 ヴィーヴルがリーダーへと近づこうとしたところ、近くにいたゴブリン達が一斉に武器を構えた。


『止めろ。

 返り討ちに遭うだけだ』


「分かるのじゃ?」


『それだけの威圧を受けていたら、嫌でも分かる』


「抑えていたつもりだったのじゃ。

 妾もまだまだなのじゃ」


『ここにいる連中には分からんよ』


「やはりお主は唯のゴブリンではないのじゃ。

 お主は何者なのじゃ?」


『それについては、話せば長くなる。

 時間があるのなら、我の話を聞いてくれるか? 与太話と笑っても構わない』


「良いのじゃ。

 何故、お主のようなゴブリンがおるのか興味が湧いたのじゃ」


『此処で話すようなことでもないし、怪我をしたものの手当てもしたいから、村まで来てくれ』


「分かったのじゃ」


 ヴィーヴルとリーダーは、他のゴブリン達が集まっているところへと移動した。

 リーダーのゴブリン以外は、皆、何処かしらの怪我を負ったようだが、歩けないほどの怪我ではない。

 ゆっくりと移動すれば、問題なく付いてこられそうだ。

 ただ1体を除いて……先程の戦闘で魔法使いの攻撃を食らってしまったゴブリンは未だに横たわり動きがない。

 呼吸をしている動きはあるので、生きてはいるようだが自分で移動することはできないように見受けられる。


『どうだ?』


 リーダーが、横たわっているゴブリンの近くにいたゴブリンに声を掛けた。

 声を掛けられたゴブリンは、何も言わずに首を横に振る。


『願いが……あるんだが……聞いてくれるか……』


 横たわっているゴブリンが、息も絶え絶えに何かを伝えようとしていた。


『何だ?』


『早く……楽に……してくれ……』


『分かった……』


 リーダーは立ち上がると、近くにいたゴブリンが持っていた切れ味の悪そうな剣を奪うと、首へと振り下ろした。

 そのまましゃがみこみ、遺体から何かを取り出して自分の懐へと仕舞い込んだ。


『ヴィーヴル、済まないがこいつの亡骸を焼いてやってくれないか? 動物に食い荒らされるのは忍びない』


「分かったのじゃ」


 燃え残りがないように、ヴィーヴルは少し大きめの火の玉を遺体へと打ち込む。


『戦いを挑んでいたら、あれを打ち込まれていたのかも知れないぞ』


 リーダーが隣にいたゴブリンに呟いた。

 暫くして、ゴブリンの遺体があった場所には黒く焼け焦げた跡だけが残されていた。


『村へ帰るぞ』


 負傷したゴブリン達が先行し、ヴィーヴルとリーダーを殿として自分達の村へ向けて歩き始めた。


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