第29話 トラウマと故郷と顎髭と
GW中の投稿です。
自粛、自粛で皆さんも退屈だと思いますが、そんな退屈を少しでも和らげれればと
俺は今、
「はぁ…… トラウマか…… 元の世界でも似たような事が有った気がするけど、あの時は如何したんだったかな?」
馬車の屋根上で風と振動に揺られながら今後の事を考えている。
元の世界の記憶を思い出せれば少しは役に立つと考えて記憶を探るが、全く思い出せない。
最近こういった事が多い気がする。
確かに覚えている元の世界での記憶なんだけど、ちょくちょく欠損が有って詳しく思い出せない所が有る。
知識としての部分は全く欠損は無いのだが、対人関係や起きた事象の内容についは欠損が多くて、起きたと言う事は思い出せても、どの様な事で起きたのか、その時俺は如何したのか、その後どうなったのかと、言う部分は完全に欠落している。
そんな訳で、
「あー、マジでどうすんだ俺」
そう言葉を吐くと同時に体を仰向けに倒した。
そして俺の目には、雲一つない蒼穹の空が映りこんでいた。
時を遡ること一日前。
「いきなりで悪いが剣を打ち始めてくれんか? もう下準備は既に出来ておるから成型作業だけじゃてな」
そう言って工房に入るなり鎚を俺に渡して言う師匠。
俺はその行動に、
ああ、俺の腕がどれだけ鈍ってるのか気になるんだな。 確かに二週間も鎚を持たなかったら感覚が鈍ってるし、それをどう取り戻すのかも考えないといけないもんな。
そう考えて、手渡された鎚を受け取り、
「わかりました。 形は…… 少し小ぶりなので、コピス※だと思うのですが? 有っていますか?」
下準備を済まされた延べ板を確認して形状を尋ねた。
その質問に一度頷いてから、
「目の方は鈍っておらんようじゃな。では、熱間鍛造で加工していってもらえるかのう」
そういって、俺の右斜め後ろに体を移動させた。
俺は、炉に延べ板を入れ熱し、炎の色で温度を判断する。
炎は、綺麗な赤から黄色、白の順で変化していき、パチっと金属の弾ける音が鳴る。
直ぐに延べ棒を取り出し、金床の上で成型していく。
下準備が完璧に出来上がっていて、打ち易い状態のため打つ事は凄く楽だった……
しかし、
「あれ? なんでだ、おかしいな?」
剣の形になるにつれ形状が変わらなくなっていく。
俺はもう一度炉に入れ再加熱し、灼熱色へ熱して再び叩くが、
「何でだよ! なんで変わらないんだよ!!」
いくら鎚を振るっても、いくら力を込めても、真っ赤な金属は形状を変えずに伸べ板の状態を保っていた。
俺は苛立ちのあまり鎚を荒く下に置き、大き目の鎚を手にして再び振るう。
鎚を交換した事で金属の形は変化を起したが、全く思ったように形を作れず、徐々に金属の色は小豆色に変わり、どんどん黒く変化していく。
俺はその事にも気が付けずに鎚を振るい、
「あっ!!」
色に気がついて声を上げた。
しかし鎚の重さで腕を止めようとして止められず金属と鎚が衝突すると、金属特有の甲高い音と共に、金きり音を上げて金属が割れた。
割れた音と共に重たい落下音がし、それが自分の手から滑り落ちた鎚の音だと気が付くまでに時間が掛かった。
そして心がざわつき、手で口を塞ぐと同時に、
「これは重症じゃのう…… 自分で何が起きたかわかるか?」
言葉と共に後ろから暖かな腕が俺の肩に乗り、振り返ると師匠が心配そうな表情を浮かべていた。
その事でざわつく心が少しだけ落ち着いて、
「途中から叩いても叩いても形が変わらなくて、それで…… むりやり叩いて……」
言葉を出すがショックから上手く説明できなかった。
しかし、
「ふむ…… 本当に重症のようじゃな。 ヒルトやよく聞きくんじゃぞ。 御主は鎚で叩けてはおらん。
むしろ、叩かなかったが正しいのかもしれんのう。 言っている意味は分かるのう?」
師匠は少しだけ語気を強めてはいたが優しい口調で言った。
しかし、そんな言葉に、
「そんな筈は! 音も感触も確かな物でした。なのに全然変わらなくて、叩かなかったなんて事は決して!!」
俺は声を大きくして言葉を出す。
そう俺には今までと代わらず、調子の良い時と同じ、音、感触、を感じて居たんだから、師匠の言うような【叩かない】なんて事は無いと思ったからだ。
しかし、
「やはり気が付いてはおらんか…… 御主はこの音でも同じ事が言えるかのう?」
そう言うと鎚を持ち、あらかじめ赤らめておいた延べ板を叩いた。
しかし、振るった鎚の速度とは裏腹に音は小さく濁った音がした。
その事で俺は顔をしかめたが、それを見た師匠は直ぐに鎚を持ち替えて叩く。
これも同じで振り下ろされた速度に比べれば音は小さく濁った音だった。
それでも俺は意味がわからずに顔をしかめていると、
「これでもわからんか!?」
大きな声で怒鳴り、同時に勢い良く鎚を振り下ろした。
振られた鎚と真っ赤な金属が接触すると、綺麗な音と共に真っ赤な火花が線香花火のように飛び散った。
その事で俺はようやく意味を理解した。
そう音なんかよりももっと確実な証拠を目にしたからだ。
それは、
「飛び散らなかった…… まったく上がってない」
俺は無意識に言葉を口に出していた。
さっきまでの記憶を思い出しても、俺の目には全くあの杏色の綺麗な火花は映っても居ないからだ。
本来、熱間鍛造をすれば綺麗な火花が飛び散る。それが全く無いという事は師匠の言うとおりで……
その事に気がついて俺は顔を青くさせていると、
「やはりのう…… 御主、剣も抜けんじゃろう? ……その様子じゃとそのようじゃのう」
俺は師匠の問いに何も言えずに其方をみる事しか出来ずに固まっていた。
それで俺は、夏季休校も重なっていた事も有り師匠の提案で、見舞いの為に来ていた両親達と共に一時的に帰省する事になった。
因みに、スランも心配だからと付いて来ている。
そんな事が有って俺が空を見上げていると、
「なんだお前、ここ特等席じゃねか。 俺も隣に座っても良いか?」
馬子をしていた親父が屋根に上がってきて、俺の隣に座って言った。
そんな親父に
「もう座ってるんだから言う必要あるか? それに、なんか用事でも有るんだろ?」
俺は少しぶっきら棒に答えた。
そんな俺に、
「ははっ、違いないな」
そう空を見上げて言いった。
その後、少しの沈黙が続いたが、
「師匠から聞いたぞ、お前も打てなくなったってな。 それにしても親子揃って同じ歳でそうなるとはな、師匠も笑っていたよ」
どこか気まずそうな感じで、どこか照れた様に話かけて来る親父。
俺はその言葉に驚いて、
「親父も打てなくなった事があるのかよ? 何で?」
だって親父だぜ? 確かに繊細な一面を極稀に見せるが、あれだけ豪快で、悩みなんかも力ずくで解決しそうな親父にそんな事が有ったとは思えなかったからだ。
そんな思いを持ちながら、親父の方に体を向き直らせて尋ねた。
すると親父は、
「ああ、お前とは違う理由だが打てなくなった事がある。 それも、お前と同じような症状でな、師匠にお前と同じ遣り方で自覚させられたよ」
そういって不器用そうに笑って答えていた。
俺はそんな親父に、
「親父はどうやって治したんだよ? 剣も抜けない、鍛冶も出来ないそんな状態でどうやって?」
少しでも解決策を知りたい俺は、藁にも縋る思いで尋ねた。
すると親父は、
「お前は何のために武器を打つんだ? 何のために剣を振るうんだ? それが見つかれば自ずと答えは出るし解決するはずだ」
そう言って立ち上がり、青空を背にして俺の頭を撫でた。
大きな手で俺の頭を包み込むように撫でる、その手に少しだけ嬉しく思ったが、
「やめろよ親父。 もう俺は小さな餓鬼じゃないんだぞ」
そう言ってその手を払いのけた。
きっと恥ずかしかったんだと思うけど、別の理由も有ったとも思う。
俺に手を払いのけられた事に少しだけ驚いていた親父だったが、
「ははっ、お前は何時まで経っても俺の子だ!! 付き合ってやるから一人でどうこう考える必要なんて無いんだぞ。 前にも言ったがゆっくりで良い、躓いても転んでも立ち止まっても良いんだ。最後に前にさえ進めればそれで良いんだ」
そう笑ってから再び俺の頭を撫でてくる。
その言葉に俺は、
「もう好きにすれば良いよ。 でも…… ありがとうな親父」
そう言って親父に背を向けて今の表情を隠した。
そんな親父とのやり取りの最中、馬車が大きく跳ねた。
そして、
「すまんな大きな石を踏んでしまった。 みんな大丈夫か?」
親父から馬子を変わったスランが、慌てて心配の声を上げたが、その心配は最悪な形になっていた。
跳ねた拍子にタングが浮き上がり、元々二人も屋根に乗るような仕様ではない馬車なのだから衝撃とタングの重みで、
「タング! あなたは何をやってるのよ、もぅ。 ヒルト、貴方は大丈夫ね?」
「あちゃぁー、悪い事をしたみたいだな。 すまんタング」
「本当にもう少し考えて行動してくださいよ。 子供のヒルト君が大丈夫でも、大人の貴方が屋根の上で居ればどうなるかくらいわ考えてくださいよ。 ほんとうにタングさんは」
「はわわわわ、大丈夫ですか? 直ぐに治療を」
屋根が抜けて下に落下したのだ。
事前にこうなると予感していた女性陣は既に退避済みで、馬子側にいたようで無傷。
しかし落ち方が悪かったタングは腰を強打して、魔女の一撃にも似た痛みに悶えていた。
うん? 誰か居ないかって? 気のせいだろ。
ドタバタとした帰郷では有ったが、そんなドタバタが俺の心を安心させてくれた。
そして、
「着いたぞ。 久しぶりのガルドの町だ少し辺りを散歩してきたらどうだ?」
「そうね、フランちゃんも一緒に行ってらっしゃいな」
俺の目には懐かしく感じる故郷の町並みが映っていた。
まだ半年しか経ってはいないが、本当に懐かしく感じた。
そんな感傷に浸っていると、
「ヒルト君? あのっえっと、一緒に行っても良いかな?」
「ふぁ?」
フランが突然俺の服を引っ張って質問してきた事が理解出来ずに、疑問符を浮かべて言葉を出していた。
するとフランの顔がふくれっ面になり、何か怒り始めた。
俺は怒る意味が判らなくて助けを求めるべく両親を見るが、その表情は呆れていて首を横に振ったあと、親父が手振りで行けと合図してきた。
その事で何となく理解して、
「わるいわるい、久しぶりに帰って着たんだしな、その辺を少し散歩でもするか」
そう焦って言う。
すると、
「本当にヒルト君は人の話を聞かないんだから……」
小声で拗ねたように何かをいった。
俺はその言葉を良く聞き取れず、
「うん? なんか言ったか?」
と聞き返す。
しかし、
「別にいつものヒルト君で安心しただけだよ」
膨れていた顔は消えて笑顔で答えてから、
「じゃあ行こうよ」
そういって俺の袖を引っ張る。
そんなフランに引っぱられて俺は久しぶりの町を歩いて回った。
半年では何も変っていないと思っていたが、所々に俺やグランを祝う垂れ幕やら、俺達二人を祝う饅頭やグッズが売られていた。
どうやら故郷であるガルドの町にも黒炎龍討伐の功績で受勲した事は伝わっていたようで、それを町一丸でお祭りの様に祝ってくれていたようである。
しかし、フランも俺やグランと同じように受勲しているはずなのに何故か名前は上がっていない。
その事に俺は疑問に思っていたが、
「おおいヒルト!!」
俺の名前を呼びながら二つの人影がこちらに向かって走ってくる。
その影がハッキリしてきて、
「おおっシオンにムーラ!! 久しぶりだな」
悪友だと判って二人の名前を呼びながら手を高く振って喜びを表した。
そんな俺に二人が近付くなり、
「帰って着てるなら先ず俺達の所に来いよ。 町中探し回ったじゃんか」
「ほんとだよ。 水臭いんじゃない? ところでグランは?」
俺の首に二人で腕をかけてじゃれてくる。
小さな頃と何も変らず接してくれる、そん友達に二人の姿に安心して、心が嬉しくなった。
そして、
「ああ、グランは帝都でやる事が有るって言って、2日くらい遅れて来るってよ。 にしても、お前等はかわらねぇなって、ムーラは半年でやけに痩せたか?」
質問に答えながらも、ムーラが痩せていた事に気がついて、何となく質問した。
その質問にムーラは少しだけ顔を赤らめて、
「わかる? えへへへ」
などと色ボケ特有の笑みを浮かべて答えたので、
「お前もしかして!! 彼女が」
勘付いてそう叫ぶが、
「違う違う。 婚約したんだよムーラは」
シオンが首を振って答えた。
その事で更に驚きはしたが、
「おめでとうって、お前なんで俺達をよばねぇんだよ」
祝いの言葉を口にはしたが、それよりも結婚式に呼ばれていない事に少しだけショックを受けて文句をいっていた。
すると、
「俺達みたな庶民が式なんて挙げれるわけ無いだろ。お前等とは違ってな」
笑いながら俺の脇腹を肘で突きながら言うムーラ。
そしてそれに合わせて、
「そうだぜ、教会やら婚姻披露宴なんて俺等にしたら夢の話しだぞ。せいぜい身内のパーティーがやっとだぞ。 それにしても、英雄さまのやる事は大胆だな。 そんな可愛い子を連れて自慢しに帰ってくるなんて」
そういってシオンも俺の脇腹に肘を入れて、悪い顔をする。
俺はこの発言に、
「はぁ? お前等、何言ってんだ? こいつは――」
「いいっていいって、照れなくても」
「もしも、グランも同じように連れて帰って来たら、お前等二人は俺の酒場で死刑だからな」
などと俺の言葉も聞かずにはやしたてる。
それで俺はフランを見るが、首を横に振ったあと人差し指を口に当てて、黙っててと合図をするので俺は諦めて、
「ああ判った判った」
と好きにしろ的な態度をとった。
それと、フランの名前が無い理由も薄す理解した。
多分だけどこの町では未だにフランは男で、セカンドネームを持った貴族のフランシスなんて女性が誰なかもわからなかったのだろう。
そう自分の中で納得した。
しばらく悪友達と町を歩き回り、懐かしい人達に挨拶をされたり、俺やグランを模したお土産品などをポケットにしこたま詰め込まれたりした。
そして粗方町を回り終えると二人は、仕事に戻ると言って手を振りながら分かれた。
その後、俺はフランと二人で家に向けて歩き始め、
「お前、ほんとに良かったのか?」
俺はフランに尋ねた。
俺の主語の無い質問に一度首を傾げてから、
「良いんだ。それに、僕の家の仕来りで正式に公表するまでは、僕は男なんだから仕方ないよ」
そう少し寂しそうに答えた。
俺はそんなフランに何て言えば良いのか判らなかった。
そして、お互い無言のままフランの家だった場所の前に着いた。
半年前は、広大な庭には雑草が生い茂り、大きな屋敷は蔦が外壁を取り囲み所々ヒビの入った窓と、誰が見てもボロボロな状態の没落屋敷だったはずが、
「はぁ? なんじゃこれぇぇぇぇ」
真っ白な外壁に整ったガラス窓、薔薇のアーチや色鮮やかな花の植わった花壇、極め着けに今までは無かった大きな門扉と、有り得ないその変貌振りに俺は声を上げて驚いた。
そんな驚きの声が聞こえたのか大きな門扉が音を立てて開き、
「おおぉぉフランシスぅぅぅ。帰ってくるなら手紙の一つでも暮れれば良いものをぉぉぉ」
一直線にフランへと駆け寄り、フランを抱きかかえて喜びの声を上げる顎髭の男性。
そんな顎髭に、
「御父様、ヒルト君の前で恥ずかしいので止めて……」
何処となく嫌そうにするフラン。
しかし顎髭はそんな事お構いなしに、
「半年間も帝都での寮生活は大変だっただろう、早く家に入って休みなさい。 母さんがお前のために料理した食事も整えて有るからなぁぁ」
完全に俺を無視して自分の世界に入っていた。
フランはそん顎髭を止めようようと色々言うが、それも無視してフランをとっとと家に入れ扉を閉めた。
その事で俺と顎髭が二人きりになると、
「貴様はレーヴァ家の長男だな、すまんがガルドの町に居る間はフランシスに関わらないでくれ。あの子はネロ・セレンス家にとって大事な一人娘なんだ。 例え、龍討伐で騎士の称号を得たとしても領地爵位を持たない貴様などと変な噂を立てられ、娘の婚姻に悪い影響を与えられては困るのだよ」
冷めた目で俺を見ながら捲くし立てるように言い。
言い終わると直ぐに扉の中にへと入っていき、大きな閉扉音を上げて門扉は硬く閉ざされた。
俺は唖然として何が起きたのか一瞬混乱するが、時間が経つに連れ頭は冷静になっていくが、それとは逆に腹の底から熱い気持ちがこみ上げて、
「あぁぁぁん!? 今なんつったぁぁぁ!!? 出て来い!!」
つい怒り任せの汚い口調で声を荒げていた。
しかし、そんな怒りの言葉は虚しく響くだけで言葉は届かずに無視され、その事で余計に頭まで血が昇ってくるが、窓から見えたフランが申し訳なさそうに[ごめん]という身振りを見せた事で一気に昇った血は下がり、声を掛けようとするが直ぐに顎鬚が連れて行き声すらかけられなかった。
でも、連れて行かれる寸前に振り返ったフランの頬に涙がつたうのが見えて、
「絶対迎えに来るからな!! それまで待ってろぉぉぉぉ!」
俺は大声で叫んでいた。
その場でじっとしていても意味が無いと判断した俺は、もやもやする心を抑えて実家へと歩いた。
道中は心の中で、
なんなんだよ、あの顎鬚。 まじで感じが悪いってかアレでフランの親父とかマジでなんなん? つか、フランも泣くほど嫌なら力ずくで、って出来るわけないか。アイツは優しいから…… それに、あいつは入学まで一人であの家に居たんだよな……
そんな事ばかり愚痴や思いをグルグルと廻らせていた。
結局同じ考えを思考するだけで、なんの解決にもならないまま家へと着いた。
俺はモヤモヤしたまま無言で扉を開けた。
すると、
「お帰りなさ…… あら?フランちゃんは如何したのかしら? もしかして何所かに置いて来たの!!」
母さんが声を掛けながら迎えたがフランが居ない事に気が付いて、驚きと怒気を込めた言葉を投げかけてきた。
俺はその迫力にモヤモヤは消し飛んで、
「いやっ違…… 違うよ…… 家に帰ったよ……」
慌てて言葉を出すが、急に冷静になって悔しさを口にした。
そんな俺の様子に、
「喧嘩でもしたの? それに、あの子は何処かの貴族のお嬢さんでしょ?こんな田舎の町に頼れる所なんて無いはずでしょ? どうやって帰るのよ? 貴方もそれくらいは……」
心配そうに声を掛け、フランの心配をし始めるが、俺が言葉の途中で首を横に振ると一瞬困った表情で言葉を切ったが、
「何が有ったのかはっきり話しなさい!!」
大きな声で怒鳴られた。
その怒鳴り声に、俺はハットして目を丸くし驚いていると、
「クリス、怒鳴り声を上げて如何したんだ? ヒルトとフランさんが帰って……」
親父がリビングから顔を出したが、クリスの雰囲気に途中で押し黙り、少しだけ顔をしかめてこちらに来る。
そして、フランが居ない事に気が付いて、
「お前、フランちゃんを置いて来たのか? 喧嘩でもしたのかは知らないが見知らぬ土地で――」
親父が呆れた感じで話し始めたが、
「あなたは黙っててください。 何を黙っているのかチャント話しなさい」
クリスは親父の言葉止め、俺に真剣な眼差しで再度質問してきた。
言葉を止められた親父は少し吃驚した感じで「えっ?」と言葉を溢したが、俺の言葉を聞いたあと更に驚いて、
「はぁぁぁぁ? フランちゃんがフラン君で、フラン君がフランちゃん? それに、センスの家があの没落したネロ・セレンス家だ?」
と言葉にをしたあと、頭を抱えて疑問符を浮かべ続けていた。




