25 密談
お久しぶりです。
そうこうするうちに数日が過ぎ、城に“みみずく”が来た。
一日かけて設置作業を行い、明日は調整。2日後の夜に国主にみせるらしい。
一番の見世物は私の歌のはずなんだけど、なんでこんなに順調にいってるのかな。
ほんの少しおもしろくない。
そんなことをぼんやりと考えながら夕食を作り、様子を見に来たリードさんと食べる。
ランスレッド王に会った後から、フォーラさんとジークさんは離れに来なくなった。代わりにリードさんが朝夕、食事のついでに来る。
正直気まずいが、引きずっているのは私だけのようだから気にしないように頑張ってみる。
リードさんが部屋から出ていき、ぽつんと一人残される。
ふと窓の外を見ると、篝火に大きなテントが浮かび上がっている。
本当なら、私はあそこにいるのに。
唇を噛み締める。
「アリス」
ここしばらく、あえて口にしなかった名前を呼ぶ。
「どうして、来てくれないの」
一人の部屋に自分の声だけが響く。虚しくなって窓に背を向け、ベッドに向き直ると、
「呼んだ?」
ノックも無しにアリスが部屋に入ってきた。
「……は?」
「お、サラが呆けてる。珍しい」
当然のように近くの椅子に腰を下ろす。
「な、なんで」
「同じ敷地内にいるんだ、いてもおかしくないだろ?」
「だって、検問とか」
「サラの衣装借りたから。包帯までは取られなかったぞ」
にやりと笑ってこちらを向いた。
「なんだ、淋しいかと思って来たのに、案外平気そうじゃないか」
なんだかむっとしたので少し睨んでみる。
「……何か私に言うことないわけ?」
「言っておくが、わたしはあいつらがサラを連れ去るなんて知らなかったからな!前触れも無しに攫っていって。仕返しにわたしが一発殴っておくからな」
「そうじゃなくて」
じろりと見ると、ぎくりと肩を強ばらせた。
しばらく睨んでいると、おずおずと話し始める。
「……わたしに双子の姉がいると知ったのは12歳の時だ。生まれてすぐ死んだと言われていたが、実際生きていると知ったのは17歳の時。兄上がこの計画をわたしに話した時だ」
ふう、と息をついた。
「わたしは生まれてすぐ魔術一門であるオニキス家に引き取られた。どんな力があるのかわからなかったし、魔力もどれくらいのものかわからなかったから。用心のために預けられ、そのままオニキスで育てられた」
私は黙って話を聞く。
「オニキスはわたしに様々なことを教えてくれた。黒い瞳としてすべきことも、王族としてすべきことも。わたしはオニキスに引き取られたとはいえ、王位継承権まで手放したわけではなかったから。政治の勉強もいろいろさせられて大変だったよ」
当時を思い返しているのか、アリスは懐かしそうに笑った。
私は相変わらず不機嫌な顔のままだ。
「時々はきょうだいと顔を合わせてはいたが、ある日突然同じ年の弟ができた。その時はただ兄上に影ができたのだろうと思っていたが、17の時兄上がわたしに全て話してくれたよ」
「話したって……計画のこと?」
「そう。あれはそもそも兄上とリードを入れ替えるための計画だ」
「兄上は生まれつき体が弱くて、20年生きられるかどうかと言われていた。でも兄上は13代国主の一男だから国民の期待も強い。だから13代とその側近たちは兄上に影を付け、息子が死んでも影が王子として存在するように見せかけたかったんだよ。イレリアは国民に王族の顔を見せる習慣が無いから可能な話だ」
アリスはふうと息をついた。
「13代が死んで、兄上は13代の側近たちを全員解雇してジークたちを傍に置いた。リードも議会に出して顔を見せ、影の仕事をできなくさせた」
ぬかりないことだ、とアリスは笑う。
「明日の”みみずく”の公演中、国主ランスレッドは側近であるリードの手に掛かる。リードは周囲にいる兵に押さえられるが毒で自殺。次期国主は残されたきょうだいで年長のわたしだ」
「……どうして?」
私は思わず呟いた。
「どうしてあの人たちは死のうとしてるの?」
アリスは悲しそうな瞳で私を見た。
「それはね、あの男たちは自分たちの存在が罪だと思っているからだよ」
投稿が遅れてしまい、申し訳ありません。
完結はさせますのでよろしくお願いします。




