010話-2人の少女の利用価値
執筆当初に考えていたヒロインたちのプロローグ
「エリナさま、怖かったです(号泣)」
ガッツリ敵意を向けていた謎の少女はエリナにしがみついて泣いている。
小柄で一見すると小~中学生くらいに見える。
顔も幼いしスタイルも幼い。
潜んでいたわりに黒髪はツインテールで長く、隠密性に不向きだ。
「迷子か?」
「!?」
目に涙をためた少女(幼女?)はこちらをキッと睨んだ。
「アタシはエリナのエリート近衛兵!ククル・クーク!
これでも成人したレディーです!護衛であって迷子じゃないです!
あとせっかく焼いたお肉を叩いちゃダメです!」
ククルという小さい少女がまくしたてる。
そこでオレがイラッときたのに気づいたのか、
反論する前に朱里が強制的に入れ替わりやがった。
「え~と、ごめんねククルちゃん。
私は柊・朱里っていうの、朱里って呼んでね。
う~んと、なんていうか私ってときどき人格が変わっちゃう体質なの」
朱里はクルルの髪を撫でながら諭すように慰める。
「うぅ~……」
ククルはうなりながらグズっているが、
朱里への敵意のような気配は消えている。
危ないので不本意だが女性相手は朱里に任せた方が適任のようだ。
近衛兵と名乗っていたが、
エリナとククルの身分をオレたちは確認する必要があるようだ。
「このククル!かくなる上はエリナさまへのお詫びに……!」
ククルという少女は腰に固定してあった短刀を抜くと、
自分の胸部に付き立て腰を落とした。
「命を持ってお詫びします!」
「!?」
『!?』
これはアレだろうか?
ご飯が用意できなかったから自害するといっているのか?
「あ、あのアカリさん!なにか口に出来るものを持っていませんか!?」
エリナがあわてて朱里に言った。
朱里はごそごそとスカートのポケットをあさり、
スティックケースに入ったキャンディーを取り出した。
「え~と……アメならあるけど……」
「まぁ!なんて素敵なお菓子なのでしょう!
ほらククル!異世界のキャンディーだよ!珍しい貴重なお菓子!
アカリさん。わけていただいても良いでしょうか!?お願い!」
あわててエリナはアカリのキャンディーを持つ手を握り、
必死で懇願する。
「へ?いいですよ。みんなの分はありますから」
アカリはそう言ってスティックの包装をほどいてキャンディーを渡す。
「ククル!お食事は大丈夫だよ。だから平気なの!責任はいーから!ね?」
「でも……うぅ、はい。以後はきをつけます」
エリナにキャンディーを渡され、しぶしぶククルが短刀をしまう。
「あ、おいしいです。スーってしますね」
少女ククルは渡されたキャンディーを舐めながら幸せそうにしている。
先ほどの殺伐とした雰囲気はない。
(あの、ククルは優秀なんだけどちょっと責任感が強いの。
なんでもお願いするとやってくれるけど、失敗させると酷いことになるから、
気をつけてね。フォローほんとーにありがとう!)
エリナがこっそり耳打ちしてきた。
(わかったわ、気をつけるね)
朱里はそれに応える。
『依頼失敗=自害って物騒な世界だな』
内緒話を聞きながら率直な観想を言う。
「あの、アカリさん。お願いがあるの。
先ほどのククルを圧倒した戦力、とても素晴らしいものです」
エリナは姿勢を正すと朱里に正面から向かい合って語る。
「目的地で私たちは冒険者を管理するギルドに加入し、
さまざまなモンスターの討伐を仕事にする予定です。
そこで、アカリさんには私たちのチームにぜひ入ってほしいの。
だめかな?」
エリナもキャンディーを口にしながら提案をしてきた。
『人間同士の戦争ではなく獣の退治か。
仕事としては問題ないが、
エリナたちがどの程度の情報と戦力があるのか確認しろ』
(男なんだから女の子くらい守ってあげなさいよ……)
朱里の不満が聞こえるが無視だ。
無知なる環境で必要なのは【情報量】と【総戦闘力】が対応能力に直結する。
「あの、こんなこと聞きたくないのだけど……。
エリナさんたちと私は組んでもいいと思うの。
でももう1人の私がね……
この世界の情報の提供とエリナさんたちの強さが知りたいって」
朱里も一応、言うことを聞いてくれるようになったのは幸いだ。
現状でオレが離脱するデメリットがでかすぎるだけだからだろうが。
「そうですね。交渉は公平に行いましょう。
私は事情はいえませんが、世情やこの大陸の知識は豊富だと思うわ。
普通の人たちより情報にも学問にも恵まれていましたから」
「あと、あちらでキャンディーに夢中なククル。
まだ幼いように見えますが年齢は私の2つ下で16歳。
エーデルという小柄な種族で祖先は森の妖精だとか。
彼女は倍の体格を持つ戦士を圧倒するくらいの剣技と体術を習得したエリートよ」
「アカリさんには通用しないようですが……。
私たちでは力不足かしら、やっぱり」
エリナはそこで困ったように微笑んだ。
『いや、充分だ。知識が豊富だというのは良いな。
通常の兵士より動けるコマがいるのも都合がいい。
朱里がよければオレに不満はない』
(利用するみたいな言い方しないでよ)
心の中で朱里に絶対に睨まれたな。
「不満なんて無いですよ!
私だって、いきなり知らない世界に放り出されて困っていたんです。
できれば、しばらくご一緒しましょうよ」
朱里はそう言って微笑み、エリナの手に自分の手を重ねる。
「はい!ぜひお願いしますわ!」
エリナの顔がパッと明るくなる。
ちなみにククルはまだ、フンフンと頷きながらアメを舐めているようだ。
「そう言えば、もう1人の私、とアカリさんが言ってたけど……。
もしそれが人格ではなく守護霊や聖霊、神仏といった祝福なら、
こちらの世界の魔法で召還を学べば呼び出せるはずよ。
わたしは詳しくないので、これ以上はアドバイスできないけど……」
エリナは何か習ったことを思い出すように、
う~ん……とうなりながら教えてくれた。
『ふむ、場合によっては俺は分離できるのか。朗報だな』
(そうね?)
「ありがとうエリナさん。機会があれば学んで見ますね!」
朱里はそう言ってエリナの手を握って微笑んだ。
(タローに自由行動させるなんて怖いけどね……)
朱里の本音っぽい思考が聞こえた気がした。
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⇒金曜の朝になるべく確定で更新(落とさないように頑張ります)
⇒追加で不定期に更新(質が下がらないように頑張ります)
※期待しないで気長に見てくれると嬉しいです(涙目)
方向修正しつつ書き直し繰り返しています。
単話に慣れてしまったので、
ゴールを決めてダレないように書く練習中です。




