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精霊の……おさマリ……  作者: 河村 政志
第二幕 帰還の物語
20/21

第二幕 帰還の物語  第十二章 万難を排し、虚空(そら)から舞い降り、そして……

------ 第二幕、第十二章 ------ (ばん)(なん)(はい)し、虚空(そら)から舞い降り、そして…… ------



 ……(かつ)(よし)達が “ (ワイ)(エス)(いち)(いち) ” と別れた所で、精霊の(あるじ)の “ IAUCE(イアウス) ” ヘッドセットから北澤陸幕長の声が聞こえて来た。

(かつ)(よし)君……。いや “ キッド ” 。聞えるか? 北澤だ』

「はい。どうぞ」

『実はな……。北澤家の “ 悪ガキ ” ……。(うち)の末息子なんだが……。今回の “ 特別管制派遣隊 ” の隊長をしているんだ。三等陸佐で、 “ 三郎 ” と言う名前なんだが……。もう状況も理解していて、 “ IAUCE(イアウス) ” ヘッドセットの貸し出しも受けていて……。『(あい)(さつ)したい』と言って来ている。(つな)いでも良いかな?』

(りょう)(かい)一寸(ちょっと)待って……」

[北澤陸幕長の息子の “ (きた)(ざわ) (さぶ)(ろう) ” 三等陸佐を、副官に指定します]

 精霊の(あるじ)は、必要と思われる “ 副官設定 ” をすると、応答する。

「……どうぞ」

 相手が、明るく元気な太い声で、 “ IAUCE(イアウス) ” の通信網に参加して来た。

(かつ)(よし)君、『始めまして』だな……。

 丘珠の “ 北部方面管制気象隊 ” から、父親に()められて派遣された “ 北澤 三郎 ” 三等陸佐だ。よろしくな!』

『こら! 作戦行動中だろうが!! 言葉を(つつし)……』

 早速ヒートアップしかねない北澤家の状況を、妻であり母である “ 真理恵 ” が話に割り込み、(いさ)める! 

『二人共、いい加減にしなさい!! 

 そんなことで、作戦が成功すると思っているの?!!』

 “ 根は真面目 ” な自衛官二人は、その言葉に押し黙ってしまう……。一拍の間の後、北澤三佐が話し始めた。

『いやぁ……。済まなかったな、(かつ)(よし)君。やっぱ、 “ 母ちゃん ” には勝てねえわ……。

 ……それは、さて置き。此処(ここ)からは、手っ取り早く、真面目な話だ。戦闘終結後からの話は、聞かせて(もら)って、理解している。……今の所、()(ねん)される状況が二つある』

 精霊の(あるじ)が、身構える。 “ 特別管制派遣隊 ” 隊長は、話を続けた。

其方(そちら)に居る志村一佐の依頼により、此方(こちら)が “ 気象レーダー ” で観測した(ところ)()ると……。やはり、気象条件が悪化して来ている。具体的には、 “ コールド・プール(Cold Pool:冷気の(かたまり)) ” によって、 “ メソ・ハイ(Meso High:雷雨性、小高気圧) ” が出来つつあるようだ。……ダウンバーストの可能性が、高まって来たって訳だ。

 次に、 “ 陸奥湾 ” から真っ直ぐに “ 函館管制圏 ” へ接近する航空機が在る。それが、 “ 所沢 ” の “ 東京(エー)(シー)(シー)Tokyo(トーキョー) area(エリア) control(コントロール) center(センター):東京航空交通管制部) ” から “ 札幌(エー)(シー)(シー)Sapporo(サッポロ) area(エリア) control(コントロール) center(センター):札幌航空交通管制部) ” へ管制が移管される “ 山形 ” の上空で “ エマージェンシー(非常事態) ” を宣言した後、何所(どこ)の管制からの呼び掛けにも返答して来ない。今、 “ 函館アプローチ ” も、 “ ()(くも)飛行場 ” か “ 青森空港 ” への “ ダイバート(Divert:代替着陸) ” を呼び掛けてはいる。だが、相手が答えないことには如何(どう)することも……。 “ 飛行計画 ” から見て、反対側の “ 滑走路(ランウェイ )(ワン )(トゥー) ” の “ アウターマーカー(Outer Marker:ILSの “ グライド・パス ” 上に設定された三か所の “ マーカービーコン(Marker Beacon:無線位置標識点) ” の内で、最も遠い “ 無線位置標識点 ” 。一般的には、この付近にILSへ進入する “ FAP(精密進入に()ける、最終進入開始点) ” を設定する) ” 付近から、ILSアプローチをする心算(つもり)だろうが……。このままのタイミングなら、先に滑走路へ(あし)を着けるのは、 “ Sa○b ” だが……。最悪、滑走路上で、相手に正面衝突される可能性が……』

 “ キュウビ ” が、二人の話に、割り込んで来た。

此方(こちら)、 “ 航空戦術教導団 ” 司令の太田だ。その航空機へは、 “ Wizard(ウィザード)隊 ” の二機を向かわせる。其方(そちら)で “ 誘導(コントロール) ” してくれ』

 “ 特別管制派遣隊 ” 隊長は、その発言に、即応する。

『御久し振りです、太田空将補! 陸自の “ 北澤 三郎 ” 三佐です。

 (りょう)(かい)しました! では、 “ Wizard(ウィザード)隊 ” には、(ひと)(にー)(まる)(てん)(きゅー)(ごー)(メガ)Hz(ヘルツ)で、陸自の “ コントローラー(Controller:管制) ” へ “ コンタクト(Contact:交信) ” するように伝えて下さい』

『太田空将補、了解(ラジャー)。 “ (サブ)ちゃん ” 、後で(また)な……』

『ええ。片付いたら、(めし)でも(みな)で、(また)一緒に……』

 北澤三佐は、太田空将補との話しを終えると、再び(かつ)(よし)へ呼び掛けて来た。

『では(かつ)(よし)君、決めて欲しいことが有るんだ。……今、この二つの状況から取りうる対策は、三つ有る。

 一つ目は、君達が本州の他の空港へ “ ダイバート(代替着陸) ” することだ。但し、天候は、 “ 仙台 ” までは最悪で、無事に着陸出来る保証が無い。

 二つ目は、 “ 函館 ” 上空で旋回待機して、順番を譲ること。これも、ダウンバーストが起こったら、色々な理由で降りられなくなるかもしれない。

 最後の三つ目は、着陸経路をショートカットして、出来るだけ早く着陸しちまう。俺は、これを()(すす)めするが……。

 どうする?』

 (かつ)(よし)が、口を開く。

「……三番目が、一番良いんでしょう?」

『ああ、そうだ! ……精霊が出すモニターを見てくれ! 

 此方(こっち)で作った、この “ プラン(ブラボー) ” と “ プラン(チャーリー) ” なら……。当初予定の “ プラン(アルファー) ” よりも、時間的に一分以上は、確実に詰められる。相手が着陸して来る前に、確実に誘導路まで逃げ込めるし……』

 志村一佐が、話に割り込んで来た。

「築城の志村一佐です! 

 今、 “ IAUCE(イアウス) ” で、北澤三佐が作った “ アプローチ・チャート(着陸経路図) ” を見せて(もら)いましたが……。九歳の子に、この悪天候下では、キツ過ぎます! 特に、この “ プラン(チャーリー) ” は……」

 “ 特別管制派遣隊 ” 隊長が、築城基地副司令の言葉を待たずに、即時の反論をする。

『丘珠の北澤三佐です。志村一佐、よろしく御願いします。

 御言葉ですが! 彼の飛行経歴を確認させて頂きました。いずれも、ほとんど問題無いでしょう。

 “ 有事 ” であると考えられる今は、 “ プラン(チャーリー) ” も『最悪、自衛隊ならば、実行出来ること』です! 

 それに、勝手に “ エスコート(Escort:先導) ” 役をするであろう、神田川空将補も(そば)に居ます!』

 その言葉で……。精霊の(あるじ)は、 “ Shi()n()se()n()gu()mi() (ゼロ )(ワン) ” の二人の意図を悟る! 空戦中は、たとえ赤の他人が指示をしても、 “ 緊急避難 ” として直接の “ 経路提示 ” とまでは言えなかったが……。これ以上と成ると、 “ 経路提示 ” と言われても反論が難しく成る……。

[うわわ……。 “ 神田川 鉄朗 ” 空将補と “ 太田 宏和 ” 空将補を、副官に指定します!]

 (かつ)(よし)は、(あわ)てて神田川空将補と太田空将補を、()(ねん)で “ 副官 ” に指定した……。

「……言われてみれば……」

 志村一佐の(つぶや)き声が、北澤三佐の指摘から少し遅れて、聞こえると……。

『そう言うこと!』

 “ ヤマザル ” が、 “ キッド ” の “ 副官指定 ” にタイミングを合わせたかように、(さら)に少し遅れて “ 合いの手 ” を入れて来た……。

 ……()えてマリーは、 “ (かい)(さい)条件 ” を使用して、(かつ)(よし)の前に表示を出す。


      “ 副官指定 ” は、ぎりぎり間に合いました。

      問題ありません。ご心配無く。


[危なかった……]

 “ キッド ” が、胸を撫で下ろした……。

 …… “ スペクター ” が、 “ 特別管制派遣隊 ” 隊長の発言に、観念した声で返答する。

「分かりました……」

 ……検討の時間は、終わった。 “ Sa○b340B、JA0○2○ ” は、旋回を終えて、RF‐4EJ改と共に内浦湾出口への進路に乗る。再び雲の中へ入ると、また雨が降り始め、機体が小刻みに揺れ始めた。機体は、志村一佐が指示した高度17500ft(フィート)(5334m)を保ちながら、南東方向の内浦湾出口を目指す。やがて、 “ 空路(ジェットルート)V2 ” が近付いて来た……。南 少尉が、指示を出す。

『……そろそろ(くう)()に戻る位置だ。指示をするから、自動操縦のレバーを入れてくれ。

 後、前言を一部訂正だ。自動操縦を切るまで “ VOR1 ” で飛んでいたから、レバーを入れれば、そのまま “ VOR1 ” に復帰する……。

 それから、縦方向の設定は、 “ VS ” に設定されているから、操縦(かん)の右側の黒いボタンを押した時の降下率で設定される。函館VORを2000ft(フィート)(約610m)で通過するように設定するので……。旋回終了後、少しづつ降下率を上げて行って、指示が有ったら押してくれ。

 ……では、準備しろ。

 ……良し! レバー、入れろ!』

(りょう)(かい)!」

 (かつ)(よし)が、 “ AAP(自動操縦盤) ” の一番右側のレバーを上へ上げると……。機体は、大きく右へ旋回し、磁方位202°で函館VORへの空路(ジェットルート)へ乗った。撃墜王(エース)の指示が続く。

『もう少し降下させて良い……。今だ、押せ!』

(りょう)(かい)!」

 精霊の(あるじ)が、返答と同時にスイッチを入れると、降下率が固定された。南 少尉が、言葉を続ける。

『もう操縦(かん)から手を放して良いぞ』

 機長席の少年は、座席で一回、大きく伸びをした……。



 ……もう(まわ)りが、大分暗く成っている。

 (かつ)(よし)が “ 空路(ジェットルート)V2 ” に復帰した時、一瞬だが雲の切れ間が在った。(かつ)(よし)以外の者にも、正面に見える地上の(まば)らな(あか)りで『()(しま)半島の海岸線が、そんなに遠くない』ことが分かる。筆頭精霊長が、コックピットの三人に、話し掛けて来た。

『……皆様。これより、電波管制を解除します。

 機上無線機も使用可能と成ります。なお、故意に無線機を使おうとしない限り、無線先には志村一佐の声のみ届くように管理されています。会話は、普通に “ して頂いて ” 構いません。但し、志村一佐は、『コックピットに誰か居るのではないか』と悟られぬよう、会話の仕方と内容に気を付けて下さい』

(りょう)(かい)

「分かった」

「“ スペクター ” 、(りょう)(かい)した」

 筆頭精霊長の声が終わると同時に、119.0(メガ)Hz(ヘルツ)で “ 函館アプローチ(Hakodate approach:函館進入管制) ” に合わせてある無線機から、緊張した声が聞こえて来た。

『……I(アイ) say(セイ) again(アゲイン), Do(デゥー) you(ユー) read(リード) me(ミー)?! This(ディス) is(イズ) Hakodate(ハコダテ) approach(アプローチ)! “ Hokkaidou(ホッカイドウ) System(システム) -243 ” , Do(デゥー) you(ユー) read(リード) me(ミー)?! …… (再び繰り返します、 “ 聞こえますか?!(応答して下さい!) ”  此方(こちら)、 “ 函館アプローチ ” です。 “ H○C‐243便 ” 、 “ 聞こえますか?!(応答して下さい!) ” ……)』

 志村一佐は、相手の通信が途切れたタイミングで、発信する。

Emergency(エマージェンシー)! Emergency(エマージェンシー)! This(ディス) is(イズ)Hokkaidou(ホッカイドウ) System(システム) -243 ” ! Emergency(エマージェンシー)! …… (“ 緊急事態 ” を宣言します! “ 緊急事態 ” を宣言します! 此方(こちら)は “ H○C‐243便 ” です! “ 緊急事態 ” を宣言します! ……)」

 “ Sa○b340B、JA0○2○ ” は、同じ文言を二回繰り返して、通信を終えた。 “ 函館アプローチ ” が、即座に返答して来る。

『ここからは、日本語で構いません! “ Hokkaidou(ホッカイドウ) System(システム)‐243 ” 、無事ですか?!』

 志村一佐も、即座に、日本語で折り返した。

「私は、築城基地副司令を拝命している “ 志村 (もとむ) ” 一等空佐です。

 現在、パイロットに(ふん)したテロリスト二名を制圧し、私が操縦桿(スティク)を握っています。

 犯人二名は、一応重症と判断されますので……。函館空港への最優先着陸を要請します」

(りょう)(かい)です。 “ スタンバイ(stand by:待機) ” 願います……』

 ……この通信の間にもコックピットの三人には、太田空将補から各飛行隊へ指示と采配が行われているのが、 “ IAUCE(イアウス) ” ヘッドセットから漏れ伝わる会話内容から、確認出来た……。

 …… “ 函館アプローチ ” の返答は、 “ 根回し ” の効果も有ったのか、早かった。

『“ Hokkaidou(ホッカイドウ) System(システム)‐243 ” へ。

 函館空港は、貴機の “ 緊急事態、宣言 ” を受けて、貴機の着陸まで “ 他機の着陸を禁止 ” としました。其方(そちら)は、着陸にのみ集中して下さい。

 それと、一応、確認ですが……。アプローチ方法は、 “ 八雲 ” と “ 陸自 ” から伝えられている “ 方式 ” で間違いありませんか?』

「そのとおりです!」

(りょう)(かい)しました。

 では、まず “ ATIS(アティス)Automatic(オートマティック) Terminal(ターミナル) Information(インフォメーション) Service(サービス):自動飛行場情報サービス) ” の情報から、必要なトコを日本語で読み上げます……。風は、100°から、10knot(ノット)(約5.14m/(セコンド))。 “ RVR(滑走路視距離) ” は、3120ft(フィート)(約951m)。天候は、雨で時々強雨。 “ シーリング(Ceiling:雲底高度。 “ MSL ” で(あらわ)す) ” は、820ft(フィート)(約250m)。気温は、13℃。露点は、11℃。 “ QNH(空港の気圧計の標高を、 “ MSL ” 10ft(フィート)(3.048m)の高さに気圧補正した、気圧高度計の設定値) ” は、 “ 29(にー、きゅう).62(、ろく、にー)inHg(インチ)(単位は、インチ水銀柱。気圧では、小数点を発音しない。この時の海面高度の気圧は、約1003h(ヘクト)Pa(パスカル)だった) ” ……』

 ……その時、(かつ)(よし)と志村一佐は、ほぼ同時に “ あること ” に気が付いた。

「“ スペクター ” 、これ!」

「……ああ!」

 精霊の(あるじ)が指差す先……。(かつ)(よし)の正面に在る二つのモニターの内で、上側の “ EADI(電子式姿勢指示器) ” モニターに表示されている “ シンボル ” が(わず)かに右へ傾き始めている。二人は、そのズレから、 “ AP(Auto(オート) Pilot(パイロット):自動操縦装置) ” が機体を右へ傾け始めたことに気が付いた! しかし、下側の “ ND(航法表示) ” モニターが(しめ)す飛行方向は、磁方位202°で変わっていない。

 “ スペクター ” が、メーター類を確認すると……。左側のエンジンの温度が、 “ オーバーヒート(Over heat:〔その機械が焼損する程の〕過熱) ” までは行っていないが、(だい)() “ 高目 ” だ。

 この状況で考えられるのは……。

「恐らく……。左エンジンの “ 軸受 ” 関係に問題が出始めていて、推進力が落ち始めているようだ……。着陸までは、持たさないと……。

 “ キッド ” 。右エンジン出力を少しだけ落として、左右のバランスを()るんだ」

 その指示に反応したのは、副操縦士席の少年だった。

(りょう)(かい)! それは、俺の仕事だよ!」

 機体は、修平の操作により、水平を取り戻す。

 ……メーター類を眺めていた志村一佐は、右エンジンも左エンジン程では無いが、空戦前よりも温度が高いことに気が付いた。

[参ったな……。両エンジンとも、限界が近付きつつある……。

 これでは、 “ ゴー・アラウンド(Go around:着陸再試行) ” は、リスクが大きくなる。…… “ ダウンウインド(追い風) ” だが、一発勝負だな!]

 “ スペクター ” は、要約して、地上の北澤三佐へ報告する。 “ 特別管制派遣隊 ” 隊長が、言葉を返して来た。

『行くしか無いでしょうね。たとえ、一発勝負でも……』

「ええ! 今と成っては……」

 志村 (もとむ)は、(かつ)(よし)へ顔を向け直して、話しを続ける。

「“ キッド ” ! 

 今回は、 “ 抵抗曲線のバックサイド(誘導抵抗(など)が大きくなり、スピードが遅ければ遅いほど空力抵抗が増す領域。つまり、より遅く飛ぶ為には、よりエンジン(など)の推進力を上げなければ成らない) ” で、通常どおりエンジン出力を上げるのは難しい。その関係で、 “ ギアーダウン(Gear down:降着装置〔車輪〕、降下) ” 時のフラップを20°から15°にして、抵抗を軽減する。それで、行ける所まで行くんだ。良いな?!」

 (かつ)(よし)は、微笑みながら、右手の親指を上げて同意した。

 志村一佐は、 “ 函館アプローチ ” へ、 “ フライトプラン(Flight plan:飛行計画) ” の変更を打診する。函館進入管制の許可は、アッサリと出た……。

 ……しばらく沈黙していた南 少尉が、少年二人に声を掛けて来た。

『二人共、聞こえるか?』

「はい」

「はい」

 旧帝国海軍の撃墜王(エース)は、少年二人の返事を待って、指示を出す。

『では、函館も近付いて来たので、もう少し速度を落とそう……。

 修平君。 “ 丸いスピードメーター ” で、175 “ KIAS(ノット)Knot(ノット) Indicated(インディケーティッド) Air(エアー) Speed(スピード):飛行速度を指示する為の〔計器〕指示対気速度(単位はknot(ノット))) ” (約324km/h)に合わせるぞ! “ プロペラピッチ・レバー ” を指示位置まで、少し戻せ! 

 ……先導する “ Shi()n()se()n()gu()mi() (ゼロ )(ワン) ” も、此方(こちら)の速度に合わせて下さい』

 “ ヤマザル ” が、撃墜王(エース)の要請に、返答する。

『大先輩たる南 (よし)() ()()()()へ。

 “ Shi()n()se()n()gu()mi() (ゼロ )(ワン) ” 、(りょう)(かい)しました! 此方(こちら)は、精霊が提供する “ 航法システム ” の全てを、 “ アクティブ(Active:能動状態) ” にしています。御心配無く、願います。

 ……()れより、 “ Sa○b機 ” 前方での “ エスコート ” を開始します!』

 旧帝国海軍の撃墜王(エース)が、 “ 第七航空団司令を務める少将格の人物 ” へ返答した。

『神田川空将補へ。

 南 (よし)() 少尉、(りょう)(かい)しました。よろしく御願いします!』

 ……(かつ)(よし)は、神田川 鉄朗の野太い声を聴きながら、修平へ元気に声掛けする! 

「行くよ、修ちゃん! 175KIAS(ノット)(約324km/h) “ セット(Set:設定) ” !」

 相手の反応も、素早い! 

(りょう)(かい)(かっ)ちゃん! 任せて!」

 ……速度設定を終えた少年二人は、大人二人の会話を待って、返事する。

「“ キッド ” 、(りょう)(かい)

「えーっと……。修平、(りょう)(かい)

 “ スペクター ” には、自身以外の作戦関係者に、マイナス的な要素が全く感じられなかった……。

[野生の “ ヤマザル ” は、ともかく……。この “ ガキンチョ ” 共め。何で “ KIAS(ノット) Set(セット) ” なんて言葉を使えるんだか……。末、恐ろしいことだな……]

 志村一佐は、(あき)れつつ、その様子を眺めていた……。



 ……突然、九条三佐の緊張した声が、 “ IAUCE(イアウス) ” ヘッドセットから聞こえて来た。

『オール・ステーション(全受信局)! 此方(こちら)、 “ Wizard(ウィザード) 0(ゼロ )1(ワン) ” ! 緊急報告!』

 “ IAUCE(イアウス) ” を使用した “ ()(とく)回線〔B〕 ” を聴くことの出来る全員が、聞き耳を立てる。

『津軽海峡を “ 函館 ” へ接近する該当機は、 “ ズム○ティ○・エアロ・エンタープライズ ” 所有の “ ビーチジ○ット4○○ ” 。『無線機が使えない』とのことで、 “ 発光信号 ” により函館空港への接近()()を確認。

 それによると、『茨城空港から函館空港を経由して千歳空港へ飛行中、エンジンにトラブルが発生し、 “ エマージェンシー(緊急事態) ” を宣言。無線機も不調で、返信不能と成った』とのこと。

 機内から、『現在、主民党・衆院議員の “ (みなもと)() (けん)(ぞう) ” 氏と秘書二名、大手ゼネコン “ ()(りゅう)総合建設 ” 社長の “ (がね)() (りゅう)() ” 氏、パイロット二名の合計六名が搭乗中』との情報有り。客室窓から “ (みなもと)() ” 氏と “ (がね)() ” 氏の姿を確認済みです。

 但し、 “ 不審な点 ” が有り、現在 “ カンガルー ” が確認中』

 “ キュウビ ” が聴き返した。

『不審な点とは?』

 “ マロ ” が報告を続ける。

『パイロットの服装が、 “ Yシャツ ” ではあるが、明らかな安物です。ビジネスジェットを運用するチャーター会社の制服としては、極めて考えにくい程のです……。

 また、発光信号の使い方に “ 慣れ ” を感じます。民間では、不自然ですね……。

 今、 “ カンガルー ” がエンジン回りを目視で確認しています』

 九条三佐の発言に続いて、太田一尉が報告して来た。

『“ Wizard(ウィザード) 0(ゼロ )2(トゥー) ” より、報告! 

 エンジン周りに不審な点は、在りませんでした。動作も正常と思われます。

 また、主翼や機体周りも同様です』

 “ 特別管制派遣隊 ” 隊長が、口を開いた。

『“ Wizard(ウィザード) ” 隊へ。北澤三佐です。

 不審では有りますが、このまま “ アウターマーカー ” 付近からILSへ乗せて下さい。 “ Sa○b ” は、 “ ビーチ ” 着陸の二分前には、誘導路へ退避出来ます』

『“ Wizard(ウイザード) 0(ゼロ )1(ワン) ” , Roger(ラジャー). (“ Wizard(ウイザード) (ゼロ )(ワン) ” 、(りょう)(かい)

 “ ビーチ ” に不審な動きが有れば、即時報告します』

『“ 0(ゼロ )2(トゥー) ” , copy(コピー). (“ Wizard(ウイザード) (ゼロ )(ツー) ” 、 “ Wizard(ウイザード) (ゼロ )(ワン) ” に同じ)』

 そこへ、筆頭精霊長が、話に加わって来た。

(また)も『マイスターの御命が掛かってしまいました』ので、(わたくし)から一言だけ……。『“ プラン(チャーリー) ” を使う』ことを進言します! 

 なお、各種の()(まん)対策は、やる気満々の方達が居ますので、此方(こちら)で勝手にやらせて頂きます』

 “ ヤマザル ” が、マリーへ問うた。

『それは、『“ ビーチ ” が突っ込んでくる』と?』

『ええ、そうです。

 まぁ……。 “ ()の国 ” に、一年生議員の “ 見栄っ張り(がい)(せん) ” を利用されてば、こうなりますね。もっとも、『それしか、価値が無い』と見切られた結果ですが。せっかく秘書として潜り込んだのに、使い捨てにされる “ 工作員 ” こそ(あわ)れ……。彼には『空中衝突してでも、相手を仕留めろ』と命令が出ています……』

 それを聞いていた榊 防衛大臣が、 “ 百里基地、司令官室 ” で頭を抱えて吠える。

『やっぱり敵が……。って『そっち込み』か! 

 この相手では……。即時の手出しが、出来ん……』

 “ キュウビ ” も、RF‐4EJ改の機内で、ポツリと(つぶや)く。

『懲りもせず……。()―、やるわ……』

 ……その時、 “ マロ ” が声を上げた!

『やっぱり、突っ込んだ! “ ビーチ機 ” 、コース(いつ)(だつ)! 最短ルートで、進入を開始! 

 ……どうします?!』

 榊 防衛大臣が、言い難そうに口を開いた。

(みんな)、聞いてくれ……。

 ……今の状況では、国民の代表たる “ 国会議員 ” を、撃墜することは出来ん。そんなことをすれば、如何(どう)()るか……。

 くそ! “ 痛い所 ” を突かれたわ……』

 (かつ)(よし)が、その言葉を受けて、即決する! 

「それなら、 “ 誘導路 ” に降りるだけだよ!」

 “ 特別管制派遣隊 ” 隊長が、高笑いして言った。

『ハハハハハ……。その根性、気に入った! 作戦内容を “ プラン(ブラボー) ” から “ プラン(チャーリー) ” へ変更するぞ!』

 ……榊 大臣は、(かつ)(よし)()びた。

『済まない、(かつ)(よし)君。この穴埋めは、後で必ず……』

 そこへ、女性の声も割り込んで来る。

『ならば、(わたくし) “ ライム ” も、(こん)作戦に参加させて頂きましょう』

[うわ! あの小母さんまで……。

 “ 神田川 久美子 ” 一等空佐を、副官に指定します! 

 ……そうだ! こっちも! 

 “ 神田川 真奈美 ” 教官も、副官に指定します!]

 再び精霊の(あるじ)は、前例に(なら)い……。神田川一佐と、恐らく介入して来るであろう真奈美を、()(ねん)で “ 副官 ” に指定した……。

 “ ライム ” は、自身が “ 副官指定 ” されたことを確認してから、言葉を続ける。

『相手機に映る(かつ)(よし)君の “ レーダーエコー(Radar echo:電波反響) ” を、途中から私が引き継いで……。二機が、そのまま “ 滑走路(ランウェイ )3(トゥリー )0(ゼロ) ” へ進入して来れば……。相手は、疑うこと無く、突っ込んでくるでしょ?』

『……確かに、そうですね! 

 流石(さすが)は、神田川の小母さん! その案、頂きましょう!』

 北澤三佐は、そう(さけ)ぶと、 “ 着陸に関する最終権限者 ” として宣言する! 

()れより、作戦を “ プラン(チャーリー) ” へ変更する! 

 只今より作戦終了まで、誘導路 “ (パパ )(シックス) ” から “ (パパ )(ワン) ” を、緊急用 “ 滑走路(ランウェイ )2(トゥー )9(ナイナー) ” と規定! “ Sa○b ” は “ 滑走路(ランウェイ )2(トゥー )9(ナイナー) ” 、RF‐4EJは “ 滑走路(ランウェイ )3(トゥリー )0(ゼロ) ” へ誘導する! 但し、 “ Sa○b ” のコントローラーを担当する “ 佐山 ” 一曹は、敵への()(まん)の為、 “ 滑走路(ランウェイ )2(トゥー )9(ナイナー) ” を、()れまでどおり “ 滑走路(ランウェイ )3(トゥリー )0(ゼロ) ” と呼称のこと。これは、厳に命じる! 

 なお “ 駐機場(スポット)(ほぼ和製英語であり、少数の国でのみ使用されている。本来の “ Spot(スポット) ” に “ 駐機場 ” の意味は無い。英語圏の多くの国では “ Gate(ゲート) ” や “ Apron(エプロン) ” と呼ばれている) ” を、当初予定の7番から、より我々に近い1番へ変更する。

 ……総員、掛かれ!』

 陸自隊員達の声が、 “ 特別管制派遣隊 ” 隊長の “ IAUCE(イアウス) ” ヘッドセットを通して、 “ IAUCE(イアウス) ” を使う全員に聞こえて来た。

『……(りょう)(かい)しました!』

 ……(かつ)(よし)と志村 (もとむ)の目には、 “ IAUCE(イアウス) ” の “ 三次元バーチャルディスプレイ ” を通して、自機の約1000ft(フィート)(約305m)前方で “ エスコート ” する “ RF‐4EJ改 ” 越しに、遠く津軽海峡が広がって来ている……。

 …… “ 函館アプローチ ” が、接近する二機へ、通信をして来た。

『民間機 “ エスコート ” 中の “ Shi()n()se()n()gu()mi() (ゼロ )(ワン) ” へ。

 これ以降は、125.9(メガ)Hz(ヘルツ)で “ 陸自コントローラー ” へ “ コンタクト(交信) ” して下さい。此処(ここ)より後、 “ Hokkaidou(ホッカイドウ) System(システム)‐243 ” の着陸までの全判断は、 “ 陸自、北部方面管制気象隊 ” 所属の “ 特別管制派遣隊 ” が行います』

 “ キュウビ ” が、返答する。

『“ Shi()n()se()n()gu()mi() (ゼロ )(ワン) ” 、125.9(メガ)Hz(ヘルツ)で “ 陸自コントローラー ” へ “ コンタクト ” します。

 “ 函館アプローチ ” へ。誘導に感謝します……。 “ グッデイ(Good day:管制区を出る時の(あい)(さつ)言葉) ” 』

 函館進入管制は、直ぐに次位機の “ H○C‐243便 ” を移管させる。

『次に、 “ Hokkaidou(ホッカイドウ) System(システム)‐243 ” へ。

 これ以降は、126.2(メガ)Hz(ヘルツ)で “ 陸自コントローラー ” へ “ コンタクト ” して下さい。

 無事の到着を祈ります……』

 志村一佐が、返答した。

Hokkaidou(ホッカイドウ) System(システム)‐243 ” 、126.2(メガ)Hz(ヘルツ)で “ 陸自コントローラー ” へ “ コンタクト ” します。

 “ 函館アプローチ ” へ。有難う……。 “ グッデイ ” 」

 …… “ スペクター ” は、周波数を変更すると、直ぐに無線機へ呼び掛ける。

「“ 陸自コントローラー ” へ。此方(こちら)Hokkaidou(ホッカイドウ) System(システム)‐243 ” 。

 現在、函館VORまで10nm(マイル)(18.52km)、7720ft(フィート)(約2353m)。 “ RF‐4EJ ” の “ エスコート ” を受けつつ、降下中です」

 北澤三佐とは違う声が、答えて来た。

此方(こちら) “ 陸自コントローラー ” です。 “ レポート(Report:状況報告) ” 、(りょう)(かい)しました。

 ……志村一佐、御疲れさまです。(わたくし)は、其方(そちら)の “ コントローラー(Controller:誘導管制官) ” を担当する “ 佐山 (はじめ) ” 一等陸曹です。 “ サーチ・コントローラー(Search Controller:捜索誘導管制官。 “ ASR ” による非精密進入を担当する) ” に引き続き、 “ ファイナル・コントローラー(Final Controller:着陸誘導管制官。 “ PAR ” による精測進入を担当する) ” も担当します。よろしく御願いします。

 着陸までの全体の流れは、 “ 管制隊 ” 隊長との()(はず)どおりですが……。(がい)(りゃく)を読み上げますので、確認を願います。

 ……此方(こちら)は、貴機が函館VORを2000ft(フィート)(約610m)で “ ハイ・ステーション(High Station:〔航法施設(など)の〕上空通過) ” した直後より、 “ ASR(Airport(エアポート) surveillance(サーベランス) rader(レーダー):空港監視レーダー。〔非精密進入〕)アプローチ ” の誘導を開始します。

 貴機は、5°ズレた状態の “ クロスウインド・レグ(Cross(クロス)-wind(ウインド) Leg(レグ):横風経路) ” へ進入したら、直ぐに此方(こちら)の指示にて降下を開始。

 85° “ レフトターン(Left Turn:左旋回) ” 後、 “ ファイナル・レグ(Final(ファイナル) Leg(レグ):最終経路) ” から(おおむ)ね1nm(マイル)(約1.85km)の “ ダウンウインド・レグ(Down(ダウン)-wind(ウインド) Leg(レグ):追い風経路) ” を “ ベクター(Vector:磁針路) ” 117°で飛行。

 その後、国交省の特認により “ FAP(精密進入に()ける、最終進入開始点) ” 直下で実施している特設 “ ランドマーク・ビーコン(Landmark Beacon:地標航空灯台) ” に “ アビーム(Abeam:対向) ” したら、 “ ベース(Base(ベース) Turn(ターン):基底旋回) ” “ ファイナル(Final(ファイナル) Turn(ターン):最終旋回) ” と『半径、約0.5nm(マイル)(約926m)』の “ レフトターン(左旋回) ” を連続実行。

 そして、 “ ヘディング(Heading:機首方向) ” 297°で『東側 “ スレッショルド(Threshold:滑走路(たん)) ” から1.7nm(マイル)(3.15km)の “ 〔函館〕市立、石崎小学校 ” の北側の地点。 “ MSL ” 761ft(フィート)(約232m)』の “ FAP(精密進入に()ける、最終進入開始点) ” を通過後、 “ ファイナル・レグ(最終経路) ” へと進入、 “ PAR(Precision(プリシジョン) Approach(アプローチ) Radar(レーダー):精測進入レーダー。〔精密進入〕)アプローチ ” による精測進入誘導にて着陸。

 速やかに、 “ 1番スポット ” へ駐機して下さい。

 滑走路(ランウェイ )3(トゥリー )0(ゼロ)へ “ タッチダウン(Touch-down:接地) ” までの時間は、函館VOR “ ハイ・ステーション ” から二分五十秒前後を予定しています。

 この内容で、よろしいですか?』

 地上からの問いに、志村一佐が答えた。

「“ コントローラー ” へ。『その、とおり』です」

 “ 佐山一曹 ” が、言葉を続ける。

(りょう)(かい)しました。

 ……では、もう直ぐ、 “ ASR(空港監視レーダー) ” による “ ラテラル・ナビゲーション(Lateral Navigation:横方向、航法支援) ” を開始します。

 その際の降下開始点は、此方(こちら)で指定します。それまでは、 “ 水平〔飛行〕 ” を維持して下さい。降下開始に()ける“降下率”は、905ft(フィート)(パー )min(ミニッツ))です。

 なお、(さき)(ほど)も触れましたが……。 “ FAP ” 直下の路上では、 “ 大型投光器 ” による “ LMB(Land(ランド)Mark(マーク) Beacon(ビーコン):地標航空灯台のこと) ” を国交省の特認により実施しています。色は、通常の物と同じ、 “ 白の(せん)(こう)灯 ” です。なお、垂直方向へ二本の “ 白色レーザー ” を照射しています。並んで立つ “ 光の柱 ” として、認識出来る(はず)です。その間を “ MSL ” 761ft(フィート)(約232m)で通過すれば、 “ 滑走路(ランウェイ )3(トゥリー )0(ゼロ) ” の “ グライド・パス ” へ乗ることが出来ます。

 では、これ以降の連絡は、隊長との直通回線のみを使用し……。この無線への送信は、しないで下さい。 “ PAR(精測進入レーダー) ” アプローチが近付いたら、この無線で案内します……』

 志村一佐が、佐山一曹の言葉が終わるのを待たずに、(つぶや)いた。

「“ Saab340B ” で “ パイロン・レース ” しろってか……」

 ……(かつ)(よし)は、 “ IAUCE(イアウス) ” を援用した “ パラモーター用の簡易型、航法支援機能 ” を、自分が定位置とする “ 胸の高さの右側 ” に戻す。程無く、 “ ND ” モニターの “ 函館VOR ” の方向を示す矢印が、いきなり反対方向を向いた……。



 …… “ スペクター ” が声を上げる! 

「“ VOR、ハイ・ステーション(函館VOR通過) ” !」

 ……元々 “ コックピット ” とは、 “ (にわとり)小屋 ” の意味である。操縦室(コックピット)は、志村一佐の言葉を皮切りに、名前のとおりの(けん)(そう)()(つぼ)()した! 

 …… “ 陸自コントローラー ” の “ 佐山 (はじめ) ” 一等陸曹が、 “ 一方的、()つ連続的 ” な “ ナビゲーション(航法支援) ” を開始した。英語で言い易い言葉は、英語で(しゃべ)って来る。

『現在、 “ ベクター(磁針路) ” 202°、 “ MSL(平均海面高度) ” 2001ft(フィート)(約610m)、 “ GS(対地速度) ” 170knot(ノット)(約315km/h)です。

 “ ASRアプローチ ” を開始! “ オン・コース(On course:適正針路) ” ……』

 ……旧帝国海軍の撃墜王(エース)が、 “ サーチ・コントローラー(捜索誘導管制官) ” の声に被って、早速の指示を出した。

(かつ)(よし)君。

 操縦(かん)の “ 赤いボタン ” を押して、自動操縦を解除! 針路、そのまま。降下準備。

 …… “ 確認点検項目チェックリスト関係 ” と “ 機器の調整 ” (など)は、私と志村大佐(ダイサ)で、全部やる。 操縦にのみ、専念しろ』

(りょう)(かい)!」

 撃墜王(エース)の指示を実行した(かつ)(よし)の目の前には、 “ IAUCE(イアウス)、三次元表示 ” 越しに、津軽海峡の海岸線が迫って来ている。直ぐに、佐山一曹の指示が届いた。

『……間も無く、 “ 降下開始点 ” です。降下率、905(ft(フィート)min(ミニッツ))。

 後、五秒……。

 Begin(ビギン) decent(ディセント)! (降下開始!)』

 ……南 少尉も、佐山一曹の降下指示と同じタイミングで、 “ (あい)の手 ” を入れる。

『降下開始! 機首、(マイナス )(サン)()!』

(りょう)(かい)

 (かつ)(よし)が降下を開始した。旧帝国海軍の撃墜王(エース)は、副操縦士席の少年へも、指示を(たっ)する! 

『修平君は、 “ 下げ翼(フラップ) ” を(ナナ)()まで降ろせ!』

(りょう)(かい)!』

 修平も、遅れ無く、指示された操作を実行した。その間にも、撃墜王(エース)の指示は、矢継ぎ早に続く! 

(かつ)(よし)君は、地上が『ビギン・ターン』と言ったら、旋回を開始して良し!』

 (かつ)(よし)が旧帝国海軍の撃墜王(エース)へ返事する間も無く、 “ 地上コントローラー ” の指示が来る! 

『……次に、左 “ バンク(Bank(バンク) angle(アングル):横傾斜角) ” 20°で “ ベクター ” 117°へ “ ターン(Turn(ターン):旋回) ” を用意!  “ ダウンウインド・レグ(追い風経路) ” へ乗って下さい! 

 後、五秒……。

 Begin(ビギン) turn(ターン)! (旋回開始!)』

 (かつ)(よし)は、 “ 地上 ” の指示に従って、旋回を始めた……。

 ……撃墜王(エース)は、言葉を止めること無く、また修平へ指示を続ける。

『……次に修平君は、旋回が終わった時、(かつ)(よし)君へ “ 丸い速度計 ” の数字を教えるんだ。

 それが165と170の間なら、 “ 下げ翼 ” を(ジュウ)()()まで降ろして車輪を出す。もし165より下だったら、下げ翼のみ(ジュウ)()()まで降ろす。

 “ IAUCE(イアウス) ” が出す、 “ 緑の光で点滅させた、矢印表示 ” を確認して()け。どちらも、この点滅が終わって、 “ 白で付きっぱなし ” に成ったら実行だ。良いな?』

(りょう)(かい)! ()れと()れだね?!」

『そうだ! 気が付くのが早いな! 良いぞ! その調子だ!』

「はい!」

 修平が、(うれ)しそうに返事した……。

 ……機体は、左旋回を続け、機首が磁方位120°へ近付く。(かつ)(よし)は、気流が安定しない中でも、静かに操縦桿(スティック)とラダーペダルを戻し、スムーズに針路を磁方位117°へと合わせた。

[動きに無駄が無いな……。『流石(さすが)』と言う所だが……。何で、出来るんだかな……]

 志村一佐が感心していると、旋回を終えた所で、副操縦士席から声が上がる。

「速度、160の……。7だよ」

 機長席から声が返って来た。

(りょう)(かい)! フラップ(じゅう)()、 “ ギアーダウン(Gear down:降着装置〔車輪〕、降下) ” !」

(りょう)(かい)

 機体は、修平の操作で “ 機体抵抗 ” を更に増し、速度を落として行く……。

『……直ぐに “ 特設、航空灯台 ” に “ (たい)(こう) ” するぞ。(かつ)(よし)君、左旋回、準備しろ! 

 最初のバンク角は、前方のRF‐4EJ改に合わせて良い。後半の “ 最終旋回 ” 部分で、 “ IAUCE(イアウス) ” の “ 光る青い線 ” を使って、 “ 航空灯台 ” 直上へ調整だ』

(りょう)(かい)!」

 (かつ)(よし)は、旧帝国海軍の撃墜王(エース)の指示を受けて、自分の真左側より少し前を見る。その眼は、 “ IAUCE(イアウス)、三次元表示 ” 越しに、 “ 点減する白い光 ” と “ 二本の光の柱 ” を(とら)えていた。

 それまで『オン・コース(適正針路)』と繰り返し口にしていた佐山一曹も、言葉を変える。

『間も無く、 “ LMB(地標航空灯台) ” に “ アビーム(対向) ” します。 “ ベース・アンド・ファイナル、ターン(Base(ベース) and(アンド) Final(ファイナル) Turn(ターン):基底、及び最終旋回) ” 準備して下さい……』

 その無線の最中、前方を飛ぶ “ Shi()n()se()n()gu()mi() (ゼロ )(ワン) ” は、旋回に入った。同時に “ キュウビ ” の声が、 “ IAUCE(イアウス) ” ヘッドセットから聞こえる。

『“ キッド ” ! 最初は、こっちと同じ姿勢でターンしろ! 風と距離を計算するのは、その後だ!』

 (かつ)(よし)は、先導機と自分の目を信じて、機体を左バンクさせ始めた。

了解(ラジャー)! ターン始め!」

 “ サーチ・コントローラー ” の指示が、精霊の(あるじ)の声に重なりつつ、届く。

Abeam(アビーム) L(エル)M(エム)B(ビー)! Begin(ビギン) Turn(ターン)! (“ ランドマーク・ビーコン(地標航空灯台) ” に対向! 旋回開始!)』

 機体は、先導機と同じ姿勢を取り、ほぼ同じ機動で旋回へ入る。この場合、『速度とバンク角が同じで、機体の違いによる風(など)(くう)(りき)影響を考慮しない』とすれば、 “ Sa○b340B ” も “ RF‐4EJ改 ” も旋回半径は変わらない。(かつ)(よし)は、先導機を “ 自分と同じ状態 ” で斜め左上後方から見るような姿勢を取った。 “ ライム ” が、興奮した声で、 “ IAUCE(イアウス) ” 越しに話し掛けて来る。

(かつ)(よし)君、(じょう)()! (じょう)()! 

 それじゃあ、この辺で敵機に対する “ レーダーエコー(電波反響) ” を引き継ぐわね。

 それから、真奈美を “ そっち ” に派遣するから……。適当に使ってね。

 それと……。どの(みち)、この後で亭主と二人、大暴れするから……。私とファントムの二人の “ ()(とく)回線〔B〕 ” による通話は、そっちに聞こえなくして()くわ。

 じゃあ、また後でね!』

「“ キッド ” 、了解(ラジャー)

 (かつ)(よし)は、そう言いつつも……。色々な意味で、(なん)と無く背筋が寒くなるのを感じていた。

 直ぐに真奈美が、話し掛けて来た

『御疲れさま、(かつ)(よし)君! 

 ……早速なんだけど、 “ 1000(ワン・タウザンド)One(ワン)-thousand(サウザンド):滑走路端の標高151ft(フィート )(プラス)1000ft(フィート )(イコール)高度1151ft(フィート)(約350.82m)に到達) ” !』

 精霊の(あるじ)が、飛行機のイロハを教わって来た教官の “ 高度通告 ” に、素早く答える。

「“ チェック(Check:『高度1151ft(フィート)を確認済み』の意味) ” ! “ ノー・フラッグ(No flag:計器、異常表示無し。各計器には、異常時にパイロットへ知らせる為の “ 小さな旗(大抵は、赤い色) ” が在る。それが出ていない “ 宣言 ” なので、 “ 計器、異常無し ” の意味と成る) ” !」

『うん。その調子! その調子!』

 ……口を開いた志村一佐の声は、多分に疲れていた。

「……南 少尉、 “ ランディング・チェックリスト(Landing(ランディング) Checklist(チェックリスト):着陸前、確認点検項目) ” 、行きましょうか……」

 旧帝国海軍の撃墜王(エース)が、答える。

『良いですよ』

「では……。 “ ランディング・ギアー(Landing Gear:降着装置) ” ?」

『“ (あお)(とう) ” 、正常降下確認』

「“ オート・パイロット(Auto pilot:自動操縦) ” ?」

『停止確認、設定良し』

「“ スピード・ブレーキ(Speed Brake:空力減速装置。 “ スポイラー(Lift(リフト) Spoiler(スポイラー):揚力減少装置) ” と同じもの。空中では、抗力増加に使用する) ” ?」

『待機状態……』

 不意に(かつ)(よし)が、発言した。

「“ オート・ブレーキ(Auto-brake System:降着装置、自動ブレーキ起動制御装置) ” は、(はず)して()いて! 考えが有るんだ……」

『ああ、分かった』

 旧帝国海軍の撃墜王(エース)は、気楽に応じたが……。築城基地副司令は、少し()(げん)な顔をした……。

 ……志村一佐と南 少尉は、機体が “ ベース・ターン(基底旋回) ” 90°を終えて、 “ ファイナル・ターン(最終旋回) ” 90°に進入したタイミングで、早口で行っていた “ ランディング・チェックリスト ” を終えた。エンジンの状態以外は、順調で問題無い。

 最終的に二人は、滑走路の状態が “ ウェット(Wet:濡れている) ” で “ ダウンウインド(追い風) ” であること(など)を考慮して、 “ アンチ・スキッド(Anti(アンチ)-skid(スキッド) Control(コントロール) System(システム):降着車輪、(すべ)り防止制御装置。車の “ アンチ・ロック・ブレーキ(Anti(アンチ)-lock(ロック) Brake(ブレーキ) System(システム):ABS) ” と同じ働きをする) ” の設定を “ 最強 ” にした。この状態では、車輪が(すべ)らないから滑走路上の直進性を失わないが、結果として “ 制動距離 ” が長くなる。志村 (もとむ)は、(かつ)(よし)へ報告した。

『“ キッド ” 。誘導路の排水を考慮して、 “ アンチ・スキッド ” の設定を強くした。 “ 〔制動〕距離 ” が伸びるが、 “ エプロン(駐機場) ” の一部も滑走路として使えるから、2000m以上の有効長を確保出来る。

 エンジン以外、問題無い。落ち着いて行け……』

(りょう)(かい)

 精霊の(あるじ)の返答は、一言だけだった。しかし、その仕草に不安感は、感じられない。旋回の微調整も、目立った “ 探り(かじ) ” をせず、とてもスムーズだ……。

『志村(ダイ)()如何(どう)でしょう……。(かつ)(よし)君に関しては、()()()君に任せてみては?』

『そうですね……。私も『“ キッド ” は、大丈夫だ』と思います』

 二人は、 “ 修平の操作 ” に、より多くの注意を払うことにした……。

 ……志村一佐が、北澤三佐へ機体状態を “ ()(とく)回線〔B〕 ” で報告した。最後に、言葉を付け加える。

「…… “ PAR(精測進入レーダー) ” 誘導中に、風の状況を(ちく)()レポートして下さい」

『北澤三佐、(りょう)(かい)です。 “ 滑走路(ランウェイ )2(トゥー )9(ナイナー) ” への着陸を許可します……』

 やがて、機体が雲の下に出始めて振動も収まり始め、海岸線が肉眼でも見え始めた……。



 ……機体は、 “ ベース・アンド・ファイナル、ターン(基底、及び最終旋回) ” の左180°旋回を、三分の二程、終えている。

 (かつ)(よし)達が左旋回中なので……。 “ IAUCE(イアウス) ” が表示する “ 光る青い線 ” は、そのままの機動を続けた場合の経路である、直径が約1nm(ノーティカル・マイル)の “ 左巻き()(せん) ” を表示していた。……良く見れば、その(せん)(たん)が “ 警告 ” 表示の “ 光る赤色 ” だ。それは、このままの機動を続ければ、その場所に “ 墜落 ” することを(しめ)している。着陸ならば、 “ タッチダウン・ポイント(Touch-down Point:接地点) ” 以降は、最悪でも “ 注意 ” 表示の “ 光る黄色の線 ” で(しめ)されるはずだ……。

 ……また今回は、雨天であることから、特別な工夫として……。 “ ランドマーク・ビーコン(地標航空灯台) ” から、灯台としての光とは別に “ 強い白色レーザー光 ” が二本、垂直に照射されている。その御陰で、雨粒に光が当たって、二本の “ 光の柱 ” が立っていた。既に(かつ)(よし)は、二本の内で左側に見える “ 光の柱 ” を “ IAUCE(イアウス) ” が表示する “ 光る青い線 ” の “ 左巻き()(せん) ” が貫いていることを、目視で(とら)えている。それは、 “ ラテラル(Lateral:横方向) ” の操縦に()いては、『“ FAP(精密進入に()ける、最終進入開始点) ” までの飛行が、正確に行われる』ことを(しめ)していた……。

 ……それまで “ サーチ・コントローラー(捜索誘導管制官) ” をして来た佐山一曹が、いよいよ “ ファイナル・コントローラー(着陸誘導管制官) ” として、通信を始める。

()れより、 “ PAR(精測進入レーダー)アプローチ ” を開始します。

 風は115°4knot(ノット)(約2.06m/(セコンド))と弱くなって来ています。

 “ ガイダンス・リミット(Guidance limit:誘導限界) ” は、 “ MSL(平均海面高度。 “ 真高度 ” と同じ) ” 351ft(フィート)(約107m)です。

 現在……。貴機は、順調に “ グライド・パス ” へ接近中ですが、高度が少し低めです。修正して下さい……』

 (かつ)(よし)は、間髪入れず反応して、少し降下率を減らす……。地上の指示が、その動きに敏感に反応して、変化した。

『高度は、少しづつ戻って来ています。

 そのまま進入……』

 ……やがて(かつ)(よし)は、スムーズに機体の姿勢を水平へと戻す。 “ 光る青い線 ” が(ほど)けるように真っ直ぐへと変化し、二本の “ 光の柱 ” の間を抜けて、函館空港まで達する……。直後、 “ Sa○b340B、JA0○2○ ” は、 “ FAP ” を “ MSL ” 755ft(フィート)(約230m) “ IAS ” 148knot(ノット)(約274km/h)で磁方位297°へ真っ直ぐに “ ハイ・ステーション(〔航法施設(など)の〕上空通過) ” した! いよいよ、 “ ファイナル・アプローチ(Final(ファイナル) Approach(アプローチ):最終進入) ” が始まる……。

 その瞬間、機長席の少年が、速やかに低くしていた降下率を元に戻した。佐山一曹が、(きょう)(がく)して、声を上げる。

On(オン) course(コース)! On(オン) glide(グライド) path(パス)! (適正進入コース! 適正進入角!)

 ……初めての進入経路で、この悪天候下、一発で安定させるとは! 御見事です!』

 “ ファイナル・コントローラー ” は、直ぐに冷静さを取り戻すと、規定通りの『無音の時間を五秒以上開けない “ 一方的、()つ連続的なナビゲーション ” 』を実施した。

『風は、116°3knot(ノット)(約1.54m/(セコンド))。

 ……On(オン) course(コース). On(オン) glide(グライド) path(パス). ……On(オン) course(コース). On(オン) glide(グライド) path(パス). …… (……適正進入コース。適正進入角。……適正進入コース。適正進入角。……)』

 “ 後席 ” の志村一佐は、風の状況が改善して来ているのを、素直に喜べない。

何時(いつ)、 “ (かま)の底 ” が抜けて “ ダウンバースト ” が発生しても不思議では無いが……。(ほか)に打つ手は、無いから……。 “ キッド ” 達には、黙って()こう……]

 ……精霊の(あるじ)の目の前には、 “ IAUCE(イアウス)、三次元表示 ” によって、昼間の映像で函館周辺が映し出されている。その中で “ 光る青い線 ” が、ほぼ乱れ無く真っ直ぐに、函館空港に二列並んだ “ 真っ直ぐな道 ” の右側の道の端から約400m先の中央を(とら)えていた。そして、その先は “ 光る黄色の線 ” と成って、 “ 道 ” の中央を真っ直ぐに(つらぬ)いている……。

 ……真奈美が、声を上げた。

『“ 500(ファイフ・ハンドレッド)Five(ファイブ)-hundred(ハンドレッド):滑走路端の標高151ft(フィート )(プラス)500ft(フィート )(イコール)651ft(フィート)(約198.42m)に到達) ” !』

 精霊の(あるじ)が、即答する。

「“ スタビライズド(Stabilized:『機体の安定を確認済み』の意味) ” ! 

 ……と言いたい(ところ)だけど、機体が “ 嫌がり ” 始めている。もう失速限界だよ!」

 旧帝国海軍の撃墜王(エース)が、精霊の(あるじ)の発言が終わるのを待たずに、すばやく応じた。

此処(ここ)まで来れば、もう良いだろう! (かつ)(よし)君、良く頑張った! 

 修平君! 

 下げ翼(フタ)(ジュウ)()!』

(りょう)(かい)!」

 南 少尉は、修平の操作を確認しつつ声を掛ける。

『下げ翼を(いっ)(ぱい)まで降ろすのは、(かつ)(よし)君が着陸を決断した後だ! 

 スロットル関係は、此方(こちら)の指示が有るまでは、そのまま!』

(りょう)(かい)!」

 (かつ)(よし)は、二人の()り取りを聴きつつ、これまでのフラップ操作時と同じく “ スピード・ブレーキ ” を使わずに “ AoA(Angle(アングル) of(オブ) Attack(アタック)(むかえ )(かく)) ” の調整のみで、 “ 光る青い線 ” を “ タッチダウン・ポイント(接地点) ” へと合わせ続ける……。

 ……なお、 “ Sa○b340B ” の “ (ブイ)ref(レフ)Velocity(ベロシティー) of(オブ) Refarence(リファレンス) Approach(アプローチ):着陸基準速度。 “ スレッショルド(滑走路端) ” 直上の目標速度であり、 “ (ブイ )(エス )(ゼロ)Velocity(ベロシティー) of(オブ) Stall(ストール) at(アット) landing(ランディング) con(コンフ)figuration(ィギュレーション):着陸形態〔フル・フラップ〕での失速速度。なお “ 失速速度 ” は、本来 “ EAS(Equivalent(イクイバレント) Air(エアー) Speed(スピード):等価対気速度。 “ IAS(〔計器〕指示対気速度) ” に、 “ 位置誤差 ” と “ 計器誤差 ” 及び “ 空気圧縮誤差 ” (など)の補正をした速度) ” で(あらわ)されるが、 “ 低空、低速 ” であるので “ CAS(Calibrated(キャリブレーティッド) Air(エアー) Speed(スピード)(こう)(せい)対気速度。 “ IAS ” に、 “ 位置誤差 ” と “ 計器誤差 ” の補正をした速度。飛行マニュアル(など)の速度表記で使用される) ” も、ほぼ同じと成る) ” に1.3の係数を掛けたもの) ” は、 “ CAS ” 114.4knot(ノット)(約212km/h)である。よって通常の “ スレッショルド通過速度 ” は、この数値に “ 安全マージン ” を5~10knot(ノット)(ほど)加えた、約120knot(ノット)(約222km/h)から124knot(ノット)(約230km/h)程度と成る……。エンジン出力を上げて “ 抵抗曲線のバックサイド領域(誘導抵抗(など)が大きくなり、スピードが遅ければ遅いほど空力抵抗が増す領域。つまり、より遅く飛ぶ為には、よりエンジン(など)の推進力を上げなければ成らない) ” に対抗出来ない “ Sa○b340B、JA0○2○ ” にとって、 “ スレッショルド通過速度 ” を守り、この領域で不安定に成らない為に、フラップによる減速のタイミングは、とても重要であった……。

 ……機体は、思ったよりも、すんなりと安定した。再び(かつ)(よし)が、宣言する。

「“ スタビライズド ” !」

 その直後、再び真奈美が、声を上げた。

『“ アプローチング・ミニマム(Approaching minimum:『進入限界点、接近』の意味。滑走路端の標高151ft(フィート )(プラス)PARによるGCA(ILS、CAT(カテゴリー)(ワン)と同じ)の “ DH(Decision(デシション) Height(ハイト):決心高) ” 200ft(フィート )(プラス)100ft(フィート )(イコール) “ MSL ” 451ft(フィート)(約137.46m)に到達したらコールする) ” !』

 (かつ)(よし)が、即答する。

「“ チェック(Check:『進入限界点の接近を確認済み』の意味) ” !」

 “ スペクター ” も声を上げた。

「間も無く、GCAの “ ガイダンス・リミット ” ……。 “ 誘導限界 ” が来るぞ! “ キッド ” 良いか?!」

 機長席の少年は、二言で答える。

「大丈夫! 滑走路、見えてる!」

 今回の函館空港 “ 滑走路(ランウェイ )2(トゥー )9(ナイナー)滑走路(ランウェイ )3(トゥリー )0(ゼロ)と同じ標高) ” の “ DA(Decision(デシション) Altitude(アルティチュード):決心高度。非精密進入での “ MAP(マップ)(ティー)Missed(ミッシド) Approach(アプローチ) point(ポイント):進入復行点) ” と同じ意味の空間点であり、此処(ここ)滑走路(ランウェイ)が見えていなければ “ ゴー・アラウンド(着陸再試行) ” となる) ” は、滑走路端の標高である “ MSL ” 151ft(フィート)(約46m)に、 “ PARによるGCA(ILS、CAT(カテゴリー)(ワン)と同じ) ” の “ DH(Decision(デシション) Height(ハイト):決心高) ” 200ft(フィート)(約61m)を加えた、 “ MSL ” 351ft(フィート)(約107m)である。真奈美は、丸い高度計の針を確認して、宣言した。

『“ ミニマム(Minimum:『進入限界点、到達』の意味。『“ DA(決心高度) ” に到達』、もしくは『“ MAP(マップ)(ティー)(進入復行点) ” に到達』と同義語である) ” !』

 (かつ)(よし)が、間髪入れず、答える!

「“ コンティニュー(Continue:〔着陸〕続行。この宣言を()って、着陸実施の最終決断である) ” !」

 南 少尉は、修平へ指示を出した。

『よし良いぞ! 下げ翼、(いっ)(ぱい)!』

(りょう)(かい)!」

 機体は、修平の操作によって機体抵抗を更に増して、徐々に大きくなって来ている “ 滑走路(ランウェイ )2(トゥー )9(ナイナー) ” の手前で急速に速度を落として行った……。

 ……“ ファイナル・コントローラー ” の声が、着陸を決断した精霊の(あるじ)の声に(かぶ)って、聞こえて来た。

Guidance(ガイダンス) limit(リミット)! Take(テイク) over(オーバー) visualy(ビジュアリィ)! (誘導限界です! (もく)()で着陸して下さい!)

 滑走路(ランウェイ)が見えなければ、 “ ゴー・アラウンド ” を! 

 風は、117°3knot(ノット)(約1.54m/s(セコンド))!』

 “ スペクター ” は、 “ キッド ” の意思を地上へ伝える。

「ランディング、コンティニュー……」

 …… “ Sa○b340B、JA0○2○ ” は、白い光で(かこ)われた “ 滑走路(ランウェイ )3(トゥリー )0(ゼロ) ” の(となり)、青い光で(かこ)まれた “ 滑走路(ランウェイ )2(トゥー )9(ナイナー)(誘導路) ” へと、正常に進入して行く。 “ 電波高度計 ” による “ 高度の読み上げ ” は、空港の敷地内に入った “ AGL(対地高度) ” 100ft(フィート)(約30.05m)、から始まるように、設定されていた……。佐山一曹が、機体が函館空港の敷地上に入る直前、最後のレポートをして来た。

『……風は、117°2knot(ノット)(約1.03m/s(セコンド))。

 着陸後、258.3(メガ)Hz(ヘルツ)で “ 函館タワー(Hakodate Tower:函館管制塔) ” へ “ コンタクト(交信) ” して下さい。

 ようこそ函館へ……』

 ……機体が、函館空港の敷地内へと “ IAS ” 120knot(ノット)(約222km/h)で進入した。すかさず電子音が、高度を読み上げる! 

100(ワン・ハンドレッド)

 そのまま “ 滑走路(ランウェイ )2(トゥー )9(ナイナー) ” 上へ進入する!

50(フィフティー)

 まだ(かつ)(よし)は、進入角(マイナス)3°を保っている。 “ タッチダウン・ポイント(接地点) ” の先の “ 光る線 ” は、 “ 黄色 ” のままだ。

30(サーティ)

 機長席の少年が、『30(サーティ)』の言葉を聞いた瞬間、手を動かすと同時に宣言した。

「“ フレア(Flare:機首引き起こし) ” !」

 機体は “ 機首上げ動作 ” によって……。降下率が、フレア動作直前の約550ft(フィート)min(ミニッツ)(約168m/分)から、一気に下がる。その間も、高度の読み上げは続く。

20(トエンティー)

 “ 光る黄色の線 ” が “ 青 ” へと変化して行く。(かつ)(よし)は、 “ (むかえ )(かく)計 ” の表示もチラリと確認しつつ、 “ AoA((むかえ )(かく)) ” 約17UNIT(ユニット)(約6.2°)で “ フレア ” を安定させた! 

10(テン)!』

 やがて、下の方から『トン』と軽い衝撃が有り、『ゴロゴロ』と振動が伝わって来る……。



 …… “ Sa○b340B、JA0○2○ ” は、 “ ND(航法表示) ” モニターに表示された “ TAS ” 103knot(ノット)(約191km/h)で、 “ 滑走路(ランウェイ )2(トゥー )9(ナイナー) ” の滑走路端(スレッショルド)から400.7m先の中心線上に “ タッチダウン(Touch-down:接地) ” した。 “ アームド(Armed:待機状態) ” に設定されていた “ スポイラー(Lift(リフト) Spoiler(スポイラー):揚力減少装置。 “ スピード・ブレーキ(Speed Brake:空力減速装置) ” と同じもの。地上では、抗力増加よりも、揚力減少に使用する) ” が、自動で立ち上がる……。 “ GS(対地速度) ” は、追い風が加算されて、107knot(ノット)(約198km/h)であった。なお、この場所と速度では、 “ CAS((こう)(せい)対気速度) ” も “ EAS(等価対気速度) ” も “ TAS(真対気速度) ” も、ほとんど変わりはない。

 機体が “ VOR、ハイ・ステーション(函館VOR通過) ” してから “ 主輪接地 ” までの時間は、二分四十四秒であった……。

 ……志村一佐は、少年達の操縦に取り()えず満足したが……。 主輪が接地したのに……。(かつ)(よし)が、ブレーキを掛けない! 思わず “ スペクター ” が、声を上げる! 

「ブレーキ!」

 “ キッド ” が、操縦桿(スティク)を前に押しつつ、平然と答えた。

「前輪が地面に付いてから掛けるよ。地面が滑り易いから、その方が滑走路から外れないでしょ?」

「はぁ? ……」

 築城基地副司令から “ 緊張感 ” と言う “ ()き物 ” が落ちた、次の瞬間……。(かつ)(よし)は、前輪接地と同時に、両足のペダルを前倒しに踏み込む。 “ アンチ・スキッド ” が、『カッカッカッカッ……』と動作音を立てた。修平も南 少尉の指示にしたかって、前輪の接地を確認してからプロペラピッチを “ グラウンド・アイドル ” まで落とす。両方のプロペラは、前方からの空気を受け止める形と成り、鈍い風切音を響かせた……。

 志村 (もとむ)が、前へ “ つんのめり ” そうに成りつつ、思わず(つぶや)く。

「余裕だな……。恐れ入ったよ……」

 機体は、順調に “ 滑走路(ランウェイ )2(トゥー )9(ナイナー) ” 上を減速して行く……。真奈美が、声を上げた。

60(シックスティ)knot(ノット):約111km)』

 その声を聴いた “ キッド ” は、 “ ランディング・ギアー(降着装置) ” のブレーキを “ リリース(Release:解除) ” した。勘が鋭い旧帝国海軍の撃墜王(エース)は、その意味を悟って、修平へ指示を出す。

『プロペラピッチを、指示位置まで押せ』

(りょう)(かい)

 副操縦士席の少年は、 “ 光る矢印の指示 ” に従って、プロペラピッチを “ タキシング(Taxiing:地上走行) ” 位置まで進めた。機体は、50knot(ノット)(約93km)を維持している。

「もっと減速しないのか?」

「ダウンバーストは?」

 志村 (もとむ)は、(かつ)(よし)の返答に、何も言い返せなく成った……。

 ……積りに積もった精神的ダメージが “ 許容限界 ” に近づいた志村一佐は、 “ Sa○b340B、JA0○2○ ” が誘導路 “ (パパ )(トゥリー) ” へ入る手前で、ふと左前に目をやる。すると、その視線の先には、 “ 滑走路(ランウェイ )1(ワン )2(トゥー) ” へ強行着陸した “ ビーチジ○ット4○○ ” が見えた。その上ギリギリを、神田川一佐の搭乗した “ YF‐23、モドキ ” が、ノズルを輝かせて “ フライ・パス ” して行った! 地上の小型機は、 “ 滑走路(ランウェイ )(ワン )2(トゥー) ” 上をフラフラしながら、自分達と対向して行く……。

[おー! (こわ)い! (こわ)い! 何も、アソコまでしなくても良いだろうに……。相手のパイロットは、しばらく放心状態だな。

 御互い、()(しゅう)(しょう)(さま)……]

 “ スペクター ” は、 “ ビーチジ○ット4○○ ” を左後方へ見送った……。

 ……機体は、エプロンへと進入し、それと一体と成っている誘導路 “ (パパ )(トゥリー) ” 部分を東から西へ素早く駆け抜け “ (パパ )(トゥー) ” 部分の東側に入ると、急ブレーキを掛けて “ タキシング・スピード(Taxiing Speed:地上走行速度) ” の20knot(ノット)(約37km)まで減速する。そして、 “ (パパ )(トゥー) ” 西側の地上表示に従い右へと曲がり、3番スポットと4番スポットに二機並んだ “ BOEING(ボーイング)767 ” の左側に在る1番スポットへと真っ直ぐに進もうとした……。その時、 “ 特別管制派遣隊 ” 隊長の大声が、 “ IAUCE(イアウス) ” ヘッドセットから聞こえて来る! 

『ダウンバースト、来るぞ! 中心は、 “ 国内線ターミナルビル ” 付近! 目で見える! 早く、機体を風に正対させろ!!』

 (かつ)(よし)は、 “ IAUCE(イアウス)、センサー群の三次元表示 ” により、目視でダウンバースト降下の位置と範囲を確認する。それは、右旋回を終えた “ Sa○b340B ” の正面右側の “ 国内線ターミナルビル ” を中心に、直径50m程度だ。精霊の(あるじ)は、直ぐに機体を “ 乱流降下位置 ” に正対させて停止させた。修平は、撃墜王(エース)の指示により、プロペラを “ フェザリング(Feathering:プロペラピッチを最大角〔進行方向に垂直〕にすることで、抗力を最小限にすること) ” 状態に移行させる……。

 二機の “ BOEING(ボーイング)767 ” も、 “ トーイング・カー ” で機体の方向を風に正対させようとしているようだ。……二機が静止した()(たん)、その周りが暴風を伴った白い霧の流れの中に包まれる! それは、『アッ』と言う間に “ Sa○b340B、JA0○2○ ” に到達し、機体を激しく動揺させた! 周りは、ほとんど何も見えない! 

(すご)いパワー……。こんなの()らったら、落ちるよ……]

 それは、精霊の(あるじ)だけでは無く、関係者全員の感想でもあった……。

 ……時計の表示は、十九時の少し前を指している。ダウンバーストは、十分と待たずに、治まって来た。(かつ)(よし)は、全員に声を掛ける。

(みんな)、大丈夫?」

「俺は、何とも無い」

「“ 精神的ダメージ ” 以外は、特に無いぞ……」

 精霊の(あるじ)は、築城基地副司令の返答に心の中で苦笑いしつつ、提案しようとした。

「じゃあ、機体を “ 1番スポット ” に……」

 それを、 “ スペクター ” が止める。

「それは、ダメだな……。

 前を見てみな……。整備の方々の御出迎えだ。 “ トーイング・カー ” も一緒に成って、すっ飛んで来ているぞ。

 加えて、(しび)れを切らした函館タワーが、呼び掛けて来ている。

 それにエンジンは、もう限界一杯だ。……電力保持だけ考えていた方が良い。修平君、プロペラの “ クラッチ(Clutch:動力伝達機) ” を切ってくれ。これを……」

 修平は、 “ 光る矢印 ” と志村一佐の指差し指示に従って、プロペラへの動力を切った。志村 (もとむ)は、その操作が完結したのを確認して函館タワーとの通信を始める。プロペラの回転が、ゆっくりと遅く成って行く……。

 (かつ)(よし)は、取り()えず車輪のブレーキを “ ロック ” して、機体を動かなくした……。



 ……いきなりコックピット後ろのドアが開く! ……筆頭精霊長のマリーが、実体を以って、姿を現した! 精霊の(あるじ)が、吃驚(びっくり)して声を上げる! 

「マリー! どうして!」

 筆頭精霊長は、ニコニコしながら、宣言した! 

「“ 状況終了 ” です! “ 解債条件 ” は、東久留米まで戻るまでも無く、()ちました! 御疲れ様でした! 

 ……直ちに、後の偽装工作に移ります。マイスターと修平さんは、後ろの客室(キャビン)へ移動して下さい。その後、志村一佐は機長席へ御願いします」

 (かつ)(よし)は、(とう)(とつ)に、南 (よし)()と志村 (もとむ)へ、別れの(あい)(さつ)をする。

「南 少尉、志村一佐、御世話に成りました!」

 修平も、それに続く。

「ありがとう……。ございました!」

 大人二人は、突然の展開に()(ぜん)としながらも、少年達に答えた。

『ああ、後のことは()って()く。心配せずに行け。 “ あの()(てん)() ” によろしくな……』

「縁が有ったら、また会おう。その時は、『お手柔らかに』な……」

「……では二人共、体に力を入れないで下さいね。行きますよ!」

 二人は、意の大精霊であるダイアの声掛けと共に、 “ EAUS(エーウス)Type(タイプ)-STWM(ストウム) ” によって空中を吸い出されるようにコックピットから出て行く……。

 ……志村 亘は、耳に残る “ 少年二人の悲鳴 ” に苦笑いしつつ、機長席へ座った。そして、整備員がコックピットの外側へと来た所で、左側の “ 書類受渡し用の穴 ” を開ける。外からの呼び掛けの方が、志村一佐の呼び掛けよりも、早かった。

「志村一佐、御疲れ様でした。

 一番スポットまで、此方(こちら)(けん)(いん)します。プロペラの方は、切ってあるようですが……。間違いありませんか?」

「その、とおりです。

 なおエンジンは、限界に来ているので、発電機のみ動かしています。速やかに “ 地上電源 ” へ移行する必要があります」

(りょう)(かい)しました。牽引の準備が出来たら、声を掛けます」

(りょう)(かい)です。よろしく御願いします……」

 志村一佐は、整備員との会話を終えて、誰も居ないコックピットを見回す。そして、腕を頭の上で組んで、思いっ切り伸びをした……。



 ……乗客達と犯人二人は、(かつ)(よし)と修平が客室(キャビン)に移動した時には、まだ眠っていた。(からくり) 夫妻が、 “ EAUS(エーウス)Type(タイプ)-STWM(ストウム) ” によって(ろう)()に軟着陸させられた二人に、駆け寄る。

「二人共、良くやったな! 見事だ!」

「大丈夫? 痛い所、無い?」

 精霊の(あるじ)(あるじ)(うり)二つの少年は、大人二人の言葉に、(うなず)きを以って答えた……。

「“ (かっ)くん ” !」

 精霊に対する “ 最高権限者 ” が、その声に(おどろ)いて機体の後方を見ると……。廊下の先には、フィアンセの幸来(さら)が立って居た。その後方に、マリーが支える “ SeNeHos(セネホス)(くう)(かん)(けっ)(せつ)(てん)(りん)(ぐみ)) ” から、(かつ)(よし)の姉の幸来(みく)幸来(さら)の兄の健斗も出て来るのが、見える。幸来(さら)は、駆け寄って、(かつ)(よし)の胸に跳びついた! 

「良かった……。良かったよ……」

 フィアンセは、それ以上の言葉を発さない……。精霊の(あるじ)も、そっと抱きしめるだけだった……。

 ……やがて、(かつ)(よし)の方から口を開く。

「サリー……。ううん、幸来(さら)。聞いて欲しいことが有る……」

 幸来(さら)が、顔を上げた。その顔は、涙の筋が、(いく)(すじ)も伝っている。少年は、意を決して、言葉を続けた。

(ぼく)の為、幸来(さら)の為、(みんな)の為……。更に “ 解債条件 ” を積み増す!」

 スティクグレー家の長女には、その言葉の意味する所が、分からない……。(かつ)(よし)が、言葉を続ける。

此処(ここ)から、もう一度初めて、東久留米まで自力で帰る!」

 全員の顔が、その一瞬で、凍り付いた! マリーが、うなだれる。

[やっぱり、そう来たか……]



 ……第三幕へ、続く……。





 ------- 更新履歴 -------

 2017.12.11 初版公開  (Ver 1-01.00)

 2018.08.16 着陸手順、一部の解り難い部分、文章表現、誤字、ルビ修正版公開  (Ver 1-02.00)

 2019.11.09 気になった用語の修正版公開  (Ver 1-02.01)



 ------- 参考資料 -------


・フォネティックコード


0  ゼロ

1  ワン

2  トゥー

3  トゥリー

4  フォウア

5  ファイフ

6  シックス

7  セブン

8  エイト

9  ナイナー

100 〔ワン〕ハンドレッド

1000 〔ワン〕タウザンド


A  アルファー

B  ブラボー

C  チャーリー

D  デルタ

E  エコー

F  フォックストロット

G  ゴルフ

H  ホテル

I  インディアナ

J  ジュリエット

K  キロ

L  リマ

M  マイク

N  ノベンバー

O  オスカー

P  パパ

Q  ケバック

R  ロメオ

S  シエラ

T  タンゴ

U  ユニフォーム

V  ビクター

W  ウイスキー

X  エックスレイ

Y  ヤンキー

Z  ズール


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