最終回 コスプレ女が大失敗
「やっぱりダメね。軟弱なオタクは」
ヤナは、首の無い勇人を見下ろし、そう吐き捨てた。
完璧な計画を立てていたが、タイムスリップの失敗で、全てが水泡に帰してしまった。
(まっ、私が悪いんだけどさ)
タイムスリップは、大の苦手だった。成功するのは三回に一回。〔元帥〕には何度も練習するように言われていたが、殆どしていない。そのツケがこれだった。
そう思うと、自分の失敗で命を奪われた、この童貞オタクに同情の念を覚えなくもない。
が、ヤナは天性の小悪魔。もとい、性悪。それは自他共に認める所で、
(まっ、これも運命よね)
と、さっさと同情の念を打ち捨て、胸ポケットから煙草を取り出した。
少佐と言えど、その給料は少なく、吸っているのも〔あおば〕。しかし安物とはいえ、一仕事後の煙草は格別である。
(さて、また仕切り直しか)
ヤナは、燃え上がる岩屋城本丸を見上げながら思った。今頃紹運は腹をカッ捌いている頃だろう。それでも、まだ戦闘が続いているのか、方々で怒声が聞こえる。
結局、今回も〔正史〕を変える事が出来なかった。これで三回連続の失敗。次こそは成功させなければ、少佐の地位も危うい。
一段と火が燃え上がり、島津軍から鯨波が挙がると、ヤナは勇人だった肉の塊から〔ドラゲナイ無線機〕を外し、
「こちら、柊ヤナ少佐。ミッション失敗を確認。帰還行動を要求する」
と、呼び掛けた。
上空に閃光が走り、円形の宇宙船が筑紫の空に現れたのは、それから三分後だった。
「遅いわね」
ヤナは舌打ちをすると、吸っていた二本目の煙草を投げ捨てた。勿論、光学迷彩を施されているので、戦国人の目にヤナも宇宙船も触れる事はない。
「ちょっと、過去での煙草ポイ捨ては禁止よ」
宇宙船の四方に取り付けられた拡声器から聞こえてきたのは、同僚の佐々木ミヨ少佐の声だ。この宇宙船の船長をしている。
「いいじゃないのよ。煙草ぐらい」
ヤナは宇宙船に向かって言った。
「あら、八つ当たり? また失敗したのね」
「さっき言ったじゃないの! 最初の敵に首を取られてお陀仏よ。折角我慢してアンクルーの制服を着たのに。腹が立つ!」
「まぁ、だから忠告したじゃないの。平成時代の男は軟弱だって。どうせなら、平安時代の武士にしなさい。彼らは凄いわよ。野性的で、命を毛ほどにも思っていなくて。自分達の欲を通す為には、親兄弟関係なくブッ殺すのよ。あっ、勿論アッチの方も凄いわよん」
そう言って含み笑うミヨの声に向かって、ヤナは中指を突き立てた。
「このド腐れビッチ! 戯言はいいから早く私を収容してよ!」
「それはいいけど、そこの平成男子はどうするの?」
そう言われ、ヤナは首無し勇人を一瞥した。
「捨てて置いていいけど、遺骨もないんじゃご両親や妹さんが可哀想だし、一緒にお願いするわ」
「りょーかーい」
すると宇宙船の船底から緑の光が放たれ、ヤナと勇人、そして煙草を包んだ。
身体を吸い上げられながら、ヤナは思った。
まぁ見てなさい。今に私の〔歴史オタクに正史を改竄させてやる、別名シュームスツルム計画〕を成功させてやるんだから! だって平成時代には、〔俺が考えた歴史イフ〕だの〔歴史を改変した架空戦記〕など考えている歴史オタクが多いんだし。彼らを使嗾して正史を変え、ゲルトバルトゲボルブフェンで私は成り上がるのよ!
「ふふふ……さて、次はどの歴史オタクの所に行こうかしら」
首の無い羽山勇人の死体が妹により発見されたのは、翌日の事だった。今もって犯人は捕まっていない。
<了>
短い話でしたが、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。
読んでいて「えっ!?」「うそ!?」と思って戴けたら嬉しいのですが、やはり僕にはこうした話を書く力量はありません。やはり、難しいですねライトノベルという小説の流儀は。絶対的な読書量が足りません。習作ながら読んで頂いた方には、心から感謝致します。
次回作は未定ですが、暫くは時代小説で頑張りたいと思います。




