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 バスが行ってしまうと、バス停の周囲の人出は嘘のように捌けていて、今このバス停に並んでいるのは、良樹の他に、やはり進徳館高校の空色のスクールシャツを着た女生徒が一人だけだった。


 振り返った良樹の視線の先に、ロングボブにした細く緩いウェーブの髪の少女がいる。

 その少女は、バスに乗り遅れた顛末から、じっと良樹を見ていたらしい。

 ──ウチのコ、だよな? 見掛けないコだけど……。

 良樹は記憶を辿ってみたが、もともと学校の女子に知り合いは数える程だったから思い当たる名前なんて出てこないし、記憶にもなかった。


 女生徒の方は、良樹と視線が合うとハッと視線を下ろした。ちょっと顔を赤らめペコリと一礼して傍らを通り過ぎる。

 そそくさと隠れるようにバス停の標柱に設置された路線図を覗き込むと、その小首が、ロングボブの髪ごと考え込むように小さく傾いた。


 良樹の方は、いったん比較的本数の多い207系統の次のバスを二つほど先の信号の先に確認してから、もう一度視線を少女の方に戻した。

 やはり同じ学校の女子なんだろうが、その横顔が妙に頼りなかった。まるで自分が何処にいるのか判らない、迷子みたいに。


 首を傾げていた彼女が、視線を感じたように髪を揺らして良樹に顔を向けた。困ったようなはにかんだ笑顔が浮かぶ。


「あのさ──」

 思い切って良樹は声を掛けてみた。

「ひょっとして君も、仲間から置いてかれちゃった、とか?」

 彼女は、少しの間きょとんとしていたが、すぐに小さく両の手を振って応えた。「……あ、違います! 別にはぐれちゃったり、置いてけぼりとかじゃ──(あっ!)」

 それから、バツの悪そうな表情になる。

 ──おいおい……。これはウソとか絶対につけないタイプだな……。

 良樹の視界の中、どう言い訳しようかと、そんな表情の彼女のおっとりとした目元は、控えめで優しそうな印象だった。声は鈴が転がるようで、それでもどこか上ずり気味だ──。

 良樹は思った。

 しかし……そっちは確信犯なわけね……。おとなしそーな顔してやるなー。

 彼女の顔を改めて見る。滅多にしないような悪さをして見つかってしまった子供みたいだった。

 不意に、その顔に先ほどまでの不安げな表情が重なってきて、良樹は切り出していた。

「どこか行きたい所とか、あるの?」

「え?」

 再びきょとんとなった彼女が、顔を上げた。ちょっとしてから──

「あ……、あの……」 慌てたようにポケットから小さくたたまれた紙片を取り出す。「ここに行くには、どうしたらいいでしょう?」

 両の腕を絞り出すように差し出された紙片を広げると、住所らしき文字が書かれていた。

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