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第5話 S級ランカー『フィーエルト=パール』

ランカーギルド 接待室


「ここなら大丈夫でしょう」


「実はその依頼は、大人気で…熱烈なファンが大勢いらっしゃるのでここで話をさせてもらいます」


 疲れてそうな受付係になんとなく察する。


「そちらの依頼主は【フィーエルト=パール】様……【S級ランカー】でございます」


〜〜〜


 S級。


 ランク、武具、魔道具など、すべての要素においてS級とは、上位100位の中に選ばれた最高位の証である。


「S級ランカー!?この世で上位100人しかなれないという、あのS級ですか!?」


 S級という単語に興奮する。


「はい…フィーエルト様からいい人材を見つけて屋敷に呼ぶように言われています」


「つまり僕がその依頼を?」


「どうかお願いします」


 深々と頭を下げられる。


「引き受けさせてください!」


 S級ランカーと関われるなんて滅多にない、ランカーたる者、引き受けない選択肢は無いに等しかった。


「ありがとうございます!家までの道が描いている地図を渡しますね!」


〜〜〜


「ここがフィーエルト様の家……?」


 白が基調の美しい豪邸だ。


 突然目の前の門が空く。


「入っていいんだよね?」


 屋敷に着くまでの庭を歩く。


 花が咲き誇り、鳥のさえずりが聞こえる。


 天国があるなら、このような場所だろうか。


 屋敷の扉まで歩を進める。


「お入りになってください」


 庭を手入れしている執事の声を聞き中へ入る。


〜〜〜 


「わぁ……!」 


 屋敷の中へ入ると美しい絵画が一面に展示されている。


 その絵画に見惚れていると。


「君が…例の子かな?」


 その声の方に振り返ると透明感のある美男子が立っていた。


 あの方が……S級ランカー!。


〜〜〜


〚S級ランカー上位第82位〛

〚芸術家・フィーエルト=パール〛


〜〜〜


「お邪魔しています、フェイ=アリアスです」


「こんにちは、フェイ…」


 その姿はまさしく下界に降りた天使そのものだった。


〜〜〜


「それじゃ…フェイ君、着いてきてくれ」


 言われるがままに後ろを歩く。


 廊下を歩いた時、見渡せる全てが絵画だ……。


「絵画が不思議かい?」


 あまりの風格に頷くことしかできない。


 気がつくと絵画に囲まれている庭についた。


「綺麗な所ですね……」


 真ん中にテーブルと椅子が置いてある。


「君はここが綺麗と思ったんだね」


「?」


「とりあえず…座ってくれ」


 静寂が二人を包む。


「こちら紅茶を…」


 執事が紅茶とクッキーを出してくれた。


「受付係さんから聞いてるよ…君はこの街に来てからまだ浅いのだろう?」


「まずは私の自己紹介からしようか」


「名前はフィーエルト=パール、芸術家だ」


「あの絵画はフィーエルトさんが?」


 フィーエルトはコクリと頷く。


「そしてその絵画が依頼内容なんだ」


「というと…?」


「私は写像対象の人生を一面のキャンパスに描ける……それが私の能力」


「人生を絵に?」


「はは…見てもらったほうが早いかな」


 フィーエルトは、手元から一つの絵画を取り出す。


 その絵は様々な花が描かれているお花畑のような絵画だ。


「これは君が話した受付係さんの人生だ」


「この絵画があの人の人生…?」


「忌憚なく感想を聞かせてくれ」


 フェイは、少し考えて話す。


「綺麗と同時に……なにか不安を感じました」


「真ん中の少し暗い花が周りに合っていないなと…」


 フィーエルトが笑みを浮かべる。


「いい洞察力だ。そうだね、この暗い花はあの子自身を写している」


「彼女は昔、自分自身のコミニケーション能力がコンプレックスだっんだ」


「その周りに馴染めない気持ちがこの絵画に出ている」


 そう言われるとその花を避けるように花が咲いている。


「これが私の能力…分かってくれたかい?」


 フェイはコクリと頷く。


「まだ…馴染めてないね」


 その言葉に動揺を隠せない。


「いえ!そんなこと…」


「おそらく君は私がS級ランカーだから緊張しているのだろうね」


 心を見透かされているように図星だ。


「少し話そうか…」


「私の能力は出来るだけ素の君を写したいからね」

 

 その瞬間、フィーエルトと雰囲気が一気に変わる、本当の意味での対話が始まる。


 そのメリハリに背筋が凍るような感覚が襲いかかる。


「私のS級は、【力の強さ】じゃない」


「現に私は君と喧嘩したら負けるだろうね」


 嘘か本当か、フェイはあまりにも信じきれなかった。


「それは…どういうことですか?」


「このランキングシステムは、相手を打ち倒す【力の強さ】以外にも評価される要素が沢山あるんだ」


「私の場合は【芸術】この絵画だけでS級まで上がってしまった」


「私の能力【夢想家】は戦闘向きじゃなかった、もちろん私自身争い事が嫌いという面もあるけどね」


 フェイは、紅茶やクッキーの存在を忘れ、話に夢中になる。


「戦い以外にも1位になる方法があるんですか!?」


 できれば争わずに願いを叶えたい、そんな気持ちで聞く。


「……そうだね、まず話を聞いてくれ」


「ランキング1位に成り、試練を乗り越えると願い事が叶うという噂は本当だ」


 フェイは、身体が前のめりになる。


「本当ですか!?」


「おっとと、訳ありかい?」


 少しびっくりしたように聞く。


「はい、少し」


 フェイは今までの事を断片的に語る。


「サクチュン?に隕石…?」


「とにかく大変な思いをしていたんだね…」


 フィーエルトは本当に同情してくれている。


「そんな君に助けとして、試練の内容について知ってことを話そう」


 フィーエルトは、紅茶を少し口にする。


「試練は【全ての人に認められる】ことだ」


「認められる?」


「あぁ…そして、この試練があることで、私が願いを叶えることは不可能になった」


「私の芸術に限らず【力の強さ】以外で、全ての要素が万人に受け入れられることは無い」


「必ずしもアンチは存在するからね」


「しかし、【力の強さ】は、また別だ」


「文句を言うやつは潰せばいい、苦言を唱えるものは消せばいい、そんな事をしても彼らのランクは上がるだけで逆に評価される」


「過去に願い事を叶えたとされる5人は、全て【勇者】だった」


「そして全員が【魔王】を討伐していた」


「【魔王】を討伐することで全世界の人が最強だと認識する、それで願いが叶う」


 フィーエルトは、失笑する。


「あまりにも、綺麗に出来すぎている…」


「このランキングシステムは歪んでいる」


「このシステムを不思議と思っているのが極少数なのも気味が悪くて仕方がない」


 ランキングシステムに疑問を浮かんだことは無かった。


 フェイはそれが当たり前のように生きてきたから。


「この屋敷はランキングシステムの報酬で建てたものだが、このシステムが嫌いだ」


 その顔は何かを隠している顔だ。


「私達は成人つまり、14歳になると強制的にランカーになってしまう」


「病弱な人、争いが苦手な人、向上心が欠けている人、そんな人達が逃げられない…」


 フィーエルトの持っていたクッキーにヒビが入っている。


「こんなシステムがなかったら…あの子は死ななかった!」


「あの子の死に…誰も罪を背負っていない!」


 フィーエルトの顔はあまりにも悲しそうだった。


「すまないね、愚痴を聞いてもらって」


「いえ…僕も少し考えさせられました」


 雰囲気は暗くなる。


「でも…これを観てくれないか」


 そう言い案内されたのは庭の奥。


「これは…!」


 巨大なキャンパスに彩られた美しい情景、その絵画の先に別の世界があるかのような。


 楽園と言うには鮮やかすぎる、天国と言うには彩られ過ぎている、そんな美しい異空間。


「美しいだろう…私の最高傑作だ」


「この絵画の人生……写像対象は小さな赤ん坊だった」


「赤ん坊が?こんな人生を?」


 フィーエルトはコクリと頷く。


「あの子が見ている世界はこんなにも美しいものだった……」


 フィーエルトは、ふぅ〜と、ため息をつく。


「この世を暗く語るには、少し鮮やかすぎる」


「どうだい?緊張が解れたかな?」


「はい…!」


 フェイの心のモヤモヤが少し晴れた。


「それじゃ君の絵画を描かせてくれ」


「君の人生を」


〜〜〜


 フィーエルトは椅子に座り、キャンパス越しにフェイを見る。


「S級能力【夢想家】」


 フィーエルトの周りが紫色のオーラに包まれる。


 フィーエルトは、目を瞑りながらひたすら手を動かす。


 数分経った後にフィーエルトが目を開ける。


「書けたようだ………ね…」


 フィーエルトの顔が引きずり、椅子から倒れ込む。


「どうしました!?」


 急いでフィーエルトの方に向かう。


「駄目だ、来てはいけない!」


 時すでに遅し…フェイは自分の絵画を見てしまった。


「………!?」


「真っ黒だ……」


 キャンパスは、黒一色、よく目を凝らすと非常に濃い赤色が点々としている。


「こんな絵画見たことがない」


 フィーエルトが少し震えていた。


 しかしフェイは気づいていた。


「でも、フィーエルトさんの屋敷で何枚か真っ黒の絵画は見ましたよ!」


 そうだ、真っ黒な絵画は何枚か展示されていた。


「違う、これは……他の黒一色なんじゃない」


「あまりにも色が重なりすぎて真っ黒になっているんだ」


「フェイ…君の人生は一体?」


「僕の人生は……」


〜〜〜


 フィーエルトが立ち上がる。


「本当にびっくりしたよ」


「僕もびっくりしましたよ、フィーエルトさんが突然倒れてしまって」


 フィーエルトが笑みを浮かべる。


「ははは、そっちか!君は優しいね」


「ありがとう、これで依頼は終了だ」


 あっけなく終わった依頼にもどかしさを感じる。


 フィーエルトは、僕の目を見て話す。


「安心してほしい、この絵画は悪い物じゃない、僕の芸術家としての勘がそう言っている」


「どんな名画でも、近づいたら真っ暗で何も見えない」


「少し離れてやっと色が見えてくる……きっと…この絵画も美しい色が見えてくる」


 あまりにも抽象的過ぎて理解し難い…芸術家とは、厄介な存在だ。


〜〜〜


ベルドハイ ランカーギルド 


 受付係のもとへ向かう。


「依頼完了しました!」


「おめでとうございます!どうでしたか?」


 フェイは、少しの沈黙の後に言う。


「芸術家って難しい人ですね!」


「あははは、あとでフィーエルト様に伝えておきます!」


「あっ!」


 受付係は急いで口を塞ぐ。


 ランカー全員の目線が受付係に向く。


「今…フィーエルト様って…」


「お前も聞こえたよな……」


「まさか………」


 次の瞬間、大勢の人が受付係の前に集まる。


「次は俺に依頼を頼むって言ったよな!!」


「私のフィーエルト様!!!」


「隠れてコソコソと!!」


 フェイは、ガヤガヤと騒ぎ出したランカーギルドを上手く後にする。


〜〜〜


「あんなにも影響があるなんて…」


「さて…そろそろ行こうか」


 金は貯まった。


 目指すは――


 大都市イリス。


 新しいランカーたちが待つ場所へ。


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